163 / 173
最終幕:エルフェンバイン王国の冒険
第154話 実家に向かって その1
しおりを挟む
再びの船旅。
今回は、さほどのハプニングはなく進むことができている。
いや、ハプニングがあると言えばあるんだが。
今、目の前に迫っている海賊船なんかがそうだろうか。
「おうおう、海賊じゃねえか。こりゃあ嬉しいね!!」
「全然うれしくないですねえ……!!」
喜色満面のアルディに対し、なぜか俺達と同行することになったカレンがため息をつく。
彼女、エルド教の大教会から、俺についていくようにという命令を受けたらしい。
なんで俺を名指しでなんだ。
「わたくしは今回も後ろに引っ込んでいますわね!」
やる気のないアリサ。
戦闘中に、うちのモフモフのブラッシングをするつもりなのか、片手には新調したブラシを握りしめている。
だが、今回の海賊はアリサの希望を叶えてはくれなかった。
なんと、後ろからも襲いかかってきたのだ。
「ヒャッハー! いい女がいやがるぜー!!」
「俺のもんだー!」
「いや俺のもんだー!!」
アリサ、黙っていればふくよかな美女だからな。
海賊たちが彼女に殺到しようとする。
船に鈎フックが取り付けられ、乗り込んでくるのだ。
「やれやれ、今回の海賊は数が多いね。そう言えばオケアノス海って海賊が多いんだったっけ。海賊だけで国を一つ作ってると聞いたことがあるけど」
「ほえー! 海賊さんだけの国ですかー」
俺とクルミで、のんきな会話をしながら海賊を迎え撃つ。
今回はスリングとはいかないので、ショートソードを使って乱戦かな。
クルミがマストにするすると上っていって、その真中ほどに足と尻尾を絡ませて、体を固定した。
おお、ゼロ族ならば柱が一本あれば、どんな場所でも射撃攻撃ができるんだな。
飛び掛かってくる海賊をショートソードであしらいながら、俺は感心する。
海賊、腕はあまりよろしくない。
彼らの短剣を捌きながら、足を引っ掛けて転ばし、後ろから来たものの突きを躱して肩をぶち当てて体勢を崩し、蹴り倒す。
「うおおおー! ブラッシングの邪魔ですわよおおお!!」
アリサの咆哮が聞こえた。
彼女は、ローブの中から取り出したらしき、鎖付きトゲ鉄球を振り回している。
モーニングスターというやつだ。
あんなの常に装備してたのか……。
哀れ、殴られた海賊は二度と目覚めぬ夢の中。
意外にも、アリサはモーニングスターの名手だった。
当たるを幸いと、海賊達を次々に、野蛮な打撃の餌食にしていく。
怒りの咆哮を上げながら戦うさまは、さながらバーバリアンの女戦士だな。
よく考えたら、Sランク相当の司祭が戦闘訓練をしていないはずがない。
下手をすると、カイルに近いくらいの戦闘力があるな、アリサ。
俺はまたまた感心してしまった。
さらに、頭上から次々降り注ぐクルミの射撃。
海賊船に乗り移り、たった一人で海賊団を蹂躙するアルディ。
ラッキーヒットした弾丸が、海賊船のマストをへし折ったカレン。
近づいてくる海賊を、おざなりに吹き飛ばすブラン。
この船に俺達モフライダーズが乗っていたと知らなかった、海賊こそが被害者かも知れない。
「な、なんだよこの船! こんなつええ冒険者が乗ってるなんて知らなかった!!」
海賊の誰かが悲鳴を上げる。
いやあ、実に全くその通り。
生き残った海賊は、必死の形相で互いの船に引き上げていく。
『ふむふむ。では友を迎えに行ってくるチュン』
フランメが俺のポケットからにゅっと出てきて、巨大化した。
彼が向かったのは海賊船の一つ。
アルディに蹂躙された船だ。
そこで、彼を回収。
こちらに戻ってくる……なんてことがある訳がない。
「わはははは! 逃さんぞーっ!!」
