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第三部:セントロー王国の冒険 3
第99話 彼の名はジーン その1
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俺も畑に駆け下りて、転げ落ちた彼を支える。
上背は俺よりあり、割とがっしりしている。
武闘派の男爵なんだろうか?
「大丈夫ですかね」
「ああ、済まないな君。森の入口で草いじりをしてしまってね。いや、どうも意図していなかった交配が起こったようで、あの周辺の草木が変化しているのだよ。具体的には」
「先輩! もうー。自分で立てるなら上に上がってからお話してください!」
「わ、わかったよナオ。あまり怒るとお腹にさわる……! ストレスはよくないんだ」
おや?
もう片側でこの男、ビブリオス男爵を支えている女性は、奥方か。
ピンクの髪にメガネを掛けていて、ゆったりした服装をしている。
ああ、たしかにお腹が大きくなっている。
胸元も大きいのと、服の生地に余裕があるので分からなかったが。
男爵は自力でトコトコ歩き出したので、俺もあとに続く。
尻や膝が泥まみれだが、全く怒る様子もない。
「おや、大人数じゃないか。どうしたんだトーガ」
「どうしたもこうしたもあるか。客人だ。いつものドワーフと、それからイリアノスからの旅人だぞ」
「ほう、イリアノス王国から!」
「今は法国になっていますわ」
男爵の言葉を、アリサが訂正した。
この辺り、高位の司祭であるアリサは細かいのだ。
「ふむ、では外国の話を聞かせて欲しい。私の屋敷まで来るといいだろう」
そう言うなり、ビブリオス男爵はスタスタと歩いていってしまった。
そしてすぐに振り返ると、ササッと戻ってくる。
ナオ夫人の横に並び、歩調を合わせて歩き出した。
「あいつも気遣いができるようになったのか……」
ワイルドエルフのトーガがしみじみと呟いている。
どうやら、彼らの付き合いは長いようだ。
「ほえー、畑がいっぱいあるところですねえ!」
クルミがキョロキョロしている。
「そうだね。土地の八割が畑って感じだね。それに、他にある建物もみんな丸太を組み合わせたような簡素な作りだ。典型的な開拓村というか……。いや、それにしては働いている種族がバラエティに富んでいるなあ……」
目の前を、カサカサと音を立てて資材を運んでいくのは、下半身が巨大サソリのアンドロスコルピオ。
遠くで木を切っているのはオーガだろう。
リザードマンにエルフ、そして希少種族である魔族までいる。
神都ラグナスを、そのまま小さくしたようなところだ。
人種の坩堝だな。
だが、ラグナスは人々の間に発生する諍いを、神と法の力で治めていた。
一見して平和に見えるここでは、どうやって彼らをまとめているのだろうか。
いやいやいや、ちょっと待て。
男爵領があるここセントロー王国は、もともと人間至上主義的な考え方が強い国だ。
その中で、これだけ多くの種族が共同生活を送っているというのは凄まじいことなのではないだろうか。
ビブリオス男爵という男、見た目通りではないのかもしれない。
「センセエがむつかしい顔してます! またなにかすごいことを考えてるですね?」
「いや、そうでもないけど……」
そして、通された男爵の屋敷。
それは巨大なログハウスだった。
そう、ログハウスだ。
「ログハウスだ」
「必要な機能は備わっている。それに丸太は破損した部位から換えが効くからな」
真面目な顔で答える男爵。
これを見て、カイルが吹き出した。
「ほんとにオースさんに似てるっすね、男爵……! まるで生き別れの兄弟みてえだ」
「確かに……!」
アリサも笑ってはいけない。
貴族の前だぞ。
だが、ビブリオス男爵はけろりとしたものだ。ナオ夫人もニコニコしている。
「では入り給え。なに、鍵など掛かっていない。そもそも存在しないからな」
真面目な顔でそう言うと、男爵は自らの手で扉を開けた。
すると、そこから何者かが飛び出してくる。
「パパ、ママ、お帰りー!!」
『わふ!』
『にゃ!?』
『ちゅっ!』
おっ、うちのモフモフ三匹が反応した。
どうしたのだろう。
飛び出してきたのは、膝のあたりくらいまで大きさのころころとした生き物だった。
緑色をしていて、尻尾と翼が生えていて、トカゲと言うにはちょっと顔立ちも違っていて……。
うん?
本で読んだドラゴンを、そのまま子どもにしたような。
「留守番しっかりできたようだな、ディーン」
「うん!」
ドラゴンは男爵に抱き上げられて、尻尾をパタパタとさせた。
「男爵、彼は一体?」
「ああ、ディーンか。この子は、故あって私とナオで孵した地竜だ。地竜というのは知っているかね?」
「ええ、もちろん。伝説に謳われる四匹の竜の一体ですよね。火竜、風竜、水竜、地竜。亜竜とは違い、真の竜と呼ばれる彼ら属性竜は、神にも匹敵するほどの力を持つという……って、まさかそれですか」
「そう、それだよ。我々のこの領土で地竜が眠っていてね。彼女が世界の外へ旅立つのを見送ったのだよ。その時、彼女が残していった卵を温めることになった。ナオと私で温めて、生まれたのがディーンなんだ」
『竜の星渡りにゃ。この星は竜の生息地だったにゃあ。どうりで変なのがたくさんいるにゃあ』
「知っているのかドレ」
俺がいきなり猫に話しかけたので、男爵が不思議そうな顔をした。
「あ、すみません。俺の連れてる彼ら、三匹も普通の動物じゃないんですよ」
『そういうことにゃ』
「おおっ、頭の中に直接! なるほど……!!」
男爵の目が、好奇心の輝きを帯びてキラキラした。
あっ。
この人は俺の同類だ……!
俺は今はっきりと理解する。
「君……!! 君の友人の動物達と、ちょっとお話させてもらってもいいかね……!!」
「もう、先輩ったらまた!」
「センセエみたいな人ですねえこの人」
ハッとする、ナオ夫人とクルミ。
なんかシンパシーを感じたようだ。
うーむ、運命的な物を感じる……?
上背は俺よりあり、割とがっしりしている。
武闘派の男爵なんだろうか?
「大丈夫ですかね」
「ああ、済まないな君。森の入口で草いじりをしてしまってね。いや、どうも意図していなかった交配が起こったようで、あの周辺の草木が変化しているのだよ。具体的には」
「先輩! もうー。自分で立てるなら上に上がってからお話してください!」
「わ、わかったよナオ。あまり怒るとお腹にさわる……! ストレスはよくないんだ」
おや?
もう片側でこの男、ビブリオス男爵を支えている女性は、奥方か。
ピンクの髪にメガネを掛けていて、ゆったりした服装をしている。
ああ、たしかにお腹が大きくなっている。
胸元も大きいのと、服の生地に余裕があるので分からなかったが。
男爵は自力でトコトコ歩き出したので、俺もあとに続く。
尻や膝が泥まみれだが、全く怒る様子もない。
「おや、大人数じゃないか。どうしたんだトーガ」
「どうしたもこうしたもあるか。客人だ。いつものドワーフと、それからイリアノスからの旅人だぞ」
「ほう、イリアノス王国から!」
「今は法国になっていますわ」
男爵の言葉を、アリサが訂正した。
この辺り、高位の司祭であるアリサは細かいのだ。
「ふむ、では外国の話を聞かせて欲しい。私の屋敷まで来るといいだろう」
そう言うなり、ビブリオス男爵はスタスタと歩いていってしまった。
そしてすぐに振り返ると、ササッと戻ってくる。
ナオ夫人の横に並び、歩調を合わせて歩き出した。
「あいつも気遣いができるようになったのか……」
ワイルドエルフのトーガがしみじみと呟いている。
どうやら、彼らの付き合いは長いようだ。
「ほえー、畑がいっぱいあるところですねえ!」
クルミがキョロキョロしている。
「そうだね。土地の八割が畑って感じだね。それに、他にある建物もみんな丸太を組み合わせたような簡素な作りだ。典型的な開拓村というか……。いや、それにしては働いている種族がバラエティに富んでいるなあ……」
目の前を、カサカサと音を立てて資材を運んでいくのは、下半身が巨大サソリのアンドロスコルピオ。
遠くで木を切っているのはオーガだろう。
リザードマンにエルフ、そして希少種族である魔族までいる。
神都ラグナスを、そのまま小さくしたようなところだ。
人種の坩堝だな。
だが、ラグナスは人々の間に発生する諍いを、神と法の力で治めていた。
一見して平和に見えるここでは、どうやって彼らをまとめているのだろうか。
いやいやいや、ちょっと待て。
男爵領があるここセントロー王国は、もともと人間至上主義的な考え方が強い国だ。
その中で、これだけ多くの種族が共同生活を送っているというのは凄まじいことなのではないだろうか。
ビブリオス男爵という男、見た目通りではないのかもしれない。
「センセエがむつかしい顔してます! またなにかすごいことを考えてるですね?」
「いや、そうでもないけど……」
そして、通された男爵の屋敷。
それは巨大なログハウスだった。
そう、ログハウスだ。
「ログハウスだ」
「必要な機能は備わっている。それに丸太は破損した部位から換えが効くからな」
真面目な顔で答える男爵。
これを見て、カイルが吹き出した。
「ほんとにオースさんに似てるっすね、男爵……! まるで生き別れの兄弟みてえだ」
「確かに……!」
アリサも笑ってはいけない。
貴族の前だぞ。
だが、ビブリオス男爵はけろりとしたものだ。ナオ夫人もニコニコしている。
「では入り給え。なに、鍵など掛かっていない。そもそも存在しないからな」
真面目な顔でそう言うと、男爵は自らの手で扉を開けた。
すると、そこから何者かが飛び出してくる。
「パパ、ママ、お帰りー!!」
『わふ!』
『にゃ!?』
『ちゅっ!』
おっ、うちのモフモフ三匹が反応した。
どうしたのだろう。
飛び出してきたのは、膝のあたりくらいまで大きさのころころとした生き物だった。
緑色をしていて、尻尾と翼が生えていて、トカゲと言うにはちょっと顔立ちも違っていて……。
うん?
本で読んだドラゴンを、そのまま子どもにしたような。
「留守番しっかりできたようだな、ディーン」
「うん!」
ドラゴンは男爵に抱き上げられて、尻尾をパタパタとさせた。
「男爵、彼は一体?」
「ああ、ディーンか。この子は、故あって私とナオで孵した地竜だ。地竜というのは知っているかね?」
「ええ、もちろん。伝説に謳われる四匹の竜の一体ですよね。火竜、風竜、水竜、地竜。亜竜とは違い、真の竜と呼ばれる彼ら属性竜は、神にも匹敵するほどの力を持つという……って、まさかそれですか」
「そう、それだよ。我々のこの領土で地竜が眠っていてね。彼女が世界の外へ旅立つのを見送ったのだよ。その時、彼女が残していった卵を温めることになった。ナオと私で温めて、生まれたのがディーンなんだ」
『竜の星渡りにゃ。この星は竜の生息地だったにゃあ。どうりで変なのがたくさんいるにゃあ』
「知っているのかドレ」
俺がいきなり猫に話しかけたので、男爵が不思議そうな顔をした。
「あ、すみません。俺の連れてる彼ら、三匹も普通の動物じゃないんですよ」
『そういうことにゃ』
「おおっ、頭の中に直接! なるほど……!!」
男爵の目が、好奇心の輝きを帯びてキラキラした。
あっ。
この人は俺の同類だ……!
俺は今はっきりと理解する。
「君……!! 君の友人の動物達と、ちょっとお話させてもらってもいいかね……!!」
「もう、先輩ったらまた!」
「センセエみたいな人ですねえこの人」
ハッとする、ナオ夫人とクルミ。
なんかシンパシーを感じたようだ。
うーむ、運命的な物を感じる……?
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