モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

文字の大きさ
158 / 173
第四部:オケアノス海の冒険 7

第149話 ソラフネ山遺跡 その1

しおりを挟む
 集落の中央に、大きな木造の小屋がある。
 これが遺跡への入り口なのだそうだ。

 遺跡に雨水が入らないよう、屋根を設けてあるのだとか。

 俺達は、遺跡に入るために必要な腕輪を借りると、小屋の中に入った。

「なるほど、穴がある。このハシゴを降りていくんだな。……しかし……ハシゴの材質が、明らかに見たことのないものだ」

 しゃがみこんで、コンコンとハシゴを叩いてみる。
 金属ではない。
 木でもない。なんだこれは。

「プラスチックですわよ」

「プラスチックですねえ」

 おっ、司祭二人が詳しい。
 二人とも、異口同音に発してしまったため、互いを横目で見て嫌そうな顔をした。

「オースさん、ラグナの大教会を見ましたでしょう。あの建物の中でも多くの部品はプラスチックを使っていましたわよ」

「ワタシの武器……銃の部品はプラスチックですね」

 なるほど。
 これはつまり、ラグナやエルドなどに由来の素材らしい。
 特殊なものなのだろう。

 暖かくもなく、冷たくもなく。
 不思議な手触りだ。

 このハシゴを使って、遺跡に降りていくことになる。

「じゃあ、最初は俺が……」

「クルミが行くですー! えいやー!」

「あっ!」

 クルミがちょろちょろっと、凄い勢いでハシゴを下って行ってしまった。
 慌てて後を追いかける。

 うーむ、さすがはゼロ族、速いなあ。
 遺跡は集落の人達が潜るくらいだから、危険はあまりないのだろう。
 それにしても、警戒せずに真っ先に行くのは危ない……!

 俺が降りていくと、頭の上にドスンと何かが乗ってきた。

『運ぶがいいにゃ』

「ドレ、いきなり頭の上に降りてこないでくれー」

 腕輪だが、俺、クルミ、アリサ、アルディ、カレン、そしてドレが身につけている。
 ローズを連れて行きたかったのだが、腕輪を持っていないと、小動物であっても通れないようだ。
 ということで、彼は地上に置いていくことにした。

 今頃、ブランの毛の中に潜ってお昼寝していることであろう。

 ハシゴを少し降りると、足元から頭上に向かって、赤い光の膜が通り抜けていった。
 なんだあれは。
 腕輪が淡く、緑色に光っているな。

 腕輪を付けた人間かどうかを確かめているのか。
 ドレは触手でくるりと巻いて所持している。

 アリサとカレンは、腕に通すにはぶかぶかだった。
 二人とも、足にはめ込んでの遺跡入りだ。

「なんでわたくしとはめるところが同じなんですの」

「あなたと発想が一緒っていうのはちょっと凹みますねえ」

 二人の司祭は仲がいいんだか悪いんだか。
 思考が一緒な辺り、同族嫌悪かも知れない。

 ハシゴが終わり、遺跡の床に降り立つぞ、というところになった。
 そこで、とんでもない異変が起こる。

 具体的には、壁と床が入れ替わった。

 つまり、床だと持っていたところに足をつけようとしたら、俺にとっての上下が変わってしまったのだ。
 さっきまでの壁面に足を付け、俺は立っている。

「……なんだ、これ」

『重力制御システムが生きてるにゃ。宇宙空間を航行する時、無重力だと体に悪いにゃ。なので人間は重力を擬似的に作って、そこに立てるようにするにゃ』

 ドレがまた難しいことを言う。

「センセエ! センセエ! 地面と壁が変わっちゃったですよー! 変なとこです!」

 先に降りたクルミも戸惑っているようだ。
 だけど、この壁と床の入れ替わりは好都合。
 下に下にハシゴで降りていくのは、何気に大変だからね。

 床の感触は、硬くはない。
 かと言って柔らかくもない。

 どこかしっとりとした、不思議な感触だ。

 俺達に続いて降りてきた、アルディとアリサ、カレンも驚きの声を上げている。

「頭がおかしくなりそうだぜ。俺の勘は、間違いなく入ってきた側が上だって告げてる。だが、足が付くのは壁だ。どっちが上でどっちが下なのか分からなくなってくるな」

「何か、魔法の力が働いてますのね……! ラグナの神聖魔法に近い気がするのですけれど」

「うわーっ、なんですかねこれ! ワタシ、こういうの苦手ですねえ……!」

 三者三様だなあ。
 アリサは比較的、受け入れが早いようだ。
 それに対して、カレンは気持ち悪そうに、恐る恐る歩いている。

「あなた、わたくしに掴まるの止めてくれます!? 重いですわーっ!」

「エルド教は現世利益の教えなんですねえ。なので、あまり神秘とかに関わらないんですね。ワタシ、神秘的なの苦手なんですよねえ……! あーっ、振りほどかないでほしいですねーっ!」

「二人とも仲良しです!」

 今回はクルミの言うことが正しい気がするな!

「ふう、ようやく慣れてきたぜ。リーダー、この先に進むんだろ? 危険はねえって話だったが」

「うん。だけど、神話返り発生以来、集落の人達はここに潜ってないらしいね。もしかしたら、遺跡の様子も変わっているかも知れない」

 集落の住人から、遺跡内部の構造については聞いている。
 だが、俺としてはあまりあてにならない可能性があるような気がしていた。

 神話返りという、通常の動物をモンスターに買えてしまうような超常現象が、この遺跡から始まっているとしたら。
 遺跡が変化してない方がおかしいからだ。

「……ということで、慎重に行こう。ここから先は、アルディの剣でも厳しくなるかも知れない」

「望むところだ。おい猫。俺とお前のツートップで行くぞ」

『うわーん、働きたくないにゃあ』

 ドレが泣き言を口にしている。
 だが、彼もソラフネ山遺跡の中ではのんびりしていられないと思っているようだ。
 
 文句を言いながらも、アルディと並んで前に立つ。

 アリサとカレンは後ろにして、俺とクルミは前後どちらにもいける、中衛だ。
 さて、目の前にあるのは最初の扉。

 アルディが近づくと、それはひとりでに開いていった。

「うおっ、魔法の扉か!」

 驚くアルディ。
 彼は剣士の勘からか、剣を持ち上げて身構えた。
 そこに、飛んでくるものがある。

「っ!」

 光り輝く弾のようなものだ。
 それを、アルディの虹色の剣が弾いた。

「早速おでましだぜ。戦う必要があるとなると、俺は落ち着いてくる性質たちでね」

「俺としては、戦いは無いに越したことはないんだけどね」

 俺はため息をついた。
 どうやら、遺跡はおかしくなってるので間違いないようだ。

「戦闘ですね!」

 クルミがぶんぶんとスリングを振り回し始める。
 そう、不本意ながら戦闘だ。

 敵は、壁から浮かび上がるように現れた、巨大なチェスの駒のような何者かなのである。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

処理中です...