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第71話 守護者との決闘
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転送魔法陣の光が消えた後、四人は見上げるほどに高い天井を持つ巨大な空間に立っていた。壁面には無数の魔法石が埋め込まれ、淡い青白い光が荘厳な雰囲気を醸し出している。
「うわあ……これは圧倒されますね」
リーリアが息を呑みながら周囲を見回す。これまでの部屋とは明らかに格が違う空間だった。
「こんな立派な場所があるなんて……」
トウマは辺りを警戒しながら歩みを進める。足音が空間に響き、その音の反響から部屋の巨大さがより一層実感される。
「なあ、あれを見てみろ」
サミュエルが部屋の奥を指差した。そこには、これまでに見たことのない大きさの扉が聳え立っている。高さは優に五メートルを超え、古代文字が刻まれた重厚な石造りの扉だった。
「あれが最奥への扉でしょうか」
「そうだろうな。いよいよ大詰めってところか」
トウマが扉に近づいていく。他の三人も緊張した面持ちでそれに続いた。扉の前に立つと、古代文字で書かれた文章が目に入る。時間の経過で一部は判読できないが、何となく警告めいた内容であることは推測できた。
「『挑戦者よ、覚悟を決めて進め』……みたいな内容ですかね」
「まあ、今更引き返すつもりもないしな」
トウマが扉に手をかけると、重い音と共にゆっくりと開いていく。扉の向こうには、円形の広大な部屋が広がっていた。天井はドーム状になっており、中央には一段高くなった円形の台がある。そして、その台の上に――
「あれは……」
四人は息を呑んだ。
台の上には、全身を銀色の鎧で覆った巨大な騎士が立っていた。身長は二メートルを優に超え、両手には美しい装飾が施された双剣を握っている。完全に動きを止めているが、その存在感は圧倒的だった。
「守護者、というところでしょうか」
「でも、動いてませんよね?」
ベンが恐る恐る近づこうとした時、突然騎士の頭部がゆっくりと動いた。
「っ!」
四人が身構える。騎士は静かに顔を上げ、兜の奥から赤い光が漏れた。そして、驚くべきことに、騎士然とした礼を四人に向かって行う。
「敬意を示してくれてるのか……?」
トウマが困惑しながら呟く。
礼を終えた騎士は、ゆっくりと双剣を構えた。その動作は実に優雅で、まさに騎士道を体現したような美しさがある。
「戦闘態勢に入ったようですね」
「よし、こちらも準備するぞ」
トウマが剣を抜くと、三人もそれぞれの武器を構えた。
――――――
戦闘が始まった瞬間、騎士は重厚な鎧を身に纏っているとは思えない素早さで動き出した。
「速い!」
トウマが咄嗟に剣で騎士の右手の剣を受け止める。しかし、騎士は左手の剣も同時に振り下ろしてくる。
「くっ!」
間一髪で身を捻り、左手の剣を避けるトウマ。騎士の攻撃は止まらず、双剣による連続攻撃を繰り出してくる。
「トウマさん、一人で相手するのは危険です!」
サミュエルが騎士の背後に回り込もうとするが、騎士は振り返ることなく左手の剣を後ろに突き出した。
「うわっ!」
サミュエルが慌てて飛び退く。
「なんて動きだ……後ろを見ずに攻撃してきた」
リーリアが魔法を唱えようとした時、騎士は今度は彼女に向かって剣を投げつけた。
「きゃあ!」
リーリアが慌てて魔法の盾を展開する。剣は盾に当たって弾かれたが、騎士はもう片方の剣でトウマとの戦闘を続けていた。
「一体どうなってるんだ……」
ベンが混乱する。騎士は明らかに四人全員の動きを把握しているようだった。
投げられた剣は、まるで意志を持っているかのように騎士の手元に戻ってくる。騎士は何事もなかったかのように双剣を構え直した。
「みんな、下手に散らばるな!こいつは全方位を警戒している。俺がこいつの注意を引く。お前たちは隙を見つけて攻撃してくれ」
トウマが騎士の攻撃を受け止めながら言う。騎士の剣技は見事で、双剣を使った攻撃と防御のバランスが完璧だった。
「わかりました!」
サミュエルが頷き、騎士の足元を狙って魔法を放つ。騎士はそれを察知して跳躍し、空中で回転しながらトウマに向かって剣を振り下ろした。
「っ!」
トウマが両手で剣を構えて受け止める。強烈な衝撃が腕に走り、石の床に膝をつきそうになる。
「今だ!」
ベンが騎士の着地の瞬間を狙って短剣で斬りかかる。しかし、騎士は着地と同時に後ろ蹴りを繰り出し、ベンを蹴り飛ばした。
「ベン!」
リーリアが回復魔法を唱えようとするが、騎士は彼女を見つめて首を横に振った。まるで「戦闘中に回復は許さない」とでも言っているかのようだった。
「こいつ……本当に騎士だな」
トウマが苦笑いする。騎士道に従って戦っているようだった。
戦闘は長時間に渡って続いた。騎士の攻撃は正確で隙がなく、四人がかりでも押し切ることができない。
「このままじゃ、じり貧だな……」
トウマが汗を拭いながら呟く。仲間たちも疲労の色を隠せない。
その時、騎士が一瞬動きを止めた。そして、トウマに向かって剣を構え直す。明らかに何かが変わった。
「来るぞ……!」
トウマが身構えた瞬間、騎士が今までとは比べものにならない速度で突進してきた。
「速すぎる!」
トウマが咄嗟に剣を横に構えるが、騎士の双剣による十字斬りが襲いかかる。
――ガギィン!
