追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

文字の大きさ
31 / 119
1章 商業都市フレンティア

証拠 (ゼルナside)

しおりを挟む
「だからッ!私はやっていないと何度も言っているだろう!!」
「うるせぇっ!!お前がテッド逃がしたのは知ってんだぞ!」
「どこに証拠がある!?他人の口から聞いた話を鵜呑みにして私を責めているのか!?」



コツ、コツ



互いに叫びあっている警備舎の取り調べ室に続く廊下で、クレアさんの靴音が響いた。
不意に取り調べ室の扉が開いて、ヒルゼ様がこちらを見て目を見開いた。

「ク、クレア?お前さんどうしてここに」

さっきまで大声を出して怒っていたとは思えないくらいにヒルゼ様が狼狽まくっている。
いつも子供に怖がられているからだろうな。

クレアさんは表情を変えることなく、ヒルゼ様の横を通り過ぎて取り調べ室に入った。


僕たちも入ろうとしたが、ヒルゼ様がため息をついて閉めたので、外(中の様子が見えるように窓がついている)から見ることになった。






大声を出して疲れたのか、メイウェル伯爵は肩で息をして下を向いていた。
クレアさんはローブの中から、手に収まるくらいの水晶玉を机の上に


ダァンッ!


と、音を立てて置いた。
急に大きな音がして顔を上げたメイウェル伯爵は、初めてクレアさんのことを認識した。
だが、何が起こるのかわかっていないようだったから、認識しているかも怪しい。


クレアさんはメイウェル伯爵に向かって笑顔を向けて口を開いた。

「テッドを逃がした証拠がないせいで、納得がいっていないみたいですね。こちらはいかがですか?」

そういって、クレアさんは水晶玉をトン、と押した。


ザ……ザザ………


その瞬間、取り調べ室にスクリーンに映し出したような映像が流れ出した。
ところどころ砂嵐が流れている。










「ほ、本当にやるのか?鎖もついているし十分じゃないか!」

中年近い声が流れ出した。
少しずつ砂嵐が消えていき、誰かの視点のように映像が動く。

水色の短い髪を小綺麗になでつけた頭の、中肉中背の弱々しい男、メイウェル伯爵がテッドの腕を握っている。

テッドが煩わしそうにメイウェル伯爵の手を払い落とすと、メイウェル伯爵は小さな悲鳴をあげながら後ずさった。

「俺のことを解放したのはアンタだろ?
今さら何を怖がってんだよ」
「わ、私は、アメリアに頼まれてっ、」
「でも、俺を利用する目的もあっただろ?」
「そ、それは………」

メイウェル伯爵の体中から汗が流れているのが、遠くから見るこの視点からでもわかる。



今の会話を聞く限り、アメリア令嬢の頼み以外にも理由があって、メイウェル伯爵はテッドを解放したことがわかる。


視点が下を向く。何か考えているのだろうか。


バキィッ!!



少しして、何かが殴られる音が聞こえて視点が上を向く。
メイウェル伯爵が右頬を押さえながらうずくまっていのを見るに、テッドが殴ったようだ。


「俺に逆らうな!そしたら俺もお前に協力してやるよ」
「ひぃ………」

メイウェル伯爵は腰を抜かしている自分の足を奮い立たせて逃げていってしまった。


テッドはメイウェル伯爵を殴ったと思われる右腕を回しながらこちらを向いた。

「邪魔もいなくなったし……楽しませてもらおうか。
お前に捕まえられてから、お前にはずっとムカついてたんだよ………」





ブツッ





映像はそこで途端に切れた。
僕たちがポカンと見つめている中で、メイウェル伯爵の顔だけひどく青ざめていた。


「ち、違う……これは、そう!これは嘘だ!
私を陥れるために手の込んだ映像を作ったんだ!
それを証拠と言って見せているだけだ!!
こんな牢屋を私は知らない!!!」


必死に弁解するメイウェル伯爵に未だに困惑していると、クレアさんが悪そうに口角を上げた。


「牢屋、ですか?
私にはどこからどう見ても物置にしか見えませんが………」
「牢屋に決まっているだろう!!扉に鉄格子があるのが見えないのか!?」


怒り心頭のメイウェル伯爵をなだめながら、クレアさんは丁寧に聞き返す。


「鉄格子………すみません。暗いからなのか、私にはこの映像から鉄格子は見えないです。どこにあるか教えていただいても?」


クレアさんのお願いに、これは冤罪だと訴えられるチャンスだと思ったのか、メイウェル伯爵は余裕ありげな顔で映像を流させた。


砂嵐が流れる。



「ほ、本当にやるのか?鎖もついているし十分じゃないか!」

中年近い声が流れ出した。
少しずつ砂嵐が消えていき、誰かの視点のように映像が動く。

さっきと同じように映像が流れ、メイウェル伯爵がテッドの腕を握っている。



メイウェル伯爵は「止めろ!」と言って、クレアさんに映像を止めさせて扉を指差した。

「ほら、見えるだろう!?この扉の外側に鉄格子がついている!」

そう言っているメイウェル伯爵を信じて扉を見てみるが、この映像では『扉の外側が見えない』。
扉が外開きだったからだ。
クレアさんが首を傾げたのを見て、メイウェル伯爵はやっと、映像を凝視した。


そして、気づいた。


「うーん……やっぱりおかしいですね。外側なんて見えないのに、どうして鉄格子がついていると分かったのですか?」
「そ、それは………!」


しどろもどろになるメイウェル伯爵。
クレアさんは笑顔で話を続ける。


「これは、北の森にあった、とある建物に誘拐されたルークさんの『記憶』です。あのとき取っておいて正解でした。

さて、見えてもいない部屋の構造を言ったこともそうですが………偶然にしては珍しく、貴方は今右の頬を怪我しています。
───誰かに殴られたように

本当はここに来たことがあって、テッドに殴られたんじゃないんですか?



真実を話してください」



取り調べ室一帯を包むように一瞬、魔法陣が現れたのを僕は見逃さなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”  人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!

職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます! ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。 この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。 戦闘力ゼロ。 「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」 親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。 「感謝するぜ、囮として」 嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。 そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。 「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」 情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。 かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。 見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

処理中です...