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第三部:セントロー王国の冒険 2
第97話 地底を抜けてその先へ その4
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大きな村にたどり着いた。
俺達が地下世界で最初に来た村とは、明らかに規模が違う。
家の数が数倍あり、地底に立つ柱と一体化した一部の建物からは、もくもくと煙が上がっている。
煙が当たる辺りに、見たことのない苔が群生していてキラキラ光っていた。
煙を栄養にしている?
「あれはなんだろうなあ……。なんというか、工房みたいに見えるけれど。ダークドワーフの工房ということだろうか」
案ずるよりまずは行動せよ、だ。
俺は真っ先に、村を訪れることにした。
「こんにちはー」
「しゅる!?」
歩いていたリザードマンにいきなり話しかけたら、ビクッとして立ち止まった。
「あ、あ、あー、外の人? びっくりしタ……。いきなり出てくるからびっくりしタ……」
「あっ、ごめんね」
気が急いてしまっていたようだ。
謝っておく。
その横を、クルミとドレがちょろちょろと駆け抜けていった。
「あっ、クルミ! ドレ! ずるいぞ!」
「注意するわけではなくて、ずるいぞ、な辺りオースさんのテンションが果てしなく高まってますわね」
「オースさんこういうの大好物だったんだなあ」
『わふん』
たまにはいいじゃないの、とブランが鷹揚に言っている。
それを聞きながら、俺はクルミを追って村の中へと飛び込んだ。
そこは、村と言うか、もう町だった。
たくさんのドワーフやリザードマンが道を行き交い、店のようなものもあって、そこで物々交換をしている。
並んでいる品物は、大小様々な苔の塊である。
「これはなんだい」
俺が店を覗き込むと、ドワーフが目を丸くした。
「おっ! 地上から来た人かい!? こいつはね、俺が育ててる食用の苔玉だよ。これをほぐして料理するんだが、ビブリオス男爵の手も借りて品種改良しててね」
「ほうー」
ここでもビブリオス男爵!
有名な人物らしい。
少なくとも、地上の貴族が地底で有名というのはすごい話だ。
「よくそのビブリオス男爵とか、ジーンさんの名前を聞くんだけど、そこまで有名な人だったのかい?」
「ああ、そのとおりさ!」
ドワーフが胸を張る。
「あのお人はね、分断されてたこの世界に降り立って、俺らダークドワーフとリザードマンをお救い下さったのさ! 世界を分けていた悪魔の根っこも、その仕組を調べて誰でも退治できるようにして下さった。精霊女王レイア様の次に偉い人だねえ、あのひとは」
うんうん、とドワーフは頷いた。
そこまでの人物なのか。
これは会わねばなるまい。
「センセエ、センセエー!」
「なんだいなんだい」
俺が振り返ると、すぐ目の前に巨大な頭蓋骨があった。
「うわーっ!!」
心底びっくりした。
ここまで驚いたのはブランに会って以来かもしれない。
「驚いたです?」
『うにゃっはっはっはっはっは! ご主人びっくりしてるにゃ! こりゃあ傑作だにゃあ』
転げ回って爆笑するドレ。
あとでアリサをけしかけてやる。
それは、クルミが背負っている大きな頭蓋骨だった。
「これはもしかして……暴れる牙の?」
「そうです! 村長さんだっていうおばさんが貸してくれたですよー」
クルミの後ろから、恰幅のいいダークドワーフのご婦人が現れる。
「あんた達、旅人だろう? ということは、ビブリオス男爵領に行くんだろ。ちょうどこいつを持ってくところだったんだ。一緒に送ってやるよ」
「本当かい!? それはありがたい!」
「あんた、男爵と同類のにおいがするねえ……」
村長までそんな事を言うのか。
村では、週に一度ビブリオス男爵領に魔法の通路をつなげ、商品や人のやり取りをしているらしい。
俺達はちょうど、そのタイミングに間に合ったわけだ。
これを逃していたら、一週間地下世界にいることになっていた。
いや、俺としてはそれはそれで……。
「いけない!! オースさんが危険なことを考えてますわ!」
『今回ばかりはアリサが正しいにゃ。みんな、ご主人を簀巻きにするにゃ』
「悪いなオースさん! あんたの欲望に巻き込まれて一週間苔を食って暮らすのは勘弁なんだ!」
「センセエを巻いて遊ぶですか!? クルミもやるですー!」
「うわーっ、な、何をするきみたちーっ」
俺はぐるぐる巻きにされてしまった。
そしてブランの背中にくくりつけられ、運ばれることに。
なんということだ。
『わふわふ』
「笑うなよブラン。あ、いや、この状況は確かに笑うしかないか」
かくして俺は、地下世界から地上へ向かうという魔法の通路、ドワーフの通り道が展開される様子を、グルグル巻きにされたまま眺めることになったのだった。
広大な地下世界だった周囲がぐにゃりと歪むと、まるでキラキラ輝く星空のようなトンネルがそこに生まれる。
どうみても上り坂のトンネルなのに、ブランがそこに一歩を踏み出すと、平坦な道になっているのだ。
『わふん』
「へえ、精霊の力を用いた儀式魔法なのか、これ。石と土の精霊がたくさんいる? そんなことまで分かるのかい?」
『わふ』
ブランは笑って答えてくれなかった。
ずっと一緒にいる彼だが、謎めいた存在だよなあ。
だが、マーナガルムの謎は並大抵じゃ解き明かせないような気がしている。
「さあ、行くですよー! みんな、クルミに続くですー! ブラン、センセエをたのんだですよ!」
『わふん』
あのクルミがパーティを先導している。
成長したなあ、としみじみ思いつつ、俺は通り道の星空を眺めながら運ばれていくのだった。
俺達が地下世界で最初に来た村とは、明らかに規模が違う。
家の数が数倍あり、地底に立つ柱と一体化した一部の建物からは、もくもくと煙が上がっている。
煙が当たる辺りに、見たことのない苔が群生していてキラキラ光っていた。
煙を栄養にしている?
「あれはなんだろうなあ……。なんというか、工房みたいに見えるけれど。ダークドワーフの工房ということだろうか」
案ずるよりまずは行動せよ、だ。
俺は真っ先に、村を訪れることにした。
「こんにちはー」
「しゅる!?」
歩いていたリザードマンにいきなり話しかけたら、ビクッとして立ち止まった。
「あ、あ、あー、外の人? びっくりしタ……。いきなり出てくるからびっくりしタ……」
「あっ、ごめんね」
気が急いてしまっていたようだ。
謝っておく。
その横を、クルミとドレがちょろちょろと駆け抜けていった。
「あっ、クルミ! ドレ! ずるいぞ!」
「注意するわけではなくて、ずるいぞ、な辺りオースさんのテンションが果てしなく高まってますわね」
「オースさんこういうの大好物だったんだなあ」
『わふん』
たまにはいいじゃないの、とブランが鷹揚に言っている。
それを聞きながら、俺はクルミを追って村の中へと飛び込んだ。
そこは、村と言うか、もう町だった。
たくさんのドワーフやリザードマンが道を行き交い、店のようなものもあって、そこで物々交換をしている。
並んでいる品物は、大小様々な苔の塊である。
「これはなんだい」
俺が店を覗き込むと、ドワーフが目を丸くした。
「おっ! 地上から来た人かい!? こいつはね、俺が育ててる食用の苔玉だよ。これをほぐして料理するんだが、ビブリオス男爵の手も借りて品種改良しててね」
「ほうー」
ここでもビブリオス男爵!
有名な人物らしい。
少なくとも、地上の貴族が地底で有名というのはすごい話だ。
「よくそのビブリオス男爵とか、ジーンさんの名前を聞くんだけど、そこまで有名な人だったのかい?」
「ああ、そのとおりさ!」
ドワーフが胸を張る。
「あのお人はね、分断されてたこの世界に降り立って、俺らダークドワーフとリザードマンをお救い下さったのさ! 世界を分けていた悪魔の根っこも、その仕組を調べて誰でも退治できるようにして下さった。精霊女王レイア様の次に偉い人だねえ、あのひとは」
うんうん、とドワーフは頷いた。
そこまでの人物なのか。
これは会わねばなるまい。
「センセエ、センセエー!」
「なんだいなんだい」
俺が振り返ると、すぐ目の前に巨大な頭蓋骨があった。
「うわーっ!!」
心底びっくりした。
ここまで驚いたのはブランに会って以来かもしれない。
「驚いたです?」
『うにゃっはっはっはっはっは! ご主人びっくりしてるにゃ! こりゃあ傑作だにゃあ』
転げ回って爆笑するドレ。
あとでアリサをけしかけてやる。
それは、クルミが背負っている大きな頭蓋骨だった。
「これはもしかして……暴れる牙の?」
「そうです! 村長さんだっていうおばさんが貸してくれたですよー」
クルミの後ろから、恰幅のいいダークドワーフのご婦人が現れる。
「あんた達、旅人だろう? ということは、ビブリオス男爵領に行くんだろ。ちょうどこいつを持ってくところだったんだ。一緒に送ってやるよ」
「本当かい!? それはありがたい!」
「あんた、男爵と同類のにおいがするねえ……」
村長までそんな事を言うのか。
村では、週に一度ビブリオス男爵領に魔法の通路をつなげ、商品や人のやり取りをしているらしい。
俺達はちょうど、そのタイミングに間に合ったわけだ。
これを逃していたら、一週間地下世界にいることになっていた。
いや、俺としてはそれはそれで……。
「いけない!! オースさんが危険なことを考えてますわ!」
『今回ばかりはアリサが正しいにゃ。みんな、ご主人を簀巻きにするにゃ』
「悪いなオースさん! あんたの欲望に巻き込まれて一週間苔を食って暮らすのは勘弁なんだ!」
「センセエを巻いて遊ぶですか!? クルミもやるですー!」
「うわーっ、な、何をするきみたちーっ」
俺はぐるぐる巻きにされてしまった。
そしてブランの背中にくくりつけられ、運ばれることに。
なんということだ。
『わふわふ』
「笑うなよブラン。あ、いや、この状況は確かに笑うしかないか」
かくして俺は、地下世界から地上へ向かうという魔法の通路、ドワーフの通り道が展開される様子を、グルグル巻きにされたまま眺めることになったのだった。
広大な地下世界だった周囲がぐにゃりと歪むと、まるでキラキラ輝く星空のようなトンネルがそこに生まれる。
どうみても上り坂のトンネルなのに、ブランがそこに一歩を踏み出すと、平坦な道になっているのだ。
『わふん』
「へえ、精霊の力を用いた儀式魔法なのか、これ。石と土の精霊がたくさんいる? そんなことまで分かるのかい?」
『わふ』
ブランは笑って答えてくれなかった。
ずっと一緒にいる彼だが、謎めいた存在だよなあ。
だが、マーナガルムの謎は並大抵じゃ解き明かせないような気がしている。
「さあ、行くですよー! みんな、クルミに続くですー! ブラン、センセエをたのんだですよ!」
『わふん』
あのクルミがパーティを先導している。
成長したなあ、としみじみ思いつつ、俺は通り道の星空を眺めながら運ばれていくのだった。
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