100 / 119
3章 依存国ツィーシャ
今日は休憩、明日は…… (リュカオンside)
しおりを挟む
僕は『ちびっ子』と違って何回も転移が使えるわけではないから、家まで歩いて帰っていた。
あとは、ここの状態をもう少し見ておきたいと思ったからだった。
貴族や王族には手が伸びているのを知っていたけれど、まさか国民にまでとは思っていなかったから、悠長にしていられないかもしれない。
あいつらは、やろうと思えばどんな手も使ってくるから、早いうちに芽は摘んでおかないといけない。
こんなことなら、ルレーヌにどこでロザリオをもらったか聞いておけばよかった。
そうしたら目星がつくんだけど。
帰り道で通れそうな場所をできるだけ回りつつ、怪しそうな場所を確認して、陽が沈むころ、僕はようやく家に戻った。
キィ……
古びた木製の扉が音を立てて開くと、奥から走ってくる音がした。
『ちびっ子』が心配そうな顔をして玄関まで来た。
『ちびっ子』は僕の体を上から下まで見て、怪我がないことがわかると胸を撫で下ろした。
「おかえりなさい」
「………うん、ただいま」
久しぶりに聞いた言葉に少し驚きながら返事をして、僕は『ちびっ子』と一緒に部屋に入った。
『ちびっ子』は僕が何をしてきたのか気になるといった様子で何度か見てくるけど、言葉にしてこない。
多分、自分が踏み込んでもいい話なのかを考えあぐねている。
実際、今回は『ちびっ子』がすごく関係しているから聞いてきたら話すけど、この様子だと、今日はきっと聞いてこないだろう。
今日はできるだけ暗い話はなしにしたいから。
僕はわざと気づいていない様子を装って『ちびっ子』のほうを見てすぐに目が合った。
目が合うと思ってなかったのか、少し目を見開いた『ちびっ子』にできるだけ優しい声音で話してみる。
「たくさん歩いて疲れたし、お風呂に入って早く寝ようか」
「………お風呂?」
「そうだけど……僕何か変なこと言った?」
『ちびっ子』はさっきまでの気になる様子を振り捨てて、僕の言った「お風呂」に対して敏感に反応した。
やけに目が光ってる気がする……。
「最高だった…………」
「それならよかった」
お風呂から上がって、顔を上気させて感想を述べた『ちびっ子』はとてもご満悦な様子だった。
どうやら、旅を始めてからまともなお風呂に入ったのは今回が初めてだそうだ。
今までは魔法でちょっと綺麗にするくらいしかできずにもどかしかったけど、ここでやっと入れたのがとても嬉しかったらしい。
アナスタシアにいたころは、そもそも「お風呂」という概念すらないような場所に居たはずだし、「お風呂」自体は1年中寒い北方で発達したもので、あまり他の地域では見ない。
実際、この家のお風呂も僕が作ったし。
『ちびっ子』はグラントに居たときがあったみたいだし、そこで知ったのだろう。
身体の芯まで温まって、心に安らぎを与えるあのひととき。
一度味わえば二度とお風呂なしでは生きていけないと言ってもいいくらいだ。
お風呂のよさに気づけるのは、北方出身の僕としてはちょっと嬉しかったりする。
僕はリラックスする『ちびっ子』に毛布を渡して、寝る場所の指示をしてお風呂に向かった。
一度お湯をすべて入れ換えて、温度の調節をして僕もゆっくりとお風呂を楽しんだ。
僕が上がったころには、『ちびっ子』は僕の寝室の隣の部屋でぐっすり寝ていた。
しっかり毛布にくるまって、髪も乾かしているみたいだから、風邪をひく心配はなさそうだ。
僕は様子だけ見て部屋の扉を閉めた。
────残された時間は少ない。
明日は、『ちびっ子』が嫌がっても今日あったことも含めて、大魔協について話さないといけない。
『ちびっ子』から今までの話も聞きたいけど、それはまた今度にしよう。
そう決めて、僕は家中の灯りを消して寝室に篭って眠りについた。
あとは、ここの状態をもう少し見ておきたいと思ったからだった。
貴族や王族には手が伸びているのを知っていたけれど、まさか国民にまでとは思っていなかったから、悠長にしていられないかもしれない。
あいつらは、やろうと思えばどんな手も使ってくるから、早いうちに芽は摘んでおかないといけない。
こんなことなら、ルレーヌにどこでロザリオをもらったか聞いておけばよかった。
そうしたら目星がつくんだけど。
帰り道で通れそうな場所をできるだけ回りつつ、怪しそうな場所を確認して、陽が沈むころ、僕はようやく家に戻った。
キィ……
古びた木製の扉が音を立てて開くと、奥から走ってくる音がした。
『ちびっ子』が心配そうな顔をして玄関まで来た。
