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終末の王編
第181話 決戦前の一夜からのちょっと違う朝
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こうして作戦前夜。
魔導王が世界に脅威をもたらしているとはとても思えないような平和な夜である。
まあ、遠くで放火が瞬いていて、戦いが続いているのが分かるんだが。
ゴーレムを生み出すコアを何度か破壊しているが、その度に魔導王がわざわざ設置するらしく、戦線は膠着状態だ。
「戦いは終わるのかねえ……」
「終わらんだろう。人間同士は争い続ける。だが、魔導王という頭おかしいやつとの戦いが終わる。今回はこっちの初動が早かったので、魔導王にまともな活動をさせてないはずだ」
魔導王が現れたのがワンザブロー帝国跡だったこと。
隣接するのが、バーバリアンに滅ぼされた後のツーブロッカー帝国だったこと。
スリッピー帝国が軍の統制をベストールに移譲したことで、魔導アーミーの動きが迅速かつ的確だったこと。
これらの理由が、魔導王の動きを封じ込めたと言えよう。
それに加えて、魔導王が自ら実力行使に出ること無く、この世界にあるものを利用して現地人を苦しめようと考えたのが幸いした。
お陰で向こうは戦力の逐次投入になり、最大の隠し玉であっただろうフリズドライもこっちがゲットしたのだ。
圧倒的ではないか、我が軍は。
戦火の灯を眺めながらうんうん頷いていたら、隣にいるナルカが首を傾げた。
すまんすまん。
思わずフラグを立ててしまっていた。
さて、本題に入ろう。
「じゃあ、始めますか」
「本当にやるのかい……!? いや、しなきゃいけないんだけど、心の準備が……いや、してきたんだけど……」
ナルカの歯切れが悪い!
さっき、交代で風呂に入って、今は互いにバスローブのみだというのに!
「緊張する気持ちも分かるのだが、こちらは経験者なのでお任せしてほしい」
「あ、ああ。あたいはこういうの全く分からないので、よろしく頼むよ……」
「ドミニク司祭、そっち方面の教育はしなかったので……?」
「ヴァンパイアになれるのは、交わった経験が無い者だけなんだよ」
「なるほど」
全てを理解した。
ここでナルカが経験してしまえば、彼女は人間としての道を生きていくことになるのである。
ドミニクとルサルカが、彼女の背中を押したということだ。
俺はその期待に応えねばなるまい。
「よし、それじゃあ行こう。部屋の中にはそんな感じの雰囲気になるお香が焚いてある……」
部屋の壁紙は淡いピンク色だし、間接照明でムーディーな雰囲気になっている。
キングサイズのベッドが部屋の中心にどーんと置かれており、近くに飲み物も用意されている。
完璧だ。
「べ、別にあたいは今日じゃなくても……。あ、でも明日は決戦だから……」
「そう。万一を考えたら、今日にしておくべきなのだ」
「ううーっ。じゃ、じゃあ。あたいは目を閉じてじっとしてるから、その間に済ませておくれよ!」
「かしこまり」
ということで。
他の三人の時と比べると、百倍くらい気を使って行為をしました!
この辺り、四人の中で一番繊細な子であった。
他の三人がちょっと変わってたんだな……。
本番に入る前のアクションで、たっぷり時間を使い、神経も使った。
なので、この俺が二回で終了……!!
精神的に疲れた。
これは大いなる学びになったなあ。
「変な気分だよ」
自分に回復魔法を掛けた後、素早くシャワーを浴びて戻ってきたナルカ。
またバスローブを纏って、なんだか難しい顔をしている。
「変ですか」
「あたいがあたいじゃなくなったみたいな……。こんな風に、深く人と触れ合ったの、子どもの頃に司祭に抱っこされてた時以来だし」
「ふむふむ」
「でも、これであたいは、ヴァンパイアにはなれなくなったんだね」
「そうなる。ルサルカ神とドミニク司祭は、ナルカに人間として生きて欲しいわけだ。で、それは成就した。責任を持って面倒を見ますぞ」
「何言ってるんだい。責任ってのはお互いが持つもんだろう? あたいだってあんたの世話を見てあげるよ」
おおっ、心強い。
「じゃあ寝るよ!」
「寝ますか」
「こんなしんどいの、何度もするものじゃないだろう? 明日だってあるんだから!」
「リアリストだなあ……」
こうして寝るのであった。
ちなみに明け方に目覚めると、ナルカが真横にぴったりくっつくみたいにして寝ていたのである。
これは大変可愛い。
ツンデレみたいなものなのかもしれない。
朝食の席で、アリスティアがナルカに早速絡んだ。
「おめでとうナルカ」
「なんにもめでたくないよ!?」
「ちょっと色っぽくなったんじゃないかな?」
「全然だよ!?」
「頼れる人に抱かれているときって、すごく安心感あるよねえ」
「そ、それは否定しないけど」
この様子を見て、ルミイ、カオルン、アカネルの三人がフームと唸るのである。
「なんかわたしたちと違う反応ですね!」
「若さを感じるのだ!」
「カオルンがそれ言うんですか? でも、これが年相応の反応というか、彼女らしいというか……」
そうだなあそうだなあ。
ちなみに俺たちの横でコンボの達人であるが、落ち着いて朝飯のサンドイッチを食っている。
それというのも……。
「ちょっとあんた! ダーリンの横はあたしが座るんだから!」
『何を言う。この男の横は我の席だ。凡人は控えよ』
「生意気! やる気!?」
『やらいでか!』
「『むきーっ!!』」
女子二人が争っているのである。
お陰で、達人は凪にいることになり、心穏やかに過ごせると。
なるほど、上手いところに収まったな。
達人が小声で、「頑張れ、弟子よ」とフリズドライを応援しているのだった。
魔導王が世界に脅威をもたらしているとはとても思えないような平和な夜である。
まあ、遠くで放火が瞬いていて、戦いが続いているのが分かるんだが。
ゴーレムを生み出すコアを何度か破壊しているが、その度に魔導王がわざわざ設置するらしく、戦線は膠着状態だ。
「戦いは終わるのかねえ……」
「終わらんだろう。人間同士は争い続ける。だが、魔導王という頭おかしいやつとの戦いが終わる。今回はこっちの初動が早かったので、魔導王にまともな活動をさせてないはずだ」
魔導王が現れたのがワンザブロー帝国跡だったこと。
隣接するのが、バーバリアンに滅ぼされた後のツーブロッカー帝国だったこと。
スリッピー帝国が軍の統制をベストールに移譲したことで、魔導アーミーの動きが迅速かつ的確だったこと。
これらの理由が、魔導王の動きを封じ込めたと言えよう。
それに加えて、魔導王が自ら実力行使に出ること無く、この世界にあるものを利用して現地人を苦しめようと考えたのが幸いした。
お陰で向こうは戦力の逐次投入になり、最大の隠し玉であっただろうフリズドライもこっちがゲットしたのだ。
圧倒的ではないか、我が軍は。
戦火の灯を眺めながらうんうん頷いていたら、隣にいるナルカが首を傾げた。
すまんすまん。
思わずフラグを立ててしまっていた。
さて、本題に入ろう。
「じゃあ、始めますか」
「本当にやるのかい……!? いや、しなきゃいけないんだけど、心の準備が……いや、してきたんだけど……」
ナルカの歯切れが悪い!
