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第48話 大岩の秘密、過去が見せる記憶
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朝靄が晴れ始めた白石牧場。悠真は納屋から出ると、春の気配を感じさせる新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。春告げ鳥の訪れから一週間が経ち、牧場の雪解けはさらに進んでいた。
「よし、今日も朝の見回りをするか」
悠真は牧場の境界線を歩き始めた。トレジャーと春告げ鳥は納屋の巣で仲良く過ごし、サクラたちも元気に草を食んでいる。すべてが穏やかな日常——のはずだった。
「ん?」
南側の森の縁に、大きな岩のようなものが見える。灰色がかった茶色の表面は苔に覆われ、周囲の環境に溶け込んでいた。
「あんな場所に岩なんてあったかな?」
悠真は首を傾げたが、それほど気にせず朝の作業を終えた。
――――――
翌朝、悠真が同じ場所を通りかかると、またあの岩が目に入った。
「なんか……昨日よりも大きくなってる気がするような……」
悠真は立ち止まり、大岩をじっと見つめた。しかし、特に変化はない。
「気のせいかな」
そう判断して、悠真は牧場に戻っていった。
――――――
数日後の朝、再び同じ場所に来た悠真は驚きの声を上げた。
「うわっ!?なんでこんな近くに!?」
あの大岩が、明らかに牧場の柵のすぐそばまで移動していたのだ。直径は優に2メートルはあり、表面には六角形の模様が浮かび上がっている。
「やっぱり気のせいじゃない。この大岩動いてるんだ。でも、どうやって……?」
リーフィアが朝の挨拶をしようと近づいてきた。
「おはようございます、悠真さん。何を見て……あら?」
リーフィアも大岩に気づき、不思議そうな表情を浮かべた。
「リーフィア、これ知ってる?なんか表面に六角形の模様があるみたいなんだけど」
リーフィアは首を傾げ、慎重に岩に近づいた。
「いえ、見たことがないですね」
悠真は眉をひそめた。
「そうか。でも、明らかにおかしいんだよな。今日は観察してみるか」
――――――
夕暮れ時、悠真は大岩の近くで待機していた。一日中観察していたが、変化は見られなかった。
「何にも起きないな……もう戻ろうか」
そう呟いた瞬間、岩が「ゴトリ」と音を立てた。
「え?」
驚く悠真の目の前で、岩からゆっくりと四本の太い脚が伸び、頭らしきものが突き出てきた。
「これは……亀?」
それは間違いなく生き物だった。甲羅は岩そのもので、ゆっくりとした動きで牧場へと歩み始める。
「ああ、思い出した!こいつ、世界の希少生物図鑑に載っていた大岩亀だ!」
夜行性で昼間は岩に擬態して眠る生物——。道理で日中に見ていても動かなかったわけだ。大岩亀はのそりのそりと牧場の方へ向かい、翌朝には泉の近くにある岩場の一角に収まっていた。そこにいると完全に自然の一部のように見える。
「やっぱりこいつもこの牧場を目指していたのか、一体どこから来たんだろうな……」
――――――
数日後、大岩亀は完全に牧場の住人となっていた。悠真、リーフィア、ミリアムの三人は泉のそばに集まり、亀を観察していた。
「本当に大きいですね!」
ミリアムは目を輝かせながら亀の周りをぐるぐると回っていた。
「岩に見えて気づかなかったけど、こうしてみると立派な亀だな」
悠真の言葉に、リーフィアは頷きながら亀をじっと見つめた。
「この子も牧場の仲間になったのですし、名前をつけてあげましょう」
三人で相談し、ついに決まった。
「ストーン……どうだ?」
悠真が亀に語りかけると、大岩亀は「クー」と低い声で鳴き、その甲羅が突如として青白い光を放ち始めた。
「な、何!?」
三人が驚く中、光は強さを増していき、そこになにかの映像が見えてきた。
「これは……いったい?」
光の中に浮かび上がったのは、月明かりに照らされた美しい村の風景だった。屋根は光る鉱物で飾られ、木々は銀色に輝いていた。村の中央には大きな泉があり、そこに集う人々は皆、リーフィアと同じように銀色の髪をしていた。
「これは……!」
リーフィアの顔から血の気が引いた。彼女の両手が震え始める。
「私の……村。月影村……」
リーフィアは映像に向かって手を伸ばした。その瞬間、映像は変わり、村が何者かに襲われる様子が映し出された。炎、叫び声、逃げ惑う人々…。
「あぁ……みんな……」
リーフィアの声は震えていた。映像はその後、遠目になり村の全景を映して消えた。
