召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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シクスゼクス帝国編

第67話 帝国侵入と最初の村

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 シクスゼクス帝国にスパッと侵入した。
 他の国のように、何かイベントがあるわけでもない。

 考えてみればそうか。
 一つの国に入るのに、わざわざ見張りがいる方がおかしい。
 国境線は広いのだ。

「そうですね。フィフスエレ帝国の場合は、森に囲まれているという環境だからこそ迷いの森の魔法を使っています。あれは付与魔法です。スリッピー帝国の場合は、ワンザブロー帝国崩壊のタイミングでしたから仕方ありません」

 アカネルが解説をしてくれる。
 これを、ルミイとカオルンがポカーンとして聞いているのだ。

「ほえー、仲間になって間もないのに、アカネルは色々知ってますねえ! 偉いですー」

「むむっ、当機能、後部座席からわざわざ頭を撫でに来るのはいかがなものかと思いますが、続けてくださって構いません」

 アカネルが褒められて気分良くなっている。
 人間型端末に入ってると、ヘルプ機能も人間的になるんだなあ。

「なんで知ってるのだ? 不思議なのだー」

「それはなカオルン。話したとおり、彼女がヘルプ機能なんだ。ずーっと俺たちと一緒に旅をしていたんだぞ

「あの何も無いところに文字が出てくるやつなのだ? それは前も聞いたけど、まだ納得出来ないのだ! 文字が人になったのだ! 不思議なのだー」

「俺もそれは思う」

 ルミイはアカネルとお話をしたいというので、助手席へ移動する。
 カオルンは後部座席に移動だぞ。

 助手席の背もたれが倒れて、移動できるようになる構造なのだ。
 魔導バギーは実に便利である。

「そもそも、なんでマナビが迷宮に落っこちたらアカネルがくっついてやってくるのだ? そこのところが何回説明されても分からないのだ」

「つまりな、俺もカオルンやルミイと一緒に旅をしてたから、迷宮に落っこちた時一人だとちょっと寂しいなーと思うようになったわけだ。そうしたらほら、ヘルプ機能に肉体を与えたら女の子になるっていうじゃないか。だから受肉させたんだよ」

「話が飛躍したのだ! 全然意味がわからないのだ!」

 おかしいなあ。
 カオルンはこう見えて、バトル以外は極めて常識的だからな。
 各国にスパイとして入り込むため、一般常識的なものをきちんと学んだらしい。

 それに対して、これはこういうもの、と先入観なく受け入れるのがルミイだ。
 彼女の場合、身の危険がなければ何でもありのままに受け入れる。

 ほら、アカネルとキャッキャと談笑している。
 背もたれが邪魔して姿は見えないが、女子たちが楽しげに会話している音だけでも寿命が伸びますなあ。

「マナビ! ニヤニヤしてないでカオルンに説明するのだー! どういうふうにアカネルは肉体を得たのだー!」

「おっ、知的好奇心!」

 そんなお喋りに花を咲かせつつ、毒沼と毒草と腐った大地の中を突き進む魔導バギーなのだ。
 途中で魔獣っぽいのが出てきたかと思ったが。

「話の邪魔なのだ!」

 ちょっと飛び出したカオルンが、光の翼で魔獣の群れみたいなのを薙ぎ払って全滅させた。
 そうして、魔導バギーよりも速く走って戻ってくる。

 強い。
 普通の相手なら、カオルンがいれば安心だな。

「カオルンはそんなに強いのに、どうして俺たちについて来てるんだ?」

「それはなのだなー。カオルンは退屈なのだ。力も魔力もあるのだ。だけど、カオルンは目的がないのだ。ワンザブロー帝国もなくなったし、ストライアスもいなくなったから、やることをくれる人も消えたのだ。だけどマナビと一緒にいるとどんどんやることが向こうからやって来るのだ! これは凄いことなのだ! カオルンは毎日が楽しいのだー」

「おお、ついてくること自体が目的だったのか!」

 楽しんでもらえているようなら何よりだ。
 俺はどうも、ヤバいのを引き当てる才能みたいなのがあるらしく、行く場所行く場所でイベントが起きる。

 きっと彼女を退屈させることはないだろう。
 ルミイ的には何も起きないのが理想なのだろうが。

 おっと、毒々しい荒野も、だんだん薄暗くなってきた。
 日が暮れようとしているのだ。
 どこかで野営をしなければな……。

 そう思っていたら、集落みたいなのを見つけた。
 荒野にぽつんと存在している。

 魔法文明時代だというのに、木造で、枯れ木を組み合わせたみたいなみすぼらしく、そして禍々しいデザインの家々が立ち並んでいた。

「よし、あそこで夜を明かそう。泊めてもらおうぜ」

 俺が提案したら、ルミイが震え上がった。

「あひー! 明らかに良くないことがありそうな村ですよあれ! やめましょうよう!」

「だが野宿も何が起きるか分からないしなあ」

「それはそうですけどー」

「ヘルプ機能で調べましょうか」

「ルミイの精神衛生のためにそうしようか」

 そうすることになった。

『コダルコダールの村。ライカンスロープという獣化する魔族と同化した者たちの村です。昼は理性を保ち、夜になると誰もが獣人となって理性を失います。シクスゼクス帝国では比較的安全な場所の一つです』

「どこが安全なんですかー!」

「いいじゃんいいじゃん。ヘルプが安全って言うから泊めてもらおうぜ! ごめんくださーい!!」

 車を門の前につけて、俺が声を張り上げると……。
 枯れ木を組み合わせて作られた歪な門は、ガサガサと音を立てながらゆっくり開いていくのだった。
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