ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
9 / 517
冴えない私の黎明編

第9話 コラボ配信でボス攻略伝説 前編

しおりを挟む
「みなさーん! こんにちきら星ー! 新人冒険配信者のきら星はづきですー!」

※『こんにちきら星ー!』『こんにちはー』『こんきらー』

「はい、こんにちは! えーと、皆さんに発表することがあります。まずですね、私、今までコンセプトがブレブレで……」

たこやき『はづきっち後ろ後ろー!』

 おっと、最古参リスナーのたこやきさんが教えてくれた。

『ゴブゴブー!!』

 すぐ後ろまでゴブリンが迫ってきていた!
 これを、画面外に控えていたカンナちゃんが出てきて、鞘に入ったままの剣で殴り飛ばす。

『ウグワーッ!?』

 ゴブリンが消滅した。
 うわーっ、凄い威力。

※『カンナちゃんだ!』『コラボだ!』

「そ、そうなのでーす! 今日はカンナちゃんとコラボ配信をすることになりました! コラボで、このダンジョンのボスモンスターを退治します!」

 どよめくチャット欄。
 ふっふっふ、驚け驚け……!
 配信四回目にして、超大型コラボなのだ。

「えっ、はづきさん、まだ説明の途中じゃないの? いいの? えっ、声ミュートになってない? ……おーっほっほっほっほっほ!」

※『素だ』『素で喋ってた』『ポンだ』『かわいい』

 私も笑顔になっちゃうな。

「何を笑ってますのーっ! コホン! おほほほほ! 皆様、ごきげんよう! NAA三期生、冒険配信者候補のカンナ・アーデルハイドですわー!」

※『うおーっ!』

 沸き上がるコメント欄。
 よしよし、いい感じいい感じ。

 ニヤニヤしていたら、カンナちゃんに脇腹をこづかれた。

「あひゃっ」

※『可愛い声出た』『かわいい』

 な、な、なんという声を出させるんだーっ。
 また切り抜かれてしまう!

「ちょっとはづきさん! コンセプト、コンセプト! ほら、またゴブリンが来てますわよ! わたくしが相手をしておきますから、はづきさんはちゃんと伝えるべきことを伝えて下さいな!」

「あっはい」

 そうだった……!

「あのその、コンセプトが決まって! 私、陰キャなので、陰キャ系配信者としてやっていくことになりました!」

※『陰キャ系!?』『潔くて草』『草』

 発言は気になるけど、概ね好評だ……!

「つきましては、皆さんリスナーの呼び名なんですけど、“お前ら”で行こうかなーって」

※『草』『草』『いいよー』

 ご快諾いただけた!
 ありがたいありがたい……。

「お前ら、ありがとー!」

 私は微笑みながら、画面の向こうに手を振った。

「伝えることは終わりまして!? だったら手伝ってー!!」

 カンナちゃんの悲鳴が聞こえた。
 あっ、ゴブリンが三体もいる!

 カンナちゃんも、アカデミー側のチャンネルで配信はしているみたいだけれど、むこうの同接数じゃ押し切るほどのパワーが得られないみたいだ。
 こちらの同接数をチェックする。
 450人!!
 いける!

「行くぞお前らー!」

※『うおー!』『いっけー!』『今日もあの後転を見せてくれー!』

 前に向かってるんだからいきなり後転はしないって!
 私はオモチャのレーザーソードを振り回しながら、ブォンブォン音を立てて参戦した。

 光り輝くうるさいレーザーソードが、ゴブリンの頭を殴打する!

『ウグワーッ!!』

 ゴブリンが光になった。
 光に!?
 昏倒するだけじゃない!

 カンナちゃんが頷いた。

「そうですわ! わたくしの同接数と、あなたの同接数。二つのチャンネルの力が合わさって、二倍の力を発揮するようになってますの! わたくしの同接が555人ですから……」

「私が450人で、うおおーっ! 同接1005人パワーっ!」

『ウグワワーッ!?』

 残るゴブリンたちが、殴り飛ばされて光になった。
 凄い……!

「あれだけ恐ろしかったゴブリンが、まるでゴミのようだーっ」

※『こわぁw』『調子に乗るタイプ』『人が変わった』

「あーっ、引かないで引かないで……!! えへへへへ、私はこの通り、何も変わらない陰キャでございます……」

※『おもろ』『速攻で戻ってて草』

 いけないいけない。調子に乗ると人心が離れていってしまう……。
 なんだか今日は私のテンションが高い。
 ふふふ、まるでコミュ強みたい。

※おこのみ『コミュ障あるあるだけど、テンション上がるといらんこと喋りまくるよね』

「なん……だと……?」

※『あっ』『あっ、ごめんね』

 謝るなーっ!!
 この光景を見て、アカデミー側では大いに盛り上がっているようだった。
 くっ、また切り抜かれるぅ……!

「ということで、ですわね。今日はこのようにコラボで盛り上がって行こうと思うのですわ。もちろん、目標はダンジョンの攻略! ここがこのダンジョンの中枢になっていますの。先程からゴブリンが次々やって来ますわよね」

 流石カンナちゃん、分かりやすいなあ。
 それに、お嬢様系のロールプレイをするスタイルで、ダンジョン探索をしながらもキャラを崩さない。
 これは本当に凄い。

 私なんか素が出まくりだ。
 そもそも、自分の配信者としてのキャラすら確立していない……!

 ここは今度、兄に相談しよう……。

 カンナちゃんの言う通り、ダンジョンの中枢となっている大家さんの家はゴブリンの巣窟だった。
 どんどん出てくるゴブリン。
 これを、軽妙な会話をしながら片付けていくカンナちゃん。
 そして、レーザーブレードの重さでだんだん腕がだるくなっていく私。

 き、筋トレしなくちゃあ……!!

「アーカイブでチェックしましたけれど、やはりはづきさんにはその武器は重すぎるようですわ」

 カンナちゃんがそう言いながら、リュックから何かを取り出した。
 紙に包まれたそれは……。

「アカデミーからあなたへのプレゼントですわ! もちろん……経費で落ちましたわー!!」

「ありがとうー!!」

※『プレゼントいいなー!』『なんだろう?』

 移動しながら、バリバリ音を立てて包み紙を開く。
 そこにあったのは……。

 黒くて軽くて細い……。

「ご、ゴボウ……!!」

※『勝利確定演出』『約束された武器』『ゴボウ姫の帰還』

「やめろお前らーっ!?」

 ここでタイミングよく、立ちふさがるゴブリンの群れ。

「いきますわよはづきさん! はああーっ!!」

「こ……こなくそーっ!!」

 ゴボウで叩かれたゴブリンが、『ウグワーッ!?』と光になる!
 さすがはゴボウ、軽いしなんともないわーっ!

 返すゴボウが、ゴブリンを粉砕する。
 
「はづきさん、速い……!!」

「ゴボウ、軽いですから……!! アチョーっ!!」

『ウグワーッ!?』

 最後のゴブリンが光になった。
 後に残るのは、ダンジョンコアの欠片。
 バラバラになったきらめく破片が、床に飛び散っていた。

「これで残るは……ボスモンスター。怨霊の攻略だけですわね!」

 カンナちゃんが向いている方向に、扉があった。
 それがゆっくり開いていく。

 這い出してくる、真っ黒な影。

 ダンジョンの攻略のためには、これを倒さなくてはなのだ……!
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...