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1章 商業都市フレンティア
誘導 (ゼルナside)
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クレアさんの言葉を聞いて、メイウェル伯爵はガタッ、と椅子から立ち上がってクレアさんを睨んだ。
「なっ……真実だと!?
今話していることが真実、あ"ぁ!!」
しかし、メイウェル伯爵の威勢の良さはすぐになくなり、電撃を受けたようにその場にうずくまった。
クレアさんは手を出していない。
さっきの魔法陣、真実以外は電撃を与えるように仕組んでいたのかもしれない。
「反抗的ですね。大人しく答えてください」
「う、ぁ……」
クレアさんから笑顔が消え、熱のこもっていない瞳を突き刺すようにメイウェル伯爵へ向けた。
メイウェル伯爵はブルブル震えている。
取り調べ室の壁に霜が降りている。
クレアさんは今相当怒っている。
一向に黙ったままのメイウェル伯爵に、クレアさんは冷たく問いかける。
「言えばここから出られるのに、何を黙る必要があるのですか?」
「そ、それは………」
目をキョロキョロとさせて口をモゴモゴさせるメイウェル伯爵は、正に親に悪いことを隠そうと必死な子供だ。
中年にもなって子供のような仕草に、クレアさんは大きくため息をついた。
「早く言ったほうが娘さんのためになりますよ」
「……!?それは、どういうことだっ!」
娘の話を出した瞬間にすぐに顔を上げたのを見るに、メイウェル伯爵が娘のアメリア令嬢を溺愛しているのは本当みたいだ。
たしかに、娘さんのためになるとはどういうことだろう。
アメリア令嬢は今、「全知全能」としか言えない状態だった気がするけど……。
クレアさんはメイウェル伯爵にまた笑顔を見せて口を開く。
「娘さん、今は特定の言葉しか言っていないみたいですね。
私なら、娘さんを元に戻すことができるかもしれませんが……早くしないと治せないかもしれないです」
「む、娘が治るのかっ!?」
「………はい、治そうと思えば」
目が笑っていない。
あれだけ冷たい目で見られているのに、メイウェル伯爵の頭の中はアメリア令嬢でいっぱいみたいだ。
突然、クレアさんの足にしがみついた。
ヒルゼ様がすぐに怒鳴って引き剥がしたけど、メイウェル伯爵はまたすがりつこうとクレアさんを見ている。
「頼むっ!娘を、アメリアを助けてくれ!どんな娘でもいいが、健康になるなら早く治してくれ!」
メイウェル伯爵の悲痛な叫びが取り調べ室に響いた次の瞬間、メイウェル伯爵の体がまた電撃を受けたように跳ねて床に倒れ込んだ。
僕の推測が合っていれば、あの電撃は、真実を話さなかったから与えられたものだ。
つまり、メイウェル伯爵はさっき嘘をついたことになる。
クレアさんはメイウェル伯爵を見下ろした。
「思い上がるな。何の代償もなしに得られるものなんてない」
突然敬語を取っ払った口調に、皆が驚いていた。
さすがにもう取り繕えないくらい怒っているのかもしれない。
でも、あの言い方は、自分に言っているようにも聞こえたのは僕だけなのだろうか。
「……っ、じゃあ、何でもやる!何でもやるから!アメリアを治してくれ!!」
「何でも、と言いました?」
「?あぁ、言った!何でもやる!早く治してくれ!」
自分の言っていることの重大さが分かっていないみたいだ。
でも、これで逃げられないだろう。
クレアさんはヒルゼ様よりも取り調べが向いているかもしれない。
クレアさんはメイウェル伯爵の目を見る。
「それでは、今回の事件に関して、真実を話してください」
「……!いや、それは、」
「治さないんですか?」
まだ逃げようとするメイウェル伯爵を、射抜くような視線で黙らせたクレアさんは、白状させることに成功した。
明らかになったのは次のことだった。
まず、商売の政治に関して、ハレシュ侯爵と意見が割れた。
貴族の大半がハレシュ侯爵側についてしまい、自分の意見に賛同する貴族がおらず、相当焦っている中で、娘のアメリア令嬢がいつもより遅く帰ってきた。
そのときからアメリア令嬢は狂ったように「全知全能」「ガイア様」と言うようになり、テッドを解放するように頼んできた。
アメリア令嬢が狂った理由はわからないらしい。
前から交際していたのは知っていたため何とかしてやりたいが、捕まったテッドを解放するのは不利益しか被らない。
自分の力では無理だと言おうとしたとき、フードを目深にかぶった男が近寄ってきた。
アメリア令嬢をここまでエスコートしてきたという男は、「テッドを解放することで貴族の味方がつく」と吹聴し、挙句「アメリア令嬢のことは任せてほしい」と魔法使いの腕前を見せてメイウェル伯爵を丸め込み、テッドを解放させることに成功した。
その結果、テッドは自分を懇意にする貴族がメイウェル伯爵につくように話すように契約がなされた。
それがいつ実行されるかを決めていなかったせいで、テッドを解放したことは結局不利益しか残されなかった。
テッドが魔法使いの男と、誘拐と復讐の計画を立てているのを聞いて、抜け出すタイミングができたらアメリア令嬢と逃げようとしていた。
そして、あの映像の時間あたりを最後にして北の森の建物を去って逃げようとしたところを捕まえられたということだ。
聞いてみると、結構拍子抜けだった。
ただ、自分の政策が採用されないかもしれないという不安につけ込まれての犯行だ。
弱気で慎重そうなメイウェル伯爵ではあり得ないことだった。
広がるだけ広げて、畳むのが下手くそな感じがして後味が悪くなった。
でも、クレアさんだけはこの事実を重く受け止めているみたいだった。
「なっ……真実だと!?
今話していることが真実、あ"ぁ!!」
しかし、メイウェル伯爵の威勢の良さはすぐになくなり、電撃を受けたようにその場にうずくまった。
クレアさんは手を出していない。
さっきの魔法陣、真実以外は電撃を与えるように仕組んでいたのかもしれない。
「反抗的ですね。大人しく答えてください」
「う、ぁ……」
クレアさんから笑顔が消え、熱のこもっていない瞳を突き刺すようにメイウェル伯爵へ向けた。
メイウェル伯爵はブルブル震えている。
取り調べ室の壁に霜が降りている。
クレアさんは今相当怒っている。
一向に黙ったままのメイウェル伯爵に、クレアさんは冷たく問いかける。
「言えばここから出られるのに、何を黙る必要があるのですか?」
「そ、それは………」
目をキョロキョロとさせて口をモゴモゴさせるメイウェル伯爵は、正に親に悪いことを隠そうと必死な子供だ。
中年にもなって子供のような仕草に、クレアさんは大きくため息をついた。
「早く言ったほうが娘さんのためになりますよ」
「……!?それは、どういうことだっ!」
娘の話を出した瞬間にすぐに顔を上げたのを見るに、メイウェル伯爵が娘のアメリア令嬢を溺愛しているのは本当みたいだ。
たしかに、娘さんのためになるとはどういうことだろう。
アメリア令嬢は今、「全知全能」としか言えない状態だった気がするけど……。
クレアさんはメイウェル伯爵にまた笑顔を見せて口を開く。
「娘さん、今は特定の言葉しか言っていないみたいですね。
私なら、娘さんを元に戻すことができるかもしれませんが……早くしないと治せないかもしれないです」
「む、娘が治るのかっ!?」
「………はい、治そうと思えば」
目が笑っていない。
あれだけ冷たい目で見られているのに、メイウェル伯爵の頭の中はアメリア令嬢でいっぱいみたいだ。
突然、クレアさんの足にしがみついた。
ヒルゼ様がすぐに怒鳴って引き剥がしたけど、メイウェル伯爵はまたすがりつこうとクレアさんを見ている。
「頼むっ!娘を、アメリアを助けてくれ!どんな娘でもいいが、健康になるなら早く治してくれ!」
メイウェル伯爵の悲痛な叫びが取り調べ室に響いた次の瞬間、メイウェル伯爵の体がまた電撃を受けたように跳ねて床に倒れ込んだ。
僕の推測が合っていれば、あの電撃は、真実を話さなかったから与えられたものだ。
つまり、メイウェル伯爵はさっき嘘をついたことになる。
クレアさんはメイウェル伯爵を見下ろした。
「思い上がるな。何の代償もなしに得られるものなんてない」
突然敬語を取っ払った口調に、皆が驚いていた。
さすがにもう取り繕えないくらい怒っているのかもしれない。
でも、あの言い方は、自分に言っているようにも聞こえたのは僕だけなのだろうか。
「……っ、じゃあ、何でもやる!何でもやるから!アメリアを治してくれ!!」
「何でも、と言いました?」
「?あぁ、言った!何でもやる!早く治してくれ!」
自分の言っていることの重大さが分かっていないみたいだ。
でも、これで逃げられないだろう。
クレアさんはヒルゼ様よりも取り調べが向いているかもしれない。
クレアさんはメイウェル伯爵の目を見る。
「それでは、今回の事件に関して、真実を話してください」
「……!いや、それは、」
「治さないんですか?」
まだ逃げようとするメイウェル伯爵を、射抜くような視線で黙らせたクレアさんは、白状させることに成功した。
明らかになったのは次のことだった。
まず、商売の政治に関して、ハレシュ侯爵と意見が割れた。
貴族の大半がハレシュ侯爵側についてしまい、自分の意見に賛同する貴族がおらず、相当焦っている中で、娘のアメリア令嬢がいつもより遅く帰ってきた。
そのときからアメリア令嬢は狂ったように「全知全能」「ガイア様」と言うようになり、テッドを解放するように頼んできた。
アメリア令嬢が狂った理由はわからないらしい。
前から交際していたのは知っていたため何とかしてやりたいが、捕まったテッドを解放するのは不利益しか被らない。
自分の力では無理だと言おうとしたとき、フードを目深にかぶった男が近寄ってきた。
アメリア令嬢をここまでエスコートしてきたという男は、「テッドを解放することで貴族の味方がつく」と吹聴し、挙句「アメリア令嬢のことは任せてほしい」と魔法使いの腕前を見せてメイウェル伯爵を丸め込み、テッドを解放させることに成功した。
その結果、テッドは自分を懇意にする貴族がメイウェル伯爵につくように話すように契約がなされた。
それがいつ実行されるかを決めていなかったせいで、テッドを解放したことは結局不利益しか残されなかった。
テッドが魔法使いの男と、誘拐と復讐の計画を立てているのを聞いて、抜け出すタイミングができたらアメリア令嬢と逃げようとしていた。
そして、あの映像の時間あたりを最後にして北の森の建物を去って逃げようとしたところを捕まえられたということだ。
聞いてみると、結構拍子抜けだった。
ただ、自分の政策が採用されないかもしれないという不安につけ込まれての犯行だ。
弱気で慎重そうなメイウェル伯爵ではあり得ないことだった。
広がるだけ広げて、畳むのが下手くそな感じがして後味が悪くなった。
でも、クレアさんだけはこの事実を重く受け止めているみたいだった。
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