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3章 依存国ツィーシャ
吹雪の日の話題 2
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「…………逃げた後は、必死で、右も左も分からないままいろんなところを通過した。髪色を変えたり、そのへんの死体から盗った身分証を利用したりしてなんとか。とにかく生きるのに必死であまり覚えてないけど………。
指名手配されてから数ヶ月くらいのときに1回捕まって、たくさん暴行を受けて死にかけたこともあったな」
遠い場所を見つめながらリュカオンは話を始めた。
リュカオンの脳裏に浮かぶのは、拷問されたときの記憶だった。
拷問は幼いころから受けてきた大魔協の『教え』より酷ではなかったが、毎日続けられて、ろくに食料も与えられず、ただの憂さ晴らしにされていると思う日もよくあった。
回復系統の魔法に精通していなかったリュカオンは、体力の消耗が激しく、数ヶ月に及ぶ拷問で次第に衰弱していった。
「あ、今度こそ死ぬ……って思った。1日の感覚もわからなくなったし、自分が生きてるのかすらわからなくなった。
だから、ルフトには感謝してるんだ」
リュカオンは少しだけ笑みをこぼした。
体が衰弱していることは関係ないと言われて、昼は冷水で起こされて魔法を使わされる日々を過ごしていたリュカオンは、限界がやってきたようだった。
収監されている場所から労働する場所まで歩く体力がなく、足がもつれて手もつかずに転んでしまったのだ。
何度も足先で蹴られたが、起き上がることもできず、不潔なリュカオンに触りたくない監視員たちがリュカオンが立つのを待っていた。
『この国は罪人の管理がひどいね』
そう言って現れたルフトはその場にいる中で最も豪勢な格好をしていた。
リュカオンはおぼろげな記憶の中で、何も聞こえないが、ルフトから差し伸べられた手が見えて、すがるようにその手を取ったのだ。
次に気がついたときは、薄汚くて衛生面が最悪なあの収監されていたところではなく、煌びやかな天蓋つきベッドの上だった。
『あ、目が覚めたんだね』
水を持ってきたルフトはトーガを身にまとっていた。
手を取ってくれたリュカオンをルフトの出身国であるレクトアまで連れてきたと説明された。
「そこで知ったんだけど、ルフトはレクトアの王族だったんだ」
「…………えっ!?」
あまりに急展開でクレアも驚いているが、当時のリュカオンはもっと驚いていた。
王族とはいえ、ルフトは下から数えたほうが早いくらい下級の側妃から生まれた第一王子で、継承順位もなく放任されていた。
リュカオンと出会ったあの日は、危険な外交を終えた帰りだったらしい。
しかし、リュカオンは権力者に近づくといいことはないと、身をもって体感していたからこそ、一刻もはやく逃げ出したかった。
だが、ルフトは許可しなかった。
脱出を試みて何度も捕まり、部屋に戻されるのを繰り返して、10日ほどで降参したのだ。
そうして、ルフトと毎日お茶を飲む日々が始まった。
ルフトは外交を受け持っている分、西方の情勢に詳しかった。リュカオンが自分のことを話してくれるまでは、どこの国で何が起きているのかを常に教えてくれた。
リュカオンはそういった話は自分に関係はないと聞く耳を持たなかったが、ずっと話していた。
それに、魔法に長けていた。扱いも教え方も才能があり、指南してもらおうとやってくる王子たちと仲良く過ごしていた。
日々を過ごすうちに打ち解けて、リュカオンが自分の話をしだすと、ルフトは満面の笑みを浮かべた。
『そっか。頑張ってきたんだね』
それだけ言って、逃げ出すことを許さなかったルフトが、リュカオンを応援しはじめた。
まんまと絆されたリュカオンは、もう抜け出せなかった。
「最初は抜け出したかったけど、もう駄目だったな。あのお人よしといるのが楽しくなったんだ。
長くは続かなかったけど」
お互いがお互いを許して、信頼しあう関係になったリュカオンとルフトは、ついに選択を迫られた。
何気ないお茶の時間に、侍従が突然やってきた。
『殿下、陛下が────』
ルフトはその言葉だけで部屋を飛び出して、レクトア王の寝室に入った。
他の王族も寝室にいて、皆が涙を流していた。
その中心にいるレクトア王は、息をしていなかった。
国葬が終わると、継承権争いが激化した。
早く決めないとトランスヴァールに飲み込まれてしまうからだった。
継承順位すら与えられていなかったルフトも、魔法の扱いと第一王子という観点から一部の貴族に推されてしまい、巻き込まれた。
日夜襲いかかる暗殺の危機に、次第に元気をなくしていくルフトにリュカオンは胸が締め付けられた。
(………今度は、僕が)
以前あの地獄から救い出してくれたように、今度は自分が救う番だと決意した瞬間だった。
『ルフト、僕と一緒にここを出よう』
ある夜、ルフトに提案したリュカオンの表情は固く、揺るがないようだった。
ルフトはどれだけ辛くても、笑顔を絶やさなかったが、その提案のときは初めて目を潤ませた。
が、すぐに笑顔に戻った。
『急にどうしたんだ?出て行きたいなら、僕に言わずに行けばいいじゃないか…………。
僕が一緒だと、君も大変だよ』
わざと突き放すように話すルフトが嫌で、思わずリュカオンは声を荒げた。
『大変だとしても……ルフトと一緒にいられるなら大変なんかじゃない。
この手を取って。僕と逃げ切ろう』
『……………っ、うん』
ルフトは涙を流してリュカオンの手をとり、その日のうちに2人はレクトアを後にした。
「レクトアは海に面していたから、船に乗り込んで南に抜けたんだ。闇魔法でできるだけ気づかれないようにしつつ、ね。
それからは上手くいって……南を抜けて中央に行こうとしたんだ」
何気なくいつものように毎日お茶を一緒に飲んで、お金を稼いで移動をする日々を続けていた。
料理もそのときに教えてもらった。
ある日、ルフトは朝刊の見出しを見てその場に座り込んだ。
見出しには「レクトアの王位継承戦が終了」とあった。
多くの犠牲を出したレクトアの王位継承戦は、結局血筋や人望から、皇后の息子である第3王子が即位したと言うことだった。
誰との争いも望んでおらず、兄弟皆を平等に応援していたルフトは涙を流して即位を祝った。
その姿にリュカオンも喜びを分かち合った。
とても、多幸感に包まれていた。
だからなのか、天罰が下った。
南から中央へ渡る船が難破したのだ。
水が船内に入ってきて、絶体絶命だった。
リュカオンは死を覚悟しながら、ルフトのそばを離れなかった。
そうして、高波に飲まれて、意識を失った。
次に目を覚ましたときにはルフトはそばにおらず、リュカオンの身に絶望が襲いかかってきた。
「それで、ルフトを捜しながらいろんなところを放浪として、大魔協の話を耳にすることが増えて………」
北上しながら得たのは大魔協の話ばかりだった。
ルフトと過ごしていた日々の中で忘れかけていた、悪質な組織の記憶が蘇った。
大魔協を思い出しては怒りが込み上げ、ルフトが見つからないことにもどかしさを覚え続けて、擦り切れていった。
怒りが復讐心に変わるのに時間はかからなかった。
そうしてリュカオンが大魔協に憎悪を膨らませていったある日、連絡網の水晶が光った。
突然のことで驚きつつもリュカオンが表示すると、映し出されたモニターには見慣れた顔があった。
『あ…………やっと繋がった』
『ルフト………………?』
連絡してきたのはルフトだった。
最後、船が難破してはぐれてから半年は経とうとしていた。
ルフトは作り笑いではなくしっかりと笑ってくれた。
『よかった、連絡して』
リュカオンもまたルフトにつられて笑った。
ルフトは難破してはぐれてからすぐに今のパーティであるヘレンたちと行動を共にしていたらしく、特段困ることなく過ごせているようだった。
『魔法ができて嬉しかったのは弟に教えてたころ以来だよ』
本当に嬉しそうに語るルフトを見て、リュカオンは安心した。
