召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
147 / 196
フィフスエレ帝国跡編

第147話 帝都と魔獣と儀式前

しおりを挟む
 やってきました、フィフスエレ帝都!
 ここで、俺はルインマスターを別の世界に吹っ飛ばすつもりである。
 そのために、フィフスエレの元魔法使いたちを連れてきたのだ。

『もがーっ!!』

 襲いかかってくる魔獣たち!
 虎みたいなのや狼みたいなのや、鳥みたいなのや猿みたいなの。

 これを、双子率いるバーバリアン・エルフ・アビサルワンズ連合軍と、フィフスエレ側についた魔獣たちが迎撃する。
 もうね。
 圧倒的ですわ。

 裏切った魔獣たちが次々に撃滅されていく。
 普通の魔獣では相手にもならない。

 俺がのんびり眺めていると、双子が背中合わせに魔獣の群れに飛び込み、斧を振り回し、魔法でサポート、今度は魔法を使ってた側が槍を回転させて、そこを魔法でサポート、あるいはダブルで魔法、ダブルで攻撃、と変幻自在である。
 双子は一瞬たりとも止まらない。
 相手に合わせて一瞬で攻め手を変えて、攻め続ける。

 魔獣の群れがバカみたいな速さですり減っていった。

「あれは確かに強いなー。俺が今まで見てきた中で三番目に強い」

「そうでしょー。マナビさんが見て三番目っていうことは凄いんですねえ」

「おう、凄いぞ。上にはコンボの達人と真・カオルンしかいないからな」

 オクタゴンの場合、戦うステージがそもそも違うので比較できない。
 と、ここで俺はチュートリアル。
 そして戻ってきた。

『もがーっ!!』

 横から飛びかかってきた、全身から結晶をはやした狼型魔獣。
 だが、もうそこには俺のネクタイブレードが用意されているぞ。

 俺がしゃがみながらちょっと移動したら、魔獣は自分の勢いで二枚おろしになって死んだ。

「でな、双子のあの強さでもちょっと怯ませるのが限界だったルインマスターがどれだけヤバいかと言うと」

「マナビさん、ちょっと落とし物を拾うくらいの動作で魔獣を片しましたねー」

「どこに来るか分かってるんだから全然怖くないだろ。そしたらもう作業だよ作業。ま、俺が作業にならないレベルの相手が出てきたら、世界の危機だ。つまりな、ルインマスターは世界の危機ってわけだ。それくらいヤバい」

 帝都に巣食っていた魔獣は、ザッと片付けた。
 俺たちのことを、本当にヤバい集団だと理解した賢い魔獣だけが生き残り、そのうちでさらに賢い連中が恭順を申し出てきた。
 人間を舐めて襲いかかってくるおバカさんは全滅したよ。

「警戒すべきは、黒竜の眷属だけだね」

「あいつらは本当に強い。父さんがタイマンして勝てるくらいの強さだ」

 双子がそう評価するということは、黒竜の眷属は通常の魔獣とはステージが違う強さということであろう。
 バルクが取っ組み合いして首を折るくらいの強さ……。

「じゃあ、そこはカオルンに任せれば勝てるだろ」

「任せるのだー!!」

 元気いっぱい、カオルンが空に舞い上がる。
 腕組みして、警戒を始める姿が頼もしい。
 あっ、空中から俺に投げキッスしてきた! 可愛い!

 俺がニッコニコになってカオルンに手を振っていると、ナルカに小突かれた。

「何してるんだい! あんたが指示を出さなくちゃ始まらないだろう? 魔獣……それも、世界を滅ぼしかねないような特大の大魔獣を別世界へ吹き飛ばす方法なんか、誰も知らないんだよ?」

「おう、よくフィフスエレはあのドラゴンを召喚できたもんだよな。命がけでやったでしょ。アカネル、そこら辺の解析」

「はい、マスター。フィフスエレ皇帝が己の存在を触媒にして召喚しています。歴代皇帝が残した魔法結晶も全て使われたようです。そして出がらしになった皇帝はパクっとモヤシのように食べられました」

「そこまでしてあれか。凍土の王国が嫌いだったのかあ。連中の侵入を止めるためとしてはオーバースペック過ぎるわけだが」

「そうですね。ヘルプ機能によると、フィフスエレが過去に蓄積した全ての魔力と、未来において国家を維持するための可能性全てを触媒に……いえ、ルインマスターによって食い尽くされていますね」

「わはは、絶対にあかんやつだ」

 笑ってしまった。
 呼んではいけない存在を呼び込んでしまった。
 それで、フィフスエレという国家の可能性は全て、そいつに持っていかれてしまったわけだ。

 こりゃあ、フィフスエレは完全に終わりだ。

「詳しいことは全部わかった。じゃあ、送還の儀式を指示しまーす」

 俺は声を張り上げて、フィフスエレの人々を集めた。

『コトマエ・マナビ。だが我々はすでに魔力を持っていない。そんな我々がどうして必要なのだ?』

「いい質問だ、フィフス・シー。この儀式、フィフスエレの住民が行うという、縁を用いて逆回しでやってあのドラゴンを元の場所に送り返す」

「そ、そのー。さっきの話を伺っていると、ドラゴン召喚のためにフィフスエレは魔力や未来や、何もかもを差し出したそうですけど……。それが、出がらしになっちゃった私たちでやれるものなんですか……?」

 ピコルがメガネをクイクイしながら聞いてくる。
 これもいい質問である。

「万全なドラゴンなら無理だろ。だが、今のあいつはコンボの達人がめちゃくちゃに削ってくれてる。いけるぞ」

「コンボの達人……!? そんな、個人の力であの災厄そのものみたいな存在にどうやって……」

「どんな災厄だろうが、タイマンに持ち込んで絶対にいい勝負する能力を持ってるやつなんだよ。あいつがタイマンできない存在は世界に存在しないぞ」

 存在自体が裏技みたいな男だ。
 そりゃあ、あいつから見たら自分以外のほとんどの奴らは弱いし、伸びしろが無いように見えることだろう。

「アカネル、コンボの達人どう?」

「嬉しそうですね……。理解できません」

 全力で戦えるのが楽しくて仕方ないんだろう。
 今は、ルインマスターとにらみ合いの状態で小休止中らしい。

「さっき、全方位を滅ぼし尽くすレーザーブレスを前転して回避してましたよ。なんなんですかあの人……」

「ゲームにな、前転中は無敵で回避できる技があるんだよ」

 アカネルは全然理解できない顔をしている。
 そうだろうそうだろう。

 こうして、集めた人々を上手いこと配置し、儀式の準備はよし。

「コンボの達人、ゲージ溜まってる?」

「マスターの言葉の意味がよくわかりませんが、ヘルプ機能からはゲージ三本全てが溜まっていると返答が来ています」

「よし。じゃあ、あいつ、間違いなく最高のタイミングで超必殺技叩き込むだろうから、その瞬間に儀式を発動する。みんな、今は一休み! コンボの達人が動き出したらこっちで指示するから、そしたら儀式本番な! あ、もう立ったままでこっちが指示するこの呪文ね。これを唱えて。はい、空中に呪文浮かべておくから」

 ヘルプ機能を用いて、カンニングペーパー的な儀式の呪文を掲示しておく。

「じゃあ飯にしまーす! 今のうちにトイレも済ませといて!」

 俺の指示で、みんながワイワイと動き出した。

「世界の命運を賭けた一大儀式なのに……全然緊張感がないねえ……」

 ナルカが唖然としているのだった。
 そんなもの、一大事こそ自然体でやるのがベストに決まっているだろう。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...