追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

文字の大きさ
25 / 119
1章 商業都市フレンティア

誘拐(ルークside)

しおりを挟む
「……!……………ク!ルーク!!」

俺は誰かに呼ばれてばちっと目を覚ました。

一番最初に視界に入ってきたのは、リリーだった。
リリーは俺が目を覚ましたのを確認して俺に飛びついてくる。

リリーを抱き止めようと体を動かすと、ジャラジャラと音がした。
両足手首に鎖がつけられていた。
だが、後ろ手に繋がれているわけではないため、行動が制限されているだけだ。

リリーにはつけられていないみたいだ。

時間がわからない。
暗いということは夜なのか。
あれからどれだけ経って、ここは一体どこなのか。

部屋を確認しようとしたとき、突然扉が開いて人が入ってきた。


「おや、起きましたか」
「……っ!」

俺は咄嗟にリリーを守って身構える。
声からして男だろうか。
フードを目深に被った男は乾いた笑いをして、近くの木箱に腰掛けた。

「やだなぁ、そんなに警戒されたら悲しいですよ」
「………お前が手紙を出したのか」
「あぁ、気づきました?」

男は飄々としている。
まるで捕まるはずがないと分かっているかのような口ぶりで話してくる。
依然として警戒している俺を見ながら、男は話を続ける。


「本当はあなたに『銀の魔女』を連れてきてもらいたかったのですが……。洗脳の効きが悪かったので、連れてきたほうが早いと思いまして」
「洗脳………?」
「はい!………おや、しかしその反応だと洗脳だと分かっていなかったようですね………。
何だか、それはそれで癪ですね」

男はつまらなさそうな声で答えると息を吐いて、扉を開けた。
出ていってしまう。
何か、情報を得なければ_____!

「待て!わざわざ俺を攫った理由を教えろ!!」

俺が男に向かって叫ぶように問うと、男はぴくりと扉にかけていた手を震わせた。

何だ……?急に空気が変わった。
何かが肌に刺さっているくらいに痛い空気。

俺はリリーを抱きしめる力を強くする。
男は大きく息を吐くと、俺の方を向いた。

「私はエサとして、です。あなたがどんな状態でもよかったので……」

男はそれだけ言い残して部屋を後にした。

『私は』と言った。
つまり、男には協力者がいるのかもしれない。

俺は男の言葉を考えながら部屋を見渡す。
窓はなくて一面が暗くてよく見えない。
男が出入りしていた扉から俺のいる場所までは離れていた。
声の響き的にもこの部屋は結構広い。
俺は自分の鎖がどこまで伸びるのかを確かめるために歩いてみる。

「くそ………、嫌らしい長さにしやがって」

歩いてみたところ、鎖は扉と反対側の壁の近くから伸びていて、俺が扉に手を伸ばせない長さが限界だと知った。
歩いてみて、やはりこの部屋は広い。
至る所に積まれた木箱や何かが書かれている紙が散乱していて、歩いている途中何度か当たってしまうくらいには散らかっている。

そして、この部屋はあの扉以外の出口がない。

リリーを逃すのもあそこしかないだろう。

俺は鎖のある壁際に寄って、俺に抱かれているリリーを見る。
リリーは自分の置かれている状況がわかっているのだろうか。

すると、リリーが俺の服を引っ張った。

「あのね、リリーね、ちょうちょさん追いかけてたら、まいごになっちゃったの。それでたくさん泣いてたらね、右のほっぺにきずのあるおじさんが、たすけてくれたの。
『おともだちをつれてくる』って」
「右のほっぺに傷……」

俺はそれだけでテッドのことだとすぐに分かった。
つまり、あの男とテッドは共犯ということだ。

面倒なことになったとため息をつきそうになって、リリーいることを思い出してやめる。

「リリーは怖いことされなかったか?」
「……?うん!リリーね、さっきの人にまほうを見せてもらったんだよ!」
「へぇ……どんな魔法を見たんだ?」
「さいしょはね、いろんな色のひかりがうさぎさんとかねこさんになって、ふわふわしてるのを見せてもらって……」

俺はリリーの話を聞いて、見せてもらった魔法を教えてもらう。
形を変えた光、小さな花火、息ができる水の球体……。
聞いた限りでは、あの男は3属性以上は同等レベルで使える魔法使いのようだ。

ゼルナやクレアも複数属性が同等レベルで使えるから当たり前に見えるが、普通は2属性が同等で使えればいいほうだ。
ひとつの属性に特化することが当たり前だ。

俺の周りにいる魔法使いは全員常識はずれなやつらばかりだと思い知らされる。

厄介なことになった。
常識はずれの魔法使いと屈強なテッド。

1人でリリーを逃すまで相手できるか?

俺は魔法が使えるわけでもないし、テッドを凌ぐほどの強さもない。

俺に魔法が使えたら。
俺に強さがあったら。
今この状況を打破できるかもしれないのに。

俺は何ひとつ持っていない。






俺が自分の不甲斐なさに歯を食いしばっていると、また扉が開いた。















「テッド………………!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”  人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!

職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます! ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。 この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。 戦闘力ゼロ。 「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」 親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。 「感謝するぜ、囮として」 嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。 そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。 「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」 情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。 かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。 見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...