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第四部:オケアノス海の冒険 1
第123話 流れ着くのは炎の島 その5
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見事にサラマンダーの大群を撃退した俺達を、島民の喝采が迎えてくれた。
てっきり、なんてことを! と言われると思っていたが……。
「ああなったアータル様は、島民以外見境がなくなるって言い伝えられているわ。じーっと黙って何年も過ごすしかないけれど、あたし達だって食べるものは必要だし、外の世界との交流だってあった方がいいでしょ? アータル様が鎮まるなら、それに越したことはないの」
「思ったよりもドライだった」
「炎の巫女は半分アータル様と一体になってるからね。あっちの気持ちも分かるの。これってただ駄々をこねてるんだよ」
炎の精霊王アータルは、大きい赤ちゃんみたいなものということか。
「いっつも、どうやってアータルさんは静かになってるですか?」
おおっ、クルミが解決方法を聞いてくるとは。
成長したなあ。
炎の巫女エレーナはうーん、と唸った。
「時間が経つと、炎を出し切って静かになるの。あたしの代だとこれが初めてだけど、百年に一度くらいは暴れるみたいなのね。んで、三年くらい暴れるって」
「なんと迷惑な。だが、そうして炎を出し切ると静かになるはずが、今回は島を割りかねない、と君は話してたみたいだけど」
「そう。なんかねえ、今回のアータル様、かなり炎を溜め込んでるみたいで……ほら。山の一部が崩れてるの分かる?」
エレーナが指差す先で、確かに山の一角に崩落した跡がある。
どうやらあれは、アータルが最初に暴れた時に壊れてしまった場所なのだとか。
「なんでなのかよく分からないけど、今回のアータル様は凄く荒れてるの。島が割れちゃったらあたし達はおしまいだし、困ったなあって言ってるところにみんなが来たってわけ」
「ははあ、これは俺達の責任は重大だ」
なんとなく炎の島に流されてきたけれど、島民の命が掛かっている件なんじゃないか。
俺達には金がある。
なので、趣味でこういう人助けをする余裕があるのだ。
「話は決まったか? 俺としちゃ、いきなり山登りしてアータルを攻めてもいいんだが」
アルディがバーバリアンじみたことを言う。
辺境伯をやめたこの姿こそが、彼の素なんだろうなあ。
サラマンダー戦も楽しかったようで何より。
「まあまあ。俺のやり方は、アータルの弱点を見つけてそこを突くことだよ。今、アリサに探ってもらってる」
少し離れたところで、島民達に見守られながら、アリサが神聖魔法を使っていた。
精神集中に必要だと言って、ブランに寄りかかってモフモフに埋もれながらである。
絶対必要ないだろ。
「本当にでかい犬だなあ」
「やっぱりモンスターなんだろうか」
「さわりたーい!」
「これ! 食べられちゃうよ!」
『わふん』
失敬な、人間はよっぽどことがなければ食べません、と抗議するブラン。
これを見て、ドレが『にゃにゃにゃにゃにゃ』と笑ったので、ブラン怒りの前足でころんと転がされた。
『うにゃー!』
『ちゅちゅちゅっ』
俺のポケットから、ローズが飛び出してくる。
そして腰から肩へと駆け上がってきて、耳たぶをもみもみし始めた。
大変くすぐったい。
「どうしたんだい、ローズ」
『ちゅっちゅ』
「あ、なるほど」
最近、ローズの言わんとすることもだんだん分かるようになってきた。
ローズ、赤ちゃんから子供へと成長をしてるのかも知れない。
彼が意図するのは、自分をアリサの上に乗せてくれということだった。
ローズの力とは、運命とか幸運を操るもの。
確かに、ローズの力を借りればアリサの魔法も効果を高めることができそうだ。
「よし、よろしく頼むよローズ」
『ちゅうー』
ローズは頷くと、スッと小さい前足を差し出した。
うん?
なんだい?
「はい、お駄賃の木の実ですよー」
クルミが小さいナッツを手渡すと、ローズが『ちゅ!』と嬉しそうに鳴いた。
そして、ナッツをもぐっと頬袋に詰め込む。
「報酬を要求していたか……」
「ローズは上手におねだりできるようになってるですよ!」
どうやら、げっ歯類の先輩としてクルミが彼に教育していたようだ。
餌付けとも言うのだろうか。
仮にも、因果を操る強大なモンスターのはずなんだが。
「ま、いいか。やる気になってくれたようだし。アリサ、ローズを受け取ってくれ」
「ローズちゃんを!?」
アリサがくわっと目を見開いた。
そして両手を差し出してくる。
ブランに深く埋もれたまま。
「モフモフから離れる気はないということか……! はいどうぞ」
『ちゅー』
俺の手からアリサの手へ、ローズがちょろっと移動した。
アリサは彼を大事に受け取ると、胸元にぽんと乗せる。
「あっ、なんだか目標の姿がクリアになりましたわ!!」
目を閉じ、アリサが叫ぶ。
「見えます、見えます! サーチする力が、わたくしにアータルの核の在り処を教えてくれますわ……! これは……胸元に……卵……?」
卵?
なんで卵?
「アータルの卵?」
「精霊王は増えないってば」
笑う炎の巫女エレーナ。
「でも、それってあたしら炎の民には嬉しいことかも。あのね、属性の精霊王と、属性の竜はセットなんだよ。土の精霊女王レイアには地竜、風の精霊王ゼフィロスには風竜、水の精霊王オケアノスには水竜。なら、炎の精霊王アータル様には?」
「火竜ってことか」
「そう! 先代の火竜はとても強かったと聞くけど、あたしのご先祖でもある魔王に倒されちゃったんだよね。でも、多分新しい火竜が生まれようとしてるんだと思う」
アータルの中から、次の火竜が生まれるわけか。
だからこそ、炎の精霊王が荒ぶっている。
「つまり、アータルから卵を取り出せばいいんだな。それが今回の俺達、モフライダーズの目標だ」
やるべき事がはっきりした。
炎の島を救い、新たな火竜の誕生を手助けするために、行動開始と行こう。
てっきり、なんてことを! と言われると思っていたが……。
「ああなったアータル様は、島民以外見境がなくなるって言い伝えられているわ。じーっと黙って何年も過ごすしかないけれど、あたし達だって食べるものは必要だし、外の世界との交流だってあった方がいいでしょ? アータル様が鎮まるなら、それに越したことはないの」
「思ったよりもドライだった」
「炎の巫女は半分アータル様と一体になってるからね。あっちの気持ちも分かるの。これってただ駄々をこねてるんだよ」
炎の精霊王アータルは、大きい赤ちゃんみたいなものということか。
「いっつも、どうやってアータルさんは静かになってるですか?」
おおっ、クルミが解決方法を聞いてくるとは。
成長したなあ。
炎の巫女エレーナはうーん、と唸った。
「時間が経つと、炎を出し切って静かになるの。あたしの代だとこれが初めてだけど、百年に一度くらいは暴れるみたいなのね。んで、三年くらい暴れるって」
「なんと迷惑な。だが、そうして炎を出し切ると静かになるはずが、今回は島を割りかねない、と君は話してたみたいだけど」
「そう。なんかねえ、今回のアータル様、かなり炎を溜め込んでるみたいで……ほら。山の一部が崩れてるの分かる?」
エレーナが指差す先で、確かに山の一角に崩落した跡がある。
どうやらあれは、アータルが最初に暴れた時に壊れてしまった場所なのだとか。
「なんでなのかよく分からないけど、今回のアータル様は凄く荒れてるの。島が割れちゃったらあたし達はおしまいだし、困ったなあって言ってるところにみんなが来たってわけ」
「ははあ、これは俺達の責任は重大だ」
なんとなく炎の島に流されてきたけれど、島民の命が掛かっている件なんじゃないか。
俺達には金がある。
なので、趣味でこういう人助けをする余裕があるのだ。