さっき、交代で風呂に入って、今は互いにバスローブのみだというのに!
「緊張する気持ちも分かるのだが、こちらは経験者なのでお任せしてほしい」
「あ、ああ。あたいはこういうの全く分からないので、よろしく頼むよ……」
「ドミニク司祭、そっち方面の教育はしなかったので……?」
「ヴァンパイアになれるのは、交わった経験が無い者だけなんだよ」
「なるほど」
全てを理解した。
ここでナルカが経験してしまえば、彼女は人間としての道を生きていくことになるのである。
ドミニクとルサルカが、彼女の背中を押したということだ。
俺はその期待に応えねばなるまい。
「よし、それじゃあ行こう。部屋の中にはそんな感じの雰囲気になるお香が焚いてある……」
部屋の壁紙は淡いピンク色だし、間接照明でムーディーな雰囲気になっている。
キングサイズのベッドが部屋の中心にどーんと置かれており、近くに飲み物も用意されている。
完璧だ。
「べ、別にあたいは今日じゃなくても……。あ、でも明日は決戦だから……」
「そう。万一を考えたら、今日にしておくべきなのだ」
「ううーっ。じゃ、じゃあ。あたいは目を閉じてじっとしてるから、その間に済ませておくれよ!」
「かしこまり」
ということで。
他の三人の時と比べると、百倍くらい気を使って行為をしました!
この辺り、四人の中で一番繊細な子であった。
他の三人がちょっと変わってたんだな……。
本番に入る前のアクションで、たっぷり時間を使い、神経も使った。
なので、この俺が二回で終了……!!
精神的に疲れた。
これは大いなる学びになったなあ。
「変な気分だよ」
自分に回復魔法を掛けた後、素早くシャワーを浴びて戻ってきたナルカ。
またバスローブを纏って、なんだか難しい顔をしている。
「変ですか」
「あたいがあたいじゃなくなったみたいな……。こんな風に、深く人と触れ合ったの、子どもの頃に司祭に抱っこされてた時以来だし」
「ふむふむ」
「でも、これであたいは、ヴァンパイアにはなれなくなったんだね」
「そうなる。ルサルカ神とドミニク司祭は、ナルカに人間として生きて欲しいわけだ。で、それは成就した。責任を持って面倒を見ますぞ」
「何言ってるんだい。責任ってのはお互いが持つもんだろう? あたいだってあんたの世話を見てあげるよ」
おおっ、心強い。
「じゃあ寝るよ!」
「寝ますか」
「こんなしんどいの、何度もするものじゃないだろう? 明日だってあるんだから!」
「リアリストだなあ……」
こうして寝るのであった。
ちなみに明け方に目覚めると、ナルカが真横にぴったりくっつくみたいにして寝ていたのである。
これは大変可愛い。
ツンデレみたいなものなのかもしれない。
朝食の席で、アリスティアがナルカに早速絡んだ。
「おめでとうナルカ」
「なんにもめでたくないよ!?」
「ちょっと色っぽくなったんじゃないかな?」
「全然だよ!?」
「頼れる人に抱かれているときって、すごく安心感あるよねえ」
「そ、それは否定しないけど」
この様子を見て、ルミイ、カオルン、アカネルの三人がフームと唸るのである。
「なんかわたしたちと違う反応ですね!」
「若さを感じるのだ!」
「カオルンがそれ言うんですか? でも、これが年相応の反応というか、彼女らしいというか……」
そうだなあそうだなあ。
ちなみに俺たちの横でコンボの達人であるが、落ち着いて朝飯のサンドイッチを食っている。
それというのも……。
「ちょっとあんた! ダーリンの横はあたしが座るんだから!」
『何を言う。この男の横は我の席だ。凡人は控えよ』
「生意気! やる気!?」
『やらいでか!』
「『むきーっ!!』」
女子二人が争っているのである。
お陰で、達人は凪にいることになり、心穏やかに過ごせると。
なるほど、上手いところに収まったな。
達人が小声で、「頑張れ、弟子よ」とフリズドライを応援しているのだった。
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