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セブンセンス法国編
第107話 同行・説明・ノリノリ邪神
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アンデッドたちと道行く途中、色々な説明を受けた。
レッサーヴァンパイアの人は、ドミニクという高位の司祭だ。
五十年くらい前にヴァンパイアになったそうで、このままコツコツあと五十年司祭として勤め上げると、晴れてエルダーヴァンパイアになれるのだとか。
「エルダーヴァンパイアになれたものは、歴史上五人しかおりません。栄誉ですね。ですが最後のエルダーヴァンパイアも、アクシス教団との抗争の中、我々を逃がすための盾となり滅ぼされました」
「なんて人間性に満ちたヴァンパイアなんだ」
「我々ルサルカ教団は、死を重んじるのが教義。だからこそ、命あるものを大事にします。命が繋がれなければ、死もやがてなくなってしまいますから」
「なるほど、確かに。じゃあ復活の魔法とか最悪だろ」
「許しがたい神への冒涜ですね」
ドミニク司祭はプンプン怒っている。
これには、ナルカも真顔で頷く。
「そうだそうだ。あたいらは、その復活の奇跡を使うなって言ってるんだ。死んでも復活できるんじゃ、なんのための死なんだい? 死は苦しくて、だからこそ尊い一度きりのものなんだ。なのに生き返ったらまた苦しんで死ぬことになる」
「うむ。なげかわしいことです。故に私はヴァンパイアとなり、己の死を捨てることで皆の死を守るための使徒となったのです。アクシス教団は死徒、などと揶揄しますが」
「宗教的な解釈の違いは根深いなー」
ふかーい話を聞きながら、ルサルカ教団の本部へ案内された。
無数のアンデッドが周囲を守っている。
ルサルカ教団の信者たちの亡骸である。
彼らの大多数は、死んだ後に自分の体を教団を守るために役立ててほしいと願うらしい。
おお、向こうではスケルトンと子供が遊んでいるではないか。
その向こうでは、ゾンビが畑仕事を手伝っている。
ここでは、人々の暮らしとアンデッドが調和しているのだ。
「これこれ、もう遅い時間です。子供たちは家に帰りなさい。健全な眠りを得なければ、健全な成長はできませんよ。生を謳歌してこそ、死が輝くのです」
「はあーい! あっ、しさいさま、おきゃくさんつれてきた! みんなー! おきゃくさんきたー!」
子供が本部の中に走っていった。
そこは、アンデッドの格納庫である墳墓と、古くなったアンデッドを肥料にする畑がある場所だった。
塀みたいなものは無く、大変開放的だ。
町があって、多くの人間の姿がある。
そしてその中央に、巨大な建造物があった。
平屋だ。
だが広くて、柱が何本も立ち並び、巨大な天蓋を支えている。
「ここが神殿です。神はこの神殿の先、入江の底におわします」
「海だったのか」
海と死の女神ルサルカ。
彼女はここで、信者たちとともに暮らしているわけだ。
夜だというのに、神殿の回りは賑わっている。アンデッドを従える教団だから、夜こそが賑わいの本番なのかもしれない。
俺たちは神殿奥へ案内された。
バギーはなんと駐車場みたいなところがあり、そこに停められた。
本来は荷馬車を停めておくところなんだと。
「思ったよりも全然発展してますね! そう言えばここ、魔法帝国の一つなんでした」
「だなー。凍土の王国に見慣れると、この国が恐ろしく文明的なんでびっくりするよな」
「うちの国、魔法は精霊魔法しかないですからねー」
ルミイとぺちゃくちゃやりつつ、奥の部屋へ。
祈りの間である。
ドミニク司祭はルサルカに祈りを捧げた後、こちらに振り返った。
「皆様に頼みたいことがあります。異教の神からは、ルサルカ様と同じ海の気配がします。相争う神で無いのならば、力をお貸し願いたい」
「ほうほう。だそうだぞ、オクタゴン」
『ほう』
オクタゴンの反応があった。
こいつはフットワークが軽い邪神なので、スッとペンダントから分身を出してくる。
「あっ!! か、神の分身がすぐ出てきた!!」
「凄いプレッシャー……!! 気圧されそうだよ……!!」
ドミニクが膝を突き、ナルカは青ざめながら後退りした。
オクタゴンを前に立っていられるだけ、ナルカという女はハートが強いな。
『話を聞いてやらんでもない。俺様に話すがいい。で、ルサルカ神は出て来ないのか? えっ、普通神様はフランクに出て来ない? 水の底でずっと眠ってる? そうかー』
「オクタゴン、あからさまにガッカリしたな」
『いや、ちょっとガクッと来たが、よく考えたらアタックできる女神の間近にいるんだ。俺様にはチャンスがあると言えよう。諦めはしないぞ』
「いいぞ、その意気だ」
「か……神とフランクに会話してる……」
ドミニクがクラクラしている。
ちなみにオクタゴンは、プレッシャーをぐっと抑え込んでいる。
だからカオルンも平気な顔をして立っているのだ。
ルミイはどうやら相当図太いらしく、実はオクタゴンのプレッシャーは相当量まで耐えられるらしい。
アカネルは俺と精神の奥底がリンクしてるので、問題ないということが最近分かった。
ちなみにドミニクはアンデッドで、人よりも神性に近い存在。
プレッシャーの影響をめちゃくちゃ受ける。
ナルカが割りと平気でドミニクがふらふらなのはそういう理由だろう。
「司祭様が使い物にならなくなっちまったよ。仕方ないね……。あたいがあんたたちに話をするよ。まあ座りな」
ナルカが指先で示すと、スケルトンたちが椅子を持ってきた。
こりゃあご丁寧にどうも。
腰掛ける。
ナルカはローブを脱ぎ捨て、椅子に座った。
むむっ、ローブの下はレザーのボディスーツか。
拘束具みたいなデザインで、体のラインがあらわになっている。
ボン・キュッ・ボンという素晴らしいラインだ。
ルミイの次くらいに胸が大きくてお尻は多分一番大きいだろう。
ブラボー!!
