追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

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1章 商業都市フレンティア

警備舎まで (ゼルナside)

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「えっ、ルークは結構前にもう見つけたのか!?」
「はい。怪我がひどかったので警備舎まで独断で転送しましたが……」
「あぁ、いや、謝らないでくれ。最善の選択だ」

北の森での追悼を終えて、僕たちは警備舎(2キロくらい先)に向かって歩いていた。
本当は魔法で移動したほうがいいけれど、伝達魔法でヒルゼ様に事情を報告したら、「ゆっくり帰ってこい」と言ってくださった。

セイエ様もいい方だけど、職場の緩さとしてはヒルゼ様の方が格段に緩くて嬉しい………。

まあ、僕とハース隊長に関しては、ただクレアさんを追いかけて走っただけだから、何も仕事をしていないのだけど。
厚意には甘えられるときに甘えなければいけない。


そういうわけで、本当はルーク隊長を保護するつもりが、クレアさんが誘拐された子供も一緒にして警備舎まで送ってくれたから、本当にやることがなくなってしまった。

ヒルゼ様に報告したとき、向こうでも、逃げる途中だったメイウェル伯爵を捕縛したと言われた。
今ごろ事情聴取でもやっているだろう。


「そういえば、クレアはあの変な手紙を見てまっすぐここまで飛んで行ったわけだが、何か知っていたのか?」


道中、ハース隊長が気になっていたことをクレアさんに聞いた。
実は僕も気になっていた。

どこかへ来いとも書いていなかったあの手紙で、北の森を引き当てたのは単なる偶然なのか、と気になっていた。

ハース隊長の質問に、クレアさんは俯いた。
何かを思い出しているみたいだった。
そうして、迷って迷って、決めたように口を開いた。


「………あの手紙を送った魔法使いの魔力を辿ったんですよ」

「そうか。そういえば、ゼルナもクレアの魔力を追って探索魔法を使っていたもんな」
「あ……そう、ですね」


クレアさんが言っていることはきっと正しい。
けれど、半分正しくない、とわかってしまった。

追える魔力は自分が知っている魔力だけだ。
たった1回で魔力は正確にわからない。


つまり、あの手紙は、クレアさんが魔力を知っているくらい仲のいい魔法使いが出したんだろう。

多分クレアさんも気づいている。
魔法を使わないハース隊長は欺けても、魔法使いの僕は騙せないから。


だから、今懇願するような目で見てくるんだろうな。
僕はクレアさんに向かって、ふっと笑って答えた。





それからずっと警備舎に向かう間は、ハース隊長が気を遣って明るい雰囲気が続いていた。
好きな食べ物とか、行ってみたい国とか。
ローブさえあれば何をしても無敵だと思っている、なんて言われて、僕はクレアさんの手を泣きながら握った。
やっぱり、魔法使いは最高だ。





放射線状に伸びる道の先に、フレンティアの中央にある噴水が見えてきた。
警備舎もその後ろに見えてきて、僕たちは長いこと楽しい話をしていたせいで、まだ事情聴取をしているかもしれないと考えていなかった。


僕たちが警備舎のほぼ目の前まで来た瞬間、


バァンッ!!


勢いよく警備舎の扉が開いて、ぼろぼろになった男がへたり込んだ。
水色の短い髪をボサボサにした中肉中背の男だ。
右頬が腫れている。
ヒルゼ様の報告を聞く限り、この男がメイウェル伯爵だろう。

腰が抜けたのか、へたり込んだまま動けないでいるメイウェル伯爵の首根っこを、ヒルゼ様が乱暴に掴んで警備舎へまた入れた。

僕たちは顔を見合わせて後について入った。



中に入ると、奥の方からヒルゼ様が大声で尋問する声が聞こえるので、今行ったら厄介だと思って、エントランスにいる警備員に話を聞いた。


僕たちがクレアさんを追いかけている間、ヒルゼ様率いる特別部隊は、城門近くを警備していた。

一度切り上げようとしたころ、怪しい動きをするみすぼらしい格好の人が2人いて捕まえたところ、メイウェル伯爵とアメリア伯爵令嬢だったらしい。

警備が手薄になる交代の時間を狙って城門を抜けようとしたのだろうが、今日の城門近くの警備担当が特別部隊だったとは思ってもいなかったようだ。


そうして、引きずる形で連れてきたメイウェル伯爵は、事情聴取をしても
「私は知らない」「私はやっていない」「嵌められた」としか言わない。



いや、「嵌められた」はほぼ言ってるんじゃ……。



そして、アメリア令嬢は「全知全能」と言って目の焦点が合わないらしい。


かれこれ二刻近くこれが続いているせいで、ヒルゼ様も限界みたいだ。


証拠人になりそうなルーク隊長は怪我が酷く、誘拐された子供もショックのせいなのか、熱が出てどちらも寝込んでいるため、難航している。




話を聞き終えると、クレアさんが奥の方へ急に歩き出した。

ヒルゼ様のもとへ行くみたいだ。

皆で止めようとしたけれど、何か策があるならそうしてほしいという気持ちもあって、興味本位で後ろをついて行った。
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