召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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スリッピー帝国編

第58話 新たな閃きはヘルプ機能から

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 スリッピー宮殿の地下迷宮を踏破する俺。
 出口まで矢印で最短ルートだ。
 サクサク進む。

 広いとは言っても、迷わず、罠にもはまらなければ大したものではない。
 チュートリアルの必要すらなく、どんどこ歩いていると、多分三十分くらい経過したのではないか。

「流石にちょっと休憩するか」

 一人呟いてみて、今は一人だったなと気付くのだ。
 最近、ずーっとルミイがいたし、途中からカオルンが加わって賑やかになってたからなあ。
 俺は孤独を愛するタイプだと思っていたが、気心が知れた仲間がいるというのはかなりいいものだったのだ。

 あと、色々眼福だったり役得があるし……。

「モチベーションが上がらんな。さっさとクリアしないと」

『モチベーションが上がらないとは、彼女たちがいないためですか』

 おや?
 いきなりヘルプ機能が起動した。
 しかも俺に質問をしてくるぞ。

 発動する罠をホイホイかいくぐって進みつつ、俺は首を傾げる。

「俺からは何も聞いてないと思うけど。っていうか、今はヘルプ機能が質問してきているのか」

『モチベーションが上がらないとは、彼女たちがいないためですか』

「おう、多分そうだな。ずっと孤独だった時は気にもしてなかったが、ああやって人肌的ぬくもりを知ると、そっちに戻りたくなる。俺は凡人だからな。人情ってのが捨てられないのよ」

『人肌、ぬくもり。当機能には存在しないものです』

「そうだな。というかついに会話できるようになったか……。これでヘルプ機能にボディがあれば、仲間みたいなもんなのにな……。そうか!」

 俺の脳内に電流が走る──!!

「ヘルプ機能。ボディを用意して、それに宿って旅に同行することは可能か?」

『当機能の端末をご用意いただければ可能です』

「今までなんでそれを教えてくれなかったの」

『聞かれませんでしたので』

 そうだった。
 ヘルプ機能は、キーワード検索をしないと機能しないんだった。
 だが、突如生えてきたおしゃべり機能。

 そう言えば、前々からファジーな質問に答えてくれるようになっていたと思っていたんだ。

 罠として起動した魔導ガンの斉射を物陰でやり過ごしながら、うんうん頷く。

「それは例えば、ボディの大きさに制限はある?」

『当機能を同行させるためには、小さいサイズである事が望ましいでしょう』

「小さい感じかあ。人間サイズとかはだめ?」

『必要に応じ、周囲の魔力を集積して作成する事が可能です。好みの外見を登録して下さい』

「あっ、虚空にキャラクリエイト画面が!! よし、じゃあ清楚系黒髪ロングで制服。生徒会長タイプだな。プロポーションは細身だけど、まあ出るところは出てる感じで……ルミイとカオルンの間」

『登録完了です。当機能の設定に適切な端末が、迷宮内迎撃ユニットのコアとなっています』

「よし、取りに行こうか」

 俺のモチベーションがむくむくと大きくなる。
 やるぞやるぞ。
 ヘルプ機能が仲間となって、常にいるようになるのだ。

「チュートリアル。今回はクリアじゃなくて、突破しての最深部突入だからな」

 くるり方向転換だ。
 マップを見ながら、目的地まで矢印を引く。
 それぞれに配置された、機械仕掛けの罠をチェックする。

 で、実際に赴いて体験してみるのだ。
 ふむふむ、ほうほう。

 どれもこれも単純な罠だ。
 ゲームみたいな複雑に組まれた罠なんか、普通はないからなあ。

 俺はヘルプ機能を活かしつつ、それぞれの罠を無効化しながら突き進む。
 機械仕掛けである以上、迷宮内のどこかに配線などがつながっているのだ。

 ゲイルハンマーで壁面をぶっ壊し、そこから配線をいじって罠を止める。
 あるいは、罠と罠を誤作動させて相殺させ、双方を破壊する。

「いやあ、多少手間は掛かるが、そう難しくはないな」

『試行回数を苦とも思わない精神性のためです』

「俺のことまで分かるのね。……あ。そう言えばヘルプ機能は俺のことをなんて呼ぶの」

『設定をどうぞ』

 一瞬考えた。

「じゃ、マスターで。ロボメイドみたい」

『了解しました、マスター』

 サクサク突き進み、ついに最深部に到着した。
 一時間半も掛かってしまった。

 罠一つあたり、五分くらいで無力化したのに。

「いやあ、疲れた。さっさと戻って風呂と飯を済ませて寝たい。それで、あれがコアか」

『そうです、マスター』

 マスターっていい響きだなあ。
 今は音声ではなく、文字で空中に浮かび上がっているけれど。

 ヘルプ機能はどんな声なんだろうな。

 ルミイの声は甘い感じで、ところどころ低い声も出せる系。
 カオルンはコロコロした声だな。変身すると割りと声色も変わる。

 生徒会長系の外見にしたから、ここは低めでセクシーな声がいいだろうか……。
 うーん、悩ましい。

 俺はニヤニヤしながら、迷宮最深部に到着した。

『侵入者、侵入者。ただちに迎撃を』

 周囲が赤く点滅する。
 侵入者を迎撃する、最終防衛システムが立ち上がろうとしているのだ。
 だが、既に遅い。

「残念だったな。その配線は入ってくる前にぶっ壊した。スタンドアローンなんだろうが、一箇所外と繋がってただろ。そこから線を辿って必要なのをを引っ張り出し、切っておいた。ほら、何も動かないだろ」

『機能が停止させられています。エラー、エラー』

 コアがなんか叫んでいる。
 こいつ、もともとは単独で魔力電池を用いて稼働し続けていたようなのだ。
 だが、長い年月を過ごす中でついに魔力電池が底をつき、周囲の迷宮に線を伸ばしてそこから魔力を拝借するようになった。

 俺はこいつを利用したわけだ。
 ヘルプ機能で一発だった。

 俺は悠然とコアに近づき、その中央に据えられたクリスタルみたいなのをぶっこ抜いた。

 途端に、赤い点滅が消え、警戒音声もなくなる。

「これでいい?」

『十分です。当機能の端末を、ディーヴァクリスタルへ移植します。しばらく持ったまま立っていてください』

「えーっ、立ちっぱなしかよ!」

 何もしないで立ってるだけというこの作業が、案外ハードだったりするのだった。
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