『ちびっ子』は僕の体を上から下まで見て、怪我がないことがわかると胸を撫で下ろした。
「おかえりなさい」
「………うん、ただいま」
久しぶりに聞いた言葉に少し驚きながら返事をして、僕は『ちびっ子』と一緒に部屋に入った。
『ちびっ子』は僕が何をしてきたのか気になるといった様子で何度か見てくるけど、言葉にしてこない。
多分、自分が踏み込んでもいい話なのかを考えあぐねている。
実際、今回は『ちびっ子』がすごく関係しているから聞いてきたら話すけど、この様子だと、今日はきっと聞いてこないだろう。
今日はできるだけ暗い話はなしにしたいから。
僕はわざと気づいていない様子を装って『ちびっ子』のほうを見てすぐに目が合った。
目が合うと思ってなかったのか、少し目を見開いた『ちびっ子』にできるだけ優しい声音で話してみる。
「たくさん歩いて疲れたし、お風呂に入って早く寝ようか」
「………お風呂?」
「そうだけど……僕何か変なこと言った?」
『ちびっ子』はさっきまでの気になる様子を振り捨てて、僕の言った「お風呂」に対して敏感に反応した。
やけに目が光ってる気がする……。
「最高だった…………」
「それならよかった」
お風呂から上がって、顔を上気させて感想を述べた『ちびっ子』はとてもご満悦な様子だった。
どうやら、旅を始めてからまともなお風呂に入ったのは今回が初めてだそうだ。
今までは魔法でちょっと綺麗にするくらいしかできずにもどかしかったけど、ここでやっと入れたのがとても嬉しかったらしい。
アナスタシアにいたころは、そもそも「お風呂」という概念すらないような場所に居たはずだし、「お風呂」自体は1年中寒い北方で発達したもので、あまり他の地域では見ない。
実際、この家のお風呂も僕が作ったし。
『ちびっ子』はグラントに居たときがあったみたいだし、そこで知ったのだろう。
身体の芯まで温まって、心に安らぎを与えるあのひととき。
一度味わえば二度とお風呂なしでは生きていけないと言ってもいいくらいだ。
お風呂のよさに気づけるのは、北方出身の僕としてはちょっと嬉しかったりする。
僕はリラックスする『ちびっ子』に毛布を渡して、寝る場所の指示をしてお風呂に向かった。
一度お湯をすべて入れ換えて、温度の調節をして僕もゆっくりとお風呂を楽しんだ。
僕が上がったころには、『ちびっ子』は僕の寝室の隣の部屋でぐっすり寝ていた。
しっかり毛布にくるまって、髪も乾かしているみたいだから、風邪をひく心配はなさそうだ。
僕は様子だけ見て部屋の扉を閉めた。
────残された時間は少ない。
明日は、『ちびっ子』が嫌がっても今日あったことも含めて、大魔協について話さないといけない。
『ちびっ子』から今までの話も聞きたいけど、それはまた今度にしよう。
そう決めて、僕は家中の灯りを消して寝室に篭って眠りについた。
11
あなたにおすすめの小説
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります
チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます!
ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。
この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。
戦闘力ゼロ。
「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」
親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。
「感謝するぜ、囮として」
嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。
そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。
「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」
情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。
かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。
見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる