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第29話 子どもたちの見学路
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微風が牧場の草原を優しく撫でる朝、白石悠真は新しく手に入れた能力を試していた。彼の周りでは地形がゆっくりと変化し、小さな起伏が生まれたり消えたりしている。
「もう少し緩やかな坂にして…こんな感じかな」
悠真は額に汗をにじませながら集中していた。地形カスタマイズ機能を使うには、かなりの精神力を要するようだ。昨日作った小さな池の周りには、すでに小さな岩場と砂浜のエリアが完成していた。
「これなら皆の遊び場としてちょうど良さそうだな」
彼がつぶやくと、早くも水晶リスのアクアは池で気持ちよさそうに泳いでおり、カーバンクルのテラは岩場で日向ぼっこを始めていた。
「次は気温調整だ…」
悠真は目を閉じ、牧場の別の場所に意識を向けた。昨日の練習で、彼は少しずつコツを掴み始めていた。温度を少しだけ上げる…風の流れを変える…湿度を調整する…。細かな変化を積み重ね、動物たちにとって最適な環境を作っていく。
「良い感じだ。でも急激に変えすぎないようにしないと」
悠真は慎重に能力を使いながら、牧場を少しずつ理想の形に近づけていった。シャドウは彼の影から時々顔を出しては、変化する景色を不思議そうに眺めている。
「おはようございます!、悠真さん!」
突然の元気な声に振り返ると、そこにはミリアムがいた。だが、いつもと違うのは、彼女の後ろに十人ほどの子どもたちが集団でついてきていることだった。子どもたちはそれぞれ年齢も違い、五歳くらいから十二、三歳くらいまでの男の子や女の子が、好奇心旺盛な目で牧場を見渡している。
「お、おはよう。この子たちは?」
悠真は少し驚いた様子で尋ねた。シャドウはすかさず彼の影の中に隠れてしまう。
「グリーンヘイブンの子どもたちです。実は、前々から村で悠真さんの牧場のお話をしていたんです」
ミリアムは少し照れくさそうに髪を指に巻きつけた。子どもたちは好奇心でいっぱいの目で悠真を見上げている。
「最初の頃は皆、御伽噺みたいなものだと思って、あまり信じてなかったんですけど何度も話すうちに、皆気になってきてしまったみたいで。そしたら…」
「ぼくたちが直接見たいって言ったんだよ!」
一人の少年が元気よく割り込んできた。ミリアムは苦笑いしながら頷く。
「そうなんです。昨日の夕方、村の広場で薬草の話をしていた時に、とうとう我慢できなくなったみたいで。『今度、連れていって!』って大騒ぎになって…」
「お母さんたちにも頼んだんだ!」
「村長さんにも許可もらったよ!」
子どもたちが次々と言葉を重ねる。ミリアムは肩をすくめた。
「断りきれなくなって…村長さんからも『子どもたちの学びになるなら』って言われて。それで今朝、皆を連れてきてしまったんです。急に押し掛けてごめんなさい」
悠真はため息をつきながらも、子どもたちの輝く目を見て微笑まずにはいられなかった。
「まあ、いいよ。でも次からは事前に教えてくれると助かるな」
「はい、約束します!」
ミリアムは安堵の表情を浮かべた。子どもたちは既に牧場の動物たちを見つけ、興奮した様子で指さしている。
「牧場にペガサスがいるって本当?」
「魔法の動物がたくさんいるんでしょ?」
「池を作れるって聞いたよ!」
子どもたちは次々と質問を投げかけ、悠真の周りに集まってきた。その気配を感じたのか、アズールが池から飛び出し、好奇心いっぱいの目で子どもたちを見つめる。
「わぁ!本当にドラゴンだ!」
子どもたちから歓声が上がった。
「こら、皆。好き勝手に動いたらご迷惑になるでしょ。ごめんなさい、悠真さん」
ミリアムは慌てて子どもたちを整列させた。
「いや、構わないよ。でも、動物たちは警戒心が強いから、あまり騒がないでね」
悠真は優しく諭すように言った。子どもたちは目をキラキラさせながら、真剣に頷く。
「約束します!静かにします!」
中でも一番小さな女の子が前に出て、礼儀正しく頭を下げた。その真剣な様子に、悠真は思わず微笑んだ。
「リリーちゃんは村長さんの孫で、皆のリーダーなんですよ」
ミリアムが小さな声で説明した。
「なるほど。じゃあリリーさん、ミリアムと一緒に皆を案内してもらっていいかな?危ないところに近づかないように気をつけてね」
リリーは誇らしげに胸を張った。
「はい!皆、ちゃんと聞くのよ!」
悠真は子どもたちの純粋な好奇心に触れ、心が温かくなるのを感じた。同時に、これからもこのような来訪者が増えるかもしれないと思うと、安全対策の必要性を感じた。
「ミリアム、少し相談があるんだ」
悠真は彼女を少し離れた場所に誘導した。
「子どもたちが安全に見学できるエリアを作ろうと思うんだ。地形カスタマイズと気温調整を使えば、見学路みたいなものが作れそうだ」
ミリアムの目が輝いた。
「素敵なアイディアですね!きっと子どもたちも喜ぶと思います!」
「うん、動物たちにもストレスがないように、適度な距離を保てる見学路がいいな」
悠真は頭の中でイメージを膨らませていく。動物たちの住処からほどよい距離を保ちつつ、しっかり観察できる小道。子どもたちが転ばないよう、緩やかな起伏。そして、季節を問わず快適に過ごせる微気候…。
「さっそく試してみようか」
――――――
悠真とミリアムが子どもたちのところに戻ると、リーフィアも合流していた。彼女は子どもたちに囲まれ、植物の話をしているようだった。
「これはサンリア。太陽の光を集める不思議な植物なのよ」
子どもたちは目を丸くして聞き入っている。
「リーフィア、良いタイミングだ。牧場に見学路を作ろうと思うんだ」
悠真が説明すると、リーフィアも賛成した。
「分かりました。私も手伝います」
三人は子どもたちも巻き込んで、見学路のプランを立て始めた。子どもたちは自分たちの意見も取り入れられることに大興奮だ。
「僕、高いところから見たい!」
「お花がいっぱいある道がいい!」
「動物さんたちが怖がらないように、隠れて見られるところが良いな」
様々なアイディアが飛び交う中、悠真は地形カスタマイズの能力に集中した。ゆるやかな丘を作り、その上に展望台のような平らな場所を設置。そこから牧場全体が見渡せるようにする。丘の周りには、低木の生垣を配置し、子どもたちが簡単に立ち入れない区画も作った。
「すごい…本当に地面が動いてる!」
子どもたちは目を輝かせながら、変化する地形を見つめていた。悠真の額に汗が滲む。これほど大がかりな地形変化は初めてで、かなりの集中力を要する。
「次は気温調整だ…」
悠真は見学路全体に意識を向け、一年中快適に過ごせる温度に設定していく。春の陽気のような、心地よい暖かさ。木陰には涼しい風が流れるように調整し、暑さ寒さを感じにくい小気候を作り出した。
「わあ、ここだけポカポカする!」
リリーが驚いた声を上げた。他の子どもたちも、風の通り道に立って、心地よさそうに目を細めている。
「これで雨の日でも寒い日でも、ある程度は快適に見学できるはずだ」
悠真の言葉に、ミリアムは感心した様子で頷いた。
「本当にすごいです。これなら村の人たちも安心して子どもたちを連れてこられますね」
リーフィアも満足げに周囲を見回した。
「動物たちのための休息スペースも作っておくといいかもしれませんね。見学者が多くなると、彼らもストレスを感じるでしょうから」
「そうだな…」
悠真はさらに地形を変え、動物たちが人目を避けて休める小さな空間をいくつか作った。木々で囲まれた静かな場所や、小さな洞窟のような隠れ家。
――――――
作業を終えた頃には、牧場は見違えるように整備されていた。見学路は牧場全体を一周し、ところどころに休憩スポットや展望台が設けられている。道沿いには季節の花々が植えられ、子どもたちの目を楽しませる。
「これで完成だ。皆、試してみるか?」
子どもたちは歓声を上げて、新しい見学路を駆け出した。ミリアムとリーフィアも後に続く。悠真はしばらくその様子を見守っていたが、ふと足元に視線を感じた。
「どうした、シャドウ?」
影から出てきたシャドウは、子どもたちの方を見つめている。その目には警戒心というより、好奇心が宿っていた。
「気になるのか?一緒に行ってみようか」
悠真が歩き出すと、シャドウはしばらく迷うように立ち止まっていたが、やがて彼の傍らにそっと寄り添って歩き始めた。
見学路を歩いていくと、子どもたちは各所で歓声を上げている。アズールの池の前では、彼の水中パフォーマンスに拍手喝采。フレアが寝そべる暖かいエリアでは、彼女のふわふわした尻尾に目を輝かせていた。
