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第一部:都市国家アドポリスの冒険 8
第37話 モフモフまた一匹 その2
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どうやら、町を騒がせている心を食うモンスターとやらは外にいるらしい。
町の人々は、すっかりそれを恐れて外出しなくなっていたのだ。
だから活気がなかったんだな。
「集団で外に出ると、あまり出てこないらしい。ここは俺が一人で行ってみようと思う」
俺が提案すると、クルミが猛反対した。
「だめです!! センセエに何かあったら困るです! クルミは泣くですよー!!」
おお、凄い怒り方だ!
尻尾を逆立てて、猛烈に抗議してくる。
「……じゃあ、クルミと二人で行こうか」
「それならいいですよ!」
途端にニコニコになった。
モフモフ尻尾が、嬉しそうにぶんぶん振られている。
リスの感情表現とは結構違うもんだなあ。
『わふふん』
ブランは、何かあったらすぐ駆けつける、と言ってくれている。
ありがたい。
今回ばかりは、俺の知識や経験の中には無い事態だ。彼が助けてくれるのは安心できる。
「よし、慎重に行こう、クルミ」
「はいです! らったらー。センセエと久しぶりに二人っきりー」
「こ、こらクルミー」
俺の腕を抱えて、スキップし始めるクルミである。
浮かれている……!
事態の大変さをお分かりか。いや、分かってはいるんだろうなあ。
二人で、心を食うモンスターとやらが頻発した場所を歩いてみる。
どこも、道の近くまで木々や茂みがせり出したところだ。
視界が悪いな。
もうすぐ夕方ではあるが、それにしたって暗い。
ひと目につかないように近づいて、何らかの心に対する攻撃を仕掛けてきたということか。
俺は油断なく、周囲に気を配る。
なんとなく、被害者に聞いた猫の喉を鳴らすような音、というのが頭に残っている。
相手が猫のようなモンスターだとしたら、忍び寄るのはお手の物だぞ。
目や耳だけじゃない。
肌に触れる風の動きも気にかけていなければならない。あとは嗅覚。
「クルミ、変なニオイがしたら教えて」
「はいです! 変なニオイって、例えばちょっと焦げたみたいなニオイとかです?」
「焦げたみたいな? ……!」
その瞬間、俺はクルミを抱えあげて走った。
彼女の真横から、銀色の細長いものが近づいてきていたことに気付いたからだ。
「ひゃー、センセエ!?」
「やばいところだった! もうモンスターはいたんだよ!」
彼女を抱きかかえたまま、注意深く茂みを見つめる。
そこから、緑色の目がこちらを見ていた。
瞳孔が大きく開かれている。
なるほど、これは猫だ。
だが、大きな猫だ。
そしてあの細長いものはなんだろうか?
ゴロゴロゴロ、と喉を鳴らす音がする。
『端末の』
声が聞こえた。
「なんだ!?」
「センセエ、どうしたですか?」
「今、モンスターが喋った」
「ふえ? 何も言ってないですよ?」
クルミには聞こえなかったのか?
『端末の反応が途絶えた。全て。やり直さねばならない』
「耳には聞こえない声……? お前は俺に話しかけているのか?」
俺の言葉を聞くと、モンスターは闇の中で目を細めた。
『己の言葉を理解するか。星の海にも、翻訳装置なしで己と意思疎通できるものは感応能力者だけであったものを。ギフトの一種を得ている存在と認識する』
「何を言っているんだ?」
『現地生物の認識では己を理解できまい。意思疎通できるものを使うのは勿体ない。抱え上げた者を端末として利用する』
「クルミに手出しはさせないぞ……!」
俺は短剣を抜いた。
こんなものが通用するとは思わないが、それでも、仲間に手出しをすると言われて、はいそうですかと応じられる訳がない。
「センセエ?」
不安げにクルミが俺を見る。
「大丈夫だ」
それだけ告げて、俺は構えた。
クルミを下ろせばいいんだが、そこにあの銀色のものが伸びてきたとして、彼女を守りきれる自信がない。
さて、どうするか……!!
『わふん』
その時、傍らから聞き慣れた声がした。
『!!』
茂みの中のモンスターに、緊張が走る。
『危険度を認識。超一級危険存在……! 宇宙怪獣級……!! このような辺境の惑星に何故……!?』
いつの間にか、ブランがいた。
俺の隣で、笑ったような顔をしている。
『離脱は困難……。対象は突然出現した。任意の場所への瞬間移動能力……? 状況打破のため、全力状態での戦闘を開始する……!!』
突然、茂みにあったモンスターの気配が膨れ上がった。
そこから飛び出してきたのは、黄金の猫……いや、あれは書物で読んだ獣、豹か!
その顔には、金属質な銀色の太いヒゲが二本。
さらには、頭の横から鈍く銀色に輝く触手が二本生えていた。
『殲滅!! マインドブラスト!!』
モンスターが吠えた。
彼の全身の毛が逆立ち、触手が風もないのに激しく揺れる。
そして巻き起こる不可視の嵐。
風ではなく、世界そのものをかき回すような、そんな正体不明の攻撃が放たれた。
『わおおおおおーん!!』
これに向かって、ブランが咆哮した。
彼の見た目が一瞬で変化する。
真っ白な毛皮が赤く染まり、その体躯が一回り膨れ上がる。
どこか狼を思わせる姿に、ブランは変わっていた。
これがマーナガルムの本来の姿なのか。
そして彼の一声で、モンスターの攻撃は相殺された。
モンスターが目を見開き、牙をむき出しにして唸る。
『マインドブラストをソニックシャウトで打ち消すか! 化け物め……!』
『どの口が吠える』
「ブランが喋った!?」
「え? え? クルミには何も聞こえないですよ!?」
おっと、クルミの声で正気に返る俺だ。
こうしてる場合じゃない。
クルミを連れて、この場から距離を取るのだ。
マーナガルムvs謎のモンスター。
こんな戦いに巻き込まれたらひとたまりもないぞ。
町の人々は、すっかりそれを恐れて外出しなくなっていたのだ。
だから活気がなかったんだな。
「集団で外に出ると、あまり出てこないらしい。ここは俺が一人で行ってみようと思う」
俺が提案すると、クルミが猛反対した。
「だめです!! センセエに何かあったら困るです! クルミは泣くですよー!!」
おお、凄い怒り方だ!
尻尾を逆立てて、猛烈に抗議してくる。
「……じゃあ、クルミと二人で行こうか」
「それならいいですよ!」
途端にニコニコになった。
モフモフ尻尾が、嬉しそうにぶんぶん振られている。
リスの感情表現とは結構違うもんだなあ。
『わふふん』
ブランは、何かあったらすぐ駆けつける、と言ってくれている。
ありがたい。
今回ばかりは、俺の知識や経験の中には無い事態だ。彼が助けてくれるのは安心できる。
「よし、慎重に行こう、クルミ」
「はいです! らったらー。センセエと久しぶりに二人っきりー」
「こ、こらクルミー」
俺の腕を抱えて、スキップし始めるクルミである。
浮かれている……!
事態の大変さをお分かりか。いや、分かってはいるんだろうなあ。
二人で、心を食うモンスターとやらが頻発した場所を歩いてみる。
どこも、道の近くまで木々や茂みがせり出したところだ。
視界が悪いな。
もうすぐ夕方ではあるが、それにしたって暗い。
ひと目につかないように近づいて、何らかの心に対する攻撃を仕掛けてきたということか。
俺は油断なく、周囲に気を配る。
なんとなく、被害者に聞いた猫の喉を鳴らすような音、というのが頭に残っている。
相手が猫のようなモンスターだとしたら、忍び寄るのはお手の物だぞ。
目や耳だけじゃない。
肌に触れる風の動きも気にかけていなければならない。あとは嗅覚。
「クルミ、変なニオイがしたら教えて」
「はいです! 変なニオイって、例えばちょっと焦げたみたいなニオイとかです?」
「焦げたみたいな? ……!」
その瞬間、俺はクルミを抱えあげて走った。
彼女の真横から、銀色の細長いものが近づいてきていたことに気付いたからだ。
「ひゃー、センセエ!?」
「やばいところだった! もうモンスターはいたんだよ!」
彼女を抱きかかえたまま、注意深く茂みを見つめる。
そこから、緑色の目がこちらを見ていた。
瞳孔が大きく開かれている。
なるほど、これは猫だ。
だが、大きな猫だ。
そしてあの細長いものはなんだろうか?
ゴロゴロゴロ、と喉を鳴らす音がする。
『端末の』
声が聞こえた。
「なんだ!?」
「センセエ、どうしたですか?」
「今、モンスターが喋った」
「ふえ? 何も言ってないですよ?」
クルミには聞こえなかったのか?
『端末の反応が途絶えた。全て。やり直さねばならない』
「耳には聞こえない声……? お前は俺に話しかけているのか?」
俺の言葉を聞くと、モンスターは闇の中で目を細めた。
『己の言葉を理解するか。星の海にも、翻訳装置なしで己と意思疎通できるものは感応能力者だけであったものを。ギフトの一種を得ている存在と認識する』
「何を言っているんだ?」
『現地生物の認識では己を理解できまい。意思疎通できるものを使うのは勿体ない。抱え上げた者を端末として利用する』
「クルミに手出しはさせないぞ……!」
俺は短剣を抜いた。
こんなものが通用するとは思わないが、それでも、仲間に手出しをすると言われて、はいそうですかと応じられる訳がない。
「センセエ?」
不安げにクルミが俺を見る。
「大丈夫だ」
それだけ告げて、俺は構えた。
クルミを下ろせばいいんだが、そこにあの銀色のものが伸びてきたとして、彼女を守りきれる自信がない。
さて、どうするか……!!
『わふん』
その時、傍らから聞き慣れた声がした。
『!!』
茂みの中のモンスターに、緊張が走る。
『危険度を認識。超一級危険存在……! 宇宙怪獣級……!! このような辺境の惑星に何故……!?』
いつの間にか、ブランがいた。
俺の隣で、笑ったような顔をしている。
『離脱は困難……。対象は突然出現した。任意の場所への瞬間移動能力……? 状況打破のため、全力状態での戦闘を開始する……!!』
突然、茂みにあったモンスターの気配が膨れ上がった。
そこから飛び出してきたのは、黄金の猫……いや、あれは書物で読んだ獣、豹か!
その顔には、金属質な銀色の太いヒゲが二本。
さらには、頭の横から鈍く銀色に輝く触手が二本生えていた。
『殲滅!! マインドブラスト!!』
モンスターが吠えた。
彼の全身の毛が逆立ち、触手が風もないのに激しく揺れる。
そして巻き起こる不可視の嵐。
風ではなく、世界そのものをかき回すような、そんな正体不明の攻撃が放たれた。
『わおおおおおーん!!』
これに向かって、ブランが咆哮した。
彼の見た目が一瞬で変化する。
真っ白な毛皮が赤く染まり、その体躯が一回り膨れ上がる。
どこか狼を思わせる姿に、ブランは変わっていた。
これがマーナガルムの本来の姿なのか。
そして彼の一声で、モンスターの攻撃は相殺された。
モンスターが目を見開き、牙をむき出しにして唸る。
『マインドブラストをソニックシャウトで打ち消すか! 化け物め……!』
『どの口が吠える』
「ブランが喋った!?」
「え? え? クルミには何も聞こえないですよ!?」
おっと、クルミの声で正気に返る俺だ。
こうしてる場合じゃない。
クルミを連れて、この場から距離を取るのだ。
マーナガルムvs謎のモンスター。
こんな戦いに巻き込まれたらひとたまりもないぞ。
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