モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

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第二部:神都ラグナスの冒険 3

第65話 下水の動物さらい その4

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 進むほどにネズミが増える。
 これは、本当にこの先に行かせたくないんだな。
 あまりにもわかり易すぎるぞ。

 野生のネズミが、危険を押してブラン相手に飛びかかってくるわけがないんだ。
 いや、スタンピートを起こしていれば別か?
 集団になったネズミは理性を失って、ただただ前進し、ぶつかったものに食らいつくだけの生き物になるし。

『わふーん』

「えっ、後ろでぶつぶつ言わないでくれって? ごめんごめん。ネズミはみんなブランが片付けてくれてるからさ」

 後方のネズミを片付けた俺達は、今はひたすら下水を突き進んでいる。
 前にブランを配置し、たまに天井を伝ってくるネズミはカイルとドレが叩き落とす。

 クルミはドレを運ぶ係だし、ファルクスに至っては何もしていない。
 鼻歌など歌ってるな。

「わたくしめは、新たな戯曲を作るべく構想を練っているのですよ。ああ、いけませんなあ。下水でネズミ退治では英雄譚になりません。せめてなにか大きなモンスターでも出てきてくれれば……」

「ファルクスてめえ縁起でもねえこと言ってるんじゃねえよ!?」

 カイルが思わず突っ込んだ。
 本当だ。
 だけど、そういう望みは得てして叶ってしまうものなんだ。

 ほら、下水の通路を塞ぐように、大きなモンスターがいるじゃないか。

『わふ?』

「ああ、あれは俺が知ってるケースだから対処しとくよ。ダンジョンで戦ったことがあるし、対抗手段も揃えてる」

 相手は、獅子と山羊と火吹きトカゲの頭を持ち、尾は蛇になったモンスター。
 キメラだ。

「下水にキメラがいるという記述は知らないけど、これは人間が作り出さないと存在しないモンスターだからね。間違いなく、下水に何者かが潜伏している。そして後ろめたいことをしてるね」

「ふわわ、おっきいモンスターです! ブランと同じくらいあります!」

「クルミにそう言われてみると、そこまで大きなモンスターという気がしなくなってくるな」

 いや、牡牛くらいの大きさがあるんだけど。
 ブランを見慣れてるとなあ。

 さて、キメラだが、獅子の頭は噛みつき、山羊の頭は記録された魔法をランダムに使用し、トカゲの頭が火を吐いてくる。
 後ろに回れば蛇が噛み付くし、そこには毒がある。

 一見して死角がない、恐るべきモンスターに見える。
 だが、頭がたくさんあるということは、なかなか致命的な弱点を抱えていてね。

「オースさん、こいつは慎重に攻めないと……」

「ああ、大丈夫。任せて。すぐ終わらせるから」

 俺は足取りも軽く、キメラの前に進み出た。

『うおおおおおんっ!!』

 キメラが吠えた。
 そして俺に向かって突撃してこようとする。

 さあ、ここで取り出したのは二つのスリング。
 袖口から石弾を滑り落とし、これを両手で振り回す。

「オースさん! スリングじゃそいつは!」

「大丈夫ッ! そらっ!」

 俺は二つのスリングを解放した。
 別々の方向に、石弾が飛ぶ。

 すると、壁で反射して、石弾の一つは山羊頭の首に炸裂した。
 もう一つは、トカゲの頭の近く。

 二つの首が慌てて、横を向く。
 すると、キメラの動きが乱れた。

『うおおおんっ!?』

 俺の近くで急制動だ。
 二つの首が警戒モードに入ったのだから、ライオン頭ひとつだけでは体の主導権を得られない。

 この隙に、俺は既にショートソードを抜いている。
 すぐ目の前のライオン頭目掛けて、剣を振るった。

 一撃で目を貫き、ライオン頭の脳に達する。

『うお……』

『めええええっ!?』

『しゃあっ!』

 慌てて二つの首がこちらを向いた所で、今度は山羊の頭側に回った。
 足を踏み外せば、下水に落ちるようなところだ。

『めええええっ……!』

 山羊の鳴き声に呪文の詠唱が混じる。
 なので、詠唱しきらないうちにその喉を斬る。

『ひゅーっ!?』

 声が出なくなった。
 飛び上がって角を掴み、山羊の頭に取り付きながらその首をさらに深く切り裂く。

『しゃあああっごおおおおおおっ!!』

 おっと、火吹トカゲが炎を吐いてきた。
 これは山羊の頭で受け止めつつ、俺はポケットから次なるアイテムを準備。

 油だ。
 息継ぎのために炎のブレスが止まった瞬間、俺は油を火吹きトカゲに投げつけた。

『しゃあっごおおおおおおおっ!?』

 再び炎のブレスを吐く、トカゲ頭。
 だが、それは自らにかかった油に引火した。

『しゃあああああああっ!?』

 キメラの体が暴れだす。
 俺は素早くキメラの背後に抜けた。

『しゅーっ!!』

 襲いかかってくる蛇の頭。
 これに、ポーチから取り出したハンカチを被せた。

『しゅっ!?』

 蛇の感覚器を一瞬封じる。
 相手の体温を察知してこちらを襲ってくるやつだ。

 だけど、密着したハンカチ越しなら分からない。
 俺は蛇の首を掴み、顎を下から上へ、ショートソードで串刺しにした。

 そしてキメラから離れる。

 目の前で、モンスターの巨体が傾いだ。
 判断能力を持つ頭部全てを破壊され、そいつは力なく、下水の水の中へと落ち込んでいくのだ。

「す……すげえ……。キメラを子供扱いだ」

 カイルが目を輝かせている。

「やっぱすげえよ、オースさん!」

「いやあ、なかなかギリギリだったよ。戦場が狭いからね。キメラが暴れた時、危うく水に落ちるかと思った」

「センセエやったー! 次はクルミもやるですー!」

「いいねー。二人がかりならもっと楽だ」

『相変わらずこのご主人、ありものだけでモンスターを制圧するにゃ。どう見てもスペックでは負けてるはずなのににゃ』

『わふん』

「おおおおおお」

 ファルクスが拳を握りしめ、ぶるぶる震えている。

「こっこっこっ」

「こここ?」

 クルミが首を傾げた。ニワトリかな?

「これ! これですぞーっ!! オース殿の英雄的活躍!! これこそがっ! わたくしめが待ち望んでいたものですーっ!!」

「うるせえぞファルクス! さっきから役に立たねえで……! おめえもちっとは仕事しろって!」

 怒鳴るカイル。
 だが、ファルクスは涼しげな顔をしていた。

「わたくしめの仕事は、オース殿の戯曲を作ること……。あ、ちなみにそこのキメラの影。扉がありますぞ。壁に見せかけてますが」

「なんだって!?」

 俺は慌てて横を見た。
 なるほど。
 壁によく似せているけれど、よくよく見れば素材が違う扉がある。

「声の反響度合いが、ここだけ違ったのですぞ。明かりが乏しい下水ではわかりにくいですなあ」

 ファルクスもプロなのだな、と思った俺だった。
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