「悠真さん!これ、何ですか?」
一人の男の子が、道端に咲く小さな花を指さした。青白い色をした、見たことのない花だ。
「あれ?前はなかったはずだけど…」
悠真が不思議に思っていると、リーフィアが近づいてきた。
「これは…月光草の変種ですね。気温調整の影響で咲いたのでしょう」
リーフィアは優しく花に触れた。
「月の光を集めて、夜になると青く光るんですよ」
子どもたちは「わぁ」と声を上げた。
「じゃあ、夜も見に来たい!」
「お母さんに頼んでみる!」
子どもたちの目は好奇心と期待で輝いていた。悠真は思わず笑みを浮かべた。
「また来たいときは、ミリアムに言って一緒に来てね。一人で来るのは危ないからな」
「はーい!」
子どもたちの元気な返事が、牧場に響き渡った。シャドウも少しずつ子どもたちに慣れてきたのか、悠真の足元から少し離れ、ゆっくりと彼らに近づいていく。
「あ!黒いクマさん!」
リリーがシャドウに気づき、声を上げた。シャドウは一瞬身構えたが、リリーの純粋な目に見つめられると、警戒心を解いたようだ。彼女はゆっくりと手を差し出し、シャドウは慎重に匂いを嗅いだ。
「優しくしてあげてね。シャドウはまだ人に慣れていないから」
悠真が見守る中、シャドウはリリーの小さな手に鼻先を軽く触れた。その瞬間、リリーの顔に大きな笑顔が広がった。
「仲良くなれたね!」
彼女の無邪気な喜びに、悠真の心も温かくなった。
――――――
夕暮れが近づく頃、子どもたちは帰る支度を始めた。その顔には名残惜しさと満足感が混ざっている。
「また来てもいいですか?」
「今度は友達も連れてきたい!」
子どもたちの問いかけに、悠真は微笑んで頷いた。
「もちろんだよ。でも、必ずミリアムか大人と一緒に来ること。それと、動物たちを驚かせないようにね」
「は~い!」
子どもたちは元気よく手を振り、ミリアムに連れられて帰っていった。牧場は再び静けさを取り戻す。
「賑やかな一日でしたね」
リーフィアがそっと言った。悠真は満足げにため息をついた。
「ああ。でも悪くない。子どもたちの笑顔を見ると、こんな能力があって良かったと思えるよ」
シャドウは悠真の足元に戻り、尻尾を丸めて横になった。空では、ウィンドが夕日に照らされながら優雅に舞っている。牧場全体が穏やかな空気に包まれていた。
「もう少し緩やかな坂にして…こんな感じかな」
悠真は額に汗をにじませながら集中していた。地形カスタマイズ機能を使うには、かなりの精神力を要するようだ。昨日作った小さな池の周りには、すでに小さな岩場と砂浜のエリアが完成していた。
「これなら皆の遊び場としてちょうど良さそうだな」
彼がつぶやくと、早くも水晶リスのアクアは池で気持ちよさそうに泳いでおり、カーバンクルのテラは岩場で日向ぼっこを始めていた。
「次は気温調整だ…」
悠真は目を閉じ、牧場の別の場所に意識を向けた。昨日の練習で、彼は少しずつコツを掴み始めていた。温度を少しだけ上げる…風の流れを変える…湿度を調整する…。細かな変化を積み重ね、動物たちにとって最適な環境を作っていく。
「良い感じだ。でも急激に変えすぎないようにしないと」
悠真は慎重に能力を使いながら、牧場を少しずつ理想の形に近づけていった。シャドウは彼の影から時々顔を出しては、変化する景色を不思議そうに眺めている。
「おはようございます!、悠真さん!」
突然の元気な声に振り返ると、そこにはミリアムがいた。だが、いつもと違うのは、彼女の後ろに十人ほどの子どもたちが集団でついてきていることだった。子どもたちはそれぞれ年齢も違い、五歳くらいから十二、三歳くらいまでの男の子や女の子が、好奇心旺盛な目で牧場を見渡している。
「お、おはよう。この子たちは?」
悠真は少し驚いた様子で尋ねた。シャドウはすかさず彼の影の中に隠れてしまう。
「グリーンヘイブンの子どもたちです。実は、前々から村で悠真さんの牧場のお話をしていたんです」
ミリアムは少し照れくさそうに髪を指に巻きつけた。子どもたちは好奇心でいっぱいの目で悠真を見上げている。
「最初の頃は皆、御伽噺みたいなものだと思って、あまり信じてなかったんですけど何度も話すうちに、皆気になってきてしまったみたいで。そしたら…」
「ぼくたちが直接見たいって言ったんだよ!」
一人の少年が元気よく割り込んできた。ミリアムは苦笑いしながら頷く。
