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第145話
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「あ、ありがとうございます。始まったんですね……まぁでも、屋敷の方はヤトさん達に任せておけば大丈夫でしょ」
ギルドの部屋で本を読んでいたイリオの元に知らせが届く。座っていた椅子から立ち上がり身支度を整えていく。
「こちらも動きます、皆さんにも知らせてください」
そう呟くと何かが動く気配がし、気のせいだったのかと思えるほど静かになった。
「イリオさん、お出かけですか?」
「はい、ちょっと用事がございまして」
部屋を出て階段を降り、受付を通ろうとしたところで夜勤の受付嬢に話しかけられた。お世話になってからすっかり仲良くなってしまったようである。
「夜も遅いですしお気を付けください。イリオさんに敵う人なんていないでしょうけどね」
「ははは、じゃあいってきますね」
少し前にギルドからお願いされ冒険者達の訓練相手として試合をしたのだが……まぁあまりにも弱すぎてボコボコにしてしまいあっという間に有名になってしまったイリオなのだった。
「さてっと、正直私が出てももう終わっちゃってるんですよね……」
私がやること、それは知略で相手の先手を取ることであって鎮圧ではない。実際既に村に侵入したであろう人物達は始末している、難民のほとんどがここの環境を受け入れられずに国境に野営地を勝手に作り暮らしている。しかし中には帝国理念を捨ててこの村……すでに街というべきだろうここに受け入れてもらった者たちも少数だが存在している。
「外と内から同時に攻めれば簡単に攻略できる。それは正しいのですが、素人にできる芸当ではありませんね……素人の浅知恵、粗雑にも程があります」
ここに受け入れられた人の中には勿論本意で合流した人も居る。元々疑問を持っていた者、未来を考え新たな思想を受け入れた者、考えは知りませんけど正しい判断をしたと思います。
「しかし思想というか信仰といいますか、こうも根強いともはや呪いですねまったく」
人の考えとはそう簡単に変わるものではない。状況を受け入れ柔軟に対応できるのであればそれは一種の才能と言ってもいい発想である。だからこそ、すぐに予想ができたし一目でわかった。なにしろイリオが話しかけただけであからさまな嫌悪の視線を向けてくるのだから嫌でもわかる。
「潜むなら目的を隠す技術が必須、そこら辺の平民にできることではないのですよ。まぁ、物語としては王道ですしなにかの空想本の受け売りというとこですかね」
イリオは状況を整理しながら歩みを進める。まず屋敷など閉所での戦闘でまずヤトさんや蜘蛛さんズに敵う相手なんてそうそういないから問題無し、局所的にはなるが彼女達の力は強力なものだからである。続いてここに潜伏していた内側から騒動を起こす予定だった素人密偵は既に始末済み、反応ですぐにバレていたから苦労もしなかったし本気でここに移住しようとするものと不本意ながら作戦として潜入した者で他種族に対する対応や反応が明らかに違うから調べる必要すらなかった。そしてここからは外の難民達の対応である、おそらく領主の奥方もこちらに合流しているだろう。安全なとこから高みの見物、いざという時すぐに逃げれる準備も兼ねているだろう。
「身を守るということに関してはしっかりしてますね、民を道具扱いしてるのは好ましくないですけど……」
町の入り口を出て外に出ていくと結構な量の明かりが近づいてくるのが見える。松明の炎だろう、難民のほぼ全員が参加していると見ていい量だと思う。
「イリオさん」
暗闇から不意に声をかけられる。
「準備はいかがですか?」
「いつでも、皆準備完了しています」
「では、作戦開始です」
「了解!」
その声の後、笛の音が響き渡る。次の瞬間暴風が吹き荒れ、その風に乗り水滴が周囲を駆け巡る。
「な、なんだ!?」
「雨、風が強くて動けないっ!?」
「松明の火が消えてしまう! 皆集まれ!」
集団からそのような声が聞こえてくる。今回、第一段階として風魔法と水魔法を使える者を呼び寄せた。風の結界を作り、そこに水を含ませることで敵の明かりと行動の自由を奪う。こういう時は一人も逃がさないのが重要なのです。
「さてと、警告します。あなた方のこの領地への進入は許可されておりません、即刻領地外へと退去してください。これは最終通告であり従わない場合は命の保証は致しません」
イリオは風魔法に声を乗せて難民の集団へ最後の警告をする。これで引けばよし、引かないのであれば主ヴリトラの名の下にその方針に従い対応する。普段なら主様自ら動いて文字通り全て吹き飛ばすのだろうけど今回、タイミングもあったのだろうけど家族に任せるという方法を取った。信頼はもちろん対応を一任する、全て任せるということなのだと思う。ならば応えなければいけないということだ。