火花が散り、トウマの剣が大きく弾かれる。騎士は攻撃の手を緩めず、連続で斬撃を繰り出してくる。
「くそっ……!」
トウマが必死に防御するが、騎士の攻撃は止まらない。このままでは確実に押し切られてしまう。
「みんな、離れろ!」
トウマが叫ぶと同時に、瞳が金色に変わった。【真力解放】により、トウマの身体から眩い光が放たれる。騎士は一瞬動きを止め、トウマの変化を確認するように見つめた。
「はああああああ!」
トウマが気合いを込めて剣を振り上げる。今度は騎士の方が後ずさりを余儀なくされた。
「すごい……トウマさんの動きが……」
真力を解放したトウマは、騎士と互角以上の戦いを繰り広げていた。剣と剣がぶつかり合う音が空間に響き渡る。
「これで……終わりだ!」
トウマが全力で剣を振り下ろす。騎士は双剣でそれを受け止めようとしたが、トウマの力は騎士の想像を超えていた。
――バキン!
騎士の右手の剣が砕け散る。そして、トウマの剣が騎士の胸部を貫いた。
「……」
騎士は静かに膝をつき、残った剣を地面に置いた。そして、最後にもう一度、トウマに向かって礼を行う。
「お前も……立派な騎士だったよ」
トウマが騎士に向かって呟く。騎士は満足そうに頷くと、霧のように消えていった。戦闘が終わった空間に、静寂が戻る。四人は肩で息をしながら、騎士が消えた場所を見つめていた。
「終わった……のでしょうか」
「ああ、お疲れ様だ」
トウマが金色の瞳を元に戻しながら答える。
その時、騎士が立っていた台の奥から、新たな扉が現れた。
「あれが……最奥への扉ですね」
「やったぜ!ついに最奥だ!」
四人は疲れた身体を引きずりながら、最後の扉へと向かった。
――――――
最奥の部屋は、これまでの部屋とは全く異なる輝きに満ちていた。無数の宝石や金貨が山のように積まれ、魔法のアイテムが棚に整然と並んでいる。
「うわあ……これは凄い」
「本当に宝の山ですね」
四人は圧倒されながら宝物庫を見回す。部屋の中央には、見覚えのある魔法陣が描かれていた。
「転送魔法陣ですね。これで地上に戻れます」
「よし、それじゃあ宝物を分けるか」
トウマが提案すると、四人は宝物の山分けを始めた。金貨や宝石、魔法の道具など、それぞれが持てる分だけを取り分ける。
「これだけあれば、しばらくは安泰ですね」
「本当に……こんなにうまくいくなんて」
「お疲れ様。良いチームワークだったぜ」
トウマが三人に労いの言葉をかける。
「こちらこそ、トウマさんのおかげです」
四人は転送魔法陣の上に立ち、ダンジョンからの脱出を果たした。
――――――
ダンジョンから出ると、外は既に夕暮れでオレンジ色の空が美しく染まっていた。
「終わりましたね……」
「長い一日でしたが、僕たちやり遂げたんですね」
「気持ちは分かるが、まだ終わりじゃないぞ。街に戻るまでが冒険だからな」
トウマの少し茶化したような声に、三人も笑いながら頷いた。
その後、四人は無事街に戻ると冒険者ギルドにダンジョン踏破の報告を行った。ギルドの職員たちは、未踏ダンジョンの踏破という快挙に驚愕し、一行を称賛した。そうして四人で酒場での祝杯を挙げた翌日、トウマは当初の予定だった星降都市フォーメーターへ向かうことを三人に告げた。
「そうですか。トウマさん、今回は本当にありがとうございました」
「ありがとうございました!」
サミュエルがそう礼を言うと、他の二人も一緒に頭を下げた。
「いやいや、俺も楽しかったよ。またな」
トウマが三人に別れを告げると、街の出口に向かって歩き始めた。
街の外れまで来ると、トウマは空を見上げた。
「さてと、今度こそフォーメーターに向かわないとな」
トウマは軽やかな足取りで歩きながら、楽しそうにそう呟いた。
「うわあ……これは圧倒されますね」
リーリアが息を呑みながら周囲を見回す。これまでの部屋とは明らかに格が違う空間だった。
「こんな立派な場所があるなんて……」
トウマは辺りを警戒しながら歩みを進める。足音が空間に響き、その音の反響から部屋の巨大さがより一層実感される。
「なあ、あれを見てみろ」
サミュエルが部屋の奥を指差した。そこには、これまでに見たことのない大きさの扉が聳え立っている。高さは優に五メートルを超え、古代文字が刻まれた重厚な石造りの扉だった。
「あれが最奥への扉でしょうか」
