ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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年度末な私の決戦編

第193話 多忙なはづきっちの春伝説

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 忙しい!
 心を亡くすと書いて忙しいと読むんだけど、もう本当にバタバタしていて大変なのだ。

 期末テストはまだいい。
 学校の勉強聞いてれば点が取れるし。

 だけど、そこに新たな後輩二人ができた!
 レッスンの様子を見たくて仕方ないので、ちょこちょこ見に行くと結構な時間を使う。
 その後でダンジョン配信をしたりするでしょ。門限までの時間内にRTAしないといけない。

 さらにさらに、ベストラフィングカンパニーさんとの打ち合わせで、初回予約特典でチベスナとブタさんの被り物を付ける話になっていて、私の監修作業が……!

 そしてその上で、シアワセヤさんでは私とカンナちゃん二人で全身をスキャンしてもらいつつ、CGで原型を作っていく……。
 これをパーツ分割しないといけないらしくて、本当に向こうも大変だ……。

 まあ私は忙しくても、カンナちゃんと会えると体力が回復するんだけどね!

「はづきちゃん、毎日忙しくて大変じゃない……?」

「忙しい! だけど充実してるかも……」

「そうなんだ! 私はなうファンタジーの企画に自分の配信、今回のプラモとすっごく忙しい! 一瞬で毎日が流れていくよー。でもでも、仕事がめちゃくちゃ来るのってありがたいことだもんね」

 最近登録者数が16万人を突破したらしくて、彼女も順調に人気者になって行っている。
 お互い忙しいから、あんまり会えないしなあ。

 配信者というのはままならない。

「そう言えば知ってる? VR空間のフリースペース拡張さ、もうすぐ終わるんだって。開会式が近いから、そこでなんと、私たちトライシグナルが宣伝大使として参加することに!」

「すごーい!」

 私は興奮して鼻息を荒くした。
 パチパチ拍手する。

 ここはシアワセヤさんの部屋の一つで、福利厚生のジュース類が無料なので仕事の後はちょっと休憩にピッタリ。
 少しくらいうるさくても大丈夫なのだ……多分。

 なんか扉の隙間から、シアワセヤさんの社員さんが何人も覗いているような。

「はづきっちだぜ」「本物だ……」「中身もかわいいなあ」「本当に女子高生だったんだな……」

 注目されている……!
 ちょっと緊張しながら手を振ったら、彼らはわあわあ言いながら盛り上がった。

「どこにでもはづきちゃんのファンはいるよねえ! うん、私も頑張らないと! 頑張って隣に立てるようになるよ!」

「隣に!? 今立ってるじゃない」

「物理的にはそうだけど! ほら、配信者として隣に並び立てるくらいになる!」

「おおーっ」

 志の高さに感動する私なのだった。
 今度のVRのイベントで、カンナちゃんがより一層飛躍するといいなあ。

 私は応援しているのだ!

 こうして一時の逢瀬が終わり、私は帰るのだ。
 みんな色々前に進んでいるなあ。
 私は毎日をどうにかこなして、時折カッとなって急激に前進するだけでいっぱいいっぱいだ。

 最近は大罪勢も静かだし、ダンジョンも小粒なのばっかりだし。
 相変わらず個人勢の人たちはVRメインだし……。

「平和ですなあ……」

 電車の中で呟いた。
 カンナちゃんたちトライシグナルが大使をやるというイベント、これは絶対に見に行かなくちゃなあ……。
 なうファンタジー側からか彼女たち三人、ライブダンジョンからも若手の配信者の人が大使として参加するらしい。

 これは大きなイベントになりそうだ……。

 家に戻ってから、LUINEでもみじちゃんからお誘いが来た。

『先輩、工事してるVRのフリースペース見に行きましょう!』

「行こう行こう」

 そういうことになった。
 彼女は別のロビーなので、フリースペースで合流する。

 予告なしで私ともみじちゃんが出現したので、ちょっと騒ぎになった。
 人が集まってくるけど……。

「ぎゅうぎゅうになったらゴボウを使いますよ……」

『ヒェッ』『きら星はづきは一般市民にもゴボウを向ける恐ろしい女だぞw』『ゴボウを向けられたからなんだって話だけど、はづきのゴボウなんだよなw』

 みんな協力的で助かる~。
 私はペコペコしながら道を空けてもらった。
 ゴボウという抑止力はあるけど、基本は話し合いだよね。

 中には会話が通じない人もいて、『ヒャッハー! はづきっちに触っちゃうもんね!』とか走ってきてゴボウに触れて、『ウグワーッ!?』と自分のロビーの端っこまでふっとばされていった人もいたけど。
 
『明らかにきら星はづきのアバター、他の人のそれとは違うんだよw』『普通VRはこういう挙動しないんだけどw』『みだりに触れたら祟るとか、神様かな……?』

『先輩色々言われてますねえ……。うちが触ってもなんともないのに』

「私のゴボウ、身内判定があるのかも知れない……。と、ついたついた」

 眼の前が、竣工間近の拡張フリースペースです。
 向こう側には、本来のフリースペースよりも広い空間が展開されている。

 今まではよく分からない理由で、これ以上広げていけなかったらしいけど……。
 追儺の儀式後、嘘みたいに作業がスムーズになったらしい。
 サーバの拡張とかはもう済んでいたから、後は内部を整えるだけだったんだって。

『なんか……いきなり作業ができるようになったって不思議ですよねー。まるで誰かが邪魔してて、こないだの儀式で邪魔する必要がなくなったみたいな』

「もみじちゃんは心配性だなあ」

『はづき先輩が楽観的なんですー! 一応先輩のリスナーさんとも相談しといた方がいいですよ。こういうのフラグって言うんですよね? 詳しい人いっぱいいそう』

「なるほど確かに……」

 うちのお前ら、有識者がたくさん混じってるからなあ。
 オープニングイベントを見に行くのは決定として、ちょっと色々相談しておこう。
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