モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

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第二部:神都ラグナスの冒険 7

第86話 おびき出せ忘却派! 一網打尽作戦 その4

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 会食が始まった。
 立食形式のパーティーで、豪華な料理に酒が次々出てくる。

 集められた人々は、神都の名士達ばかりである。
 この誰もが大教会関係者なのだそうで、神都ラグナスは完全な宗教都市になったなあと思うばかりだ。

 先日、一般貴族の廃止が完全に終了したらしい。
 教会との仲が良好であった貴族は、次世代を枢機卿として修行させること前提で、役職のみ取り上げて資産や権威はそのままにしてあるとか。
 政治を行うのも大変だ。

「おいしそうですねえ」

 クルミがうらやましそうに、料理を眺めている。
 俺とクルミは、くり抜かれた茂みの中に隠れている。

 パッと見は形よく刈り込まれた低木に見えているはずだ。

「よし、ちょっともらって来ちゃおうか」

「やれるです?」

「任せてくれ」

 俺がポーチから取り出したのは、ちょっと変わったアイテム。
 一見すると、手のひらに収まるほどの丸くて厚みのあるボード。
 だが、この一部が展開し……。

「こう、くるくるっと巻かれていた本体がまっすぐになる」

「おおー! ……それでこれ何につかうのです?」

「本来は、ダンジョンの中で先にある床に罠が無いかとか、落とし穴や水の深さを測るものなんだけど……。案外このアイテム、サーチロールの強度は高くてね。こういうこともできる」

 そーっと茂みの隙間から棒を伸ばし、通りかかった給仕の台車から、肉の塊を一つ突き刺す。
 それを素早く引き寄せてっと。

「仕事中だから、食べすぎないようにね」

「わーい!」

 クルミが肉の塊をナイフで削いで、もぐもぐやり始めた。

「さてさて。長期戦になりそうだぞ。先にトイレに行っておいてよかった。半日くらいはこのまま待てるな」

 茂みの中に敷物を用意し、たまにお茶など飲みながらのんびりする。
 常に緊張していては持たない。
 リラックスしつつ、何かあったら動けるように意識だけしておくのだ。

 クルミは肉を食べ終わって、お腹が膨れたらしい。
 すると指先を拭ってから、今度は退屈そうに茂みの葉っぱをちぎりだした。

「あんまりちぎると葉っぱがなくなっちゃうよ」

「むむっ! じゃあ、ちょっとずつちぎるです!」

 やっぱりちぎるのか。
 彼女がぷちぷち葉っぱをちぎっていると、目の前を見覚えがある人物が通りかかった。

 豪奢なドレスに身を包んだアリサだ。
 もともと品のある美女という顔立ちの彼女だから、ドレス姿がしっくりくる。
 しかし、あの胸元が大きく開いたドレスはどうなんだろう。こぼれ落ちそうでは?

「センセエ、目がえっちです! クルミにいえばいつだってオッケーなのに!」

「いやいや。いやいやいや」

 俺は真顔になって否定した。

「オースさん、クルミちゃん、多分、もうすぐですわ」

 アリサがヒソヒソ声で伝えてくる。
 彼女はこうして会場を歩き回り、来賓に挨拶をしたりすると同時に、見回りをしているのだ。
 アリサのドレスの隙間から、ローズがひょこっと顔を出した。

『ちゅっちゅ』

「ローズちゃんが何か感じているようなのですわ! それはそうと、ローズちゃんが一緒にいるだけでホストの仕事も悪くない気がしてきますわねえ……。ああ~心が豊かになりますわ~」

『ちゅー?』

 仲良くやっているようで何よりだ。
 ちなみにドレは、教会の猫でございます、という顔をして堂々と会場を歩き回っている。
 そして猫好きなご婦人から料理をちょうだいする、という活動に勤しんでいるのだ。

 ブランが大人しく犬小屋で待機していると言うのに、なんと要領のいい。

 外のお祭り広場からは、ファルクスの歌声が流れてくる。
 ただの歌に聞こえるが、実はロッキーと連絡を取り合う呪歌らしい。
 同じメロディを口ずさむ小鳥が、会場の空を飛び回っているのだ。

 そのメロディがちょっと変化した。

「クルミ、動きありだ」

「むむっ!」

 ちょっと眠そうだったクルミの目が、パチっと開いた。
 それと同時に、お祭り広場で悲鳴が上がった。

 パーティー会場を守る僧兵が、何か叫んでいる。
 そして、彼らの守りを突破して突入してくる何か。

『がおるるるるるるるっ!!』

「キメラだね。さあ、お仕事開始だ」

「はいです!」

 俺とクルミが立ち上がる。

 パーティー会場は一見してパニック状態。
 だが、これはもともと、忘却派をおびき寄せるための作戦だ。

 つまり、参加者はほとんどがグル。
 枢機卿は誰もが、この作戦を理解して参加している。

 それ故に、避難は極めて迅速だ。
 ものすごい勢いで、みんな逃げていく。

『がおるーっ!』

『ぐおおおーっ!!』

 次々にキメラが、塀を乗り越えて出現した。
 その背中には、忘却派の連中が乗っている。

 そのうちの一体、特に大きなキメラの上に、見覚えのある男女がいた。

「我々は! ザクサーン忘却派である!! 真の教えを忘れ、妥協と背信に塗れた協調派を弾劾するものである!! 民よ聞け! これは聖戦である!!」

「なーにが聖戦なものか。ブランッ!」

『わおん!』

 俺の呼びかけに応えて、マーナガルムの返事が一声。
 犬小屋から飛び出してきた真っ白な疾風が、キメラの一体にぶちかましを掛けた。

『がるるるるウグワーッ!!』

 ぶちかまされた部分から、真っ二つにちぎれ飛ぶキメラ。
 そしてブランが姿を現した。

『わふ!』

 俺もまた、忘却派の前に立ちふさがる。

「……! 君か、冒険者オース! やはりみどもと敵対する気のようだな。それほどの力を持ちながら、どうして体制派に与するのか理解に苦しむ!!」

「アストラル! お前はここで終わりだ!」

 問答するつもりはない。
 個人的に、アストラル夫妻は絶対に許せないのだ。

 ショーナウン・ウインドを裏切った女、ファレナは、俺を見下すような目をした。

「終わりって何を言ってるのよ。ここから始まりなんじゃない。アキムとか偽名を使って、アブラヒムが来てるのは分かってるのよ。あいつを殺せばここで新しい歴史が始まるんだから」

「そうだ、我妻ファレナよ! 忘却された歴史が再び世界の表に! 神と人による、美しき世界が戻ってくるのだ!」

 奴らの言う新しい世界に、クルミのような亜人の居場所はない。
 まあ、絶対に受け入れられる考え方じゃないよな。

「ブラン! ドレ! ローズ!」

 俺が呼ぶと、真っ白な犬の横合いから、金色の猫が走ってきた。
 アリサの体を駆け上がって、ピンクのハムスターが飛び出す。

 カイルがどこかから現れて、近場のキメラと殴り合いを始めた。
 気が早いな……!
 だが、ちょうどいいきっかけだ。

 俺は戦闘開始の合図をモフモフモンスター達に送りながら、アストラルに宣言した。

「ここでお前達は終わりだ。お前達は過去の亡霊を呼び覚ますだけで、新しい世界なんか願っちゃいない。人が一歩一歩前に進み、新たな種族と協調して歩んできたのが今の姿なんだ。つまり、お前達は過去の妄執に過ぎない!!」

「言うに事欠いて!! オースゥゥゥッ!!」

 アストラルの目がつり上がった。
 さあ、忘却派との決戦が始まる!
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