追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

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1章 商業都市フレンティア

ぼや騒ぎ

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火事で水を求めている声がするあたりでは確かに布でできた店の屋根に火がついている。

「ゼルナ」
「はい」

ハースの呼びかけに応じてゼルナが「ウォーターボール」と言った。
その一言で、火事になっていた店の上に大きな水の球体がふよふよと現れて、割れるとバケツをひっくり返したような水量が落ちた。

ゼルナの魔法で一瞬にして火事が落ち着き、俺たちはすぐに近くへ駆け寄る。

店主と思しき赤髪の男がゼルナにペコペコと頭を下げて何度も感謝している。
気弱そうな店主が先ほどの大声を出したとは思えないと不思議に感じていると、少し離れたところで誰かが唸る声が聞こえた。

見ると、短い赤髪の少年がフードを目深にかぶったローブを着た者を取り押さえていた。

「くそっ、離せっ!!」
「誰か!!なんか縛れるやつ!」

さっき声の主はあの男の子だったのか。

俺はウエストポーチから警備員全員に配給される、伸縮する縄の魔道具を持ち、ローブの奴を縛り上げて電灯にくくりつけた。

少年は俺に深々と頭を下げてお礼を言う。
店主とは親子なのかもしれない。

少年に話を聞くと、店番をしているとき、店の後ろに伸びる裏道から音がして振り返ると、このローブが火をつけて逃げていくのを見てとっさに助けを求めたようだ。

できた子供だ。俺がこのくらいのときは人に謝ることすらできなかった。
少年に関心していると、電灯にくくりつけていたローブが暴れ始めた。

「お前らは知らないんだッ!!私が善良な行いをしたことが分かっていないんだ!残念だったなァ!!お前らは死ぬ!!ははははははははっ!!!!!」

狂気に満ちていた。
暴れたことでフードが脱げて、男だとわかる。
目が左右違う方向を向き、口と鼻からは涎と鼻水が絶えず流れ出している。
周りは男の様子に息を呑んでいる。

「………話は警備舎でしろ。今から連れてってやる」

ハースが眉間を押さえながら男を警備舎に送ろうと歩み寄った瞬間、

ブチィッ

何か、繊維のようなものがちぎれるような音が聞こえると、男が動き出した。

魔道具を破った。
あれは支給された魔道具で破壊防止の術が張ってあるはずなのに、破られた____?

驚いているのは俺だけじゃなかった。
ハースもゼルナも、性質を知ってるからこそ驚き、止まってしまった。

いや、違う。


動きたくても動けないと言った方が正しい。


俺たちが動きを止めたことに男がにたりと笑い、我に返る。
まずい、逃げられる____!

俺が取り押さえようと動きだしたのとほぼ同時に、男は何故か地面に両膝をつき、手の甲にもう一方の手を重ね、体の前で四角を作るように腕を突き出した。

「あぁ……!やはりあの方は間違っていなかったッ!!あぁ、我が救済者、オメルタ、ガイア!!あなた様に全能を………っ!………ぐはっ」

男は意味がわからない言葉を叫び、最後に血を吐いて息絶えた。



何が起きたか分からなかった。

俺が立ち尽くしていると、ゼルナが自らのローブを脱いで男が覆われるように被せた。

「『ラトゥスの胃袋』で食べ物が腐ってしまったようです。穢れが移ると悪いですし、今日は酒場で飲み明かしてはいかがでしょうか」

ゼルナの言葉を聞いて、周りの商人はすぐに察して明るい声で「今日は店じまいだ!お前ら飲むぞー!」と言って散っていく。

俺の代わりに言ってくれたのだ。
ゼルナはハースに指示を仰ぎ、男をどうしようか話している。
そして、俺はゼルナがローブを2枚重ねて着ていたことを知った。
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