コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき

文字の大きさ
102 / 107

第102話 推理の裏付けをせよ

しおりを挟む
 とは言ってみたものの。

「あくまで俺の推理に過ぎない」

「いつものことだな」

 イングリドがすぐに納得する。
 俺というキャラクターを実によく理解してくれているようでありがたい。

 見ろ。
 フリッカなど露骨に呆れているではないか。
 ギスカは無関心だな。彼女は人間のあれこれに、そこまで興味を抱かない。観客気分なのだ。

「つまり、その怨霊をおびき出すか探し出して叩きのめせばいいんだな? だが、その前に、そいつが本当に俺がぶん殴れる存在かどうかを確かめる、と」

「戦闘が絡むと君の頭の回転は実に早くなるなジェダ」

「当たり前だ。戦えるかどうかが掛かってるんだぞ。俺にとっちゃ死活問題だ。この世界なんてな、戦いがなければ退屈で堪らん世界なんだ。ああ、全く、魔王を倒した英雄様とやらは余計なことをしてくれたぜ。まだ魔王がいれば、世の中は争いに満ちていて戦う機会も山程あっただろうに……」

 本音がだだ漏れである。
 自ら争いの種を作ろうとしないだけ、彼はまだ善良な方だ。

「思うのだが。オーギュストといい、ネレウスといい、ジェダといい……。魔族というのはどういうタイプの者たちなのかがよく分かってきたな。オーギュストが特別なのだと思っていたが」

「俺をこいつと一緒にするな!」

「俺もジェダとは全然違うと思うが……!」

「似とるわ」

「あっはっは、同類だねえ」

 失敬な。

「ま、あたいらはそんな道化師が気に入ってるからついてきてるわけだけどね。なんだかんだで、あんたとイングリドが絡んだ話はめちゃめちゃにややこしい事になるからね。それでも結局はそれなりの形に収まるし。今回も付き合うよ」

 代表してギスカが言ったが、仲間たちはみんな、概ね同意らしい。
 付き合いがとてもいい。
 ありがたい話だ。

「それで……何をするんや? 裏付けをするって言っても、子どもらがわーって町中に散ってるんやろ? 本人に聞くんか? 現地に行くんか?」

「ジョノーキン村は徒歩で二日かかるから現実的ではないな」

 イングリドの言葉にうなずく。
 俺と彼女でまったり歩いたものな。

 荷馬車でも一日以上はかかる。
 子どもたちが潜伏している間にも、俺の推理通りに怨霊が事件の裏側にいるならば、また犠牲者が出るかも知れない。

 今回は、番頭を刺したのがハンスだとして、傷が浅かったということは彼の意識が抵抗しているのだろう。
 だが、いつそれが怨霊に負けてしまうとも限らない。

「なので、二手に分かれる。俺はアキンドー商会で聞き込みをする。というか、ジョノーキン村の再建はアキンドー商会が出資している。下調べが行われているだろうから、村に残っていた資料も商会にあるだろう」

「俺とフリッカでガキどもを探せばいいな? おいフリッカ」

「はいはい。うちが妖精を呼ばないかんな。んで、オーギュスト。どうやって決着つけるつもりや?」

「ああ、念の為に子どもたちをアキンドー商会の前まで連れてきてくれ。俺たちが影で怨霊を退治するのは簡単かもしれないが、それじゃあ子どもたちに掛けられた疑いは晴れないだろう? それに、せっかくなら派手にやりたい」

「道化師の悪い癖が出たねえ……」

 ギスカが笑った。
 こうして、二手に分かれる。

 最初にジェダが捕まえた子どもは、宿の俺たちの部屋にかくまっている。
 彼が飽きて外に飛び出さないうちに、色々決着をつけたいところだ。

 アキンドー商会は、いつものように営業していた。

「おや、ラッキークラウンの方々。どうしたんですかまた。何か進捗がありましたか」

「ああ。そちらに保管してあるであろう、ジョノーキン村の資料を見たい。俺の推理の裏付けをしたくてね。これができれば、解決まではもうすぐだ」

「ええっ!? もう解決!? 早い!!」

 文字通り、飛び上がって驚くアキンドー商会の商人。
 俺たちはすぐに奥へ案内された。

 商会の仕事を次々に解決し、しかも王女イングリッドが参加している冒険者パーティだ。
 この特別扱いに文句を言う者はいない。

 信頼や実績、コネクションは積み重ねておくものである。

 商会の奥まった場所で、ジョノーキン村に関する資料はまとめられていた。
 ガットルテ城で仕事をしていた時に見知った顔がいる。
 城の文官だ。

「おや、オーギュスト殿! あっ、姫様まで!? どうされたのですかな?」

「ジョノーキン村の資料を調べにね。そうか、村の再開発はガットルテ王国の事業だから、君がここにいるのだな」

「ええ、そうです。村の資料はこのようにまとめてありますよ。本来は外に出してはいけないものですが……」

 文官がイングリドを見て、頷いた。

「なるほど、対策もバッチリということですな。王女殿下が見たいと仰られるなら、これを断ることはできません。どうぞ」

 紙束にまとめられた資料を受け取り、イングリドがきょとんとした。

「……私が読むのか?」

「立場上、俺は外国から来た人間だからね。だが、イングリドなら問題はない。国王陛下にも、事後で報告すればいいだろうし」

「そういうことか。調査に不向きな私はこのために。なるほどねえ……」

 ふっと鼻息をついてから、イングリドが紙束を読み始めた。
 俺と文官に聞こえる程度の大きさの音読である。

「地下に神殿の跡あり。破壊された像あり。魔力痕を検知したが、ごく僅かなり……」

 俺とイングリドが、マンティコアと戦った村の地下。
 あれはもっと深くまで続いていたのだ。
 そしてそこに、神殿があった。

 まつろわぬ民が、自らを怨霊と化し、代々恨み、憎しみを伝えていくための施設だったのだろう。
 シンボルとなるらしき彫像があったそうだ。
 そしてそれは破壊されていた。

 マンティコアによって、彫像を用いた儀式が完遂されたということか?
 いや、今正に執り行われているところに俺たちが乱入し、儀式の完成を不完全にした。

 俺が、今回の子どもたちの凶行について、怨霊による仕業である論を唱えると、文官は深く頷いた。

「それなら納得できます。マンティコアに協力していた村人ですが、彼は自爆する前に倒されたでしょう。その後、魔法が使えなくなったそうなんですよ。つまり、彼らの魔力は彼らの神……言うなれば怨霊が蓄えてきたものを分け与えられていたのでしょう。ですが、それができなくなった。今はその村人は牢におりますが、何の力も無くなっています。これはつまり……」

「怨霊自体が、力を維持できなくなってきている可能性があるな」

 焦りからの犯行。
 どうやらこの線で確定らしいな。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

処理中です...