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第四部:オケアノス海の冒険 3
第132話 アータル撃退作戦 その4
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「閣下! 閣下! 船が動く!」
「水の流れが普通になってますぜ!」
戻ってくると、帆船バルゴン号が大騒ぎになっていた。
これまで、小舟を漕いでも、帆船の帆を張っても、絶対にアータル島の周囲から外には出られなかったらしい。
波の流れが邪魔をして、さらには風までも島から離れられぬように吹いていたそうだ。
「これでいつでも出向できまさあ!」
「そうか! どうやらうちのリーダーが精霊王をぶっ倒したようだし、ここでの仕事も一段落ってとこだな」
アルディが笑う。
「いやあ、本当に我ながら、よくあんなとんでもない怪物に挑んだものだと思うよ」
「センセエ、無事で良かったです!」
クルミが飛びついてきたので、キャッチする。
彼女とは頭一つぶんくらい違うので、首に抱きつかれると足がぶらーんとするな。
クルミをぶら下げたまま、状況について炎の巫女に報告だ。
エレーナは俺が抱えている火竜の卵を見て、あっと発して硬直した。
そしてすぐに、跪く。
エレーナに付き従っていた少女が、慌てて膝をつく。
他の島民達もまた、俺の前で膝をついて頭を下げた。
「お、おいおい」
慌てたのは俺だ。
一体なんだ、何が起きているんだ!?
「話を聞いた時は半信半疑だったんだけど……本当に火竜の卵なのね……。新しい火竜が生まれるのね……」
「エレーナ、火竜は君達が跪くほどのものなのか?」
「アータル様よりも上と言っていい存在だわ。恐れ多い……。あたし達の中に、火竜への畏敬が刻み込まれてるの」
ははあ、なるほど。
精霊王アータルよりも上位にある神様、という扱いらしい。
火竜とは、一体何だったんだろうな。
「それからあなたも。魔獣の主よ。精霊王アータルを鎮めた英雄よ。感謝いたします」
「感謝いたします!」
エレーナの言葉に、島民達が合わせた。
俺はすっかり戸惑ってしまった。
ついさっきまで、フレンドリーだったみんなが、俺を崇めるような姿を見せているからだ。
「アリサ、どうしたらいいのだろうか」
ここは宗教人としてこういう状況に詳しそうなアリサに聞いてみる。
「そうですわね。冷静に考えてみれば、水の精霊王に誘われてこの地に現れ、信仰の対象であった炎の精霊王の怒りを鎮め、千年の間不在だった火竜の新たな卵を手にして現れ、しかも従えるのは伝説級の魔獣ばかり、という人物は十分に信仰に値すると思いますわね。もちろん、我がラグナ新教では神は天におわす神様ただお一方のみですけれども」
「話を聞くととんでもないなあ。だが落ち着かなくて仕方ない。みんな、顔を上げてくれ。それから火竜の卵、君達に任せたいんだが」
「はい、火竜をあたし達の手で育てろと仰るんですね」
エレーナがうやうやしく、卵を受け取った。
大きさは、一抱えほどもある。
一見すると透き通った真紅の宝石のようだが、その内部からは規則的に輝きが放たれ、脈動しているように見える。
手に持った感触は、硬い岩のようで、しかし表面は滑らか。
ほんのりと温かい。
「旅には持っていけないし、そんなとんでもない火竜が孵ったら大変なことになるだろう。だから、アータルの島で育ててほしいんだけど……」
「はい、そのお役目、ありがたく頂戴します」
高く、火竜の卵が掲げられた。
暗雲はみるみる晴れていき、空の色があらわになる。
それは既にオレンジがかった夕方の空だ。
差し込む赤い日差しを受けて、火竜の卵もまた鮮やかに輝いた。
……ということで。
「いやあ、お疲れ様! おかげでアータル島は助かったよ! もちろんあたし達もね!」
さっきまでのかしこまった態度はどこに行ったのか、今は酒によって上機嫌のエレーナが、俺の背中をバンバン叩く。
「そ、そりゃあどうも! なんかさっきと態度違わない?」
「あれは儀式みたいなもんなのよ。精霊王が消えて、火竜が新たな神を受け継ぐ。その神をあたし達が育てていくっていう引き継ぎの儀式。オースはその仲介なわけね」
「はあ、そんなもんか」
「そんなもんなの。伝統なんてのは無いんだけど、千年前もこうして、精霊王の時代から人と精霊が一緒に生きる時代に変わったそうなのね。だから、アータル島には、いつか時代が変わる時が来たら、うやうやしく受け取れって言い伝えがあるの」
「アバウトな言い伝えだ……!」
それでも、態度がガラリと変わってしまうようなことがなくて良かった。
よそよそしくされるのはあまり好きではないからな。
今は、いわば俺たちの慰労会。
島にはあまり大した食べ物もお酒もない……とのことだったが、海からとれるものはたくさんある。
家畜も潰して、料理はそれなりに盛大だった。
おや、塩味だけじゃないな。
調味料がある……。
「麦を発行させて、塩漬けにしたものだよ。進めれば酒になるし、途中で止めたら調味料になるの」
ミーソというその独特な調味料の説明を受けつつ、煮た魚に掛けて食べたりする。
一仕事終えた後の酒と食事は、やっぱり最高だな。
こうしてモフライダーズの、アータル島での最後の夜は過ぎていくのだった。
「水の流れが普通になってますぜ!」
戻ってくると、帆船バルゴン号が大騒ぎになっていた。
これまで、小舟を漕いでも、帆船の帆を張っても、絶対にアータル島の周囲から外には出られなかったらしい。
波の流れが邪魔をして、さらには風までも島から離れられぬように吹いていたそうだ。
「これでいつでも出向できまさあ!」
「そうか! どうやらうちのリーダーが精霊王をぶっ倒したようだし、ここでの仕事も一段落ってとこだな」
アルディが笑う。
「いやあ、本当に我ながら、よくあんなとんでもない怪物に挑んだものだと思うよ」
「センセエ、無事で良かったです!」
クルミが飛びついてきたので、キャッチする。
彼女とは頭一つぶんくらい違うので、首に抱きつかれると足がぶらーんとするな。
クルミをぶら下げたまま、状況について炎の巫女に報告だ。
エレーナは俺が抱えている火竜の卵を見て、あっと発して硬直した。
そしてすぐに、跪く。
エレーナに付き従っていた少女が、慌てて膝をつく。
他の島民達もまた、俺の前で膝をついて頭を下げた。
「お、おいおい」
慌てたのは俺だ。
一体なんだ、何が起きているんだ!?
「話を聞いた時は半信半疑だったんだけど……本当に火竜の卵なのね……。新しい火竜が生まれるのね……」
「エレーナ、火竜は君達が跪くほどのものなのか?」
「アータル様よりも上と言っていい存在だわ。恐れ多い……。あたし達の中に、火竜への畏敬が刻み込まれてるの」
ははあ、なるほど。
精霊王アータルよりも上位にある神様、という扱いらしい。
火竜とは、一体何だったんだろうな。
「それからあなたも。魔獣の主よ。精霊王アータルを鎮めた英雄よ。感謝いたします」
「感謝いたします!」
エレーナの言葉に、島民達が合わせた。
俺はすっかり戸惑ってしまった。
ついさっきまで、フレンドリーだったみんなが、俺を崇めるような姿を見せているからだ。
「アリサ、どうしたらいいのだろうか」
ここは宗教人としてこういう状況に詳しそうなアリサに聞いてみる。
「そうですわね。冷静に考えてみれば、水の精霊王に誘われてこの地に現れ、信仰の対象であった炎の精霊王の怒りを鎮め、千年の間不在だった火竜の新たな卵を手にして現れ、しかも従えるのは伝説級の魔獣ばかり、という人物は十分に信仰に値すると思いますわね。もちろん、我がラグナ新教では神は天におわす神様ただお一方のみですけれども」
「話を聞くととんでもないなあ。だが落ち着かなくて仕方ない。みんな、顔を上げてくれ。それから火竜の卵、君達に任せたいんだが」
「はい、火竜をあたし達の手で育てろと仰るんですね」
エレーナがうやうやしく、卵を受け取った。
大きさは、一抱えほどもある。
一見すると透き通った真紅の宝石のようだが、その内部からは規則的に輝きが放たれ、脈動しているように見える。
手に持った感触は、硬い岩のようで、しかし表面は滑らか。
ほんのりと温かい。
「旅には持っていけないし、そんなとんでもない火竜が孵ったら大変なことになるだろう。だから、アータルの島で育ててほしいんだけど……」
「はい、そのお役目、ありがたく頂戴します」
高く、火竜の卵が掲げられた。
暗雲はみるみる晴れていき、空の色があらわになる。
それは既にオレンジがかった夕方の空だ。
差し込む赤い日差しを受けて、火竜の卵もまた鮮やかに輝いた。
……ということで。
「いやあ、お疲れ様! おかげでアータル島は助かったよ! もちろんあたし達もね!」
さっきまでのかしこまった態度はどこに行ったのか、今は酒によって上機嫌のエレーナが、俺の背中をバンバン叩く。
「そ、そりゃあどうも! なんかさっきと態度違わない?」
「あれは儀式みたいなもんなのよ。精霊王が消えて、火竜が新たな神を受け継ぐ。その神をあたし達が育てていくっていう引き継ぎの儀式。オースはその仲介なわけね」
「はあ、そんなもんか」
「そんなもんなの。伝統なんてのは無いんだけど、千年前もこうして、精霊王の時代から人と精霊が一緒に生きる時代に変わったそうなのね。だから、アータル島には、いつか時代が変わる時が来たら、うやうやしく受け取れって言い伝えがあるの」
「アバウトな言い伝えだ……!」
それでも、態度がガラリと変わってしまうようなことがなくて良かった。
よそよそしくされるのはあまり好きではないからな。
今は、いわば俺たちの慰労会。
島にはあまり大した食べ物もお酒もない……とのことだったが、海からとれるものはたくさんある。
家畜も潰して、料理はそれなりに盛大だった。
おや、塩味だけじゃないな。
調味料がある……。
「麦を発行させて、塩漬けにしたものだよ。進めれば酒になるし、途中で止めたら調味料になるの」
ミーソというその独特な調味料の説明を受けつつ、煮た魚に掛けて食べたりする。
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