継承権争いが始まる以前の表情を取り戻していたからだ。
(もう関わらないほうがいい)
ルフトとの再会はリュカオンにそう思わせた。
いまだにリュカオンは指名手配されている。
それに、これからリュカオンがすることは復讐だ。
弱みを握られて報復されたら。
ルフトが何か繋がっているとばれてしまったら。
また戻ってきた笑顔を奪うことになる。
『また連絡するよ。そっちからも連絡出してよ』
『……………うん、気が向いたら?』
『絶対!じゃあね』
プツッと音がして切れてから、リュカオンは水晶に厚めの布をかけて連絡を取ろうとしなかった。
「一ヶ月くらい前に寝ぼけて取っちゃったのがよかったのか悪かったのか…………」
以降、北上を進めて、次に狙われる可能性があるツィーシャに拠点を置いて2年ほどだった。
連絡を取ろうともしなかったリュカオンのもとに、ある日、連絡が届いた。
連日徹夜で大魔協について調べていたリュカオンは、頭が働いておらず、寝ぼけてその連絡を取ってしまったのだ。
『どうして連絡してくれなかったんだ!』
リュカオンはルフトの怒りに満ちた声で、一気に目が覚めた。
まるで頬を叩かれたように衝撃を受けて、驚きながらルフトに謝った。
『ごめん……。いろいろと調べものをしていて』
『2年間、僕に連絡できないくらい調べものをしていたんだね?』
正論にただ目を逸らすしかないリュカオンを見てため息をついたルフトは、『じゃあ手短に話すけど』と前置きをした。
『君が話していた子………「銀の魔女」と出会ったよ。君と会いたそうにしていた』
『……………えっ、今なんて』
『それじゃあ、調べもの頑張って』
プツッと切れて、聞き出したいことが聞けないまま連絡が途切れた。
「そこからは知ってると思うけど、ルフトが連絡をくれて、『シャルア』と連絡が取れてこうして今まであった話をしてるってわけ」
最後は雑に要約して話を締めくくると、クレアはリュカオンを見て笑った。
「ルフトさんに感謝、だね」
「………まあそうなるのかな」
外の猛吹雪の寒さに反して、2人はお互いを知って心にじんわりと何かが染み込んだ。
「…………もう少し集めたらそろそろ、かな」
不穏な出来事の足音に気づかないくらいに。
指名手配されてから数ヶ月くらいのときに1回捕まって、たくさん暴行を受けて死にかけたこともあったな」
遠い場所を見つめながらリュカオンは話を始めた。
リュカオンの脳裏に浮かぶのは、拷問されたときの記憶だった。
拷問は幼いころから受けてきた大魔協の『教え』より酷ではなかったが、毎日続けられて、ろくに食料も与えられず、ただの憂さ晴らしにされていると思う日もよくあった。
回復系統の魔法に精通していなかったリュカオンは、体力の消耗が激しく、数ヶ月に及ぶ拷問で次第に衰弱していった。
「あ、今度こそ死ぬ……って思った。1日の感覚もわからなくなったし、自分が生きてるのかすらわからなくなった。
だから、ルフトには感謝してるんだ」
リュカオンは少しだけ笑みをこぼした。
体が衰弱していることは関係ないと言われて、昼は冷水で起こされて魔法を使わされる日々を過ごしていたリュカオンは、限界がやってきたようだった。
収監されている場所から労働する場所まで歩く体力がなく、足がもつれて手もつかずに転んでしまったのだ。
何度も足先で蹴られたが、起き上がることもできず、不潔なリュカオンに触りたくない監視員たちがリュカオンが立つのを待っていた。
『この国は罪人の管理がひどいね』
そう言って現れたルフトはその場にいる中で最も豪勢な格好をしていた。
リュカオンはおぼろげな記憶の中で、何も聞こえないが、ルフトから差し伸べられた手が見えて、すがるようにその手を取ったのだ。
次に気がついたときは、薄汚くて衛生面が最悪なあの収監されていたところではなく、煌びやかな天蓋つきベッドの上だった。
『あ、目が覚めたんだね』
水を持ってきたルフトはトーガを身にまとっていた。
手を取ってくれたリュカオンをルフトの出身国であるレクトアまで連れてきたと説明された。
