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第三部:セントロー王国の冒険 5
第110話 ロネス男爵領へ その2
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ロネス男爵領へは馬車で向かう。
護衛を引き連れて、ガタゴトと馬車が走る。
「見渡す限り、畑だなあ」
「ここはな、ビブリオス卿が開拓したのだ。その前はあちこちに底なし沼がある不毛の大地だったのだぞ」
「へえ! それは凄い……!」
そう言えば、あちこちを亜人の農夫が耕したりしている。
ビブリオス男爵領ができてから、まだ五年くらいしか経っていないと聞く。
それでこれだけの領地を開拓し、畑としているわけだから大したものだ。
彼は有能な為政者でもあるんだな。
しばらく畑が続いた後、風景が一変する。
殺風景な原野だ。
「これが本来の光景だ。こんな有様なのを、あの畑にしたのだから大したものだな」
「いやあ、まったくです」
雑草が生い茂り、荒れ放題。
しかもロネス男爵の話によると、背の高い雑草の合間には底なし沼が点在しているから、不注意に分け入ると命取りだという話だ。
「危険なばかりで実入りはない。そんな場所に、あの男はよくぞあれだけ豊かな土地を作り上げたものだ」
「ですねえ。そう言えば、馬車はさっきから快調に走ってますけど、そんな荒れ地の真ん中に道が整備されてるんですか?」
これに答えたのは、カレラ夫人だった。
「ええ。ここはね、道も獣道しかなくて、行き来するのに片道三日はかかったの。だけど、ジーンさんとみんなで整備してね。お陰で一日で帰ることができるようになったわ。もっとも、そのせいで王都から変な賢者の一団が来たみたいだけど。ごめんね、本当ならああいう変なのはうちの領土で止めるはずなんだけど」
「おれの土地は金さえ払えば通行フリーだからなあ」
ロネス男爵はそう言って、わっはっは、と笑った。
その脇腹を、カレラ夫人が小突く。
「ウグワーッ」
「ひゃー、痛そうです!」
「うく……愛とは痛いものなのだ」
おお、ロネス男爵、カッコいいことを言うな。
夫人がちょくちょく男爵をどつくような関係だが、この二人、男爵から猛アタックをかけ、一年アプローチし続けてついに落としたという関係らしい。
男女はいろいろだ。
ビブリオス男爵はもともと、彼が意志を与えたホムンクルスであるナオ夫人が、男爵が僻地に飛ばされた時についてきて、様々な開拓と冒険をともにして結ばれた仲。
ロネス男爵は追いかける愛だな。
で、俺は……。
「すぴーすぴー」
腕にくっついて寝ているクルミを見る。
うん、追いかけられる側だ。
全く、男女は色々だ。
馬車は何事もなく、荒野の道をひたすら進んでいく。
荒野を挟み込むように森が展開しており、これらもスピーシ大森林の一部だと言う。
ここでワイルドエルフが目を光らせているから、開拓地から無事に出ていくものを襲うものはいない。
昔は入ってくることも許さない場所だったが、それをビブリオス男爵が変えた。
だから不良賢者が入ってきてしまうわけだが……、何事にも良い面と悪い面があるよな。
荒野を抜けると、草原地帯になる。
遠く離れたところに、街の影が見えた。
あれがロネス男爵領だ。
「わっほーい!」
『わふ!』
馬車の横を、アリサを乗せたブランが走っていく。
アリサの前にはドレが鎮座して、その前にはローズがちょこんと座っていた。
この一人と三匹は、馬車の後ろを走っていたのだ。
「犬はどんなに大きくても背中に人を乗せられるようにはできてないと聞いたんだけど……例外はあるものなのねえ」
カレラ夫人が目を丸くしている。
「犬に見えますが、彼はモンスターなんですよ。それもかなりランクの高いモンスターで、俺にテイムされてますけど」
いや、俺のテイムの力だけが彼をつなぎとめてるんだろうか。
ブラン自身も、望んで俺とつながっているような。
『わふ!』
ああ、多分そうだろう。
ブランが実に楽しそうだ。
俺と一緒にいるようになって、様々なところを旅している。
マーナガルムにとって、旅をするという発想はこれまで無かったのだろう。
「ブランは、俺とクルミを乗せても軽々走りますからね。どれだけのパワーがあるのか、底は知れないですね」
「ああ、つまりジーンさんとこのマルコシアスみたいな感じなのね」
「ええ、多分それが一番近いです」
風を切りながら、マーナガルムが走っていく。
彼はあっという間に馬車を追い越し、ぐんぐん加速していく。
そろそろブランは男爵領についたかな。
そんな頃合いで、向こうからわあわあという声が聞こえてきた。
「ああ、こりゃいかん。すごい速度で走ってくる犬を見たんだ。うちの兵士は腰抜けでな! みんな壁の中に籠もってしまったんだろう!」
ロネス男爵が馬車の扉を開け、身を乗り出す。
後ろからカレラ夫人が彼の体を支えている。
元冒険者だけあって、腕まくりした彼女の腕はなかなかムキムキだ。
「おおーい!! お前たち! 扉を開けろー! おれの帰還だぞ! 開けろー!!」
叫ぶ男爵。
なんとも豪快だ。
どうやら、拡声の効果がある魔道具を身に着けていたらしい。
彼の言葉は遠くまで伝わり、こちらからでも伺えるロネス男爵領は領都の壁から、兵士たちがひょこひょこ頭を出すのが見える。
うん、あれが普通の反応だよな。
今までのみんなが、ブランを普通に受け入れすぎだ。
当のブランは、壁の下で立ち止まっている。
横にアリサが立ち、丹念にブラッシングを始めていた。
ドレはブランの頭の上で毛づくろいをしているな。
なんとマイペースなのだ。
そして馬車は壁に到着する。
「あっ、確かに男爵!!」
「ほんとだ、夫人も一緒だ」
「じゃあ、あの犬は客人だったのか」
「犬が客だとはなあ」
「ばっか、ビブリオス領から来ただろ。あっちから来たってことは何が来てもおかしくねえって」
「かいもーん! 開門!」
わあわあと騒ぐ声がして、扉が開いていった。
ロネス男爵領も、なんとも賑やかそうなところだなあ。
護衛を引き連れて、ガタゴトと馬車が走る。
「見渡す限り、畑だなあ」
「ここはな、ビブリオス卿が開拓したのだ。その前はあちこちに底なし沼がある不毛の大地だったのだぞ」
「へえ! それは凄い……!」
そう言えば、あちこちを亜人の農夫が耕したりしている。
ビブリオス男爵領ができてから、まだ五年くらいしか経っていないと聞く。
それでこれだけの領地を開拓し、畑としているわけだから大したものだ。
彼は有能な為政者でもあるんだな。
しばらく畑が続いた後、風景が一変する。
殺風景な原野だ。
「これが本来の光景だ。こんな有様なのを、あの畑にしたのだから大したものだな」
「いやあ、まったくです」
雑草が生い茂り、荒れ放題。
しかもロネス男爵の話によると、背の高い雑草の合間には底なし沼が点在しているから、不注意に分け入ると命取りだという話だ。
「危険なばかりで実入りはない。そんな場所に、あの男はよくぞあれだけ豊かな土地を作り上げたものだ」
「ですねえ。そう言えば、馬車はさっきから快調に走ってますけど、そんな荒れ地の真ん中に道が整備されてるんですか?」
これに答えたのは、カレラ夫人だった。
「ええ。ここはね、道も獣道しかなくて、行き来するのに片道三日はかかったの。だけど、ジーンさんとみんなで整備してね。お陰で一日で帰ることができるようになったわ。もっとも、そのせいで王都から変な賢者の一団が来たみたいだけど。ごめんね、本当ならああいう変なのはうちの領土で止めるはずなんだけど」
「おれの土地は金さえ払えば通行フリーだからなあ」
ロネス男爵はそう言って、わっはっは、と笑った。
その脇腹を、カレラ夫人が小突く。
「ウグワーッ」
「ひゃー、痛そうです!」
「うく……愛とは痛いものなのだ」
おお、ロネス男爵、カッコいいことを言うな。
夫人がちょくちょく男爵をどつくような関係だが、この二人、男爵から猛アタックをかけ、一年アプローチし続けてついに落としたという関係らしい。
男女はいろいろだ。
ビブリオス男爵はもともと、彼が意志を与えたホムンクルスであるナオ夫人が、男爵が僻地に飛ばされた時についてきて、様々な開拓と冒険をともにして結ばれた仲。
ロネス男爵は追いかける愛だな。
で、俺は……。
「すぴーすぴー」
腕にくっついて寝ているクルミを見る。
うん、追いかけられる側だ。
全く、男女は色々だ。
馬車は何事もなく、荒野の道をひたすら進んでいく。
荒野を挟み込むように森が展開しており、これらもスピーシ大森林の一部だと言う。
ここでワイルドエルフが目を光らせているから、開拓地から無事に出ていくものを襲うものはいない。
昔は入ってくることも許さない場所だったが、それをビブリオス男爵が変えた。
だから不良賢者が入ってきてしまうわけだが……、何事にも良い面と悪い面があるよな。
荒野を抜けると、草原地帯になる。
遠く離れたところに、街の影が見えた。
あれがロネス男爵領だ。
「わっほーい!」
『わふ!』
馬車の横を、アリサを乗せたブランが走っていく。
アリサの前にはドレが鎮座して、その前にはローズがちょこんと座っていた。
この一人と三匹は、馬車の後ろを走っていたのだ。
「犬はどんなに大きくても背中に人を乗せられるようにはできてないと聞いたんだけど……例外はあるものなのねえ」
カレラ夫人が目を丸くしている。
「犬に見えますが、彼はモンスターなんですよ。それもかなりランクの高いモンスターで、俺にテイムされてますけど」
いや、俺のテイムの力だけが彼をつなぎとめてるんだろうか。
ブラン自身も、望んで俺とつながっているような。
『わふ!』
ああ、多分そうだろう。
ブランが実に楽しそうだ。
俺と一緒にいるようになって、様々なところを旅している。
マーナガルムにとって、旅をするという発想はこれまで無かったのだろう。
「ブランは、俺とクルミを乗せても軽々走りますからね。どれだけのパワーがあるのか、底は知れないですね」
「ああ、つまりジーンさんとこのマルコシアスみたいな感じなのね」
「ええ、多分それが一番近いです」
風を切りながら、マーナガルムが走っていく。
彼はあっという間に馬車を追い越し、ぐんぐん加速していく。
そろそろブランは男爵領についたかな。
そんな頃合いで、向こうからわあわあという声が聞こえてきた。
「ああ、こりゃいかん。すごい速度で走ってくる犬を見たんだ。うちの兵士は腰抜けでな! みんな壁の中に籠もってしまったんだろう!」
ロネス男爵が馬車の扉を開け、身を乗り出す。
後ろからカレラ夫人が彼の体を支えている。
元冒険者だけあって、腕まくりした彼女の腕はなかなかムキムキだ。
「おおーい!! お前たち! 扉を開けろー! おれの帰還だぞ! 開けろー!!」
叫ぶ男爵。
なんとも豪快だ。
どうやら、拡声の効果がある魔道具を身に着けていたらしい。
彼の言葉は遠くまで伝わり、こちらからでも伺えるロネス男爵領は領都の壁から、兵士たちがひょこひょこ頭を出すのが見える。
うん、あれが普通の反応だよな。
今までのみんなが、ブランを普通に受け入れすぎだ。
当のブランは、壁の下で立ち止まっている。
横にアリサが立ち、丹念にブラッシングを始めていた。
ドレはブランの頭の上で毛づくろいをしているな。
なんとマイペースなのだ。
そして馬車は壁に到着する。
「あっ、確かに男爵!!」
「ほんとだ、夫人も一緒だ」
「じゃあ、あの犬は客人だったのか」
「犬が客だとはなあ」
「ばっか、ビブリオス領から来ただろ。あっちから来たってことは何が来てもおかしくねえって」
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わあわあと騒ぐ声がして、扉が開いていった。
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