「ストーン……これ、私のために見せてくれたの?」
映像が消えると、大岩亀は静かに「クー」と鳴いた。その目には知性の光が宿っていた。
「すごい……ストーンちゃんは、人に映像を見せるような能力を持っていたんですね」
「確かに。もしかしたらこれはストーンの記憶の一部なのかもしれないな」
ミリアムが驚きの声を上げた。悠真も同意しつつ、今の映像について推測を立てていた。
「それに、今ので月影村の場所も分かった。ウィンドで飛んでいた時に似たような地形を見たことがある。きっとあそこだ」
悠真は真剣な表情でリーフィアを見た。そこは、牧場から北東の山々の向こう、月が最も美しく見える谷にあるようだった。
「リーフィア……」
リーフィアの瞳には涙が浮かんでいた。
「行かなければ……私は行かなければなりません。村に何が起きたのか、生き残った人はいるのか……」
悠真は迷わず言った。
「あぁ、一緒に行こう」
「でも、そうしたら牧場は……」
リーフィアの心配をよそに、ミリアムが胸を張った。
「その間、牧場は任せてください!私と牧場の皆で守ります。村の人にも手伝ってもらえるよう頼んでおきますよ!」
リーフィアは感激して、ミリアムの手を握った。
「ミリアムさん、ありがとうございます」
大岩亀のストーンは再び「クー」と鳴き、頭をゆっくりと上下に動かした。
「ストーンさんにも感謝です。あなたがいなければ、私の記憶は永遠に戻らなかったかもしれません」
「それじゃ、さっそく準備をしよう。できるだけ早く出発したほうがいい」
――――――
翌朝、悠真とリーフィアは旅の準備を整えていた。ミリアムは熱心に牧場の管理方法についてメモを取っている。
「餌の準備と水やりとあとは……うん、全部大丈夫です!」
「ミリアム、ありがとう。なるべく早く戻ってくるから、それまで頼むよ」
そこへウィンドが悠真の前に現れ、「ヒヒーン」と鳴いた。
「ウィンド、今回もよろしくな」
「ウィンドさん、よろしくお願いしますね」
リーフィアは優しくウィンドの首を撫でた。
準備が整い、出発の時が来た。ストーンが見送るように「クー」と低く鳴いた。
「行ってきます!」
ミリアムは元気よく手を振った。
「気をつけてください!リーフィアさんの村が無事でありますように!」
ウィンドの背に乗った悠真とリーフィアは空高く舞い上がった。
「大丈夫だよ、リーフィア。きっと村は無事だ」
悠真の言葉に、リーフィアは静かに頷いた。
「はい……きっと」
白石牧場は次第に小さくなり、彼らの姿は朝の光の中に消えていった。
「よし、今日も朝の見回りをするか」
悠真は牧場の境界線を歩き始めた。トレジャーと春告げ鳥は納屋の巣で仲良く過ごし、サクラたちも元気に草を食んでいる。すべてが穏やかな日常——のはずだった。
「ん?」
南側の森の縁に、大きな岩のようなものが見える。灰色がかった茶色の表面は苔に覆われ、周囲の環境に溶け込んでいた。
「あんな場所に岩なんてあったかな?」
悠真は首を傾げたが、それほど気にせず朝の作業を終えた。
――――――
翌朝、悠真が同じ場所を通りかかると、またあの岩が目に入った。
「なんか……昨日よりも大きくなってる気がするような……」
悠真は立ち止まり、大岩をじっと見つめた。しかし、特に変化はない。
「気のせいかな」
そう判断して、悠真は牧場に戻っていった。
――――――
数日後の朝、再び同じ場所に来た悠真は驚きの声を上げた。
「うわっ!?なんでこんな近くに!?」
あの大岩が、明らかに牧場の柵のすぐそばまで移動していたのだ。直径は優に2メートルはあり、表面には六角形の模様が浮かび上がっている。
「やっぱり気のせいじゃない。この大岩動いてるんだ。でも、どうやって……?」
リーフィアが朝の挨拶をしようと近づいてきた。
「おはようございます、悠真さん。何を見て……あら?」
リーフィアも大岩に気づき、不思議そうな表情を浮かべた。
「リーフィア、これ知ってる?なんか表面に六角形の模様があるみたいなんだけど」
リーフィアは首を傾げ、慎重に岩に近づいた。
「いえ、見たことがないですね」
悠真は眉をひそめた。
「そうか。でも、明らかにおかしいんだよな。今日は観察してみるか」
――――――
夕暮れ時、悠真は大岩の近くで待機していた。一日中観察していたが、変化は見られなかった。
「何にも起きないな……もう戻ろうか」
そう呟いた瞬間、岩が「ゴトリ」と音を立てた。
「え?」
驚く悠真の目の前で、岩からゆっくりと四本の太い脚が伸び、頭らしきものが突き出てきた。
「これは……亀?」
それは間違いなく生き物だった。甲羅は岩そのもので、ゆっくりとした動きで牧場へと歩み始める。