「話は決まったか? 俺としちゃ、いきなり山登りしてアータルを攻めてもいいんだが」
アルディがバーバリアンじみたことを言う。
辺境伯をやめたこの姿こそが、彼の素なんだろうなあ。
サラマンダー戦も楽しかったようで何より。
「まあまあ。俺のやり方は、アータルの弱点を見つけてそこを突くことだよ。今、アリサに探ってもらってる」
少し離れたところで、島民達に見守られながら、アリサが神聖魔法を使っていた。
精神集中に必要だと言って、ブランに寄りかかってモフモフに埋もれながらである。
絶対必要ないだろ。
「本当にでかい犬だなあ」
「やっぱりモンスターなんだろうか」
「さわりたーい!」
「これ! 食べられちゃうよ!」
『わふん』
失敬な、人間はよっぽどことがなければ食べません、と抗議するブラン。
これを見て、ドレが『にゃにゃにゃにゃにゃ』と笑ったので、ブラン怒りの前足でころんと転がされた。
『うにゃー!』
『ちゅちゅちゅっ』
俺のポケットから、ローズが飛び出してくる。
そして腰から肩へと駆け上がってきて、耳たぶをもみもみし始めた。
大変くすぐったい。
「どうしたんだい、ローズ」
『ちゅっちゅ』
「あ、なるほど」
最近、ローズの言わんとすることもだんだん分かるようになってきた。
ローズ、赤ちゃんから子供へと成長をしてるのかも知れない。
彼が意図するのは、自分をアリサの上に乗せてくれということだった。
ローズの力とは、運命とか幸運を操るもの。
確かに、ローズの力を借りればアリサの魔法も効果を高めることができそうだ。
「よし、よろしく頼むよローズ」
『ちゅうー』
ローズは頷くと、スッと小さい前足を差し出した。
うん?
なんだい?
「はい、お駄賃の木の実ですよー」
クルミが小さいナッツを手渡すと、ローズが『ちゅ!』と嬉しそうに鳴いた。
そして、ナッツをもぐっと頬袋に詰め込む。
「報酬を要求していたか……」
「ローズは上手におねだりできるようになってるですよ!」
どうやら、げっ歯類の先輩としてクルミが彼に教育していたようだ。
餌付けとも言うのだろうか。
仮にも、因果を操る強大なモンスターのはずなんだが。
「ま、いいか。やる気になってくれたようだし。アリサ、ローズを受け取ってくれ」
「ローズちゃんを!?」
アリサがくわっと目を見開いた。
そして両手を差し出してくる。
ブランに深く埋もれたまま。
「モフモフから離れる気はないということか……! はいどうぞ」
『ちゅー』
俺の手からアリサの手へ、ローズがちょろっと移動した。
アリサは彼を大事に受け取ると、胸元にぽんと乗せる。
「あっ、なんだか目標の姿がクリアになりましたわ!!」
目を閉じ、アリサが叫ぶ。
「見えます、見えます! サーチする力が、わたくしにアータルの核の在り処を教えてくれますわ……! これは……胸元に……卵……?」
卵?
なんで卵?
「アータルの卵?」
「精霊王は増えないってば」
笑う炎の巫女エレーナ。
「でも、それってあたしら炎の民には嬉しいことかも。あのね、属性の精霊王と、属性の竜はセットなんだよ。土の精霊女王レイアには地竜、風の精霊王ゼフィロスには風竜、水の精霊王オケアノスには水竜。なら、炎の精霊王アータル様には?」
「火竜ってことか」
「そう! 先代の火竜はとても強かったと聞くけど、あたしのご先祖でもある魔王に倒されちゃったんだよね。でも、多分新しい火竜が生まれようとしてるんだと思う」
アータルの中から、次の火竜が生まれるわけか。
だからこそ、炎の精霊王が荒ぶっている。
「つまり、アータルから卵を取り出せばいいんだな。それが今回の俺達、モフライダーズの目標だ」
やるべき事がはっきりした。
炎の島を救い、新たな火竜の誕生を手助けするために、行動開始と行こう。
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