俺が静かにテンション爆上げしていると、ナルカがぷっくりした唇を尖らせた。
「なに、人の体をジロジロ見てるんだい! この状況でいやらしいことを考えられるとか、とんでもなく肝の座った男だねえ……」
『この男の胆力は、世界最強だろうな。俺様が保証する』
オクタゴンが笑いながら、俺の肩をポンポンした。
『で、だ。内戦が続いていると俺様は聞いた。激しくなっているな? むしろ、内戦をキッカケにこれまであった、神々の間の主義主張がぶつかり合っていよう』
「そ、その通りです」
姉御肌なナルカも、神を前にするとしおらしくなる。
『ルサルカ教団以外は、復活の魔法を使うだろう?』
「はい、使います」
『ルサルカ教団VS他全ての教団のような状況になっているのではないか?』
「どうしてそれが……!」
『人間、なんとなく自分の感性で理解できない、邪悪っぽいものを悪者扱いしてしまうものだ。俺様は詳しいんだ』
「俺が喋らなくてもオクタゴンが全部やってくれるから便利だな」
『俺様、今、モチベーションが凄く高いからな』
ノリノリの邪神なのであった。
レッサーヴァンパイアの人は、ドミニクという高位の司祭だ。
五十年くらい前にヴァンパイアになったそうで、このままコツコツあと五十年司祭として勤め上げると、晴れてエルダーヴァンパイアになれるのだとか。
「エルダーヴァンパイアになれたものは、歴史上五人しかおりません。栄誉ですね。ですが最後のエルダーヴァンパイアも、アクシス教団との抗争の中、我々を逃がすための盾となり滅ぼされました」
「なんて人間性に満ちたヴァンパイアなんだ」
「我々ルサルカ教団は、死を重んじるのが教義。だからこそ、命あるものを大事にします。命が繋がれなければ、死もやがてなくなってしまいますから」
「なるほど、確かに。じゃあ復活の魔法とか最悪だろ」
「許しがたい神への冒涜ですね」
ドミニク司祭はプンプン怒っている。
これには、ナルカも真顔で頷く。
「そうだそうだ。あたいらは、その復活の奇跡を使うなって言ってるんだ。死んでも復活できるんじゃ、なんのための死なんだい? 死は苦しくて、だからこそ尊い一度きりのものなんだ。なのに生き返ったらまた苦しんで死ぬことになる」
「うむ。なげかわしいことです。故に私はヴァンパイアとなり、己の死を捨てることで皆の死を守るための使徒となったのです。アクシス教団は死徒、などと揶揄しますが」
「宗教的な解釈の違いは根深いなー」
ふかーい話を聞きながら、ルサルカ教団の本部へ案内された。
無数のアンデッドが周囲を守っている。
ルサルカ教団の信者たちの亡骸である。
彼らの大多数は、死んだ後に自分の体を教団を守るために役立ててほしいと願うらしい。
おお、向こうではスケルトンと子供が遊んでいるではないか。
その向こうでは、ゾンビが畑仕事を手伝っている。
ここでは、人々の暮らしとアンデッドが調和しているのだ。
「これこれ、もう遅い時間です。子供たちは家に帰りなさい。健全な眠りを得なければ、健全な成長はできませんよ。生を謳歌してこそ、死が輝くのです」
「はあーい! あっ、しさいさま、おきゃくさんつれてきた! みんなー! おきゃくさんきたー!」
子供が本部の中に走っていった。
そこは、アンデッドの格納庫である墳墓と、古くなったアンデッドを肥料にする畑がある場所だった。
塀みたいなものは無く、大変開放的だ。
町があって、多くの人間の姿がある。
そしてその中央に、巨大な建造物があった。
平屋だ。
だが広くて、柱が何本も立ち並び、巨大な天蓋を支えている。
「ここが神殿です。神はこの神殿の先、入江の底におわします」
「海だったのか」
海と死の女神ルサルカ。
彼女はここで、信者たちとともに暮らしているわけだ。
夜だというのに、神殿の回りは賑わっている。アンデッドを従える教団だから、夜こそが賑わいの本番なのかもしれない。
俺たちは神殿奥へ案内された。