『ふはははは!! 我らに歯向かったことを精霊界で後悔するがよい!!』
一人と一羽で、テンションが十倍くらいになった。
アルディが次々と、船を沈めていく。
フランメが燃やし、アルディがマストを切断する。
剣でマストが斬れるんだなあ。
あのコンビはなかなか凶悪だな。
俺がのんびり眺めているうちに、海賊船団は全滅してしまった。
すぐ後に、隠れていた乗客達が外に出てくる。
そして俺達の活躍の跡を見て、歓声を上げた。
「こりゃ凄い!! 海賊がみんなやられてる!」
「とんでもなく腕が立つ冒険者が乗ってたんだな! ありがとう!」
「ひええ、逃げられたんじゃなく、全滅させたのかあ。前代未聞だなあこりゃあ」
主にアルディがハッスルしたお陰だな。
俺はちょこちょこと海賊をあしらっただけだ。
船長や船員まで出てきて、俺達の活躍をねぎらう。
お陰で、モフライダーズの船賃が半額になった。
ブランのぶんで結構乗船料金を取られてたから、これはありがたい。
なお、ドレは乗り込んでも無料だった。
これって、船はネズミが大敵で、猫はネズミを取るからなんだそうだ。
ドレに言わせると、
『己はネズミを取るなんて下賤なことはしないにゃ。たまーにおもちゃにするだけにゃ。あいつら汚くて食べる気もしないにゃ』
だそうだ。
この別世界から来た猫は、グルメだからなあ。
最近では、毎日のようにチーズをむしゃむしゃ食べている。
船の上では新鮮なミルクが手に入らないから、チーズで我慢してやっているなんて言うのだが。
どう見ても、新しいグルメに目覚めているよな。
『ちゅっちゅ』
『あっ、ローズ! お前食べすぎだにゃ! これは己のチーズにゃ!!』
『ちゅちゅーい!』
『ほう、チーズとは面妖チュン。我もご相伴にあずかるチュン』
『来るなにゃ、スズメー!!』
船の上でも、モフモフ達は大変賑やかである。
今回は、さほどのハプニングはなく進むことができている。
いや、ハプニングがあると言えばあるんだが。
今、目の前に迫っている海賊船なんかがそうだろうか。
「おうおう、海賊じゃねえか。こりゃあ嬉しいね!!」
「全然うれしくないですねえ……!!」
喜色満面のアルディに対し、なぜか俺達と同行することになったカレンがため息をつく。
彼女、エルド教の大教会から、俺についていくようにという命令を受けたらしい。
なんで俺を名指しでなんだ。
「わたくしは今回も後ろに引っ込んでいますわね!」
やる気のないアリサ。
戦闘中に、うちのモフモフのブラッシングをするつもりなのか、片手には新調したブラシを握りしめている。
だが、今回の海賊はアリサの希望を叶えてはくれなかった。
なんと、後ろからも襲いかかってきたのだ。
「ヒャッハー! いい女がいやがるぜー!!」
「俺のもんだー!」
「いや俺のもんだー!!」
アリサ、黙っていればふくよかな美女だからな。
海賊たちが彼女に殺到しようとする。
船に鈎フックが取り付けられ、乗り込んでくるのだ。
「やれやれ、今回の海賊は数が多いね。そう言えばオケアノス海って海賊が多いんだったっけ。海賊だけで国を一つ作ってると聞いたことがあるけど」
「ほえー! 海賊さんだけの国ですかー」
俺とクルミで、のんきな会話をしながら海賊を迎え撃つ。
今回はスリングとはいかないので、ショートソードを使って乱戦かな。
クルミがマストにするすると上っていって、その真中ほどに足と尻尾を絡ませて、体を固定した。
おお、ゼロ族ならば柱が一本あれば、どんな場所でも射撃攻撃ができるんだな。
飛び掛かってくる海賊をショートソードであしらいながら、俺は感心する。
海賊、腕はあまりよろしくない。
彼らの短剣を捌きながら、足を引っ掛けて転ばし、後ろから来たものの突きを躱して肩をぶち当てて体勢を崩し、蹴り倒す。
「うおおおー! ブラッシングの邪魔ですわよおおお!!」
アリサの咆哮が聞こえた。
彼女は、ローブの中から取り出したらしき、鎖付きトゲ鉄球を振り回している。
モーニングスターというやつだ。
あんなの常に装備してたのか……。
哀れ、殴られた海賊は二度と目覚めぬ夢の中。
意外にも、アリサはモーニングスターの名手だった。
当たるを幸いと、海賊達を次々に、野蛮な打撃の餌食にしていく。
怒りの咆哮を上げながら戦うさまは、さながらバーバリアンの女戦士だな。
よく考えたら、Sランク相当の司祭が戦闘訓練をしていないはずがない。
下手をすると、カイルに近いくらいの戦闘力があるな、アリサ。
俺はまたまた感心してしまった。
さらに、頭上から次々降り注ぐクルミの射撃。
海賊船に乗り移り、たった一人で海賊団を蹂躙するアルディ。
ラッキーヒットした弾丸が、海賊船のマストをへし折ったカレン。
近づいてくる海賊を、おざなりに吹き飛ばすブラン。
この船に俺達モフライダーズが乗っていたと知らなかった、海賊こそが被害者かも知れない。
「な、なんだよこの船! こんなつええ冒険者が乗ってるなんて知らなかった!!」
海賊の誰かが悲鳴を上げる。
いやあ、実に全くその通り。
生き残った海賊は、必死の形相で互いの船に引き上げていく。
『ふむふむ。では友を迎えに行ってくるチュン』
フランメが俺のポケットからにゅっと出てきて、巨大化した。
彼が向かったのは海賊船の一つ。
アルディに蹂躙された船だ。
そこで、彼を回収。
こちらに戻ってくる……なんてことがある訳がない。
「わはははは! 逃さんぞーっ!!」
『ふはははは!! 我らに歯向かったことを精霊界で後悔するがよい!!』
一人と一羽で、テンションが十倍くらいになった。
アルディが次々と、船を沈めていく。
フランメが燃やし、アルディがマストを切断する。
剣でマストが斬れるんだなあ。
あのコンビはなかなか凶悪だな。
俺がのんびり眺めているうちに、海賊船団は全滅してしまった。
すぐ後に、隠れていた乗客達が外に出てくる。
そして俺達の活躍の跡を見て、歓声を上げた。
「こりゃ凄い!! 海賊がみんなやられてる!」
「とんでもなく腕が立つ冒険者が乗ってたんだな! ありがとう!」
「ひええ、逃げられたんじゃなく、全滅させたのかあ。前代未聞だなあこりゃあ」
主にアルディがハッスルしたお陰だな。
俺はちょこちょこと海賊をあしらっただけだ。
船長や船員まで出てきて、俺達の活躍をねぎらう。
お陰で、モフライダーズの船賃が半額になった。
ブランのぶんで結構乗船料金を取られてたから、これはありがたい。
なお、ドレは乗り込んでも無料だった。
これって、船はネズミが大敵で、猫はネズミを取るからなんだそうだ。
ドレに言わせると、
『己はネズミを取るなんて下賤なことはしないにゃ。たまーにおもちゃにするだけにゃ。あいつら汚くて食べる気もしないにゃ』
だそうだ。
この別世界から来た猫は、グルメだからなあ。
最近では、毎日のようにチーズをむしゃむしゃ食べている。
船の上では新鮮なミルクが手に入らないから、チーズで我慢してやっているなんて言うのだが。
どう見ても、新しいグルメに目覚めているよな。
『ちゅっちゅ』
『あっ、ローズ! お前食べすぎだにゃ! これは己のチーズにゃ!!』
『ちゅちゅーい!』
『ほう、チーズとは面妖チュン。我もご相伴にあずかるチュン』
『来るなにゃ、スズメー!!』
船の上でも、モフモフ達は大変賑やかである。
30
あなたにおすすめの小説
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる