29 / 119
1章 商業都市フレンティア
追悼 (ゼルナside)
しおりを挟む
「おぉーい!どこだー!?」
クレアさんの魔力を追って北の森に来た僕とハース隊長は、クレアさんの座標が止まったところを探して大声を出して捜索していた。
僕の探索魔法はそこまで性能がよくないため、ここからはちまちま探さないといけない。
追いかけている途中、北の森に入る直前あたりで、僕たちの目の前にそびえる禍々しい北の森が、黄金色の光に包まれた。
あまりにも膨大な魔力に圧倒された。
大陸中の魔法使いの序列でも、最上位に君臨するほどの実力だった。
僕は恐ろしいくらいの魔力にこの世の終わりを感じていたけれど、隣で見ていたハース隊長は黄金色の光にうっとりと見惚れていた。
魅了する美しさも持ち合わせているところも恐ろしく感じてしまう。
僕の予想が間違っていなければ、あれはクレアさんの魔力だった。
だから、北の森にいるはずなんだけど……。
「あっ」
大声をあげながら歩いていたハース隊長が、急に止まって僕は俯いていたせいで、ハース隊長の背中に額をぶつけた。
鍛えられているせいでぶつかると痛いんだけど……。
僕が額をさすりながらハース隊長の視線の先を確認すると、そこには倒れた黒髪の誰かと、それを立って見つめる、銀髪を高い場所で結んだクレアさんがいた。
近づこうと思えば近づける距離なのに、クレアさんが痛みに耐えるように唇を噛み締めているのを見て、体が動かなかった。
ハース隊長も僕と同じように最初はその場を動けないでいたが、痺れを切らしたようでクレアさんに近寄った。
「クレア、大丈夫か」
ハース隊長に声をかけられて、ぴくりと肩を揺らしたクレアさんは、ハース隊長に顔を向けた。
僕は、多分ハース隊長も、この瞬間に、
(あぁ……失言した)
と思った。
ハース隊長を見るクレアさんは、これまで見てきた優しい顔じゃなくて、お前は何を言っているんだ?と心底絶望したような顔で見てきた。
クレアさんの口がはく、と動いて、何か言おうとしたのをやめた気がした。
クレアさんはパッと顔を逸らして、横たわっている黒髪の少年のそばに座り、髪を撫でた。
そして、髪を撫でている手が少しずつ、顔から胸に動いた。
心臓のあたりで手を止めて、拍動を感じたいというように、クレアさんは耳も近づけた。
……僕から見てもわかる。
この少年はもう手遅れだ。
クレアさんもやっとの思いで、少年の死を受け入れた。
クレアさんが地面に手を置くと、少年を包むように魔法陣が現れた。
魔法陣が黄金色に染まると、魔法陣は本当に少年を包んでしまった。
黄金色の光を発する魔力の繭が、少年を閉じ込めた。
『帰せ』
何が起こったかわからないまま、クレアさんの行う魔法を見守った。
クレアさんの言葉で、光の繭が綺麗な球体となって空へ浮かんでいき、最後は散り散りになって森の各地にかけらが落ちた。
光のかけらは雪のように溶けていって、少年と共に跡形もなく消えてしまった。
同胞や友を悼むとき、魔法使いは相手の体を魔法を使って自然に戻す。
すべての属性にこの魔法は一般魔法として存在するが、光魔法の追悼は初めて見た。
僕たちがすっかり黙っていると、クレアさんはこちらを向いて笑顔を見せた。
「帰りましょう」
その笑顔は、逆境を生き延びようと必死だった。
クレアさんの魔力を追って北の森に来た僕とハース隊長は、クレアさんの座標が止まったところを探して大声を出して捜索していた。
僕の探索魔法はそこまで性能がよくないため、ここからはちまちま探さないといけない。
追いかけている途中、北の森に入る直前あたりで、僕たちの目の前にそびえる禍々しい北の森が、黄金色の光に包まれた。
あまりにも膨大な魔力に圧倒された。
大陸中の魔法使いの序列でも、最上位に君臨するほどの実力だった。
僕は恐ろしいくらいの魔力にこの世の終わりを感じていたけれど、隣で見ていたハース隊長は黄金色の光にうっとりと見惚れていた。
魅了する美しさも持ち合わせているところも恐ろしく感じてしまう。
僕の予想が間違っていなければ、あれはクレアさんの魔力だった。
だから、北の森にいるはずなんだけど……。
「あっ」
大声をあげながら歩いていたハース隊長が、急に止まって僕は俯いていたせいで、ハース隊長の背中に額をぶつけた。
鍛えられているせいでぶつかると痛いんだけど……。
僕が額をさすりながらハース隊長の視線の先を確認すると、そこには倒れた黒髪の誰かと、それを立って見つめる、銀髪を高い場所で結んだクレアさんがいた。
近づこうと思えば近づける距離なのに、クレアさんが痛みに耐えるように唇を噛み締めているのを見て、体が動かなかった。
ハース隊長も僕と同じように最初はその場を動けないでいたが、痺れを切らしたようでクレアさんに近寄った。
「クレア、大丈夫か」
ハース隊長に声をかけられて、ぴくりと肩を揺らしたクレアさんは、ハース隊長に顔を向けた。
僕は、多分ハース隊長も、この瞬間に、
(あぁ……失言した)
と思った。
ハース隊長を見るクレアさんは、これまで見てきた優しい顔じゃなくて、お前は何を言っているんだ?と心底絶望したような顔で見てきた。
クレアさんの口がはく、と動いて、何か言おうとしたのをやめた気がした。
クレアさんはパッと顔を逸らして、横たわっている黒髪の少年のそばに座り、髪を撫でた。
そして、髪を撫でている手が少しずつ、顔から胸に動いた。
心臓のあたりで手を止めて、拍動を感じたいというように、クレアさんは耳も近づけた。
……僕から見てもわかる。
この少年はもう手遅れだ。
クレアさんもやっとの思いで、少年の死を受け入れた。
クレアさんが地面に手を置くと、少年を包むように魔法陣が現れた。
魔法陣が黄金色に染まると、魔法陣は本当に少年を包んでしまった。
黄金色の光を発する魔力の繭が、少年を閉じ込めた。
『帰せ』
何が起こったかわからないまま、クレアさんの行う魔法を見守った。
クレアさんの言葉で、光の繭が綺麗な球体となって空へ浮かんでいき、最後は散り散りになって森の各地にかけらが落ちた。
光のかけらは雪のように溶けていって、少年と共に跡形もなく消えてしまった。
同胞や友を悼むとき、魔法使いは相手の体を魔法を使って自然に戻す。
すべての属性にこの魔法は一般魔法として存在するが、光魔法の追悼は初めて見た。
僕たちがすっかり黙っていると、クレアさんはこちらを向いて笑顔を見せた。
「帰りましょう」
その笑顔は、逆境を生き延びようと必死だった。
11
あなたにおすすめの小説
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります
チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます!
ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。
この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。
戦闘力ゼロ。
「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」
親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。
「感謝するぜ、囮として」
嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。
そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。
「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」
情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。
かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。
見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる