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第一部:都市国家アドポリスの冒険 8
幕間 アドポリスを狙うもの
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あの地にかつて何があったのか?
それを知るものはほとんどいない。
アドポリスと名付けられた都市国家が栄える土地は、かつて魔王が降り立った場所だった。
人間の世界でしかなかったゼフィロシアは、魔王の手によって、異種族とモンスターが闊歩し、魔法が日常的に使われる世界へと変じていったのだ。
その魔王はもういないが、あそこには魔王が残した何かがあるはずなのだ。
魔術師はそれを手に入れたかった。
あの地の価値が分からぬ者達が、あの地を占拠している。
これは由々しき事態だ。
あれは価値が分かる者によって治められねばならぬ土地だ。
この世界の、言わば始まりの地なのだから。
だが、問題は冒険者達だった。
ラグナ新教がもたらした、『クラス』という新たな恩恵。
これはクラスを得た人間の身体能力を強化し、ある特定の分野に特化した存在へと変える秘術である。
これを得て、高い評価段階『ランク』を得た冒険者は難敵と言えた。
力押しでは、いかなるモンスターをぶつけたとしても退けられてしまいかねない。
魔術師は、転送と洗脳の魔法に長けていた。
故に、考えた。
力押しでは倒せぬモンスターを呼び出し、それらを使って冒険者を排除しよう。
冒険者がいなくなれば、残るは都市国家の兵士ばかり。
クラスも持たぬあれらなら、力押しでもどうとでもなろう。
事実、魔術師の採った作戦は順調に進行していた。
召喚したバジリスクはSランクパーティを打ち倒し、各地を巡りながら配置した厄介なモンスター達は、確実に冒険者達の数を削り取って行った。
アドポリスの都はモンスター退治に手一杯となり、守りが手薄になる。
ここで、魔術師は己のもう一つの手勢を使うことになった。
勧誘し、洗脳したSランクパーティをアンデッドナイトへと変化させ、彼らを用いてアドポリスを攻略することにしたのである。
攻略は内密に行われねばならない。
レブナントによるアンデッド騒ぎが起きたのは計算外だったが、幸い、それらは弱いアンデッドだった。
危機感を煽るまでは行っておるまい。
まさか、高ランクの司祭がやってくるとは思っていなかったが……。
それも、すぐに旅立っていった。
ところで何だったのだ、あの白くて大きな犬は。
まるで腹の中を見透かされているようだった。
司祭に始終、モフモフとされているから集中できていないようだったが、あれがこちらを凝視しなくて本当に良かった。
そして犬の飼い主。
Sランクパーティだったはずの男。
記録によると、あの男はただの雑用係であり、これといって特別な能力を持っていなかったはずだったが……。
そうだ、テイマーだった。
だから、あの白い犬をテイムしたのだ。
では、あの男が向かった先で、次々にモンスターが倒されていくのは犬の仕業だろうか?
これは不明だ。
召喚したモンスターはしっかりと仕事をしてくれた。
冒険者達の半分は戦闘不能になっており、日々の依頼をこなすので必死な有様だ。
とても、都市の警戒に気を割いていられる状況ではあるまい。
だが、思っていたよりも冒険者を減らせなかったのも確かだ。
こちらが肝いりで送り出した、強力なモンスターがことごとく倒されている。
あの男のパーティにだ。
犬もそうだが、あの男。
マークした方がいいのだろうか。
いや、だがしかし。
テイマーだとは言え、単体ではただの人間でしかない男をどこまで警戒したものか。
うーむ……。
「何を悩んでるんだね、サブマスター」
「ああ、いえ!」
ギルドマスターに声を掛けられ、男は慌てて顔を上げた。
どうやら、内心の懊悩が顔に出ていたらしい。
「神都ラグナスから、わざわざ来てくれたサブマスターだ。悩みがあるならなんでも話してくれ! 皆で解決していこうじゃないか」
「ああ、はい。ありがとうございます。いや、なんと言うか、依頼のはけがかなり早いなと思いまして」
「これか。オースくんが次々に解決してくれているからね。いやはや、Sランク冒険者様々だよ」
Sランク?
様々なクラスを齧っただけの半端者がSランクか。
そんなあの男が、この状況を生んでいるというのだろうか?
「実に助かるね。彼は仕事も早いし、さらに仕事で得た知識や情報を仲間の冒険者達に素早く広げてくれる。若い冒険者達も、ランクの低いモンスターならしっかり対処できるようになっているよ」
それかーっ!
あの男のパーティが活躍しただけでは、説明できないペースで依頼が消化されはじめて行っているところだ。
冒険者達の犠牲も、急激に減った。
特に、若手冒険者がだ。
あの半端者の薫陶を受けていたということか。
半端とは言え、仮にもSランクパーティにいた男だ。
攻略の困難なモンスターへの対処法を幾つも知っていたのではないだろうか。
そろそろ、あの男への対策を考えねばならんな。
彼は内心、唸った。
せっかく、危険な依頼を若手冒険者も受けられるようにしたのだ。
若い芽をこの機会に摘んで、都市の守りを甘くして……そして、教会のあるあの場所を落とせば。
魔王降臨の地をこの手にすることができる。
ギルドのサブマスターとして、アドポリスにやってきた魔術師。
彼が野望にその手を届かせるまで、あと少しだった。
だがそこで────
「おかえりなさいオースさん! あら、ワンちゃんの他に猫ちゃんが増えたんですか? それにカイルさんまで一緒に?」
犬の他に猫が増えただと!?
魔術師は、妙な胸騒ぎを感じるのだった。
それを知るものはほとんどいない。
アドポリスと名付けられた都市国家が栄える土地は、かつて魔王が降り立った場所だった。
人間の世界でしかなかったゼフィロシアは、魔王の手によって、異種族とモンスターが闊歩し、魔法が日常的に使われる世界へと変じていったのだ。
その魔王はもういないが、あそこには魔王が残した何かがあるはずなのだ。
魔術師はそれを手に入れたかった。
あの地の価値が分からぬ者達が、あの地を占拠している。
これは由々しき事態だ。
あれは価値が分かる者によって治められねばならぬ土地だ。
この世界の、言わば始まりの地なのだから。
だが、問題は冒険者達だった。
ラグナ新教がもたらした、『クラス』という新たな恩恵。
これはクラスを得た人間の身体能力を強化し、ある特定の分野に特化した存在へと変える秘術である。
これを得て、高い評価段階『ランク』を得た冒険者は難敵と言えた。
力押しでは、いかなるモンスターをぶつけたとしても退けられてしまいかねない。
魔術師は、転送と洗脳の魔法に長けていた。
故に、考えた。
力押しでは倒せぬモンスターを呼び出し、それらを使って冒険者を排除しよう。
冒険者がいなくなれば、残るは都市国家の兵士ばかり。
クラスも持たぬあれらなら、力押しでもどうとでもなろう。
事実、魔術師の採った作戦は順調に進行していた。
召喚したバジリスクはSランクパーティを打ち倒し、各地を巡りながら配置した厄介なモンスター達は、確実に冒険者達の数を削り取って行った。
アドポリスの都はモンスター退治に手一杯となり、守りが手薄になる。
ここで、魔術師は己のもう一つの手勢を使うことになった。
勧誘し、洗脳したSランクパーティをアンデッドナイトへと変化させ、彼らを用いてアドポリスを攻略することにしたのである。
攻略は内密に行われねばならない。
レブナントによるアンデッド騒ぎが起きたのは計算外だったが、幸い、それらは弱いアンデッドだった。
危機感を煽るまでは行っておるまい。
まさか、高ランクの司祭がやってくるとは思っていなかったが……。
それも、すぐに旅立っていった。
ところで何だったのだ、あの白くて大きな犬は。
まるで腹の中を見透かされているようだった。
司祭に始終、モフモフとされているから集中できていないようだったが、あれがこちらを凝視しなくて本当に良かった。
そして犬の飼い主。
Sランクパーティだったはずの男。
記録によると、あの男はただの雑用係であり、これといって特別な能力を持っていなかったはずだったが……。
そうだ、テイマーだった。
だから、あの白い犬をテイムしたのだ。
では、あの男が向かった先で、次々にモンスターが倒されていくのは犬の仕業だろうか?
これは不明だ。
召喚したモンスターはしっかりと仕事をしてくれた。
冒険者達の半分は戦闘不能になっており、日々の依頼をこなすので必死な有様だ。
とても、都市の警戒に気を割いていられる状況ではあるまい。
だが、思っていたよりも冒険者を減らせなかったのも確かだ。
こちらが肝いりで送り出した、強力なモンスターがことごとく倒されている。
あの男のパーティにだ。
犬もそうだが、あの男。
マークした方がいいのだろうか。
いや、だがしかし。
テイマーだとは言え、単体ではただの人間でしかない男をどこまで警戒したものか。
うーむ……。
「何を悩んでるんだね、サブマスター」
「ああ、いえ!」
ギルドマスターに声を掛けられ、男は慌てて顔を上げた。
どうやら、内心の懊悩が顔に出ていたらしい。
「神都ラグナスから、わざわざ来てくれたサブマスターだ。悩みがあるならなんでも話してくれ! 皆で解決していこうじゃないか」
「ああ、はい。ありがとうございます。いや、なんと言うか、依頼のはけがかなり早いなと思いまして」
「これか。オースくんが次々に解決してくれているからね。いやはや、Sランク冒険者様々だよ」
Sランク?
様々なクラスを齧っただけの半端者がSランクか。
そんなあの男が、この状況を生んでいるというのだろうか?
「実に助かるね。彼は仕事も早いし、さらに仕事で得た知識や情報を仲間の冒険者達に素早く広げてくれる。若い冒険者達も、ランクの低いモンスターならしっかり対処できるようになっているよ」
それかーっ!
あの男のパーティが活躍しただけでは、説明できないペースで依頼が消化されはじめて行っているところだ。
冒険者達の犠牲も、急激に減った。
特に、若手冒険者がだ。
あの半端者の薫陶を受けていたということか。
半端とは言え、仮にもSランクパーティにいた男だ。
攻略の困難なモンスターへの対処法を幾つも知っていたのではないだろうか。
そろそろ、あの男への対策を考えねばならんな。
彼は内心、唸った。
せっかく、危険な依頼を若手冒険者も受けられるようにしたのだ。
若い芽をこの機会に摘んで、都市の守りを甘くして……そして、教会のあるあの場所を落とせば。
魔王降臨の地をこの手にすることができる。
ギルドのサブマスターとして、アドポリスにやってきた魔術師。
彼が野望にその手を届かせるまで、あと少しだった。
だがそこで────
「おかえりなさいオースさん! あら、ワンちゃんの他に猫ちゃんが増えたんですか? それにカイルさんまで一緒に?」
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