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第一部:都市国家アドポリスの冒険 9
第44話 おびき出せアンデッド その4
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その日は遅くまで準備をした。
そろそろ敵が動き出すのでは、と言う直感があったし、そのためにきちんと備えておくのが俺の性格だからだ。
口元に布でマスクをしたクルミが、酒気を吸い込まないようにしつつどんどん酒を小瓶に移し替えていく。
この小瓶、俺がちょこちょこ発注する割れやすい構造のものなのだ。
運ぶ時に凄く気を使うんだよね。毎回毛布なんかでくるんで持ち運んでいる。
ゼロ族は器用なので、この作業をどんどん進めていく。
俺よりも早いくらいだ。
「ふいー! こっちは終わったです!」
「お疲れ様。俺の方も終わったよ。これだけあれば、決戦に使えるね」
「けっせんです?」
「そう、決戦」
ここは、モフライダーズが取った四人部屋。
金を積むことでブランも入れてもらえることになったので、少々手狭だ。
そのうちのベッド二つを隅に寄せての作業だったわけだ。
ベッドの上からは、カイルが興味深げに俺達の仕事を見ている。
「アンデッド対策っすか。俺のコルセスカは魔法がかかってるんで、このままアンデッドとやれるっすけど」
「わたくしの神聖魔法もありますのに、そこまで準備が必要でしょうか?」
こちらは、ドレをむぎゅむぎゅしながらアリサ。
外の世界から来た猫は、されるがままになっている。
ブランよりもその辺りの耐久力はあるのだろうか?
『わふん』
あれは寝てる、と教えてくれるブラン。
ドレは目を開けたまま寝るのか……。
そしてむぎゅむぎゅされても寝たままとは。
「センセエ、これでどうするですか? すぐに攻めていくですか!? クルミはいつでもいいですよー!」
「そうだね。多分、俺達のことを向こうは警戒していると思う。だからこちらから探しても、尻尾を見せてはくれないと思うな」
「そうなんですか?」
「俺達は次々と、この一連の事件で発生した依頼を解決しているからね。ええと、みんな耳を貸してもらっていい?」
なんだなんだと、カイルとアリサが集まってきた。
俺は声をひそめて、
「違う依頼を受けた風を装って、いったん街の外に出よう。そして街に動きがあったら駆けつける。俺はそういう作戦を考えてるんだけど……どうかな」
「いいと思うっすよ。これ、声をひそめてるのは、盗み聞きしてるやつがいるかもしれないからっすか?」
「ああ。気を配っておくに越したことはないからね」
「わたくし、モフモフと一緒ならばどこまでだってお供しますわ……!」
「クルミはセンセエと一緒ならどこでもいくですよ!」
「よし、決定だ」
俺達の方針はまとまった。
翌日のこと。
我がモフライダーズは、新たな依頼を受けた。
それは、都市国家群の外にある、イリアノス王国の首都、神都と呼ばれるラグナスに荷物を届けに行くものだった。
「君達が引き受けてくれるなら安心だな」
ギルドマスターがそう言いながら、俺に親書を預けてくれる。
隣国まで行くと、しばらく帰ってくるのも大変になる。
だから、あちらで仕事をすることにもなるのだ。
親書には俺達の紹介状も入っている。
「国のあちこちで起こっているモンスターの事件も、一段落しそうだからね。いや、世話になったなモフライダーズ。お陰で、アドポリスも一息つけそうだよ」
「それは良かった」
俺が応じると、受付嬢がうんうん、と頷いた。
「オースさんの講義のおかげですよ! 若手冒険者達が見違えるような活躍をして、次々にモンスターが倒されているそうです。冒険者が減ってしまって、うちも頭を抱えてたんですけど……どうにかなりそうですよ!」
うんうん、それも良かった。
亡くなった冒険者達は気の毒だが、備えを怠れば即ち死に繋がるのがこの仕事だ。
次なる世代の冒険者達は、きちんと備えることを忘れずに、一日でも長く生き残って欲しい。
「では、これがラグナスに届けてもらう短剣だ。強い封印が施されていて、鞘から抜くことはできなくてね。虹の欠片、と言う名の宝剣らしい」
「分かりました。必ずラグナスにお届けします」
剣を受け取ると、リュックにしまい込んだ。
さあ、旅立ちだ。
正確には、旅立ちのふりをしてアドポリスを外から監視する。
もちろん、何もかも終わったらきちんと宝剣を届ける依頼は果たす。
街を出てしばらく歩いた後、俺達は横合いの茂みに入った。
「ブラン、ドレ、追っ手はついてない? 俺がざっと見たところではいないと思うんだけど」
『わふ』
『にゃん』
いないらしい。
「クルミも見てみるです!」
クルミはそう宣言すると、手近な樹に手足を引っ掛けて、するするするーっと登っていってしまう。
こりゃあ凄い。
さすがは樹上を家とするゼロ族だなあ。まるで地面を歩くみたいに木登りする。
彼女は樹のてっぺん近くまで登って、周囲を見回した。
そうしてしばらくしてから、再びするするーっと降りてくる。
「誰もいなかったです!」
「そうか。ありがとう。それなら安心だ」
黒幕がギルドにいるとしたら、色々な説明がつく。
攻略するための難易度が高いモンスター討伐依頼が、ランクの低いパーティにも受注できるようになってたこととか。
依頼を受けたパーティは、明らかにそのモンスターへの準備を出来てなかったこととか。
ある程度、依頼にモンスターの情報は書いてあるものだが、今回はモンスター名しかなかったからな。
そして、俺達がいない間に街で起きた浮浪者の失踪事件。
低ランク冒険者がレブナントになったのも、俺達が戻ってくる前だったはずだ。
「黒幕は、アドポリスで何かをしようと動き出しているだろう。多分、すぐにでも実行するはずだ。交代交代で見張ろう」
こうして、俺達モフライダーズは、敵が動き出すのを待つことにするのだった。
そろそろ敵が動き出すのでは、と言う直感があったし、そのためにきちんと備えておくのが俺の性格だからだ。
口元に布でマスクをしたクルミが、酒気を吸い込まないようにしつつどんどん酒を小瓶に移し替えていく。
この小瓶、俺がちょこちょこ発注する割れやすい構造のものなのだ。
運ぶ時に凄く気を使うんだよね。毎回毛布なんかでくるんで持ち運んでいる。
ゼロ族は器用なので、この作業をどんどん進めていく。
俺よりも早いくらいだ。
「ふいー! こっちは終わったです!」
「お疲れ様。俺の方も終わったよ。これだけあれば、決戦に使えるね」
「けっせんです?」
「そう、決戦」
ここは、モフライダーズが取った四人部屋。
金を積むことでブランも入れてもらえることになったので、少々手狭だ。
そのうちのベッド二つを隅に寄せての作業だったわけだ。
ベッドの上からは、カイルが興味深げに俺達の仕事を見ている。
「アンデッド対策っすか。俺のコルセスカは魔法がかかってるんで、このままアンデッドとやれるっすけど」
「わたくしの神聖魔法もありますのに、そこまで準備が必要でしょうか?」
こちらは、ドレをむぎゅむぎゅしながらアリサ。
外の世界から来た猫は、されるがままになっている。
ブランよりもその辺りの耐久力はあるのだろうか?
『わふん』
あれは寝てる、と教えてくれるブラン。
ドレは目を開けたまま寝るのか……。
そしてむぎゅむぎゅされても寝たままとは。
「センセエ、これでどうするですか? すぐに攻めていくですか!? クルミはいつでもいいですよー!」
「そうだね。多分、俺達のことを向こうは警戒していると思う。だからこちらから探しても、尻尾を見せてはくれないと思うな」
「そうなんですか?」
「俺達は次々と、この一連の事件で発生した依頼を解決しているからね。ええと、みんな耳を貸してもらっていい?」
なんだなんだと、カイルとアリサが集まってきた。
俺は声をひそめて、
「違う依頼を受けた風を装って、いったん街の外に出よう。そして街に動きがあったら駆けつける。俺はそういう作戦を考えてるんだけど……どうかな」
「いいと思うっすよ。これ、声をひそめてるのは、盗み聞きしてるやつがいるかもしれないからっすか?」
「ああ。気を配っておくに越したことはないからね」
「わたくし、モフモフと一緒ならばどこまでだってお供しますわ……!」
「クルミはセンセエと一緒ならどこでもいくですよ!」
「よし、決定だ」
俺達の方針はまとまった。
翌日のこと。
我がモフライダーズは、新たな依頼を受けた。
それは、都市国家群の外にある、イリアノス王国の首都、神都と呼ばれるラグナスに荷物を届けに行くものだった。
「君達が引き受けてくれるなら安心だな」
ギルドマスターがそう言いながら、俺に親書を預けてくれる。
隣国まで行くと、しばらく帰ってくるのも大変になる。
だから、あちらで仕事をすることにもなるのだ。
親書には俺達の紹介状も入っている。
「国のあちこちで起こっているモンスターの事件も、一段落しそうだからね。いや、世話になったなモフライダーズ。お陰で、アドポリスも一息つけそうだよ」
「それは良かった」
俺が応じると、受付嬢がうんうん、と頷いた。
「オースさんの講義のおかげですよ! 若手冒険者達が見違えるような活躍をして、次々にモンスターが倒されているそうです。冒険者が減ってしまって、うちも頭を抱えてたんですけど……どうにかなりそうですよ!」
うんうん、それも良かった。
亡くなった冒険者達は気の毒だが、備えを怠れば即ち死に繋がるのがこの仕事だ。
次なる世代の冒険者達は、きちんと備えることを忘れずに、一日でも長く生き残って欲しい。
「では、これがラグナスに届けてもらう短剣だ。強い封印が施されていて、鞘から抜くことはできなくてね。虹の欠片、と言う名の宝剣らしい」
「分かりました。必ずラグナスにお届けします」
剣を受け取ると、リュックにしまい込んだ。
さあ、旅立ちだ。
正確には、旅立ちのふりをしてアドポリスを外から監視する。
もちろん、何もかも終わったらきちんと宝剣を届ける依頼は果たす。
街を出てしばらく歩いた後、俺達は横合いの茂みに入った。
「ブラン、ドレ、追っ手はついてない? 俺がざっと見たところではいないと思うんだけど」
『わふ』
『にゃん』
いないらしい。
「クルミも見てみるです!」
クルミはそう宣言すると、手近な樹に手足を引っ掛けて、するするするーっと登っていってしまう。
こりゃあ凄い。
さすがは樹上を家とするゼロ族だなあ。まるで地面を歩くみたいに木登りする。
彼女は樹のてっぺん近くまで登って、周囲を見回した。
そうしてしばらくしてから、再びするするーっと降りてくる。
「誰もいなかったです!」
「そうか。ありがとう。それなら安心だ」
黒幕がギルドにいるとしたら、色々な説明がつく。
攻略するための難易度が高いモンスター討伐依頼が、ランクの低いパーティにも受注できるようになってたこととか。
依頼を受けたパーティは、明らかにそのモンスターへの準備を出来てなかったこととか。
ある程度、依頼にモンスターの情報は書いてあるものだが、今回はモンスター名しかなかったからな。
そして、俺達がいない間に街で起きた浮浪者の失踪事件。
低ランク冒険者がレブナントになったのも、俺達が戻ってくる前だったはずだ。
「黒幕は、アドポリスで何かをしようと動き出しているだろう。多分、すぐにでも実行するはずだ。交代交代で見張ろう」
こうして、俺達モフライダーズは、敵が動き出すのを待つことにするのだった。
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