モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

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第一部:都市国家アドポリスの冒険 2

第9話 ゼロ族とバジリスク その4

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 ゼロ族の森は解放された。
 バジリスクは倒され、粉々の石になっている。

 この石がまた、使い方があるんだ。
 まず、石化に対する特効薬になる。換金するもよし、今後に備えて持っておくもよし。

「あとは……魔法の触媒や薬を作る材料に使えるね。特にバジリスクの頭の部分だった石は魔力が強い」

「センセエ詳しいですねえ」

 クルミが俺のお手伝いだと言って、せっせと石を拾い集めている。
 この大半は、ゼロ族が当座の生活のために、お金代わりに持っておくべきだろう。

 ゼロ族の貨幣は木の実だ。
 これは食べるとなくなる、目減りする資産なので、どんどん動かして取引するのがいいそうだ。
 バジリスクの石ともなれば、結構な量の木の実になるかも知れない。

「よし、戻って報告しよう!」

「ハイ!」

 クルミが俺の後ろにくっついた。
 今度は俺が前になって、ブランに乗る。

『わおん』

「いつでもいいよ」

 ブランの呼びかけに応じると、彼は走り出した。
 速い速い。
 猛烈な勢いで、ゼロ族の集落まで戻っていく。

 日暮れ前には、到着できた。

「おお、朝に出て夕方に戻ってこられるとは」

 ゼロ族達が顔を出す。

 彼らは日が暮れると眠る生活をしているので、ギリギリだった。

「森を解放したよ」

「は? い、今、なんと?」

 ゼロ族の長老が首をかしげる。

「これ、バジリスクのかけら。合わせるとほら、顔になるだろ」

「ヒ、ヒエー!」

 並べた石がバジリスクの頭になったので、ゼロ族達は驚いて跳び上がった。
 さすがリスの獣人、ジャンプ力がすごい。

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます、マーナガルム様! あとお付きの人間!」

「こらー!!」

 主にブランに頭を下げるゼロ族に、クルミが激怒した。

「このモンスターをやっつけたのは、マーナガルム様じゃなくってセンセエ! センセエなの!!」

「な、なんと!?」

 驚くゼロ族達。
 ブランも、いつもの笑顔みたいな表情になって俺の方を見ている。

「センセエすごかったんです! 魔法も、武器も使わないで、この恐ろしいモンスターをやっつけてしまったんです!!」

「なんとーっ!!」

「マーナガルム様を従えるということは、やはり凄いお人だったのかあ」

「ありがとうございます、ありがとうございます」

 ゼロ族のみんなが、今度は俺にペコペコ頭を下げてきた。
 この平伏するような体勢が、ゼロ族にとっての畏敬、という意味を持っている。

 彼らでは歯が立たなかった強大なモンスターを下した存在。
 俺を見る、ゼロ族達の目が変わっていた。

 クルミの報告一つしか判断材料が無いと思うのだが、ゼロ族は身内には絶対に嘘をつかないんだそうだ。
 つまり、真実しか言わない。
 あるいは言うべきではないことは口をつぐむ。

「皆の者! 今夜は宴じゃ! 夜ふかしをするぞ!」

「おおー!! 夜ふかし!」

「夜ふかしー!!」

 わーっと盛り上がるゼロ族。
 彼らにとって、夜ふかしは特別な意味を持つんだろう。

「そんなにお祝いしてくれなくても……」

「何をおっしゃいます先生!!」

 長老が俺の前で平伏した。

「これはわしらにとっても特別なことなのです! 二度と帰れぬと思っていた森に、戻れる……!! 我らの森に……! このご恩は、長く長く語り継ぎましょうぞ!!」

「大事になっちゃったなあ……」

『わふん』

「え? 俺がそれだけのことをしたって? そ、そうかな。でも、みんな喜んでくれているようだし、それでいいか」

 宴はそのまま、夜遅くまで続いた。
 そして、夜ふかしに慣れていないゼロ族は次々に寝てしまい、集落の地面でみんな朝まで熟睡したのだった。

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