召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
118 / 196
セブンセンス法国編

第118話 遭遇・舐められ・ピタなんとかスイッチ

しおりを挟む
 昨日は大変なことになるところだったが、ずんずんと入ってきたガガンがナルカの裸を見てハッとし、「いかんいかん俺は新しい嫁を見つけるまではこんなふしだらな感情は……」なんて大声で叫んだので、流石に俺も冷静になったのだった。
 なお、ナルカは年頃の男子の前で裸だと相当まずいらしいということを学習したようである。

「文化ってのが違うんだねえ……。あたいらルサルカ教団は死体が相手だろ? 服は汚れちまうし、裸で作業してさっさと洗っちゃうんだよね」

 翌日そんなことを聞いたぞ。
 ルサルカ教団のあるところは海が近いから、そう言うことが可能なのだ。
 海の女神でもあるので、水を真水に変えたりする神聖魔法も使えるのだとか。

「なので、どんな水でも水さえあれば、水浴びができるよ? え? お風呂? なんだいそれは?」

 ルサルカ教団にはお風呂の文化が無かったようである。

「慈愛神の歓楽街にあるらしいから、今度一緒に行こうじゃないか」

「そうなのかい? それは楽しみだねえ!」

「ピピーッ! マスター! イエローカードです!! まずは当機能とお風呂と一晩を試してから……」

「アカネルがもりもり来る!! やばい、オクタゴン、そろそろルミイたちをこっちに呼んでいいんじゃないか? このままでは今晩辺りアカネルに貞操を奪われる」

『俺様としては別にそれでいいじゃないかという気がするが、まあよかろう。戦神の領域にある俺様の神殿まで行こう。そこにゲートを開く』

 そういうことになった。
 すると、戦神側ではたくさんの信者たちが現れ、俺たちを迎え撃つ態勢である。

 これは、戦神が信者を動員したな?

「ここから先には通さん!!」

「お前が設置した神殿は、今戦神教団最強の戦士たちが排除を開始している!!」

「なに、それは困る。このストラテジー、放置してると占領したポイントを奪還してくるのかあ。即席アビサルワンズだと戦力的にちょっと弱いかな」

 戦神信者たちを前に、俺は考えた。

「やはり、ここで戦神の影響力を落としておくしかないな。よし、この場の信者たちを一掃するぞ」

 俺の宣言に、戦神の信者たちはフン、と鼻で笑った。

「口先ばかりの男か!」

「鍛え抜かれた筋肉もない、武器も持っていない、魔法はどうやら使えない世の中になったらしいじゃないか」

「一掃など、やれるものならやってみろ!」

 やってみろと来たか。
 いやあ、お招きいただいてしまったらやるしかないなあ。

「おいマナビ、オレもやるぞ」

「あたいもちょっとやってやろうかね」

 ガガンが拳を打ち鳴らしながら前進。
 ナルカは、今日は変装を忘れているのでどこからどう見てもルサルカの聖女。

「あっ、なんかバーバリアンとルサルカの聖女いるじゃん」

「バカな、聞いてないぞ」

「待て待て! こっちは数が多い! 押し切れ! 他は弱そうな男と普通の女しかいないぞ!」

 舐められている!
 嬉しくなっちゃうな。

「マスターがニヤニヤしてます。やる気ですね。あの、当機能は本当に戦えないのでよろしくお願いします……!!」

「任せるのだ。二人とも、チュートリアルはいける?」

「いらん。こんな連中、オレの拳でぶっ飛ばせる!」

「いらないよ。あの能力、巻き込まれた時にゾッとしたんだよね。あそこに何度もいたら、あたいがおかしくなっちまうよ」

 そうかそうか。

「じゃあ、俺は一人でやるか。正面は全部引き受けた。右翼はガガン、左翼はナルカな。三分で終えて神殿行くぞ」

「おう!」

「任せな!」

 ということで。
 チュートリアル行って戻ってきた。

 アホほど簡単だった。

 俺はすっかり気が抜けた顔で、正面の戦神信者たちに近寄っていった。

「こ、こいつ手ぶらで!!」

「頭おかしいのか!」

 ここで、調子に乗ったやつが一人近づいてくる。
 チュートリアル通り。

「てめえ、調子乗りやがって! おら! 死ね!」

 手斧を持ったやつが俺に向かって得物を振り回した。
 ……ので、懐に入って顎をコツンとやって脳を揺らして失神させて手斧を奪って真横に向かって投げた。

「ウグワー!?」

 手斧が肩に刺さったやつが、絶叫しながら槍を放り出した。
 これをキャッチしてくるっと振り回し、三人ばかりなぎ倒した。
 槍は折れた。

 倒れた三人の得物であるショートソードが宙に舞う。
 手近なのを掴んで投げ、もう一本をキャッチして投げ、最後の一本は手にしたまま頭上にかざした。

 二本が信者二人の腹に刺さり、そいつらは血を吐きながら倒れた。
 かざした一本は、そこに振り下ろされたモールをかすめ、軌道をそらす。
 俺の横にモールが落っこちたので、そいつを振り回していた大男をショートソードでサクッと刺した。。

「ウグワーッ!?」

 大男が激痛でのけぞったら、背後まで近づいていた大剣使いが弾かれてよろけた。

「ぬおーっ!?」

 その大剣をちょいと蹴ると、持ち手が緩んでたのでポロッと落ちる。
 落ちた切っ先を踏んだら大剣が持ち上がり、握りてが大剣使いの股間に直撃した。

「ウグワーッ!!」

 ここまで十秒ほどである。
 俺は手ぶらに戻り、正面側にいた強そうなのは全滅した。

「お分かりいただけただろうか」

 両手を広げて、後ろに控えていた神聖魔法の使い手たちにアピールした。
 彼ら、ドン引きである。

「ば……化け物……!!」

「あいつが歩いただけで、みんなそこに吸い込まれていってやられた!」

「まるで最初からこうなると決まってたみたいに……!」

「わ、我らの奇跡で仕留めろ! いけいけー!!」

 衝撃の魔法が飛んできた。
 体を横にしたので全部回避したぞ。

 俺がケロッとしているので、魔法使いたちは絶望に満ちた顔になった。
 その横で、ガガンが魔法使いも戦士もまとめてぶっ飛ばしている。
 ナルカは一度投げつけたナイフで、複数の戦士を仕留めている。

 あ、死なないように手加減はしてるみたいだな。
 死を司る神の聖女なんで、そこらへんは気をつけているのか。

「今手当すればみんな助かるぞ。俺たちは戦争をしにきたわけじゃない。ちょっとここを通りたいだけなんだ」

 俺が優しく囁くと、魔法使いたちはへなへなとくずおれた。
 ということで、通過だ通過。

「マスター、戦わずして心を折りましたね。チュートリアルの扱いがさらに巧みになってませんか?」

「いやあ、ただの人間相手だと弱い者いじめになっちゃうからな……。ほんと手加減してあげないと」

 戦神の領域に戻り、神殿へ急ぐのである。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...