モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

文字の大きさ
119 / 173
第三部:セントロー王国の冒険 5

第110話 ロネス男爵領へ その2

しおりを挟む
 ロネス男爵領へは馬車で向かう。
 護衛を引き連れて、ガタゴトと馬車が走る。

「見渡す限り、畑だなあ」

「ここはな、ビブリオス卿が開拓したのだ。その前はあちこちに底なし沼がある不毛の大地だったのだぞ」

「へえ! それは凄い……!」

 そう言えば、あちこちを亜人の農夫が耕したりしている。
 ビブリオス男爵領ができてから、まだ五年くらいしか経っていないと聞く。
 それでこれだけの領地を開拓し、畑としているわけだから大したものだ。

 彼は有能な為政者でもあるんだな。

 しばらく畑が続いた後、風景が一変する。
 殺風景な原野だ。

「これが本来の光景だ。こんな有様なのを、あの畑にしたのだから大したものだな」

「いやあ、まったくです」

 雑草が生い茂り、荒れ放題。
 しかもロネス男爵の話によると、背の高い雑草の合間には底なし沼が点在しているから、不注意に分け入ると命取りだという話だ。

「危険なばかりで実入りはない。そんな場所に、あの男はよくぞあれだけ豊かな土地を作り上げたものだ」

「ですねえ。そう言えば、馬車はさっきから快調に走ってますけど、そんな荒れ地の真ん中に道が整備されてるんですか?」

 これに答えたのは、カレラ夫人だった。

「ええ。ここはね、道も獣道しかなくて、行き来するのに片道三日はかかったの。だけど、ジーンさんとみんなで整備してね。お陰で一日で帰ることができるようになったわ。もっとも、そのせいで王都から変な賢者の一団が来たみたいだけど。ごめんね、本当ならああいう変なのはうちの領土で止めるはずなんだけど」

「おれの土地は金さえ払えば通行フリーだからなあ」

 ロネス男爵はそう言って、わっはっは、と笑った。
 その脇腹を、カレラ夫人が小突く。

「ウグワーッ」

「ひゃー、痛そうです!」

「うく……愛とは痛いものなのだ」

 おお、ロネス男爵、カッコいいことを言うな。
 夫人がちょくちょく男爵をどつくような関係だが、この二人、男爵から猛アタックをかけ、一年アプローチし続けてついに落としたという関係らしい。
 男女はいろいろだ。

 ビブリオス男爵はもともと、彼が意志を与えたホムンクルスであるナオ夫人が、男爵が僻地に飛ばされた時についてきて、様々な開拓と冒険をともにして結ばれた仲。

 ロネス男爵は追いかける愛だな。
 で、俺は……。

「すぴーすぴー」

 腕にくっついて寝ているクルミを見る。
 うん、追いかけられる側だ。

 全く、男女は色々だ。

 馬車は何事もなく、荒野の道をひたすら進んでいく。
 荒野を挟み込むように森が展開しており、これらもスピーシ大森林の一部だと言う。

 ここでワイルドエルフが目を光らせているから、開拓地から無事に出ていくものを襲うものはいない。
 昔は入ってくることも許さない場所だったが、それをビブリオス男爵が変えた。

 だから不良賢者が入ってきてしまうわけだが……、何事にも良い面と悪い面があるよな。

 荒野を抜けると、草原地帯になる。
 遠く離れたところに、街の影が見えた。
 あれがロネス男爵領だ。

「わっほーい!」

『わふ!』

 馬車の横を、アリサを乗せたブランが走っていく。
 アリサの前にはドレが鎮座して、その前にはローズがちょこんと座っていた。

 この一人と三匹は、馬車の後ろを走っていたのだ。

「犬はどんなに大きくても背中に人を乗せられるようにはできてないと聞いたんだけど……例外はあるものなのねえ」

 カレラ夫人が目を丸くしている。

「犬に見えますが、彼はモンスターなんですよ。それもかなりランクの高いモンスターで、俺にテイムされてますけど」

 いや、俺のテイムの力だけが彼をつなぎとめてるんだろうか。
 ブラン自身も、望んで俺とつながっているような。

『わふ!』

 ああ、多分そうだろう。
 ブランが実に楽しそうだ。
 俺と一緒にいるようになって、様々なところを旅している。

 マーナガルムにとって、旅をするという発想はこれまで無かったのだろう。

「ブランは、俺とクルミを乗せても軽々走りますからね。どれだけのパワーがあるのか、底は知れないですね」

「ああ、つまりジーンさんとこのマルコシアスみたいな感じなのね」

「ええ、多分それが一番近いです」

 風を切りながら、マーナガルムが走っていく。
 彼はあっという間に馬車を追い越し、ぐんぐん加速していく。

 そろそろブランは男爵領についたかな。
 そんな頃合いで、向こうからわあわあという声が聞こえてきた。

「ああ、こりゃいかん。すごい速度で走ってくる犬を見たんだ。うちの兵士は腰抜けでな! みんな壁の中に籠もってしまったんだろう!」

 ロネス男爵が馬車の扉を開け、身を乗り出す。
 後ろからカレラ夫人が彼の体を支えている。
 元冒険者だけあって、腕まくりした彼女の腕はなかなかムキムキだ。

「おおーい!! お前たち! 扉を開けろー! おれの帰還だぞ! 開けろー!!」

 叫ぶ男爵。
 なんとも豪快だ。

 どうやら、拡声の効果がある魔道具を身に着けていたらしい。
 彼の言葉は遠くまで伝わり、こちらからでも伺えるロネス男爵領は領都の壁から、兵士たちがひょこひょこ頭を出すのが見える。

 うん、あれが普通の反応だよな。
 今までのみんなが、ブランを普通に受け入れすぎだ。

 当のブランは、壁の下で立ち止まっている。
 横にアリサが立ち、丹念にブラッシングを始めていた。
 ドレはブランの頭の上で毛づくろいをしているな。

 なんとマイペースなのだ。

 そして馬車は壁に到着する。

「あっ、確かに男爵!!」

「ほんとだ、夫人も一緒だ」

「じゃあ、あの犬は客人だったのか」

「犬が客だとはなあ」

「ばっか、ビブリオス領から来ただろ。あっちから来たってことは何が来てもおかしくねえって」

「かいもーん! 開門!」

 わあわあと騒ぐ声がして、扉が開いていった。
 ロネス男爵領も、なんとも賑やかそうなところだなあ。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

処理中です...