「返事は無し……ですか。残念です」
イリオは残念そうに手を振って合図を送る。次の瞬間風が止み、難民の集団を煌々と燃え上がる赤い炎が包み逃げ道を完全に塞いだ。
「そんな……なぜ貴女が私達の前に立ちはだかるのですか!! ルーフェリアス様!!」
難民の一人が叫ぶ。彼らの頭上には漆黒の翼を羽ばたかせるかつて帝国の守護天使と呼ばれていた彼女が居た。しかしその目は冷たく、慈愛の欠片もない恐怖すら感じさせるものであった。
「なぜ助けてくれないのですか!」
「私達を見捨てないでください!!」
難民達はルーフェに助けを求める。彼女が帝国を捨ててからしばらく経つがそれでも守護天使としての彼女の存在は大きかったらしい。
「お前達はまたそうやって他人の物を奪いたがる……お母様がなぜこんな国を大切にしていたのか理解に苦しむ……」
ルーフェは最後まで略奪思想の強い帝国にがっかりした。炎に囲まれ生命の危機に瀕してなお自分達では何もせずに助けを求めてくる、今自分達が何をしようとしていたのか考えすらしていない。奴らの発する騒音が耳障りに感じる……
「うるさい、もう最後の機会は与えた。それを拒んだのはお前達だ……そうですね、守護天使として最後の慈悲です」
そう言うとルーフェは腕を上げ、そのまま振り抜いた、すると難民達を囲んでいた炎が一気に中心に集まった。その炎は勢いを増し悲鳴すら包み込み一瞬で一帯を燃やし尽くした。
「苦しむことなく灰となり大地へ帰りなさい」
「ルーフェさんお疲れさまです」
「この位たいしたことありませんよ」
イリオの声に答えながらルーフェも地上へと降り立つ。二人は火柱を残念そうに眺めていた。
「主様はこういう虚しさを全て背負っているのですかね」
「今回も全て俺の判断でやったことにしていいって言ってましたからね」
魔竜ヴリトラ、話の分かる強大な竜であると同時にその逆鱗に触れた者は全てを破壊される恐怖の象徴。しかしその本質は家族を守り幸せにする、ただそれだけにすべてをささげた一人の男だということを世界は知らないのだ。
「私達だけが知っていればいいのです」
「そうですね、私達がご主人様へ最大の愛で返してあげればいいのです!」
二人は少し可笑しくなって笑いあった。
「さて、最後の仕事をしに行きましょうか」
「さっさと終わらせて帰りましょう」
二人は歩みだした、今回の諸悪の根源を始末するために。
ギルドの部屋で本を読んでいたイリオの元に知らせが届く。座っていた椅子から立ち上がり身支度を整えていく。
「こちらも動きます、皆さんにも知らせてください」
そう呟くと何かが動く気配がし、気のせいだったのかと思えるほど静かになった。
「イリオさん、お出かけですか?」
「はい、ちょっと用事がございまして」
部屋を出て階段を降り、受付を通ろうとしたところで夜勤の受付嬢に話しかけられた。お世話になってからすっかり仲良くなってしまったようである。
「夜も遅いですしお気を付けください。イリオさんに敵う人なんていないでしょうけどね」
「ははは、じゃあいってきますね」
少し前にギルドからお願いされ冒険者達の訓練相手として試合をしたのだが……まぁあまりにも弱すぎてボコボコにしてしまいあっという間に有名になってしまったイリオなのだった。
「さてっと、正直私が出てももう終わっちゃってるんですよね……」
私がやること、それは知略で相手の先手を取ることであって鎮圧ではない。実際既に村に侵入したであろう人物達は始末している、難民のほとんどがここの環境を受け入れられずに国境に野営地を勝手に作り暮らしている。しかし中には帝国理念を捨ててこの村……すでに街というべきだろうここに受け入れてもらった者たちも少数だが存在している。
「外と内から同時に攻めれば簡単に攻略できる。それは正しいのですが、素人にできる芸当ではありませんね……素人の浅知恵、粗雑にも程があります」
ここに受け入れられた人の中には勿論本意で合流した人も居る。元々疑問を持っていた者、未来を考え新たな思想を受け入れた者、考えは知りませんけど正しい判断をしたと思います。
「しかし思想というか信仰といいますか、こうも根強いともはや呪いですねまったく」
人の考えとはそう簡単に変わるものではない。状況を受け入れ柔軟に対応できるのであればそれは一種の才能と言ってもいい発想である。だからこそ、すぐに予想ができたし一目でわかった。なにしろイリオが話しかけただけであからさまな嫌悪の視線を向けてくるのだから嫌でもわかる。
「潜むなら目的を隠す技術が必須、そこら辺の平民にできることではないのですよ。まぁ、物語としては王道ですしなにかの空想本の受け売りというとこですかね」
イリオは状況を整理しながら歩みを進める。まず屋敷など閉所での戦闘でまずヤトさんや蜘蛛さんズに敵う相手なんてそうそういないから問題無し、局所的にはなるが彼女達の力は強力なものだからである。続いてここに潜伏していた内側から騒動を起こす予定だった素人密偵は既に始末済み、反応ですぐにバレていたから苦労もしなかったし本気でここに移住しようとするものと不本意ながら作戦として潜入した者で他種族に対する対応や反応が明らかに違うから調べる必要すらなかった。そしてここからは外の難民達の対応である、おそらく領主の奥方もこちらに合流しているだろう。安全なとこから高みの見物、いざという時すぐに逃げれる準備も兼ねているだろう。
「身を守るということに関してはしっかりしてますね、民を道具扱いしてるのは好ましくないですけど……」
町の入り口を出て外に出ていくと結構な量の明かりが近づいてくるのが見える。松明の炎だろう、難民のほぼ全員が参加していると見ていい量だと思う。
「イリオさん」
暗闇から不意に声をかけられる。
「準備はいかがですか?」
「いつでも、皆準備完了しています」
「では、作戦開始です」
「了解!」
その声の後、笛の音が響き渡る。次の瞬間暴風が吹き荒れ、その風に乗り水滴が周囲を駆け巡る。
「な、なんだ!?」
「雨、風が強くて動けないっ!?」
「松明の火が消えてしまう! 皆集まれ!」
集団からそのような声が聞こえてくる。今回、第一段階として風魔法と水魔法を使える者を呼び寄せた。風の結界を作り、そこに水を含ませることで敵の明かりと行動の自由を奪う。こういう時は一人も逃がさないのが重要なのです。
「さてと、警告します。あなた方のこの領地への進入は許可されておりません、即刻領地外へと退去してください。これは最終通告であり従わない場合は命の保証は致しません」
イリオは風魔法に声を乗せて難民の集団へ最後の警告をする。これで引けばよし、引かないのであれば主ヴリトラの名の下にその方針に従い対応する。普段なら主様自ら動いて文字通り全て吹き飛ばすのだろうけど今回、タイミングもあったのだろうけど家族に任せるという方法を取った。信頼はもちろん対応を一任する、全て任せるということなのだと思う。ならば応えなければいけないということだ。
「返事は無し……ですか。残念です」
イリオは残念そうに手を振って合図を送る。次の瞬間風が止み、難民の集団を煌々と燃え上がる赤い炎が包み逃げ道を完全に塞いだ。
「そんな……なぜ貴女が私達の前に立ちはだかるのですか!! ルーフェリアス様!!」
難民の一人が叫ぶ。彼らの頭上には漆黒の翼を羽ばたかせるかつて帝国の守護天使と呼ばれていた彼女が居た。しかしその目は冷たく、慈愛の欠片もない恐怖すら感じさせるものであった。
「なぜ助けてくれないのですか!」
「私達を見捨てないでください!!」
難民達はルーフェに助けを求める。彼女が帝国を捨ててからしばらく経つがそれでも守護天使としての彼女の存在は大きかったらしい。
「お前達はまたそうやって他人の物を奪いたがる……お母様がなぜこんな国を大切にしていたのか理解に苦しむ……」
ルーフェは最後まで略奪思想の強い帝国にがっかりした。炎に囲まれ生命の危機に瀕してなお自分達では何もせずに助けを求めてくる、今自分達が何をしようとしていたのか考えすらしていない。奴らの発する騒音が耳障りに感じる……
「うるさい、もう最後の機会は与えた。それを拒んだのはお前達だ……そうですね、守護天使として最後の慈悲です」
そう言うとルーフェは腕を上げ、そのまま振り抜いた、すると難民達を囲んでいた炎が一気に中心に集まった。その炎は勢いを増し悲鳴すら包み込み一瞬で一帯を燃やし尽くした。
「苦しむことなく灰となり大地へ帰りなさい」
「ルーフェさんお疲れさまです」
「この位たいしたことありませんよ」
イリオの声に答えながらルーフェも地上へと降り立つ。二人は火柱を残念そうに眺めていた。
「主様はこういう虚しさを全て背負っているのですかね」
「今回も全て俺の判断でやったことにしていいって言ってましたからね」
魔竜ヴリトラ、話の分かる強大な竜であると同時にその逆鱗に触れた者は全てを破壊される恐怖の象徴。しかしその本質は家族を守り幸せにする、ただそれだけにすべてをささげた一人の男だということを世界は知らないのだ。
「私達だけが知っていればいいのです」
「そうですね、私達がご主人様へ最大の愛で返してあげればいいのです!」
二人は少し可笑しくなって笑いあった。
「さて、最後の仕事をしに行きましょうか」
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二人は歩みだした、今回の諸悪の根源を始末するために。
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