「そうなんです。昨日の夕方、村の広場で薬草の話をしていた時に、とうとう我慢できなくなったみたいで。『今度、連れていって!』って大騒ぎになって…」
「お母さんたちにも頼んだんだ!」
「村長さんにも許可もらったよ!」
子どもたちが次々と言葉を重ねる。ミリアムは肩をすくめた。
「断りきれなくなって…村長さんからも『子どもたちの学びになるなら』って言われて。それで今朝、皆を連れてきてしまったんです。急に押し掛けてごめんなさい」
悠真はため息をつきながらも、子どもたちの輝く目を見て微笑まずにはいられなかった。
「まあ、いいよ。でも次からは事前に教えてくれると助かるな」
「はい、約束します!」
ミリアムは安堵の表情を浮かべた。子どもたちは既に牧場の動物たちを見つけ、興奮した様子で指さしている。
「牧場にペガサスがいるって本当?」
「魔法の動物がたくさんいるんでしょ?」
「池を作れるって聞いたよ!」
子どもたちは次々と質問を投げかけ、悠真の周りに集まってきた。その気配を感じたのか、アズールが池から飛び出し、好奇心いっぱいの目で子どもたちを見つめる。
「わぁ!本当にドラゴンだ!」
子どもたちから歓声が上がった。
「こら、皆。好き勝手に動いたらご迷惑になるでしょ。ごめんなさい、悠真さん」
ミリアムは慌てて子どもたちを整列させた。
「いや、構わないよ。でも、動物たちは警戒心が強いから、あまり騒がないでね」
悠真は優しく諭すように言った。子どもたちは目をキラキラさせながら、真剣に頷く。
「約束します!静かにします!」
中でも一番小さな女の子が前に出て、礼儀正しく頭を下げた。その真剣な様子に、悠真は思わず微笑んだ。
「リリーちゃんは村長さんの孫で、皆のリーダーなんですよ」
ミリアムが小さな声で説明した。
「なるほど。じゃあリリーさん、ミリアムと一緒に皆を案内してもらっていいかな?危ないところに近づかないように気をつけてね」
リリーは誇らしげに胸を張った。
「はい!皆、ちゃんと聞くのよ!」
悠真は子どもたちの純粋な好奇心に触れ、心が温かくなるのを感じた。同時に、これからもこのような来訪者が増えるかもしれないと思うと、安全対策の必要性を感じた。
「ミリアム、少し相談があるんだ」
悠真は彼女を少し離れた場所に誘導した。
「子どもたちが安全に見学できるエリアを作ろうと思うんだ。地形カスタマイズと気温調整を使えば、見学路みたいなものが作れそうだ」
ミリアムの目が輝いた。
「素敵なアイディアですね!きっと子どもたちも喜ぶと思います!」
「うん、動物たちにもストレスがないように、適度な距離を保てる見学路がいいな」
悠真は頭の中でイメージを膨らませていく。動物たちの住処からほどよい距離を保ちつつ、しっかり観察できる小道。子どもたちが転ばないよう、緩やかな起伏。そして、季節を問わず快適に過ごせる微気候…。
「さっそく試してみようか」
――――――
悠真とミリアムが子どもたちのところに戻ると、リーフィアも合流していた。彼女は子どもたちに囲まれ、植物の話をしているようだった。
「これはサンリア。太陽の光を集める不思議な植物なのよ」
子どもたちは目を丸くして聞き入っている。
「リーフィア、良いタイミングだ。牧場に見学路を作ろうと思うんだ」
悠真が説明すると、リーフィアも賛成した。
「分かりました。私も手伝います」
三人は子どもたちも巻き込んで、見学路のプランを立て始めた。子どもたちは自分たちの意見も取り入れられることに大興奮だ。
「僕、高いところから見たい!」
「お花がいっぱいある道がいい!」
「動物さんたちが怖がらないように、隠れて見られるところが良いな」
様々なアイディアが飛び交う中、悠真は地形カスタマイズの能力に集中した。ゆるやかな丘を作り、その上に展望台のような平らな場所を設置。そこから牧場全体が見渡せるようにする。丘の周りには、低木の生垣を配置し、子どもたちが簡単に立ち入れない区画も作った。
「すごい…本当に地面が動いてる!」
子どもたちは目を輝かせながら、変化する地形を見つめていた。悠真の額に汗が滲む。これほど大がかりな地形変化は初めてで、かなりの集中力を要する。
「次は気温調整だ…」
悠真は見学路全体に意識を向け、一年中快適に過ごせる温度に設定していく。春の陽気のような、心地よい暖かさ。木陰には涼しい風が流れるように調整し、暑さ寒さを感じにくい小気候を作り出した。
「わあ、ここだけポカポカする!」
リリーが驚いた声を上げた。他の子どもたちも、風の通り道に立って、心地よさそうに目を細めている。
「これで雨の日でも寒い日でも、ある程度は快適に見学できるはずだ」
悠真の言葉に、ミリアムは感心した様子で頷いた。
「本当にすごいです。これなら村の人たちも安心して子どもたちを連れてこられますね」
リーフィアも満足げに周囲を見回した。
「動物たちのための休息スペースも作っておくといいかもしれませんね。見学者が多くなると、彼らもストレスを感じるでしょうから」
「そうだな…」
悠真はさらに地形を変え、動物たちが人目を避けて休める小さな空間をいくつか作った。木々で囲まれた静かな場所や、小さな洞窟のような隠れ家。
――――――
作業を終えた頃には、牧場は見違えるように整備されていた。見学路は牧場全体を一周し、ところどころに休憩スポットや展望台が設けられている。道沿いには季節の花々が植えられ、子どもたちの目を楽しませる。
「これで完成だ。皆、試してみるか?」
子どもたちは歓声を上げて、新しい見学路を駆け出した。ミリアムとリーフィアも後に続く。悠真はしばらくその様子を見守っていたが、ふと足元に視線を感じた。
「どうした、シャドウ?」
影から出てきたシャドウは、子どもたちの方を見つめている。その目には警戒心というより、好奇心が宿っていた。
「気になるのか?一緒に行ってみようか」
悠真が歩き出すと、シャドウはしばらく迷うように立ち止まっていたが、やがて彼の傍らにそっと寄り添って歩き始めた。
見学路を歩いていくと、子どもたちは各所で歓声を上げている。アズールの池の前では、彼の水中パフォーマンスに拍手喝采。フレアが寝そべる暖かいエリアでは、彼女のふわふわした尻尾に目を輝かせていた。
「悠真さん!これ、何ですか?」
一人の男の子が、道端に咲く小さな花を指さした。青白い色をした、見たことのない花だ。
「あれ?前はなかったはずだけど…」
悠真が不思議に思っていると、リーフィアが近づいてきた。
「これは…月光草の変種ですね。気温調整の影響で咲いたのでしょう」
リーフィアは優しく花に触れた。
「月の光を集めて、夜になると青く光るんですよ」
子どもたちは「わぁ」と声を上げた。
「じゃあ、夜も見に来たい!」
「お母さんに頼んでみる!」
子どもたちの目は好奇心と期待で輝いていた。悠真は思わず笑みを浮かべた。
「また来たいときは、ミリアムに言って一緒に来てね。一人で来るのは危ないからな」
「はーい!」
子どもたちの元気な返事が、牧場に響き渡った。シャドウも少しずつ子どもたちに慣れてきたのか、悠真の足元から少し離れ、ゆっくりと彼らに近づいていく。
「あ!黒いクマさん!」
リリーがシャドウに気づき、声を上げた。シャドウは一瞬身構えたが、リリーの純粋な目に見つめられると、警戒心を解いたようだ。彼女はゆっくりと手を差し出し、シャドウは慎重に匂いを嗅いだ。
「優しくしてあげてね。シャドウはまだ人に慣れていないから」
悠真が見守る中、シャドウはリリーの小さな手に鼻先を軽く触れた。その瞬間、リリーの顔に大きな笑顔が広がった。
「仲良くなれたね!」
彼女の無邪気な喜びに、悠真の心も温かくなった。
――――――
夕暮れが近づく頃、子どもたちは帰る支度を始めた。その顔には名残惜しさと満足感が混ざっている。
「また来てもいいですか?」
「今度は友達も連れてきたい!」
子どもたちの問いかけに、悠真は微笑んで頷いた。
「もちろんだよ。でも、必ずミリアムか大人と一緒に来ること。それと、動物たちを驚かせないようにね」
「は~い!」
子どもたちは元気よく手を振り、ミリアムに連れられて帰っていった。牧場は再び静けさを取り戻す。
「賑やかな一日でしたね」
リーフィアがそっと言った。悠真は満足げにため息をついた。
「ああ。でも悪くない。子どもたちの笑顔を見ると、こんな能力があって良かったと思えるよ」
シャドウは悠真の足元に戻り、尻尾を丸めて横になった。空では、ウィンドが夕日に照らされながら優雅に舞っている。牧場全体が穏やかな空気に包まれていた。
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