召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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スリッピー帝国編

第43話 俺の本気はNTR野郎抹殺の決意から

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 今の俺はお腹いっぱい。
 チュートリアルでも十分な成果は出ないだろう。
 これはまずい。

 最悪の状況で最悪の敵と出会ってしまった。
 このNTR野郎、必ず殺さねばならん。

 俺の中で、異世界に来て初めて宿る強い決意。

 ルミイは必ず守る。
 あとカオルンが取られても気分が悪いので守る。

 二人とも守らなくちゃいけないのが、俺の辛いところだな。

 そんな事を考えてニヤニヤしたら、異世界召喚者タクルが訝しげな目線を向けてきた。
 そしてすぐに、ヤツはルミイとカオルンを素早くキョロキョロ見て、ごくりと喉を鳴らした。

 ふふふふふ……。
 極上の美少女二人と旅をしているのだ。
 羨ましかろう……。

「二人は、軍人さんの何なんだい?」

 タクルが質問を口にする。
 俺は微笑んだ。

「田舎では、奥さんがたくさんいても良くてね」

 タクルの目尻が一瞬引きつった。
 そしてヤツは刹那の間だけ、獣のような笑みを浮かべる。

 こいつ、絶対に二人を取ってやると心に誓ったな!
 よし、俺とお前は不倶戴天の敵だ。

 この都市を灰燼に帰しても、お前だけは絶対に仕留めてやる。

 というかタクル、明らかにスリーズ友愛団の影のボスみたいな感じなのだが、行動原理が性欲しかないな?
 つまりこの活動、タクルがハーレムを作るためだけのものだということだ。

 ろくでもないぞ、この都市も!
 いや、ろくでもないのは都市に侵入したタクルと、そいつのハーレムになっている女子と、取り巻きになっている男たちであろう。

「ではどうだろう。俺は戦い続けるだけじゃいけないと思っているんだ。だから、いつかは軍とも分かり合いたい。既に輜重部隊の人たちとは仲良くしてもらってるんだ」

「ヘルプ機能」

『輜重部隊の管理部門は女性士官と女性兵士が多数在籍しており、既にタクルの息がかかっています』

 ろくでもねえ!!

「だから俺は、君とも仲良くしたいな。まずは二人の可愛らしい奥さんたち、握手をしてくれないか?」

 手を伸ばすタクル。
 きょとんとしながら、それを見つめるカオルン。

 俺はスッと立ち上がっていた。
 そして、学生サンドからこぼれたケチャップに手を付けたあと、その手でタクルに握手を返した。

「ウグワーッ!! ケ、ケチャップ!!」

「グフフフフ……。田舎には厳しい決まりがあってな……。見知らぬ異性と接触してはならんのだ。ここは代わりに俺が熱烈な握手をしてあげようじゃないか、タクルくん……」

「ウグワーッ!! ねっちょりとした握手を!! そして何故俺の名を……!?」

「俺の名はマナビ。よく覚えておくがいい。今後もせいぜい仲良くしたいものだな」

「こ……こいつ……!!」

 タクルの目が初めて俺をはっきりと見た。
 燃え上がる敵意。

 俺を恐るべき敵と認めたな。
 いいだろう。
 俺はお前を煽り、お前が女の子を落とそうとする熱意にひたすら水を差す!

 そしてタイミングが来たら殺すよ!!

「ほわー、マナビさんがこんなにやる気になってるの初めてですー!!」

「マナビが戦う気なのだ……! カオルンも気圧されてしまうのだー」

 全部君たちのためだからな!!

「では失礼する。スリーズ友愛団諸君。俺を敵に回さないように心がけておくといいぞ……。今の俺は積極的にやってしまうからな……」

「なん……だと……」

 たじろぐ友愛団の男子たち。
 なお、女子たちは状況が分かっておらず、タクルの手をケチャップまみれにした俺に怒りの目を向けている。

「戦場は地獄になったりするし、確かに恐ろしいので無けりゃ無い方が良かろう。だが、俺は守るべきもののためならば積極的に全世界を地獄に変えても一向に構わんということだよ! 俺の全身全霊で迎え撃ってやろう……!! ぐはははははは!!」

 俺は哄笑をあげ、友愛団と主にタクルを威嚇したあと、

「じゃあ宿探しに行こうか」

 とその場を立ち去るのだった。

 さて、金は無限にあるわけではない。
 宿のランクもそこそこにして、その上で敵の侵入を考えねばならないのだ。

 そろそろ、マジックタグについても使えなくなると考えたほうがいいだろう。
 俺たちが半壊させた軍隊が、こっちに戻ってきてもおかしくないからだ。

 そうしたら、戦死者は数えられるだろうし、もしかしたら俺のタグの持ち主であった軍曹の知人がいるかもしれない。
 迅速に行動せねばならないのだ。

「宿の部屋にお風呂つけられるの!? ファンタジー世界なのに!? じゃあそこで。二泊したらすっからかんになるけど」

 計画性は欲の前には無力だよ!!

 俺は内風呂がついた豪華な部屋に決めたのである。
 ここなら三人でお風呂入れるねえ……。

「うわー、マナビがニチャっとした笑顔になったのだー。今日は感情表現豊かなのだなー」

「ああ。いいことと悪いことと最強の敵が同時に来たからな」

「最強の敵なのだ!? カオルンが戦ってやるのだ!」

「いや、カオルンでは勝てまい。あいつはルミイとカオルンに対しては無敵みたいなヤツなのだ……!!」

「な、なんなのだー!?」

 戦慄するカオルン。

 異世界召喚者の能力バトルは、客観的な能力の強さだけに依るものではない。
 じゃんけんなのだ。
 相性で勝敗が変わるし、この相性はこの世界の強者にも押し付けられてくる。

 カオルンはスローゲインとはいい勝負ができただろうが、タクル相手には一方的に負ける。
 ルミイは多分誰にも負ける。

 あれ……?
 相性とは……?

 俺は考えるのをやめた。
 そんな事より、お風呂だお風呂!!

 
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