「そこで知ったんだけど、ルフトはレクトアの王族だったんだ」
「…………えっ!?」
あまりに急展開でクレアも驚いているが、当時のリュカオンはもっと驚いていた。
王族とはいえ、ルフトは下から数えたほうが早いくらい下級の側妃から生まれた第一王子で、継承順位もなく放任されていた。
リュカオンと出会ったあの日は、危険な外交を終えた帰りだったらしい。
しかし、リュカオンは権力者に近づくといいことはないと、身をもって体感していたからこそ、一刻もはやく逃げ出したかった。
だが、ルフトは許可しなかった。
脱出を試みて何度も捕まり、部屋に戻されるのを繰り返して、10日ほどで降参したのだ。
そうして、ルフトと毎日お茶を飲む日々が始まった。
ルフトは外交を受け持っている分、西方の情勢に詳しかった。リュカオンが自分のことを話してくれるまでは、どこの国で何が起きているのかを常に教えてくれた。
リュカオンはそういった話は自分に関係はないと聞く耳を持たなかったが、ずっと話していた。
それに、魔法に長けていた。扱いも教え方も才能があり、指南してもらおうとやってくる王子たちと仲良く過ごしていた。
日々を過ごすうちに打ち解けて、リュカオンが自分の話をしだすと、ルフトは満面の笑みを浮かべた。
『そっか。頑張ってきたんだね』
それだけ言って、逃げ出すことを許さなかったルフトが、リュカオンを応援しはじめた。
まんまと絆されたリュカオンは、もう抜け出せなかった。
「最初は抜け出したかったけど、もう駄目だったな。あのお人よしといるのが楽しくなったんだ。
長くは続かなかったけど」
お互いがお互いを許して、信頼しあう関係になったリュカオンとルフトは、ついに選択を迫られた。
何気ないお茶の時間に、侍従が突然やってきた。
『殿下、陛下が────』
ルフトはその言葉だけで部屋を飛び出して、レクトア王の寝室に入った。
他の王族も寝室にいて、皆が涙を流していた。
その中心にいるレクトア王は、息をしていなかった。
国葬が終わると、継承権争いが激化した。
早く決めないとトランスヴァールに飲み込まれてしまうからだった。
継承順位すら与えられていなかったルフトも、魔法の扱いと第一王子という観点から一部の貴族に推されてしまい、巻き込まれた。
日夜襲いかかる暗殺の危機に、次第に元気をなくしていくルフトにリュカオンは胸が締め付けられた。
(………今度は、僕が)
以前あの地獄から救い出してくれたように、今度は自分が救う番だと決意した瞬間だった。
『ルフト、僕と一緒にここを出よう』
ある夜、ルフトに提案したリュカオンの表情は固く、揺るがないようだった。
ルフトはどれだけ辛くても、笑顔を絶やさなかったが、その提案のときは初めて目を潤ませた。
が、すぐに笑顔に戻った。
『急にどうしたんだ?出て行きたいなら、僕に言わずに行けばいいじゃないか…………。
僕が一緒だと、君も大変だよ』
わざと突き放すように話すルフトが嫌で、思わずリュカオンは声を荒げた。
『大変だとしても……ルフトと一緒にいられるなら大変なんかじゃない。
この手を取って。僕と逃げ切ろう』
『……………っ、うん』
ルフトは涙を流してリュカオンの手をとり、その日のうちに2人はレクトアを後にした。
「レクトアは海に面していたから、船に乗り込んで南に抜けたんだ。闇魔法でできるだけ気づかれないようにしつつ、ね。
それからは上手くいって……南を抜けて中央に行こうとしたんだ」
何気なくいつものように毎日お茶を一緒に飲んで、お金を稼いで移動をする日々を続けていた。
料理もそのときに教えてもらった。
ある日、ルフトは朝刊の見出しを見てその場に座り込んだ。
見出しには「レクトアの王位継承戦が終了」とあった。
多くの犠牲を出したレクトアの王位継承戦は、結局血筋や人望から、皇后の息子である第3王子が即位したと言うことだった。
誰との争いも望んでおらず、兄弟皆を平等に応援していたルフトは涙を流して即位を祝った。
その姿にリュカオンも喜びを分かち合った。
