7 / 147
スローライフが攻めてきたぞーっ編
第7話 新しい仲間を紹介するぜ! おしゃれな衣装ケースだ!
しおりを挟む「新しい仲間を紹介するぜ! おしゃれな衣装ケースだ!」
『ほう! この色あい、形……。見たこともない素材でできている……。これに何を収めるのですかな?』
「衣装とかかな……」
「へえー、可愛い箱! ねえねえ、何も入ってないし、これ私の寝床にしていい?」
「ダメ……!」
「けちー!」
ポタルに羽でペチペチ叩かれる。
ははは、よせよせ。
しかし現実では女の子にこうしてペチられることもなかったし、これはこれでいいものだ。
『空であるということに何か意味合いがあるのですかな?』
「まだ衣装が何もないだけだ。俺はキャラメイクされたままの普段着だろう」
『確かに、タマル様はこのヘルズテーブルを歩くには正気とは思えぬような薄着ですな』
「歩き始めて三分で狩られて死ぬわよね」
『カタカタ』
散々な言われようである。
「しかしこうして俺は生きていて、理想的スローライフのために邁進しているのだ。どんな世界でもその気になれば生き残れるもんだ。俺が証拠だ」
『我にはどうしてタマル様がまだ生きていられるのかさっぱり分からん……』
「もしかして人間の世界はそんな感じなのかも知れない?」
『いや、タマル様は絶対人間ではない。間違いなく魔人侯寄りだ』
「あー、私を捕まえた虫網の技があったわ」
「ご理解いただけたようで嬉しい。じゃあ、次の目的を話すけどいい?」
どうぞどうぞ、と二人は頷いた。
『目的なんてものがあったのですな』
「その場のノリで生きてるんだと思った」
「うるさいよ? 次はな、この衣装ケースの中を満たす衣装を探す。近くに魔人侯の流血男爵というのがいるらしいんで、こいつの城に行って色々漁ってこようと思う」
『エッ!! いきなり魔人侯の領地に攻め込む!?』
「ノリで生きてる!!」
「うるさいよ!? おしゃれな衣装とか、そういうのは強力な魔人とかモンスターとかの住まいにしか無いらしいじゃない。魔人商店で聞いたよ」
『あの双子、余計なことをタマル様に吹き込んだな……』
「魔人商店ってなに!? 今度私も行く!」
魔人商店大人気だな。
あそこは行く度に欲しくなってしまう商品が並んでいるので、全くポイントが貯まらないのだ。
なお、今回は250pt使った。
それから新しい収穫なのだが、魔人侯を捕まえて売り払うと、アイテムボックスの収納量を30個までに増やしてくれるらしい。
今回魔人侯の所に行くのは、そういう意味もあるのだ。
俺のアイテムボックス収納量のために、犠牲になってもらおうか魔人侯。
『とりあえずトロル装備を入れておきましょう』
「うわあ、おしゃれな衣装ケース最初の収納品が、もちもちしたトロル装備になっちまった。なんてことするんだラムザー」
『この間まで地面に転がしてましたからな。モチモチした装備でも我の気モチ的には微妙でしたぞ』
「まーたダジャレを言う」
『言ってませんぞ』
荷馬車は流血男爵領へと入っていく。
どこからどこまでが領地なのか、この世界は分かりやすい。
石造りのおどろおどろしいゲートがあるのだ。
街道からゲートをくぐると、途端に周囲の空気が変わった。
ねっとりとした、まさに血が粘つくような空気。
周囲がまるで、日暮れ前のような明度である。
そんな中で、少し先から争う声が聞こえてきた。
「なんだろ? ちょっと見てくるね!」
ポタルが羽ばたき、上空から争いを眺める。
すぐに戻ってきた。
「オークの集団と、なんか赤い色の荒くれ者っぽいのが戦ってる!」
『赤い色のが流血男爵の手勢でしょうな。ブラッディアンという下位の魔人ですぞ』
毒の血を持ち、その毒を体内に入れると流血が止まらなくなるやつらしい。
たちが悪いな。
「数は?」
「オークが十匹と、ブラッディアン? が七匹くらい」
「なるほど、それならアイテムボックスに余裕があるな」
『タマル様、まさか……』
「ちょっとポイントを稼いで行こうか」
こうして、俺たちは争いに介入したのである。
荷馬車がガラガラやって来たので、争う一団がこちらに注目する。
そして俺は目の前に、ふわふわベッドとおしゃれな衣装ケースを置いた。
間に、人ひとりがやっと通れるくらいの隙間を空ける。
「順番に来い」
虫網を構えるのである。
『もがーっ!!』
『ぶひーっ!!』
激高するブラッディアンとオーク。
俺に向かって押し寄せようとして、ふわふわベッドと衣装ケースにぼいーんっと阻まれた。
これで回り道してこない辺り、頭に血が登っているのだろう。
これらのオブジェクトは破壊不能である。
武器をガンガン叩きつけているが、ぼいんっぼいんっと跳ね返されるばかりでびくともしない。
こうして奴らは、ベッドとケースの隙間をうんしょ、うんしょ、とくぐってきた。
くぐってきたところを……、
「そいっ!」
ピョインッ!と音がして、通過してきたオークが消えた。
虫取り網でゲットされたのだ。
アイテムボックスにオークのアイコンがちょこん、と出現する。
『もがーっ!!』
今度はブラッディアンをピョインッとゲット。
次はオーク、次はブラッディアン。
ブラッディアン、オーク、オーク、ブラッディアン……。
最後にオークが三匹くらい残って、ハッとした顔をした。
『ブ、ブ、ブヒー!』
『ああ、彼奴ら、タマル様がとんでもないことをしていた事にようやく気づいたようですな』
「順番待ちしてて頭が冷えたのね」
「おい待てお前ら! あと三匹いるんだろ! なあ! 来いよ! この隙間を通ってこっちに来いよなあ!」
『タマル様怖いなー』
「狂気を感じるわ」
『カタカタ』
ひどい言われようである。
『ブヒィィィィ』
『ば、化け物ー!』
『荷馬車に乗った魔人侯ー!!』
オークたちは逃げ去ってしまった。
うう……。
せっかくアイテムボックスのスペースを20個全部空けたのに……。
仕方なく魔人商店で売ってきた。
「オークが一匹60ptで、ブラッディアンは一匹150ptですので、1470ptになりまぁす!」
「うひょお!!」
1000ptを超えた!!
テンションが上ってまいりました。
「ブラッディアンを取り尽くすしかねえ……。俺のスローライフのために、流血男爵領は犠牲になってもらう……!!」
UGWポイント
2070pt
「ところで2000ptを使うとゴッドモジュールに新しい設備が追加されますが」
「なんだって」
双子の魔人娘は、俺を上目遣いで見つめた。
「タマルさんが手に入れた珍しい装備や、珍しい怪物を展示しておける博物館でえす。解放なさいますか~?」
「ますか~?」
「します」
文化的娯楽は、スローライフには欠かせないもんな!
UGWポイント
70pt
1
あなたにおすすめの小説
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる