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第三部:セントロー王国の冒険 5
第112話 ロネス男爵領へ その4
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昨夜は喉が枯れるほど語ってしまった。
喉にいいというハーブティはかなりの美味しさで、これはクルミにも飲ませてあげたいなと思った。
その旨を伝えると、メイドの人は快く承諾してくれた。
俺たちの旅用に、茶葉をいくらか分けてくれるそうだ。
ということで、朝。
目覚めると、いつもどおり布団の中にクルミが潜り込んできていた。
うーむ……。
確か昨晩は、男子部屋と女子部屋で分かれたはず……。
ちなみに、男子部屋は俺とブランという、一人と一匹のみ。
カイルがいなくなって、がらんとした感じだな。
思えば、カイルとの付き合いも長くなっていた。
半年くらい一緒に旅したものな。
別れはあっという間だ。
彼は彼の道を見つけた。
俺は俺の道を歩いていくだけだ。またいつか、再会することもあるかもしれない。
冒険者というのは、そういうものなのだ。
いつまでもそこにいるものではない。
冒険者である者達は、誰もが人生の合間の一瞬だけそこを通り過ぎて、やがてどこかに腰を落ち着けるか……あるいは旅の半ばで命を落とす。
俺が生き残ってこれたのは、幸運であったこともあるな。
そんなことを考えていると、クルミがもぞもぞ動き出し、起き上がった。
「ほわわわわ」
大きなあくびをする。
「うーん、センセエのにおいがしてると安心して寝れるです! いいにおいがする人はですね、相性がピッタリだって村ではおそわったですよー!」
「そ、そうなのかい」
俺はその辺、詳しくないなあ。
だけどしょっちゅうクルミがベッドに潜り込んでくるのは、そうしていると安心するかららしい。
二人で旅をしている時はすぐ近くで寝ていたしね。
さっと身支度を整えて部屋の外に出ると、ちょうどメイドの人が通りかかったところだった。
「あら。昨夜はお楽しみ……ではないですね。整いすぎていますから」
「そういうところ見抜くのはいかがなものかと」
「失礼いたしました。顔を洗われるなら、井戸の手洗い場に行かれるとよいですよ」
「あ、これはどうも」
クルミと並んで、井戸の横で顔を洗う。
すると、ブランが『わふ』と鳴いた。
アリサがドレとローズを引き連れてやって来るところだ。
「おはようございますわ! ああ~モフモフと一緒だと素晴らしい夢を見ますわねえ……。今宵も最高の夢見でございました」
「そりゃあよかった」
『夜に抱きしめられて死ぬかと思ったにゃ!!』
抗議してくるドレ。
「まあまあ。みんな、顔を洗ったらどうだい。冷たくて気持ちいいぞ」
『水にゃ!? 水は結構にゃ……』
すすすーっとドレが遠ざかっていった。
それに対して、ローズは積極的だ。
鼻をふんふん動かして、『ちゅっちゅっ!』と興味深そうに組み上げた井戸水に近づいてくる。
『ちゅいー』
おや、水たまりでぺちゃぺちゃ地面を叩いている。
「ローズ、汚れちゃうよ」
『ちゅー!』
つまみ上げたら、短い手足を振り回してじたばたした。
ロネス男爵領の朝は早い。
屋敷の外は、既に朝の仕事に向かう人々でごった返していた。
みんな同じ時間に仕事に向かっていくんだな。
夜明けとともに生活が始まり、日が沈むとその日が終わるからかも知れない。
あのリズムが、彼らにとって一番効率のいい生活なんだろう。
仕事も、林業や畜産がほとんど。
後は、辺境へ向かう数少ない旅人を相手にした仕事か。
最近では、ビブリオス男爵領から来る珍しい資材を王都の方まで送り届ける仕事も増えているらしいが。
それでも、ロネス男爵領は長閑なところだった。
機会があれば、ここでのんびりして行きたいものだけど……。
残念ながら、中継地点なのだ。
早ければ今日のうちには、俺達は王都に向けて旅立つことになる。
そして遅めの朝食の席で、王都への案内人となる人物を紹介された。
「アーガスです。転移魔法……という言い方は慣れないですね。以前は移動魔法と言われてたものなんですが」
人の良さそうな、年若い男性だった。
なんと、彼はこの若さでセントロー王国における転移魔法の権威らしい。
王都オートローに、転移魔法ギルドというのが存在しており、ここに依頼を掛けて国の各地へと転移魔法使いを派遣する。
彼らの力で、国内であればどこにでも一瞬で旅ができるようになったのだという。
もちろん、その運賃は目玉が飛び出るほど高い。
「ビブリオス男爵領との取引で、我が領は金持ちでな」
ロネス男爵が得意げに言う。
最初にビブリオス男爵と友誼を結んだことで、ビブリオス領から得られる権益のおこぼれをもらえるようになっているらしい。
ちなみに、それらの財は、領民の道具を整備したり畜産の規模を少し大きくしたり、旅人のための設備を整えたりなどに使われているようだ。
「ロネス男爵は自分のためには使ってないんですか?」
「使っているぞ。美味い酒と茶を仕入れた」
無欲なのか、それとも財産の最たるものは民だと分かっている男なのか。
腹の底は読めないが、この男爵は有能な為政者だな。
「それで、移動のスケジュールですが」
アーガスが声を上げた。
「オースさん達はテイムしたモンスターを連れているのですよね。僕の転移魔法では、今現在は四名が限界です。ですので、もう一人連れてきています。この二名で全員を王都オートローまで転移させます。跳躍、とギルドでは呼びますが、この跳躍回数は二回。ちょっと酔いますが、我慢してください」
「まるごと飛ばしてくれるのか! 転移魔法……どんなものなんだろうな? 楽しみすぎる……!」
ワクワクしてくる俺なのだった。
喉にいいというハーブティはかなりの美味しさで、これはクルミにも飲ませてあげたいなと思った。
その旨を伝えると、メイドの人は快く承諾してくれた。
俺たちの旅用に、茶葉をいくらか分けてくれるそうだ。
ということで、朝。
目覚めると、いつもどおり布団の中にクルミが潜り込んできていた。
うーむ……。
確か昨晩は、男子部屋と女子部屋で分かれたはず……。
ちなみに、男子部屋は俺とブランという、一人と一匹のみ。
カイルがいなくなって、がらんとした感じだな。
思えば、カイルとの付き合いも長くなっていた。
半年くらい一緒に旅したものな。
別れはあっという間だ。
彼は彼の道を見つけた。
俺は俺の道を歩いていくだけだ。またいつか、再会することもあるかもしれない。
冒険者というのは、そういうものなのだ。
いつまでもそこにいるものではない。
冒険者である者達は、誰もが人生の合間の一瞬だけそこを通り過ぎて、やがてどこかに腰を落ち着けるか……あるいは旅の半ばで命を落とす。
俺が生き残ってこれたのは、幸運であったこともあるな。
そんなことを考えていると、クルミがもぞもぞ動き出し、起き上がった。
「ほわわわわ」
大きなあくびをする。
「うーん、センセエのにおいがしてると安心して寝れるです! いいにおいがする人はですね、相性がピッタリだって村ではおそわったですよー!」
「そ、そうなのかい」
俺はその辺、詳しくないなあ。
だけどしょっちゅうクルミがベッドに潜り込んでくるのは、そうしていると安心するかららしい。
二人で旅をしている時はすぐ近くで寝ていたしね。
さっと身支度を整えて部屋の外に出ると、ちょうどメイドの人が通りかかったところだった。
「あら。昨夜はお楽しみ……ではないですね。整いすぎていますから」
「そういうところ見抜くのはいかがなものかと」
「失礼いたしました。顔を洗われるなら、井戸の手洗い場に行かれるとよいですよ」
「あ、これはどうも」
クルミと並んで、井戸の横で顔を洗う。
すると、ブランが『わふ』と鳴いた。
アリサがドレとローズを引き連れてやって来るところだ。
「おはようございますわ! ああ~モフモフと一緒だと素晴らしい夢を見ますわねえ……。今宵も最高の夢見でございました」
「そりゃあよかった」
『夜に抱きしめられて死ぬかと思ったにゃ!!』
抗議してくるドレ。
「まあまあ。みんな、顔を洗ったらどうだい。冷たくて気持ちいいぞ」
『水にゃ!? 水は結構にゃ……』
すすすーっとドレが遠ざかっていった。
それに対して、ローズは積極的だ。
鼻をふんふん動かして、『ちゅっちゅっ!』と興味深そうに組み上げた井戸水に近づいてくる。
『ちゅいー』
おや、水たまりでぺちゃぺちゃ地面を叩いている。
「ローズ、汚れちゃうよ」
『ちゅー!』
つまみ上げたら、短い手足を振り回してじたばたした。
ロネス男爵領の朝は早い。
屋敷の外は、既に朝の仕事に向かう人々でごった返していた。
みんな同じ時間に仕事に向かっていくんだな。
夜明けとともに生活が始まり、日が沈むとその日が終わるからかも知れない。
あのリズムが、彼らにとって一番効率のいい生活なんだろう。
仕事も、林業や畜産がほとんど。
後は、辺境へ向かう数少ない旅人を相手にした仕事か。
最近では、ビブリオス男爵領から来る珍しい資材を王都の方まで送り届ける仕事も増えているらしいが。
それでも、ロネス男爵領は長閑なところだった。
機会があれば、ここでのんびりして行きたいものだけど……。
残念ながら、中継地点なのだ。
早ければ今日のうちには、俺達は王都に向けて旅立つことになる。
そして遅めの朝食の席で、王都への案内人となる人物を紹介された。
「アーガスです。転移魔法……という言い方は慣れないですね。以前は移動魔法と言われてたものなんですが」
人の良さそうな、年若い男性だった。
なんと、彼はこの若さでセントロー王国における転移魔法の権威らしい。
王都オートローに、転移魔法ギルドというのが存在しており、ここに依頼を掛けて国の各地へと転移魔法使いを派遣する。
彼らの力で、国内であればどこにでも一瞬で旅ができるようになったのだという。
もちろん、その運賃は目玉が飛び出るほど高い。
「ビブリオス男爵領との取引で、我が領は金持ちでな」
ロネス男爵が得意げに言う。
最初にビブリオス男爵と友誼を結んだことで、ビブリオス領から得られる権益のおこぼれをもらえるようになっているらしい。
ちなみに、それらの財は、領民の道具を整備したり畜産の規模を少し大きくしたり、旅人のための設備を整えたりなどに使われているようだ。
「ロネス男爵は自分のためには使ってないんですか?」
「使っているぞ。美味い酒と茶を仕入れた」
無欲なのか、それとも財産の最たるものは民だと分かっている男なのか。
腹の底は読めないが、この男爵は有能な為政者だな。
「それで、移動のスケジュールですが」
アーガスが声を上げた。
「オースさん達はテイムしたモンスターを連れているのですよね。僕の転移魔法では、今現在は四名が限界です。ですので、もう一人連れてきています。この二名で全員を王都オートローまで転移させます。跳躍、とギルドでは呼びますが、この跳躍回数は二回。ちょっと酔いますが、我慢してください」
「まるごと飛ばしてくれるのか! 転移魔法……どんなものなんだろうな? 楽しみすぎる……!」
ワクワクしてくる俺なのだった。
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