とても、多幸感に包まれていた。
だからなのか、天罰が下った。
南から中央へ渡る船が難破したのだ。
水が船内に入ってきて、絶体絶命だった。
リュカオンは死を覚悟しながら、ルフトのそばを離れなかった。
そうして、高波に飲まれて、意識を失った。
次に目を覚ましたときにはルフトはそばにおらず、リュカオンの身に絶望が襲いかかってきた。
「それで、ルフトを捜しながらいろんなところを放浪として、大魔協の話を耳にすることが増えて………」
北上しながら得たのは大魔協の話ばかりだった。
ルフトと過ごしていた日々の中で忘れかけていた、悪質な組織の記憶が蘇った。
大魔協を思い出しては怒りが込み上げ、ルフトが見つからないことにもどかしさを覚え続けて、擦り切れていった。
怒りが復讐心に変わるのに時間はかからなかった。
そうしてリュカオンが大魔協に憎悪を膨らませていったある日、連絡網の水晶が光った。
突然のことで驚きつつもリュカオンが表示すると、映し出されたモニターには見慣れた顔があった。
『あ…………やっと繋がった』
『ルフト………………?』
連絡してきたのはルフトだった。
最後、船が難破してはぐれてから半年は経とうとしていた。
ルフトは作り笑いではなくしっかりと笑ってくれた。
『よかった、連絡して』
リュカオンもまたルフトにつられて笑った。
ルフトは難破してはぐれてからすぐに今のパーティであるヘレンたちと行動を共にしていたらしく、特段困ることなく過ごせているようだった。
『魔法ができて嬉しかったのは弟に教えてたころ以来だよ』
本当に嬉しそうに語るルフトを見て、リュカオンは安心した。
継承権争いが始まる以前の表情を取り戻していたからだ。
(もう関わらないほうがいい)
ルフトとの再会はリュカオンにそう思わせた。
いまだにリュカオンは指名手配されている。
それに、これからリュカオンがすることは復讐だ。
弱みを握られて報復されたら。
ルフトが何か繋がっているとばれてしまったら。
また戻ってきた笑顔を奪うことになる。
『また連絡するよ。そっちからも連絡出してよ』
『……………うん、気が向いたら?』
『絶対!じゃあね』
プツッと音がして切れてから、リュカオンは水晶に厚めの布をかけて連絡を取ろうとしなかった。
「一ヶ月くらい前に寝ぼけて取っちゃったのがよかったのか悪かったのか…………」
以降、北上を進めて、次に狙われる可能性があるツィーシャに拠点を置いて2年ほどだった。
連絡を取ろうともしなかったリュカオンのもとに、ある日、連絡が届いた。
連日徹夜で大魔協について調べていたリュカオンは、頭が働いておらず、寝ぼけてその連絡を取ってしまったのだ。
『どうして連絡してくれなかったんだ!』
リュカオンはルフトの怒りに満ちた声で、一気に目が覚めた。
まるで頬を叩かれたように衝撃を受けて、驚きながらルフトに謝った。
『ごめん……。いろいろと調べものをしていて』
『2年間、僕に連絡できないくらい調べものをしていたんだね?』
正論にただ目を逸らすしかないリュカオンを見てため息をついたルフトは、『じゃあ手短に話すけど』と前置きをした。
『君が話していた子………「銀の魔女」と出会ったよ。君と会いたそうにしていた』
『……………えっ、今なんて』
『それじゃあ、調べもの頑張って』
プツッと切れて、聞き出したいことが聞けないまま連絡が途切れた。
「そこからは知ってると思うけど、ルフトが連絡をくれて、『シャルア』と連絡が取れてこうして今まであった話をしてるってわけ」
最後は雑に要約して話を締めくくると、クレアはリュカオンを見て笑った。
「ルフトさんに感謝、だね」
「………まあそうなるのかな」
外の猛吹雪の寒さに反して、2人はお互いを知って心にじんわりと何かが染み込んだ。
「…………もう少し集めたらそろそろ、かな」
不穏な出来事の足音に気づかないくらいに。
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