26 / 173
第一部:都市国家アドポリスの冒険 5
第22話 カトブレパス対処法 その2
しおりを挟む
「おふぁようございまふ」
クルミがやっと起きてきた。
かなり長く寝たなあ。
俺が寝て、起きてもまだ寝てたもんな。
すっかり日が高い。
カトブレパス対策は明け方が楽だったんだけど、まあ仕方ないか。
「はい、クルミ、これ」
俺はクリーム状にしたマンドラゴラを差し出す。
「毒だから飲んじゃだめだよ。朝ごはん食べたら体に塗って」
「なんです?」
「マンドラゴラ。死の呪い避けの軟膏ね」
「しののろいです? ふうん?」
よく分かってない。
ナッツと干し肉とビスケットの朝食を終え、ごくごく水を飲む。
その後、軟膏をしっかり体に塗り込んだ。
クルミは俺の後ろでもぞもぞやっている。
「ブラン、ちゃんとクルミは軟膏塗ってる?」
後ろを見たら何か言われそうなので、ブランを通して確認だ。
『わおん』
ちゃんと塗ってますとも、と返すブラン。
「ふわー、べたべたしますう」
クルミが不服そうな声を上げた。
もう準備はいいだろうと振り返ると、彼女の尻尾が軟膏でべっとりとしていた。
あー、そうだよなあ。
モフモフも小さくまとめられちゃうよな。
ちょっと残念だが、カトブレパス対策には仕方ない。
さあ、仕事だ。
テントから出ると、村長や村の人々が迎えてくれた。
「おはよう、冒険者の方々。この間の冒険者は戻ってこなかったが、あんたらは大丈夫かのう……」
心配そうに村長が聞いてくる。
「ああ。カトブレパスにやられると死体を回収できないですからね。大丈夫、対策を立ててきてますから。死の呪いは致命的ですが、対策すれば割と容易に無効化できるんですよ」
「む、無効化……!? 失礼だが、この間の冒険者は6人いたし、鎧と槍を持った戦士や、魔法使いなど強そうな方々ばかりだった。あんたらはどう見ても、軽装のあんたと小さい女の子、それに大きな犬じゃないか。大丈夫なのかい……?」
「見た目で冒険者するわけじゃないですからね。それに、死の呪いの前には鎧や魔法は無意味ですよ。まあ見てて下さい。昼には戻ってきます」
「昼には!?」
村人達が驚いて声を上げた。
俺達はブランに乗って出発する。
「んもー。失礼しちゃいます」
クルミがぷりぷりと怒っている。
「仕方ないよ。俺達の見た目はなかなか頼りないからね」
「クルミはこう見えて立派なレディなんです! 小さい女の子じゃないです!」
「あ、そっち……?」
ブランが笑っている。
──と思ったら、彼がひくひく鼻を動かした。
『わん』
「人間のにおい? ちょっと行ってみて」
『わおん』
においがするという方向を目指す俺達。
そこは、沼に近い林の中。
誰かが仰向けに倒れていた。
鎧が見える。
「おーい」
ブランから降りて声をかける。
「生きてるかい」
「う……うう……。助けてくれ」
うめき声が答えた。
生きてる生きてる。
俺は駆け寄ると、相手の姿を確認した。
鎧兜に、武器。
これは先にカトブレパス退治に向かった、Bランクパーティの戦士だろう。
鎧は死の呪いに無力と言ったけど、もしかしてそこそこの効果がある?
マンドラゴラの軟膏を舐めさせると、彼は動けるようになった。
マンドラゴラは猛毒だが、死の呪いに侵された人間にとっては特効薬となる。
その見極めが難しいんだけどね。下手に舐めるとやっぱりただの猛毒になるから。
「助かった……。だが、俺だけが助かった……。みんな殺されてしまった」
戦士がしょんぼりしている。
「カトブレパスはそういうモンスターだからね。実に危険だ。こんな普通の沼地にホイッと現れたりするもんじゃない。Bランクならカトブレパスと戦った経験はなかったんじゃないかい? 事故みたいなものだよ」
「あんたは……。確か、ショーナウン・ウインドにいた……」
「ああ。今はクビになったけどね。元便利屋さ。今はモフ・ライダーズっていうパーティを率いてる」
メンバーは俺とクルミとブランの三人だけどね。
「そ、そうなのか。だけどそんな軽装であいつと戦うのか?」
「武装のことだけを装備というなら、俺達は軽装だろうね。だが、準備の周到さを装備というなら、俺達は君よりも遥かに重装備だぜ? 君は運良く生き残った。だから、俺の戦いを見ていくといい。今後カトブレパスと遭遇した時、勝つための知識になるから」
俺は彼を誘った。
彼は頷く。
「仲間の死体を回収しなくちゃならん。復活させる金は無いが……せめて埋葬してやりたい」
ということで、戦士を加えて、俺達は一路沼沢地へ。
戦士には道すがら、干し肉やナッツなどを齧ってもらう。
仮死状態だったとは言え、体からエネルギーが枯渇しているだろう。
「クルミもナッツほしいです!」
「はい、どうぞ。仕事の前だから食べ過ぎないでね」
「わあい!」
「本当に大丈夫なのか……?」
戦士が心配そうに俺とクルミを見るのだった。
クルミがやっと起きてきた。
かなり長く寝たなあ。
俺が寝て、起きてもまだ寝てたもんな。
すっかり日が高い。
カトブレパス対策は明け方が楽だったんだけど、まあ仕方ないか。
「はい、クルミ、これ」
俺はクリーム状にしたマンドラゴラを差し出す。
「毒だから飲んじゃだめだよ。朝ごはん食べたら体に塗って」
「なんです?」
「マンドラゴラ。死の呪い避けの軟膏ね」
「しののろいです? ふうん?」
よく分かってない。
ナッツと干し肉とビスケットの朝食を終え、ごくごく水を飲む。
その後、軟膏をしっかり体に塗り込んだ。
クルミは俺の後ろでもぞもぞやっている。
「ブラン、ちゃんとクルミは軟膏塗ってる?」
後ろを見たら何か言われそうなので、ブランを通して確認だ。
『わおん』
ちゃんと塗ってますとも、と返すブラン。
「ふわー、べたべたしますう」
クルミが不服そうな声を上げた。
もう準備はいいだろうと振り返ると、彼女の尻尾が軟膏でべっとりとしていた。
あー、そうだよなあ。
モフモフも小さくまとめられちゃうよな。
ちょっと残念だが、カトブレパス対策には仕方ない。
さあ、仕事だ。
テントから出ると、村長や村の人々が迎えてくれた。
「おはよう、冒険者の方々。この間の冒険者は戻ってこなかったが、あんたらは大丈夫かのう……」
心配そうに村長が聞いてくる。
「ああ。カトブレパスにやられると死体を回収できないですからね。大丈夫、対策を立ててきてますから。死の呪いは致命的ですが、対策すれば割と容易に無効化できるんですよ」
「む、無効化……!? 失礼だが、この間の冒険者は6人いたし、鎧と槍を持った戦士や、魔法使いなど強そうな方々ばかりだった。あんたらはどう見ても、軽装のあんたと小さい女の子、それに大きな犬じゃないか。大丈夫なのかい……?」
「見た目で冒険者するわけじゃないですからね。それに、死の呪いの前には鎧や魔法は無意味ですよ。まあ見てて下さい。昼には戻ってきます」
「昼には!?」
村人達が驚いて声を上げた。
俺達はブランに乗って出発する。
「んもー。失礼しちゃいます」
クルミがぷりぷりと怒っている。
「仕方ないよ。俺達の見た目はなかなか頼りないからね」
「クルミはこう見えて立派なレディなんです! 小さい女の子じゃないです!」
「あ、そっち……?」
ブランが笑っている。
──と思ったら、彼がひくひく鼻を動かした。
『わん』
「人間のにおい? ちょっと行ってみて」
『わおん』
においがするという方向を目指す俺達。
そこは、沼に近い林の中。
誰かが仰向けに倒れていた。
鎧が見える。
「おーい」
ブランから降りて声をかける。
「生きてるかい」
「う……うう……。助けてくれ」
うめき声が答えた。
生きてる生きてる。
俺は駆け寄ると、相手の姿を確認した。
鎧兜に、武器。
これは先にカトブレパス退治に向かった、Bランクパーティの戦士だろう。
鎧は死の呪いに無力と言ったけど、もしかしてそこそこの効果がある?
マンドラゴラの軟膏を舐めさせると、彼は動けるようになった。
マンドラゴラは猛毒だが、死の呪いに侵された人間にとっては特効薬となる。
その見極めが難しいんだけどね。下手に舐めるとやっぱりただの猛毒になるから。
「助かった……。だが、俺だけが助かった……。みんな殺されてしまった」
戦士がしょんぼりしている。
「カトブレパスはそういうモンスターだからね。実に危険だ。こんな普通の沼地にホイッと現れたりするもんじゃない。Bランクならカトブレパスと戦った経験はなかったんじゃないかい? 事故みたいなものだよ」
「あんたは……。確か、ショーナウン・ウインドにいた……」
「ああ。今はクビになったけどね。元便利屋さ。今はモフ・ライダーズっていうパーティを率いてる」
メンバーは俺とクルミとブランの三人だけどね。
「そ、そうなのか。だけどそんな軽装であいつと戦うのか?」
「武装のことだけを装備というなら、俺達は軽装だろうね。だが、準備の周到さを装備というなら、俺達は君よりも遥かに重装備だぜ? 君は運良く生き残った。だから、俺の戦いを見ていくといい。今後カトブレパスと遭遇した時、勝つための知識になるから」
俺は彼を誘った。
彼は頷く。
「仲間の死体を回収しなくちゃならん。復活させる金は無いが……せめて埋葬してやりたい」
ということで、戦士を加えて、俺達は一路沼沢地へ。
戦士には道すがら、干し肉やナッツなどを齧ってもらう。
仮死状態だったとは言え、体からエネルギーが枯渇しているだろう。
「クルミもナッツほしいです!」
「はい、どうぞ。仕事の前だから食べ過ぎないでね」
「わあい!」
「本当に大丈夫なのか……?」
戦士が心配そうに俺とクルミを見るのだった。
34
あなたにおすすめの小説
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる