追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

文字の大きさ
32 / 119
1章 商業都市フレンティア

誘導 (ゼルナside)

しおりを挟む
クレアさんの言葉を聞いて、メイウェル伯爵はガタッ、と椅子から立ち上がってクレアさんを睨んだ。

「なっ……真実だと!?
今話していることが真実、あ"ぁ!!」

しかし、メイウェル伯爵の威勢の良さはすぐになくなり、電撃を受けたようにその場にうずくまった。

クレアさんは手を出していない。
さっきの魔法陣、真実以外は電撃を与えるように仕組んでいたのかもしれない。

「反抗的ですね。大人しく答えてください」
「う、ぁ……」

クレアさんから笑顔が消え、熱のこもっていない瞳を突き刺すようにメイウェル伯爵へ向けた。
メイウェル伯爵はブルブル震えている。

取り調べ室の壁に霜が降りている。
クレアさんは今相当怒っている。



一向に黙ったままのメイウェル伯爵に、クレアさんは冷たく問いかける。


「言えばここから出られるのに、何を黙る必要があるのですか?」
「そ、それは………」

目をキョロキョロとさせて口をモゴモゴさせるメイウェル伯爵は、正に親に悪いことを隠そうと必死な子供だ。

中年にもなって子供のような仕草に、クレアさんは大きくため息をついた。

「早く言ったほうが娘さんのためになりますよ」
「……!?それは、どういうことだっ!」

娘の話を出した瞬間にすぐに顔を上げたのを見るに、メイウェル伯爵が娘のアメリア令嬢を溺愛しているのは本当みたいだ。

たしかに、娘さんのためになるとはどういうことだろう。
アメリア令嬢は今、「全知全能」としか言えない状態だった気がするけど……。


クレアさんはメイウェル伯爵にまた笑顔を見せて口を開く。

「娘さん、今は特定の言葉しか言っていないみたいですね。
私なら、娘さんを元に戻すことができるかもしれませんが……早くしないと治せないかもしれないです」
「む、娘が治るのかっ!?」
「………はい、治そうと思えば」

目が笑っていない。
あれだけ冷たい目で見られているのに、メイウェル伯爵の頭の中はアメリア令嬢でいっぱいみたいだ。


突然、クレアさんの足にしがみついた。


ヒルゼ様がすぐに怒鳴って引き剥がしたけど、メイウェル伯爵はまたすがりつこうとクレアさんを見ている。


「頼むっ!娘を、アメリアを助けてくれ!どんな娘でもいいが、健康になるなら早く治してくれ!」


メイウェル伯爵の悲痛な叫びが取り調べ室に響いた次の瞬間、メイウェル伯爵の体がまた電撃を受けたように跳ねて床に倒れ込んだ。


僕の推測が合っていれば、あの電撃は、真実を話さなかったから与えられたものだ。
つまり、メイウェル伯爵はさっき嘘をついたことになる。

クレアさんはメイウェル伯爵を見下ろした。


「思い上がるな。何の代償もなしに得られるものなんてない」


突然敬語を取っ払った口調に、皆が驚いていた。
さすがにもう取り繕えないくらい怒っているのかもしれない。

でも、あの言い方は、自分に言っているようにも聞こえたのは僕だけなのだろうか。


「……っ、じゃあ、何でもやる!何でもやるから!アメリアを治してくれ!!」
「何でも、と言いました?」
「?あぁ、言った!何でもやる!早く治してくれ!」


自分の言っていることの重大さが分かっていないみたいだ。
でも、これで逃げられないだろう。
クレアさんはヒルゼ様よりも取り調べが向いているかもしれない。

クレアさんはメイウェル伯爵の目を見る。

「それでは、今回の事件に関して、真実を話してください」
「……!いや、それは、」
「治さないんですか?」

まだ逃げようとするメイウェル伯爵を、射抜くような視線で黙らせたクレアさんは、白状させることに成功した。



明らかになったのは次のことだった。


まず、商売の政治に関して、ハレシュ侯爵と意見が割れた。
貴族の大半がハレシュ侯爵側についてしまい、自分の意見に賛同する貴族がおらず、相当焦っている中で、娘のアメリア令嬢がいつもより遅く帰ってきた。

そのときからアメリア令嬢は狂ったように「全知全能」「ガイア様」と言うようになり、テッドを解放するように頼んできた。
アメリア令嬢が狂った理由はわからないらしい。

前から交際していたのは知っていたため何とかしてやりたいが、捕まったテッドを解放するのは不利益しか被らない。

自分の力では無理だと言おうとしたとき、フードを目深にかぶった男が近寄ってきた。

アメリア令嬢をここまでエスコートしてきたという男は、「テッドを解放することで貴族の味方がつく」と吹聴し、挙句「アメリア令嬢のことは任せてほしい」と魔法使いの腕前を見せてメイウェル伯爵を丸め込み、テッドを解放させることに成功した。


その結果、テッドは自分を懇意にする貴族がメイウェル伯爵につくように話すように契約がなされた。

それがいつ実行されるかを決めていなかったせいで、テッドを解放したことは結局不利益しか残されなかった。

テッドが魔法使いの男と、誘拐と復讐の計画を立てているのを聞いて、抜け出すタイミングができたらアメリア令嬢と逃げようとしていた。


そして、あの映像の時間あたりを最後にして北の森の建物を去って逃げようとしたところを捕まえられたということだ。




聞いてみると、結構拍子抜けだった。
ただ、自分の政策が採用されないかもしれないという不安につけ込まれての犯行だ。
弱気で慎重そうなメイウェル伯爵ではあり得ないことだった。


広がるだけ広げて、畳むのが下手くそな感じがして後味が悪くなった。


でも、クレアさんだけはこの事実を重く受け止めているみたいだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”  人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!

職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます! ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。 この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。 戦闘力ゼロ。 「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」 親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。 「感謝するぜ、囮として」 嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。 そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。 「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」 情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。 かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。 見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...