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第三部:セントロー王国の冒険 5
第113話 ロネス男爵領へ その5
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「ではな、オース! モフライダーズ! また機会があれば立ち寄るといい」
ロネス男爵がにこやかに手を振っている。
カレラ夫人とメイドの女性も一緒だ。
「またねですー!」
「お世話になりましたわー!」
「色々ありがとうございました!」
俺達が返答すると、男爵はうんうんと頷いた。
「貴君らのお陰で、しばらく退屈しなくて済む。娯楽は大切だ。おれは娯楽を提供してくれた者を大切にする主義でな。では、王都へ行くがいい。頼むぞアーガス」
「はい、お任せください」
転移魔道士の青年が敬礼した。
「では転移します! 行きますよ! いち、にの、さんっ! 跳躍!!」
掛け声と同時に、俺達の視界が虹色になった。
それは光の渦だった。
渦はどんどんその回転を増し、俺達から見える光景は、渦に巻き込まれて曖昧になっていく。
やがて、渦の中にロネス男爵領とは異なる風景が混じりこむようになった。
そしてそのほとんどが新たな風景に置き換わった辺りで……渦が消えた。
そこは、赤茶けた大地。
少し薄い空気。
山の上だろうか?
「鉱山都市である、マドラー男爵領です。ここで一休みしてから、もう一度跳躍します。これで、あちら側に行くと海岸のある国境線……ヴァイデンフェラー辺境伯領なんですよ」
「へえ、海があるんだね」
「クルミ、海が見たいです!」
クルミがぴょんぴょん飛び跳ねる。
「うんうん、そのうち海に行くと思うから、まずは王都に行こうね……。っていうか神都ラグナスに行く時に何回も見ただろ」
「海はですねー。ちょっとずつにおいが違うですよー。こっちの海がどんなにおいがするのかなーって気になるです」
「そういうものなのか! クルミには、俺と違った海の見え方がしてるのかも知れないな。今度教えて」
「もちろんです!」
「ほんと、あなた達はいいカップルですわねえ」
アリサが苦笑した。
鉱山都市では、こうやって転移してくる人々が休憩するための店が設けられていた。
そこで一休みしていく。
アーガスは、魔力回復が速くなるというハーブドリンクを飲みながらまったりしている。
「一日に二回から三回魔法を使うんですが、転移魔法は極めて魔力の消費が大きいんですよ。ちょっと呪文を詠唱してちょっと仕事するだけの楽な職業だとは思われてるんですが……こう、日々魂を削ってるようなですね」
「ああ、外側からは本人の苦労は分からないからね」
「分かってくれますか……!」
「俺も冒険者パーティであらゆる雑用を最適化しながらやって来た男だ。当たり前と思われるような仕事や、簡単と思われる仕事が実はどれだけの苦労の末に身についたものなのかは、よく知っているよ」
「オースさん……!」
「お互い頑張ろうな、アーガス!」
なんとなく分かり合ったりする。
「センセエは今はリーダーもやってるですからねー。でも、数がへっちゃいましたねえ」
鉱山に生えるという、緑色で棘の生えた不思議な植物、サボテンのジュースを飲みながらクルミ。
「そうですわね。カイルさんがいないだけで、静かになりますわねえ……」
『うにゃーっ、子どもたちやめるにゃー! 己は猫ではないにゃー!』
「ねこー!!」
「ねこねこー!」
『わふーん』
「いぬー!! でっけええええ」
「でっかいいぬー!!」
「……賑やかですわね」
アリサが前言撤回した。
うちのモフモフは、ここでも大人気だな。
ブランの真っ白くて大きな体は、とにかく目立つ。
ブランとドレが、ひとしきり子どもたちとわちゃわちゃ遊んだのを見届けた後、再度俺達は出立することにした。
「さあ、では参ります。本日ラストの跳躍です。僕はまだいけますが、彼の魔力が限界なので」
「ああ、なるほど……」
アーガスの他についてきた転移魔道士は、うちのモフモフを運搬する担当だ。
魔力消費が大きいのかも知れないな。
「いち、にの……さんっ! 跳躍!!」
再び、視界が虹色の光に包まれた。
ちなみに後で聞いた話だが、これは虹の精霊女王、エインガナの祝福を受けた民でなければ使えない、独自魔法なのだそうだ。
そういう意味では、転移魔法の使い手は才能がある者達なのだ。
エインガナは南方にあるという大陸を支配する精霊の女王で、まるで人のような姿をしていると言われている。
その大地に住む人々は、エインガナの転移の魔法を使えるとか。
きっとアーガスやもうひとりの魔道士は、エインガナの大陸から来た者の子孫なんだろう。
虹の精霊女王の大陸。
興味があるなあ。
行きたい。
世界は広いのだ……。
やがて、光の渦は新たな光景を巻き込みながら、その回転を緩めていく。
そして光が消えた後に見えるものは……。
使い込まれた石畳。
カラフルな漆喰の壁。
遠くにそびえる、彫刻のような美しい城。
そして真っ白な塔。
文化の国、セントロー王国の王都、オートローに到着したのだ!
「オートローにようこそ!」
到着した場所には、兵士がいた。
彼らが微笑みながら、声を掛けてくる。
どうやらここは、転移魔法で定められた出現場所らしい。
旅人は必ずここに現れるので、案内役の兵士がいるんだな。
彼らは腰に短剣くらいしか装備しておらず、とても平和的な印象だ。
この国は本当に争いがないんだな。
そう言えば、モンスターもほとんど見なかった気がする。
ここでは冒険者はやっていられないな。
争いが少ない場所では、それを飯の種にする人種は生きていけないのだ。
とてもいい国だが、平和が実現されると自分の居場所がなくなるのだなあと思えて、俺はなんだか複雑な気分だった。
俺が冒険者をやめたら、何になるんだろうなあ。
やっぱりビブリオス男爵みたいに開拓して、実家と同じような農業をすることになるかなあ。
「……ま、いいか。それを考えるヒントも、図書館にあるかも知れないもんな! アーガス、ここまでありがとう! 俺達は図書館に向かうよ!」
「はい、お達者で! あちらでは、ビブリオス男爵とロネス男爵の紹介だと言えばいいですから」
ということで。
向かうのは図書館。
人の叡智が詰まった、(俺にとっての)理想郷なのである。
ロネス男爵がにこやかに手を振っている。
カレラ夫人とメイドの女性も一緒だ。
「またねですー!」
「お世話になりましたわー!」
「色々ありがとうございました!」
俺達が返答すると、男爵はうんうんと頷いた。
「貴君らのお陰で、しばらく退屈しなくて済む。娯楽は大切だ。おれは娯楽を提供してくれた者を大切にする主義でな。では、王都へ行くがいい。頼むぞアーガス」
「はい、お任せください」
転移魔道士の青年が敬礼した。
「では転移します! 行きますよ! いち、にの、さんっ! 跳躍!!」
掛け声と同時に、俺達の視界が虹色になった。
それは光の渦だった。
渦はどんどんその回転を増し、俺達から見える光景は、渦に巻き込まれて曖昧になっていく。
やがて、渦の中にロネス男爵領とは異なる風景が混じりこむようになった。
そしてそのほとんどが新たな風景に置き換わった辺りで……渦が消えた。
そこは、赤茶けた大地。
少し薄い空気。
山の上だろうか?
「鉱山都市である、マドラー男爵領です。ここで一休みしてから、もう一度跳躍します。これで、あちら側に行くと海岸のある国境線……ヴァイデンフェラー辺境伯領なんですよ」
「へえ、海があるんだね」
「クルミ、海が見たいです!」
クルミがぴょんぴょん飛び跳ねる。
「うんうん、そのうち海に行くと思うから、まずは王都に行こうね……。っていうか神都ラグナスに行く時に何回も見ただろ」
「海はですねー。ちょっとずつにおいが違うですよー。こっちの海がどんなにおいがするのかなーって気になるです」
「そういうものなのか! クルミには、俺と違った海の見え方がしてるのかも知れないな。今度教えて」
「もちろんです!」
「ほんと、あなた達はいいカップルですわねえ」
アリサが苦笑した。
鉱山都市では、こうやって転移してくる人々が休憩するための店が設けられていた。
そこで一休みしていく。
アーガスは、魔力回復が速くなるというハーブドリンクを飲みながらまったりしている。
「一日に二回から三回魔法を使うんですが、転移魔法は極めて魔力の消費が大きいんですよ。ちょっと呪文を詠唱してちょっと仕事するだけの楽な職業だとは思われてるんですが……こう、日々魂を削ってるようなですね」
「ああ、外側からは本人の苦労は分からないからね」
「分かってくれますか……!」
「俺も冒険者パーティであらゆる雑用を最適化しながらやって来た男だ。当たり前と思われるような仕事や、簡単と思われる仕事が実はどれだけの苦労の末に身についたものなのかは、よく知っているよ」
「オースさん……!」
「お互い頑張ろうな、アーガス!」
なんとなく分かり合ったりする。
「センセエは今はリーダーもやってるですからねー。でも、数がへっちゃいましたねえ」
鉱山に生えるという、緑色で棘の生えた不思議な植物、サボテンのジュースを飲みながらクルミ。
「そうですわね。カイルさんがいないだけで、静かになりますわねえ……」
『うにゃーっ、子どもたちやめるにゃー! 己は猫ではないにゃー!』
「ねこー!!」
「ねこねこー!」
『わふーん』
「いぬー!! でっけええええ」
「でっかいいぬー!!」
「……賑やかですわね」
アリサが前言撤回した。
うちのモフモフは、ここでも大人気だな。
ブランの真っ白くて大きな体は、とにかく目立つ。
ブランとドレが、ひとしきり子どもたちとわちゃわちゃ遊んだのを見届けた後、再度俺達は出立することにした。
「さあ、では参ります。本日ラストの跳躍です。僕はまだいけますが、彼の魔力が限界なので」
「ああ、なるほど……」
アーガスの他についてきた転移魔道士は、うちのモフモフを運搬する担当だ。
魔力消費が大きいのかも知れないな。
「いち、にの……さんっ! 跳躍!!」
再び、視界が虹色の光に包まれた。
ちなみに後で聞いた話だが、これは虹の精霊女王、エインガナの祝福を受けた民でなければ使えない、独自魔法なのだそうだ。
そういう意味では、転移魔法の使い手は才能がある者達なのだ。
エインガナは南方にあるという大陸を支配する精霊の女王で、まるで人のような姿をしていると言われている。
その大地に住む人々は、エインガナの転移の魔法を使えるとか。
きっとアーガスやもうひとりの魔道士は、エインガナの大陸から来た者の子孫なんだろう。
虹の精霊女王の大陸。
興味があるなあ。
行きたい。
世界は広いのだ……。
やがて、光の渦は新たな光景を巻き込みながら、その回転を緩めていく。
そして光が消えた後に見えるものは……。
使い込まれた石畳。
カラフルな漆喰の壁。
遠くにそびえる、彫刻のような美しい城。
そして真っ白な塔。
文化の国、セントロー王国の王都、オートローに到着したのだ!
「オートローにようこそ!」
到着した場所には、兵士がいた。
彼らが微笑みながら、声を掛けてくる。
どうやらここは、転移魔法で定められた出現場所らしい。
旅人は必ずここに現れるので、案内役の兵士がいるんだな。
彼らは腰に短剣くらいしか装備しておらず、とても平和的な印象だ。
この国は本当に争いがないんだな。
そう言えば、モンスターもほとんど見なかった気がする。
ここでは冒険者はやっていられないな。
争いが少ない場所では、それを飯の種にする人種は生きていけないのだ。
とてもいい国だが、平和が実現されると自分の居場所がなくなるのだなあと思えて、俺はなんだか複雑な気分だった。
俺が冒険者をやめたら、何になるんだろうなあ。
やっぱりビブリオス男爵みたいに開拓して、実家と同じような農業をすることになるかなあ。
「……ま、いいか。それを考えるヒントも、図書館にあるかも知れないもんな! アーガス、ここまでありがとう! 俺達は図書館に向かうよ!」
「はい、お達者で! あちらでは、ビブリオス男爵とロネス男爵の紹介だと言えばいいですから」
ということで。
向かうのは図書館。
人の叡智が詰まった、(俺にとっての)理想郷なのである。
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