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4th フェーズ 奪
No.89 イヴからのお願い
しおりを挟む今から50年以上も前、イヴが開発したナノマシン【グレイボット】を利用してヴァ―リは世界中から多くの人々を消し去った。この時の一連の出来事を皆に説明したイヴとシドー。
「ここでユキチカは身体を盗られたんですね。あれ?でもユキチカの魂は?」
ジーナが話を聞いて気になった点を尋ねる。
「ヴァ―リがユキチカのソウルパッチを持ってたのさ。それを私が使わせて貰ったんだ。ユキチカの事をまた利用しようとしたのか、それとも私を脅すのに使うつもりだったのか、恐らくはそんな事を企んでただろうけどね」
「イヴさん、あんたは一度ヴァ―リの元を抜け出したんだよな?それでインファマス刑務所に向かったんだよな、どうやって?」
今度はキビが質問した。
「コールドスリープから目覚めた時からしばらくして、私は本来の記憶を取り戻した。だけどそれをアイツに気付かれないように振舞ったんだ、色々と準備をする為にね。そしてユキチカのソウルパッチをアイツから取返し脱出した」
「どうしてインファマス刑務所に?」
「あそこは世界で最もヴァ―リが手を出しにくい場所だからね。あそこ以外に思いつかなかったんだ」
「なるほど、でも途中でいなくなったのは?」
「当時使ってた身体の活動限界が来たからだよ。計画の為の準備が万全ではなかったんだ。その前にヴァ―リに記憶を取り戻した事がバレてしまってね。ヴァ―リもバカじゃない、一度自分をだました相手の事をそう簡単に信用するような奴じゃない。常に私に疑いの目を向けていたんだ」
キビの質問に答えていくイヴ。
「逃げたと言っても私は既に捕まっていたから、こっそり作ってた遠隔操作用のアンドロイドを使ったんだけどね。それの稼働限界が迫って来たからユキチカの元から一旦去ったという感じかな。ほら、刑務所内で活動限界が来ちゃったら色々と騒ぎになりそうでしょ?」
「来た時はユキチカは3歳か5歳って、なんでそんな年齢に?」
「確かに、普通に活動しやすい身体年齢の方が良いんじゃないですか?」
ジーナとシャーロットも気になった点について質問した。
「かくまって貰える確率が一番高いだろうと思ったんだ。大人の姿で来たらそのまま送り返される可能性が高いからね。最初はあの刑務所も一時の隠れ蓑程度にしか思ってなかったんだけど、鬼丸さんやみんなには本当にお世話になったよ。みんないい人だった殆ど犯罪者だったけど」
懐かしむ様子のイヴ、彼女にとってもインファマス刑務所は故郷のような場所らしい。
「みんな元気にしてるかな。ってあの人たちは心配と一番無縁の人か」
「ナノマシンは今どこに?」
「今の私には分からない、触らせてくれないからね」
キビの質問に答えるイヴ。
「それと今のあなたは本人なのか?その……ああなんていえば良いんだ」
「ああ、この身体ね、そうだよ。刑事さんが思ってる通りこれは遠隔操作してる身体で、本体は別にある。でもその本体は監禁されちゃってるからこうやって機械を遠隔操作してるの、このソウルパッチを使ってね」
イヴの胸に小さいソウルパッチが取り付けられていた。
「これは私なりの改良をしたやつ、意識を宿らせるって感じかな。そしてまさにその本体に関して君たちにお願いしたい事があるんだ。それがみんなに会いたかったもう一つの理由」
「監禁されてる場所から助け出すって事ですか?」
シャーロットがそう言うと指をパチンと鳴らすイヴ。
「話が早いね!でもちょっと先に行き過ぎたかな。その前に場所を特定してもらう必要がある。ごめんなんだけど、私今どこに本体があるか分からなくて」
「分からない?」
ジーナが首を傾げる。
「ヴァ―リにソウルパッチを使われたり記憶の中身を見られても大丈夫なように自分の記憶を取り出して別の場所に保管してあるんだ。その中に私が今いる場所の情報がある、他にも色々大事な情報を入れておいたから、それを見つけてきて欲しいんだ」
「記憶を取り出し……また凄い話が」
キビが額に手を当てる、彼女の口から出る話はどれもこれも想像を超えるものだ、そう簡単に受け入れられるものではないだろう。
「その記憶を置いて来た場所ってどこか分かりますか?」
「もちろん、この中にあるよ!」
イヴが映像を映し出す。
「これって確か……」
「ゲーム……あ!アンジェラさんがしてたゲーム!」
シャーロットとウルルが思い出す、アンジェラが紹介してくれたゲームだ。
「そー!そうそうアンジェラちゃん!彼女が詳しいよ!」
「あれ待ってください、彼女に私の情報を提供したのって……」
「えへへーそれ私。君たちなら彼女と仲良くなれると思ってさー」
ウルルに応えるイヴ。
「もしかしてこうなることを見越してた……とか?」
ジーナがそう言うと頷くイヴ。
「もちろん、これまでの事は一応想定ない……」
「なんだとッ!」
キビがイヴの首を掴み上げる。
「き、キビさん!」
「テメェ!ユキチカがあんな目にあうのも分かってたていうのか!」
怒鳴るキビ。
「うん……分かってた、けどこれが最善だったんだ。私もできればユキチカの肉体と魂両方取り戻したかったよ。でもこれが最善の結果」
「よくそんな事を!」
キビはイヴに殴りかかろうとする勢いだ。
「あんたやめろって!あんたがタイキを思う気持ちも分かるけど、先生だって……」
「いいのシドー」
イヴはシドーを止める。
「すべては私が引き起こした出来事。何を言われてもしょうがない。でもね、私は何がなんでもやらなきゃならない、彼の未来の為に」
一切目線を逸らす事せずにキビをみるイヴ。
「ユキチカは今どこにいるか分かるのか」
「分かるよ、けど今のワタシ達でどうこうできる場所じゃない。だからまずは私の記憶を取り戻して欲しい、そこに必要な情報がある」
キビはまだイヴの首を掴んだまま離さない。
「今のワタシを殴る事であなたの気が済むならどうぞ。私にはやるべきことがある、絶対に彼を取り戻す、そしてヴァ―リを止める。あなた達に協力して貰えればこの計画の成功率はもっと上がる。だから助けて欲しい」
「……ッ!そのアンジェラって友達の所にいけば良いんだな」
キビはそう言ってイヴを掴んだ手を離す。
「ありがとう」
「ユキチカの為だ」
イヴは頷く。
「分かってるよ。ねぇシドーも一緒に行って貰えるかな?」
「勿論だ先生、それで先生はどうするんだ」
シドーはそう答える。
「私はここにいるよ、ここの痕跡を消す為に色々としないといけないから。連中の捜索網をかく乱させたりとかね。アンジェラちゃんにはもう連絡入れてあるからこれから向かってねー」
「ちょっと待って下さい!ヴァーリはまだ生きてるんですか?」
ジーナが手を上げて質問する。
「あれ、言ってなかったけ?あいつは生きてるよ。ユキチカの身体は取り返したけど。あいつはその時の為の準備もしている。それにあいつがこの世界から消滅してたらこんなコソコソ隠れる必要ないし」
「という訳で、それじゃあバイバーイ!」
「なんか軽いな……」
元気に手を振るイヴに見送られるキビ達であった。
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