バギーはなんと駐車場みたいなところがあり、そこに停められた。
本来は荷馬車を停めておくところなんだと。
「思ったよりも全然発展してますね! そう言えばここ、魔法帝国の一つなんでした」
「だなー。凍土の王国に見慣れると、この国が恐ろしく文明的なんでびっくりするよな」
「うちの国、魔法は精霊魔法しかないですからねー」
ルミイとぺちゃくちゃやりつつ、奥の部屋へ。
祈りの間である。
ドミニク司祭はルサルカに祈りを捧げた後、こちらに振り返った。
「皆様に頼みたいことがあります。異教の神からは、ルサルカ様と同じ海の気配がします。相争う神で無いのならば、力をお貸し願いたい」
「ほうほう。だそうだぞ、オクタゴン」
『ほう』
オクタゴンの反応があった。
こいつはフットワークが軽い邪神なので、スッとペンダントから分身を出してくる。
「あっ!! か、神の分身がすぐ出てきた!!」
「凄いプレッシャー……!! 気圧されそうだよ……!!」
ドミニクが膝を突き、ナルカは青ざめながら後退りした。
オクタゴンを前に立っていられるだけ、ナルカという女はハートが強いな。
『話を聞いてやらんでもない。俺様に話すがいい。で、ルサルカ神は出て来ないのか? えっ、普通神様はフランクに出て来ない? 水の底でずっと眠ってる? そうかー』
「オクタゴン、あからさまにガッカリしたな」
『いや、ちょっとガクッと来たが、よく考えたらアタックできる女神の間近にいるんだ。俺様にはチャンスがあると言えよう。諦めはしないぞ』
「いいぞ、その意気だ」
「か……神とフランクに会話してる……」
ドミニクがクラクラしている。
ちなみにオクタゴンは、プレッシャーをぐっと抑え込んでいる。
だからカオルンも平気な顔をして立っているのだ。
ルミイはどうやら相当図太いらしく、実はオクタゴンのプレッシャーは相当量まで耐えられるらしい。
アカネルは俺と精神の奥底がリンクしてるので、問題ないということが最近分かった。
ちなみにドミニクはアンデッドで、人よりも神性に近い存在。
プレッシャーの影響をめちゃくちゃ受ける。
ナルカが割りと平気でドミニクがふらふらなのはそういう理由だろう。
「司祭様が使い物にならなくなっちまったよ。仕方ないね……。あたいがあんたたちに話をするよ。まあ座りな」
ナルカが指先で示すと、スケルトンたちが椅子を持ってきた。
こりゃあご丁寧にどうも。
腰掛ける。
ナルカはローブを脱ぎ捨て、椅子に座った。
むむっ、ローブの下はレザーのボディスーツか。
拘束具みたいなデザインで、体のラインがあらわになっている。
ボン・キュッ・ボンという素晴らしいラインだ。
ルミイの次くらいに胸が大きくてお尻は多分一番大きいだろう。
ブラボー!!
俺が静かにテンション爆上げしていると、ナルカがぷっくりした唇を尖らせた。
「なに、人の体をジロジロ見てるんだい! この状況でいやらしいことを考えられるとか、とんでもなく肝の座った男だねえ……」
『この男の胆力は、世界最強だろうな。俺様が保証する』
オクタゴンが笑いながら、俺の肩をポンポンした。
『で、だ。内戦が続いていると俺様は聞いた。激しくなっているな? むしろ、内戦をキッカケにこれまであった、神々の間の主義主張がぶつかり合っていよう』
「そ、その通りです」
姉御肌なナルカも、神を前にするとしおらしくなる。
『ルサルカ教団以外は、復活の魔法を使うだろう?』
「はい、使います」
『ルサルカ教団VS他全ての教団のような状況になっているのではないか?』
「どうしてそれが……!」
『人間、なんとなく自分の感性で理解できない、邪悪っぽいものを悪者扱いしてしまうものだ。俺様は詳しいんだ』
「俺が喋らなくてもオクタゴンが全部やってくれるから便利だな」
『俺様、今、モチベーションが凄く高いからな』
ノリノリの邪神なのであった。
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