召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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スリッピー帝国編

第46話 魔法大学潜入は変装から

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 変装するとなると、どうする?
 朝食を摂りながら考えた。

 ルミイは水色の髪も、ハーフエルフの耳も、ふわっふわローブも、ぼんきゅっぼん!という体型もとても目立つ。
 カオルンは紫色のくるくるヘアと尻尾が目立つが、体の凹凸が少ないのでかなり変装はしやすそうだ。
 俺は着替えるだけであの学生たちに埋没できる自信がある。

「問題はルミイだな」

「なのだなー」

「なんですなんです? わたしですか?」

 分厚いパンにハムエッグを乗せて、むしゃむしゃっと食べきってしまったルミイ。
 口元をふきふき、話に加わってきた。

「この国いいですねえ。ずっといたいですよう。ご飯が美味しいですし、お風呂もありますし」

「ルミイ、それは今、金があるから出来ているだけだ。この金は明日尽きるから旅立たねばならない……」

「がーん」

 口でそう言ってるけど、本当にショックそうなルミイ。

「実家に帰ったらそっちで風呂を作ってみような……」

「そうです! そうしましょう!!」

 力強く答えるルミイを、カオルンが目を細めながらじーっと見つめている。

「なんですか? あっ、分かりました! ギュッとして欲しいんですね! ぎゅーっ」

「違うのだ!? うわーっ、ふかふかに拘束されたのだーっ! マナビ、これはまずいのだ。ルミイは服の下にみっちりふかふかふわふわしたものが詰まっているのだ! これは変装がとっても限られるのだー」

「羨ましいなあ……じゃない、やっぱりか。昨日見た友愛団女子たちは、ルミイが変装するのが無理そうな外見だった。あんなキツキツの服では無理だろう」

 ではどうするか?
 ルミイの全身を隠すことができて、怪しまれないもの……。

「ヘルプ機能。ルミイが変装可能なもので、この条件を満たすものがあるか?」

『スリーズ友愛団のマスコットキャラクター、着ぐるみのスリッピーくんです』

 映像まで出てきた!
 スリッピーくんは、機械化されたネズミの姿をしていた。
 カワイイか……?

『公式設定では、軍に改造されて機械化され、戦場で地獄を経験して戻ってきてから反戦派に転向したとなっています』

「戦場帰りの兵士じゃん。このリアル設定でマスコットは無理でしょ」

『PTSDを発症しており、時折手にした魔導銃を構えて暴れます』

「もっとだめでしょ」

 考えたやつは誰だ。
 責任者出てこい。

 その後、宿を後にした俺たち。
 スリッピーくんを探すことにした。

 帝国の名前をつけて、軍に反対するマスコットにするとは……。
 よくよく考えると、姿も名前も設定も、全部がこの国へのアンチテーゼなのだな。

 活動に参加してる連中は、半分は真剣なのがいるんだろう。
 だが、それはそうとしてタクルは殺す。
 そのためには多少の犠牲はやむを得まい。

「いたのだ! ビラを配ってるのだ!」

「いいぞカオルン! ここからチュートリアルだ」

 俺たちは、チュートリアル空間に移動する。
 人前にいるスリッピーくんを、いかに怪しまれず物陰に引きずり込み、中身を高速で交換するか。
 それを練習せねばならない。

 ルミイには壁際をそーっと移動してもらう。
 彼女はハチャメチャに目立つからだ。

 アポカリプスワールド全開なワンザブロー帝国では気付かなかったが、普通に人が生活しているスリーズにおいて、ルミイの姿はめちゃくちゃに目立つ。
 ひと目見たら忘れられないくらいだ。

 なるべく目につかないようにせねば……。

 ふむ、物陰から物陰に移動してもらうと、周囲の人々の視線がこっちを向かないな。
 そしてカオルンが高速で飛び出して、対面にあるゴミ箱を蹴り上げる。
 素晴らしいバランス感覚で蹴るので、凄まじい音を立てて飛び上がったゴミ箱は、吹き出したゴミを全部回収しながらちょっと離れた場所に着地するのだ。

 通行人もスリッピーくんも、これに注目。
 完璧だ。

 俺はこの隙を狙って、スリッピーくんにカニバサミを仕掛けて転ばせ、頭を外して中にいる人を高速で引きずり出した。
 そしてルミイを呼び寄せて中に入れる。

「あーん、くさいですー」

「我慢してくれー! 精霊の力で消臭するとか涼しくするとかしといて」

 後は、中に入ってた人をふんじばってゴミ箱に突っ込んで終了。
 よし。

「チュートリアル終わり!」

 カオルンが増えてから、チュートリアルで取れる戦術の幅が広がった。
 実にありがたい。

 今回も、チュートリアル通りに物事が運んだ。
 俺たちはあっという間に、冴えない男子学生と、小柄でコケティッシュな女子学生と、スリッピーくんの三人に変身したのである。

「カオルンがちょっと背丈とか体型変えられるのはびっくりしたな」

「こう見えても魔神の端くれなのだ。ホムンクルスのボディで能力は制限されてるけど、これくらいは朝飯前なのだー」

 得意げなカオルン。
 なるほど、これはスパイ活動が得意なはずだ。

 ひとりきりなら、どんなところにでも入り込んで諜報員として動けるだろう。

「諜報活動なら任せるのだ! カオルンに続くのだ。こういうのは堂々としてるのがいいのだー」

 魔法で髪の色まで変えているから、誰もカオルンだと気づかない。
 俺に関しては、そもそも服を着替えただけなのに誰も気付かない。

 そしてスリッピーくんに疑問を抱く者はいない。

「あひー、歩きにくいです~」

「がんばれがんばれ」

 ルミイを励ましながら、俺たちは魔法大学へと入り込んだのだった。
 
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