「そうだろうな。いよいよ大詰めってところか」
トウマが扉に近づいていく。他の三人も緊張した面持ちでそれに続いた。扉の前に立つと、古代文字で書かれた文章が目に入る。時間の経過で一部は判読できないが、何となく警告めいた内容であることは推測できた。
「『挑戦者よ、覚悟を決めて進め』……みたいな内容ですかね」
「まあ、今更引き返すつもりもないしな」
トウマが扉に手をかけると、重い音と共にゆっくりと開いていく。扉の向こうには、円形の広大な部屋が広がっていた。天井はドーム状になっており、中央には一段高くなった円形の台がある。そして、その台の上に――
「あれは……」
四人は息を呑んだ。
台の上には、全身を銀色の鎧で覆った巨大な騎士が立っていた。身長は二メートルを優に超え、両手には美しい装飾が施された双剣を握っている。完全に動きを止めているが、その存在感は圧倒的だった。
「守護者、というところでしょうか」
「でも、動いてませんよね?」
ベンが恐る恐る近づこうとした時、突然騎士の頭部がゆっくりと動いた。
「っ!」
四人が身構える。騎士は静かに顔を上げ、兜の奥から赤い光が漏れた。そして、驚くべきことに、騎士然とした礼を四人に向かって行う。
「敬意を示してくれてるのか……?」
トウマが困惑しながら呟く。
礼を終えた騎士は、ゆっくりと双剣を構えた。その動作は実に優雅で、まさに騎士道を体現したような美しさがある。
「戦闘態勢に入ったようですね」
「よし、こちらも準備するぞ」
トウマが剣を抜くと、三人もそれぞれの武器を構えた。
――――――
戦闘が始まった瞬間、騎士は重厚な鎧を身に纏っているとは思えない素早さで動き出した。
「速い!」
トウマが咄嗟に剣で騎士の右手の剣を受け止める。しかし、騎士は左手の剣も同時に振り下ろしてくる。
「くっ!」
間一髪で身を捻り、左手の剣を避けるトウマ。騎士の攻撃は止まらず、双剣による連続攻撃を繰り出してくる。
「トウマさん、一人で相手するのは危険です!」
サミュエルが騎士の背後に回り込もうとするが、騎士は振り返ることなく左手の剣を後ろに突き出した。
「うわっ!」
サミュエルが慌てて飛び退く。
「なんて動きだ……後ろを見ずに攻撃してきた」
リーリアが魔法を唱えようとした時、騎士は今度は彼女に向かって剣を投げつけた。
「きゃあ!」
リーリアが慌てて魔法の盾を展開する。剣は盾に当たって弾かれたが、騎士はもう片方の剣でトウマとの戦闘を続けていた。
「一体どうなってるんだ……」
ベンが混乱する。騎士は明らかに四人全員の動きを把握しているようだった。
投げられた剣は、まるで意志を持っているかのように騎士の手元に戻ってくる。騎士は何事もなかったかのように双剣を構え直した。
「みんな、下手に散らばるな!こいつは全方位を警戒している。俺がこいつの注意を引く。お前たちは隙を見つけて攻撃してくれ」
トウマが騎士の攻撃を受け止めながら言う。騎士の剣技は見事で、双剣を使った攻撃と防御のバランスが完璧だった。
「わかりました!」
サミュエルが頷き、騎士の足元を狙って魔法を放つ。騎士はそれを察知して跳躍し、空中で回転しながらトウマに向かって剣を振り下ろした。
「っ!」
トウマが両手で剣を構えて受け止める。強烈な衝撃が腕に走り、石の床に膝をつきそうになる。
「今だ!」
ベンが騎士の着地の瞬間を狙って短剣で斬りかかる。しかし、騎士は着地と同時に後ろ蹴りを繰り出し、ベンを蹴り飛ばした。
「ベン!」
リーリアが回復魔法を唱えようとするが、騎士は彼女を見つめて首を横に振った。まるで「戦闘中に回復は許さない」とでも言っているかのようだった。
「こいつ……本当に騎士だな」
トウマが苦笑いする。騎士道に従って戦っているようだった。
戦闘は長時間に渡って続いた。騎士の攻撃は正確で隙がなく、四人がかりでも押し切ることができない。
「このままじゃ、じり貧だな……」
トウマが汗を拭いながら呟く。仲間たちも疲労の色を隠せない。
その時、騎士が一瞬動きを止めた。そして、トウマに向かって剣を構え直す。明らかに何かが変わった。
「来るぞ……!」
トウマが身構えた瞬間、騎士が今までとは比べものにならない速度で突進してきた。
「速すぎる!」
トウマが咄嗟に剣を横に構えるが、騎士の双剣による十字斬りが襲いかかる。
――ガギィン!
火花が散り、トウマの剣が大きく弾かれる。騎士は攻撃の手を緩めず、連続で斬撃を繰り出してくる。
「くそっ……!」
トウマが必死に防御するが、騎士の攻撃は止まらない。このままでは確実に押し切られてしまう。
「みんな、離れろ!」
トウマが叫ぶと同時に、瞳が金色に変わった。【真力解放】により、トウマの身体から眩い光が放たれる。騎士は一瞬動きを止め、トウマの変化を確認するように見つめた。
「はああああああ!」
トウマが気合いを込めて剣を振り上げる。今度は騎士の方が後ずさりを余儀なくされた。
「すごい……トウマさんの動きが……」
真力を解放したトウマは、騎士と互角以上の戦いを繰り広げていた。剣と剣がぶつかり合う音が空間に響き渡る。
「これで……終わりだ!」
トウマが全力で剣を振り下ろす。騎士は双剣でそれを受け止めようとしたが、トウマの力は騎士の想像を超えていた。
――バキン!
騎士の右手の剣が砕け散る。そして、トウマの剣が騎士の胸部を貫いた。
「……」
騎士は静かに膝をつき、残った剣を地面に置いた。そして、最後にもう一度、トウマに向かって礼を行う。
「お前も……立派な騎士だったよ」
トウマが騎士に向かって呟く。騎士は満足そうに頷くと、霧のように消えていった。戦闘が終わった空間に、静寂が戻る。四人は肩で息をしながら、騎士が消えた場所を見つめていた。
「終わった……のでしょうか」
「ああ、お疲れ様だ」
トウマが金色の瞳を元に戻しながら答える。
その時、騎士が立っていた台の奥から、新たな扉が現れた。
「あれが……最奥への扉ですね」
「やったぜ!ついに最奥だ!」
四人は疲れた身体を引きずりながら、最後の扉へと向かった。
――――――
最奥の部屋は、これまでの部屋とは全く異なる輝きに満ちていた。無数の宝石や金貨が山のように積まれ、魔法のアイテムが棚に整然と並んでいる。
「うわあ……これは凄い」
「本当に宝の山ですね」
四人は圧倒されながら宝物庫を見回す。部屋の中央には、見覚えのある魔法陣が描かれていた。
「転送魔法陣ですね。これで地上に戻れます」
「よし、それじゃあ宝物を分けるか」
トウマが提案すると、四人は宝物の山分けを始めた。金貨や宝石、魔法の道具など、それぞれが持てる分だけを取り分ける。
「これだけあれば、しばらくは安泰ですね」
「本当に……こんなにうまくいくなんて」
「お疲れ様。良いチームワークだったぜ」
トウマが三人に労いの言葉をかける。
「こちらこそ、トウマさんのおかげです」
四人は転送魔法陣の上に立ち、ダンジョンからの脱出を果たした。
――――――
ダンジョンから出ると、外は既に夕暮れでオレンジ色の空が美しく染まっていた。
「終わりましたね……」
「長い一日でしたが、僕たちやり遂げたんですね」
「気持ちは分かるが、まだ終わりじゃないぞ。街に戻るまでが冒険だからな」
トウマの少し茶化したような声に、三人も笑いながら頷いた。
その後、四人は無事街に戻ると冒険者ギルドにダンジョン踏破の報告を行った。ギルドの職員たちは、未踏ダンジョンの踏破という快挙に驚愕し、一行を称賛した。そうして四人で酒場での祝杯を挙げた翌日、トウマは当初の予定だった星降都市フォーメーターへ向かうことを三人に告げた。
「そうですか。トウマさん、今回は本当にありがとうございました」
「ありがとうございました!」
サミュエルがそう礼を言うと、他の二人も一緒に頭を下げた。
「いやいや、俺も楽しかったよ。またな」
トウマが三人に別れを告げると、街の出口に向かって歩き始めた。
街の外れまで来ると、トウマは空を見上げた。
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