コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき

文字の大きさ
86 / 107

第86話 炎のモンスターとは

しおりを挟む
 鉱山都市は、山の中をくり抜いて作られている。
 主に、住居は下にあるらしい。
 これはエレベーターという、滑車の力で大きな台座を動かす仕組みで移動する。

 荷馬車ごと乗り込むと、台座がガタン、と音を立てた。

「ひえっ」

 フリッカが悲鳴を上げる。
 ジェダは物珍しそうに、キョロキョロと見回していた。

「変わったところだな。なんつうか、檻みてえだ」

「変わらないさ。これは、我々がエレベーターの外に落ちないための檻だよ」

「落ちる? それほどまでに危険なものなのか?」

 イングリドの疑問はすぐに解消された。
 エレベーターは分厚い岩盤の間を抜け、地下へと到達する。

 その地下空間が、とんでもなく広大だったのだ。

「おおおーっ!!」

「な、なんやこれはー!!」

 イングリドとフリッカが馬車を駆け下り、檻に掴まって叫ぶ。
 まさか、山の真下に、地下渓谷とでも言うべき光景が広がっていたとは。

 極太の柱が何本も天を支え、谷底を水が流れる音がする。
 地下だと言うのに風が吹き、そこは一つの世界だった。

 周囲の明るさは、夜そのもの。
 だが、この地下においては空となる、分厚い岩盤がキラキラと輝いているではないか。
 あれは、岩に含まれる光石という鉱石の効果だ。
 遠く地上の光を、いくつもの光石を経由して、この地下に届けているのだ。

 それはまるで星空だった。
 さらに、星空は地上にも広がっている。

 点々と、柱の周囲に輝きが灯っていた。
 ドワーフの都市である。

 強い輝きは、炉の炎であろう。
 昼も夜もなく動き続ける炉があり、これに従事するドワーフたちがおり、鉱山都市は天と地の星あかりに包まれていた。

 幻想的な光景だ。
 イングリドとフリッカは、すっかり見とれてしまっている。

「ちぇっ、戻ってきちまったかい。あーあー、しけた町だよほんとに」

 ここで毒づくギスカ。

「どうしてだギスカ。とても美しいところじゃないか」

「そうやで! ロマンチックー! うち、住んでみたいわー」

「来たばかりの頃はみんなそう言うんだよ! だけどね、ここは星あかりしかないんだよ! 外の世界に出て、あのでっかいお日様を見てごらん! こんなちゃちな明かりなんかバカバカしくって!」

「なんだと! ギスカ! 炉の輝きはおいらたちドワーフの誇りだぞ!」

「誇りとかどうとか関係ないんだよ! 太陽の方が明るいって言ってるんだよ!」

「そりゃあそうだが……」

 兄妹喧嘩をしている。

「ギスカの気持ちも分かるな。この世界は、夜の美しさを持った世界だ。だが、確かにこの程度の明るさでは、色を見分けるのは難しいだろうね」

「そうだろうそうだろう!? 外の世界に出て、あたいは驚いたね。世の中はこんなにも多くの光と色彩に満ちてたんだって! あたいが今まで使ってた鉱石は、こんな色をしていたんだ、こんな姿をしてたんだって! だからあたいは外の世界が好きさ!」

 鼻息も荒く、ギスカが力説した。
 その間に、エレベーターは地下大地に到着したようだった。

 なんらかの手段で俺たちの到着を知っていたのか、数名のドワーフが出迎えてくれる。

「よくぞ戻ってきたな、優秀なる鉱石魔法の使い手ギスカ! そして我らを助けるために来てくれたと聞いた。感謝するぞ、冒険者たち!」

 真っ白な髭をした老齢のドワーフが告げる。

「冒険者、ラッキークラウンです。今回の仕事を受注したので参りました」

「わしはタートル鉱山都市の長、ザギンである。立ち話も何だ。酒場へ行こう」

 ドワーフと言えば酒場であろうか。
 案内されたのは、入り口の小さな建物だった。
 ドワーフサイズだからだろう。横幅はあるが、立ったままだと頭がつかえてしまう。

 ジェダなど、とても窮屈そうに身を縮めて入り口をくぐっていた。
 既に、歓迎の席が設けられていた。

 大きな丸いテーブルの上には、巨大な鍋が鎮座している。
 もしや、テーブル中央に鍋を熱する装置がついているのか。

 鍋を満たすスープが、コポコポと音を立てて煮えている。
 これを、ハシゴに登ったドワーフがテーブルについた俺たちへ選り分ける。

 スープの中にはゴロゴロと肉が入っており、聞けば土中に住む亜竜の肉なのだとか。
 珍味である。

 そして供されるのは、基本的には強い蒸留酒。
 ただ、酒がダメなもののために、地下水をハーブで香り付けしたものもある。

 蒸留酒をこの水で割ってもいい。
 俺はそうした。
 美味い。

「これは美味しいな。酒もいい」

「だろ? しけた地下都市だけどね、酒と料理だけは美味いんだよ。ただし、料理のレパートリーが少ないのがいただけないね」

 辛口なギスカも、この酒と料理は認めるか。

「それで、ザギン殿。我々に依頼した理由である、炎のモンスターとは一体どのような? 詳しい状況をお聞かせ願いたい」

 水割りで唇を潤した後、俺は長に尋ねた。
 彼は白い髭をしごきながら、うーむ、と唸る。

「そうだな。それはまず、わしらの仕事について伝えてからでなければならん。あれらは、わしらの仕事を根幹から揺るがす存在なのだ。お主、わしらドワーフの仕事を知っておるかな?」

「鉱山都市にて、地に埋まった金属を掘り出すことでしょう」

「うむ、然り。外の世界にあまねく存在する金属は、全てわしらドワーフが掘り出し、精製した金属となる。人もわしらの真似事をして、鉱山にて鉱石を掘り返しておるが……彼奴らはわしらと違って弱い。山の中でバタバタ死ぬ。しかしわしらは死なぬ。鉱山にて石を掘ることこそ、わしらの天職よ」

 ちらりとギスカを見るザギン。
 ギスカは鼻を鳴らすと、ぷいっとそっぽを向いた。

「だが、その天職を揺るがす者が現れた。それが炎のモンスターよ。その姿は人に似て、しかし翼があり尾があり、集団で地の底のマグマより飛び出してきた。あれはまるで……伝説に聞く魔族、バルログのようだった」

 おや、どうやら俺に関わりのある話のようだ。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

処理中です...