「ああ、思い出した!こいつ、世界の希少生物図鑑に載っていた大岩亀だ!」
夜行性で昼間は岩に擬態して眠る生物——。道理で日中に見ていても動かなかったわけだ。大岩亀はのそりのそりと牧場の方へ向かい、翌朝には泉の近くにある岩場の一角に収まっていた。そこにいると完全に自然の一部のように見える。
「やっぱりこいつもこの牧場を目指していたのか、一体どこから来たんだろうな……」
――――――
数日後、大岩亀は完全に牧場の住人となっていた。悠真、リーフィア、ミリアムの三人は泉のそばに集まり、亀を観察していた。
「本当に大きいですね!」
ミリアムは目を輝かせながら亀の周りをぐるぐると回っていた。
「岩に見えて気づかなかったけど、こうしてみると立派な亀だな」
悠真の言葉に、リーフィアは頷きながら亀をじっと見つめた。
「この子も牧場の仲間になったのですし、名前をつけてあげましょう」
三人で相談し、ついに決まった。
「ストーン……どうだ?」
悠真が亀に語りかけると、大岩亀は「クー」と低い声で鳴き、その甲羅が突如として青白い光を放ち始めた。
「な、何!?」
三人が驚く中、光は強さを増していき、そこになにかの映像が見えてきた。
「これは……いったい?」
光の中に浮かび上がったのは、月明かりに照らされた美しい村の風景だった。屋根は光る鉱物で飾られ、木々は銀色に輝いていた。村の中央には大きな泉があり、そこに集う人々は皆、リーフィアと同じように銀色の髪をしていた。
「これは……!」
リーフィアの顔から血の気が引いた。彼女の両手が震え始める。
「私の……村。月影村……」
リーフィアは映像に向かって手を伸ばした。その瞬間、映像は変わり、村が何者かに襲われる様子が映し出された。炎、叫び声、逃げ惑う人々…。
「あぁ……みんな……」
リーフィアの声は震えていた。映像はその後、遠目になり村の全景を映して消えた。
「ストーン……これ、私のために見せてくれたの?」
映像が消えると、大岩亀は静かに「クー」と鳴いた。その目には知性の光が宿っていた。
「すごい……ストーンちゃんは、人に映像を見せるような能力を持っていたんですね」
「確かに。もしかしたらこれはストーンの記憶の一部なのかもしれないな」
ミリアムが驚きの声を上げた。悠真も同意しつつ、今の映像について推測を立てていた。
「それに、今ので月影村の場所も分かった。ウィンドで飛んでいた時に似たような地形を見たことがある。きっとあそこだ」
悠真は真剣な表情でリーフィアを見た。そこは、牧場から北東の山々の向こう、月が最も美しく見える谷にあるようだった。
「リーフィア……」
リーフィアの瞳には涙が浮かんでいた。
「行かなければ……私は行かなければなりません。村に何が起きたのか、生き残った人はいるのか……」
悠真は迷わず言った。
「あぁ、一緒に行こう」
「でも、そうしたら牧場は……」
リーフィアの心配をよそに、ミリアムが胸を張った。
「その間、牧場は任せてください!私と牧場の皆で守ります。村の人にも手伝ってもらえるよう頼んでおきますよ!」
リーフィアは感激して、ミリアムの手を握った。
「ミリアムさん、ありがとうございます」
大岩亀のストーンは再び「クー」と鳴き、頭をゆっくりと上下に動かした。
「ストーンさんにも感謝です。あなたがいなければ、私の記憶は永遠に戻らなかったかもしれません」
「それじゃ、さっそく準備をしよう。できるだけ早く出発したほうがいい」
――――――
翌朝、悠真とリーフィアは旅の準備を整えていた。ミリアムは熱心に牧場の管理方法についてメモを取っている。
「餌の準備と水やりとあとは……うん、全部大丈夫です!」
「ミリアム、ありがとう。なるべく早く戻ってくるから、それまで頼むよ」
そこへウィンドが悠真の前に現れ、「ヒヒーン」と鳴いた。
「ウィンド、今回もよろしくな」
「ウィンドさん、よろしくお願いしますね」
リーフィアは優しくウィンドの首を撫でた。
準備が整い、出発の時が来た。ストーンが見送るように「クー」と低く鳴いた。
「行ってきます!」
ミリアムは元気よく手を振った。
「気をつけてください!リーフィアさんの村が無事でありますように!」
ウィンドの背に乗った悠真とリーフィアは空高く舞い上がった。
「大丈夫だよ、リーフィア。きっと村は無事だ」
悠真の言葉に、リーフィアは静かに頷いた。
「はい……きっと」
白石牧場は次第に小さくなり、彼らの姿は朝の光の中に消えていった。
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