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第一部:都市国家アドポリスの冒険 9
第42話 おびき出せアンデッド その2
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『にゃん』
「あっ、ドレ! カイルのところにいたんじゃないのか」
『下に降りる際のクッションとして使っただけにゃん。あいつは硬くてダメにゃん』
ドレが俺達の横を、トコトコとついてくる。
世界の外から来たモンスター、クァールである彼。
どうやら人間の食事が気に入ったようで、毎日食事時を心待ちにしている。
目下、クルミやアリサになでなでされるのがお好みらしい。
なかなか好みのうるさい猫だ。
「ドレー!」
クルミが手を広げると、ドレは『にゃーん』と鳴いて彼女の腕の中に飛び込んだ。
クルミが抱きかかえるにはちょっと大きすぎる猫だが、そこはドレが不思議な力でバランスを取っているようだ。
重そうな素振りを見せないクルミ。
「ドレが来たなら安心かな。よし、ちょっと武器屋への道を冒険してみよう」
「冒険ですか!」
「ああ、冒険だ。しかも結構危険なやつね。あんまり離れないようにね」
「はいです!」
俺達は、あえて裏路地に入った。
ここを通っていくと、武器屋までの最短ルートなのだ。
以前はここに、浮浪者などがたむろしていたはずだ。
アドポリスにとってのダウンタウンのようなものである。
光が差し込まず、掃除も行き届いていない都市の裏側。
治安が悪く、いつも目をギラギラさせた者達が通行者を値踏みしているこの通りが……。
今はもぬけのからだった。
見事なまでに、誰もいない。
ゴミはあちこちに残り、いつもどおり。人間だけがいない。
「なるほど……。これは異常事態だ」
『人間の思念は感じないにゃん』
クルミに抱かれたドレが、ヒゲをふるふるさせる。
サイズが大きすぎるドレは、クルミの小さい手では抱きかかえきれず、下半身をだらーんとぶら下げる状態になっている。
それ、後ろ足はもう歩いているよね?
「おっと、いかんいかん。ドレに注目してる場合じゃなかった。だけどちょっと前足と肉球を揉んでもいいかな?」
『お前が主にゃん。常識的な範囲で好きにするにゃん』
「では失礼するよ。おお……」
ふわふわ、もちもち。
結構な肉付きで。
俺の意識が一瞬だけ、肉球の触感に持っていかれたその時だった。
『ウボアー』
すぐ近くで声がした。
人の声ではなく、動いたことで肺から空気が漏れ、音を伴ったようなそんな声だ。
「せ、センセエ!」
「ああ」
既に用意はしている。
俺は水袋をとりあげると、声がした方を向くこと無く、中身の液体を振りまいた。
『ウ、ウボアー!』
中に入っていたのは蒸留酒だ。
強いアルコールが降りかかる。
相手は、黄色く光るレブナント。
ゴミの中に隠れていたんだな。
そいつはアルコールを浴びると、途端にその動きを鈍くした。
『不活性化したにゃん』
「ああ。そしてレブナントの体がアルコールに反応するなら」
抜いた短剣に、蒸留酒を掛ける。
これは、魔法が掛かっていないものだ。
いやあ、酒飲みが見たら悲しみそうな光景だなあ。
俺は酒まみれになった刃を、レブナントに突き刺した。
普段なら、手応え無く刃が飲み込まれ、そして吐き出される。レブナントには傷がない、という光景が展開されるだろう。
だが、酒に濡れた刃は、ずぶりという手応えとともにアンデッドに食い込んだ。
その体を切り裂いていく。
「驚いた。骨の感触も何もない。どこまでも均質なもので肉体が構成されているんだな……! アンデッドは、既に死体ですらないんだ……!」
短剣で大きく切り裂いたところで、レブナントは完全に動きを止めた。
力なく、倒れていく。
そして地面に叩きつけられたところで、その肉体は粉々になった。
レブナントとしての特性を発揮してない状態で、一定以上のダメージを与える。
すると機能を完全に停止してレブナントは滅びるのか。
「再生するわけじゃないんだな」
「センセエすごいです! れぶなんとをやっつけちゃったです!」
「うん、俺の推測が当たってた。アルコールに反応するところは、ドレにお墨付きをもらったしね。これならば、誰でもレブナントを倒せるぞ」
『己やあの怪獣には頼らないにゃん?』
「君達に頼る時は、人間ではどうにもならない災厄が出てきた時だけだろうね。できればその機会がないように願いたいんだけど」
『自力でがんばる心意気、なかなかにゃん』
そもそもが、あまり仕事をしたくないらしいドレ。
クルミにぶら下げられたまま、今も全然やる気がなさそうだ。
さて、粉々になったレブナントを検証し、核となっている黄色い結晶を発見する。
これを再び回収。
先日手に入れた黄色い破片は、このアンデッドの核となる部分だったようだ。
場所は……頭部か。
レブナントだけではなく、ゾンビやスケルトンなんかも、もしかすると頭部にあるこの核で制御されているのかも知れないな。
今度調べてみよう。
アンデッドは死体と置き換わった、全く違う何かで構成されている存在。
言わば、ゴーレムの一種。
この学説が発表されたら、世の中は大騒ぎに……ならないか。
せいぜい、山向こうの隣国にあるという賢者の塔に情報を売るにとどめておこうか。
「あっ、ドレ! カイルのところにいたんじゃないのか」
『下に降りる際のクッションとして使っただけにゃん。あいつは硬くてダメにゃん』
ドレが俺達の横を、トコトコとついてくる。
世界の外から来たモンスター、クァールである彼。
どうやら人間の食事が気に入ったようで、毎日食事時を心待ちにしている。
目下、クルミやアリサになでなでされるのがお好みらしい。
なかなか好みのうるさい猫だ。
「ドレー!」
クルミが手を広げると、ドレは『にゃーん』と鳴いて彼女の腕の中に飛び込んだ。
クルミが抱きかかえるにはちょっと大きすぎる猫だが、そこはドレが不思議な力でバランスを取っているようだ。
重そうな素振りを見せないクルミ。
「ドレが来たなら安心かな。よし、ちょっと武器屋への道を冒険してみよう」
「冒険ですか!」
「ああ、冒険だ。しかも結構危険なやつね。あんまり離れないようにね」
「はいです!」
俺達は、あえて裏路地に入った。
ここを通っていくと、武器屋までの最短ルートなのだ。
以前はここに、浮浪者などがたむろしていたはずだ。
アドポリスにとってのダウンタウンのようなものである。
光が差し込まず、掃除も行き届いていない都市の裏側。
治安が悪く、いつも目をギラギラさせた者達が通行者を値踏みしているこの通りが……。
今はもぬけのからだった。
見事なまでに、誰もいない。
ゴミはあちこちに残り、いつもどおり。人間だけがいない。
「なるほど……。これは異常事態だ」
『人間の思念は感じないにゃん』
クルミに抱かれたドレが、ヒゲをふるふるさせる。
サイズが大きすぎるドレは、クルミの小さい手では抱きかかえきれず、下半身をだらーんとぶら下げる状態になっている。
それ、後ろ足はもう歩いているよね?
「おっと、いかんいかん。ドレに注目してる場合じゃなかった。だけどちょっと前足と肉球を揉んでもいいかな?」
『お前が主にゃん。常識的な範囲で好きにするにゃん』
「では失礼するよ。おお……」
ふわふわ、もちもち。
結構な肉付きで。
俺の意識が一瞬だけ、肉球の触感に持っていかれたその時だった。
『ウボアー』
すぐ近くで声がした。
人の声ではなく、動いたことで肺から空気が漏れ、音を伴ったようなそんな声だ。
「せ、センセエ!」
「ああ」
既に用意はしている。
俺は水袋をとりあげると、声がした方を向くこと無く、中身の液体を振りまいた。
『ウ、ウボアー!』
中に入っていたのは蒸留酒だ。
強いアルコールが降りかかる。
相手は、黄色く光るレブナント。
ゴミの中に隠れていたんだな。
そいつはアルコールを浴びると、途端にその動きを鈍くした。
『不活性化したにゃん』
「ああ。そしてレブナントの体がアルコールに反応するなら」
抜いた短剣に、蒸留酒を掛ける。
これは、魔法が掛かっていないものだ。
いやあ、酒飲みが見たら悲しみそうな光景だなあ。
俺は酒まみれになった刃を、レブナントに突き刺した。
普段なら、手応え無く刃が飲み込まれ、そして吐き出される。レブナントには傷がない、という光景が展開されるだろう。
だが、酒に濡れた刃は、ずぶりという手応えとともにアンデッドに食い込んだ。
その体を切り裂いていく。
「驚いた。骨の感触も何もない。どこまでも均質なもので肉体が構成されているんだな……! アンデッドは、既に死体ですらないんだ……!」
短剣で大きく切り裂いたところで、レブナントは完全に動きを止めた。
力なく、倒れていく。
そして地面に叩きつけられたところで、その肉体は粉々になった。
レブナントとしての特性を発揮してない状態で、一定以上のダメージを与える。
すると機能を完全に停止してレブナントは滅びるのか。
「再生するわけじゃないんだな」
「センセエすごいです! れぶなんとをやっつけちゃったです!」
「うん、俺の推測が当たってた。アルコールに反応するところは、ドレにお墨付きをもらったしね。これならば、誰でもレブナントを倒せるぞ」
『己やあの怪獣には頼らないにゃん?』
「君達に頼る時は、人間ではどうにもならない災厄が出てきた時だけだろうね。できればその機会がないように願いたいんだけど」
『自力でがんばる心意気、なかなかにゃん』
そもそもが、あまり仕事をしたくないらしいドレ。
クルミにぶら下げられたまま、今も全然やる気がなさそうだ。
さて、粉々になったレブナントを検証し、核となっている黄色い結晶を発見する。
これを再び回収。
先日手に入れた黄色い破片は、このアンデッドの核となる部分だったようだ。
場所は……頭部か。
レブナントだけではなく、ゾンビやスケルトンなんかも、もしかすると頭部にあるこの核で制御されているのかも知れないな。
今度調べてみよう。
アンデッドは死体と置き換わった、全く違う何かで構成されている存在。
言わば、ゴーレムの一種。
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