召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
180 / 196
終末の王編

第180話 合流からの今夜!今夜!

しおりを挟む
 セブンセンス神官戦士団がやって来た。
 先頭には、見覚えのあるでかいのが……。

 うおっ!
 オーダーメイドな紅白の甲冑を身につけたガガンではないか!
 歩く重戦車という感じでなかなかかっこいい。

 そして彼の肩には、聖女アリスティアが乗っている。
 身長差が50センチくらいあるカップルだからな。
 体重差なら三倍くらいあるだろう。

 ここまで差があると肩に載せられるのか……。

 ガガンの肩から飛び降りたアリスティアは、着地ざまにどこからか槍を取り出した。
 先端にセブンセンスっぽい旗がついている。

「セブンセンス神官戦士団、魔導王討伐の助けとなるべく参上いたしました!」

 彼女の宣言の後、神官戦士団がウォーっと盛り上がる。
 こちらからも対策本部の首脳陣がやって来て、出迎える式みたいなのを開始した。

 俺はガガンに手を振る。
 ガガンも、ちょっと嬉しそうな顔をした。

「なあルミイ、なんかあいつ知的な感じになってない?」

「なんかですね、神聖魔法が使えるようになったみたいです」

「なんだって」

「至高神アクシスと蛮神バルガイヤー様が一緒だったじゃないですか。ガガンはあっちで良い働きもしましたし、信仰心も篤いので、神様が直接力を授けてくださったとか」

「あいつの鉄腕と神聖魔法が組み合わさるなら、とんでもないことじゃないか。義兄の双子に匹敵してくるぞ」

 現地人最強枠が増えてしまったな。
 彼らを迎え、宮殿の会議室はまた賑やかになったのである。

「では、オクタゴンと教授の戦いが佳境になっているっぽいので中継で見てみよう」

「そんな事が可能なのかい!?」

 ベストールが驚愕した。
 できるとも。
 会議場の中心にヘルプ機能の中継映像を展開する。

 オクタゴンが領域を展開し、無数に生まれてくる魔導機械を全て掌握したところである。
 そして魔導王によって狂わされた、遺跡中枢。
 そこから出現した最終防衛システムみたいな、ロボっぽいやつと教授が至近距離で殴り合っている。

 ビームを撃たれそうになると、教授は気配を察して砲口を殴って歪め、さらに掴んで捻じ曲げ、放たれたビームは防衛システムに叩き込まれる。
 相変わらずおかしい戦い方をしている。

 防衛システムがビームソードみたいなのを展開して殴ってくるのを、的確にマジックネクタイを巻いた拳で弾く。
 弾かれた隙に、空いている腕で高速のジャブを叩き込み、防衛システムの正面装甲に拳の跡を付けた。

 人間の戦い方ではない。

『ピガー!』

 防衛システムが一瞬エラーを起こしたらしく、攻撃が止まった。
 これを見逃す教授ではない。
 振りかぶって放たれる、強烈なストレートが、拳によって劣化させられた正面装甲を粉砕し、防衛システムの胴をぶち抜いた。

 粉々になって撒き散らされる防衛システム。
 その後、遺跡の中枢になっている光るものを、教授は掴んでねじ切った。

 勝利である。

「さすが我が恩師、人間ではない」

 ベストールがよく分からない褒め方をした。
 これを見ていた、達人とガガンとフリズドライがムムムッと唸った。

「戦いたい」「勝負したい」『強そうだな』

 戦闘狂みたいなのが三人……!!
 教授、しばらく忙しくなるぞ。

 オクタゴンみたいなタイプが相手だと、見てて意味が分からないので、俺より強いやつに会いに行くタイプの人には響かないのだろう。
 だが、教授は分かりやすい物理戦闘である。
 魔法が使えなくなった魔法使いが、純粋な物理戦闘力で魔導機械を圧倒するのはどうなんだ。

 というか、俺には教授が強い理由が全く分からん。

「マスター、あれは体を鍛えているから強いのです」

「そんな単純な理由で」

「彼は生来の覇気使いです。そこに磨き上げた頭脳を組み合わせることで、知的な戦闘を行い相手を圧倒します」

 アカネルの説明でさらに分からなくなってきた。
 こうして観戦が終わり、会議が始まった。

 議長を務めるベストール。
 言うことは率直である。

「周辺地域に存在していた、魔導王に利用可能な遺跡は全て破壊した。彼はもう搦め手を使ってこれないだろう。直接攻撃に来るはずだ。だが、待つことはしない。こちらから叩く! アカネルくん」

「はい。こちら、魔導王の居城です」

 アカネルが展開したのは、魔力の星が存在していた辺り。
 つまり、上空である。

『オクタゴンの力を借り、地上と空を繋ぐ。全軍で魔導王を倒す。これは最後の戦いだ』

 ユーリンも熱く語っているな。
 フルメンバーが揃ったのだ。
 今こそ決戦の時ということだろう。

「ではマナビ氏、君が見た現状について語ってもらいたい」

「俺か。まあヘルプ機能あるもんな。オクタゴンの領域でここと空を繋げて攻め込むのはベストな手段だろ。あとは、オクタゴンの眷属を直視しなければ問題ない。それで魔導王本人に関してだが、アカネル、図を出してくれ。魔導王の居城」

「はい。展開します」

 いきなり、魔導王の空飛ぶ城の図面が出てきた。
 詳細な図面だったので、その場にいた首脳たちが驚愕する。

「こ、これは……」

 代表して驚いているベストールに、俺は頷いた。

「これ、地図な。罠とか設備も書いてあるから、今のうちにメモしてね。魔導王相手には常識的な強さのやつがどれだけ掛かっても無駄なので、これは俺とオクタゴンと達人が独自に移動して仕掛ける。つまり諸君は囮だ」

 この言葉に、常識的な首脳陣はムッとするのだが、アリスティアやガガンは納得した顔なのだ。

「マナビさんや達人さんは、神をその手で倒しています。魔導王の打倒はそれ以上の難行であると言う事ですね?」

「アリスティア、理解が速い。そういうことだ」

 まだ常識的首脳陣は納得できないようなので、痛い目にあって覚えてもらうしかないかも知れない。
 この世界の住人ではマシな人々だが、基本的に他人を見くびってるような人種だからな。

「じゃあ、しばらく地図を表示しておくのでみんなで写してくれー。ベストール、他に何かある?」

「あ、ああ。後は軍に情報を広め、準備するだけだ。明日には出発できるだろう」

「よし、それで行こう」

 そう言う事になった。
 会議が終わり、外で待っていたナルカがアリスティアに寄って行った。

「アリスティア、変わりないようだね。国はどうなってるんだい?」

「問題ないわ。みんな、わたくしとガガンを信じて付いてきてくれてる。もちろん、わたくしたちの仲もとってもいいわよ」

 ナルカ相手だとタメ口になるアリスティアなのだ。
 幼なじみだもんな。

「それで……ナルカはどうなの? ルサルカ様も、あなたがマナビさんと契る事を望んでいるってアクシスがわたくしに教えてくださったわ」

「そ、それは……!!」

「もうすぐ決戦なんだから、ナルカもどーんと決めよう! 今夜! 今夜!」

「あ、あうー!」

 アリスティアに押されて、たじたじなナルカなのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。 継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。 しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。 彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。 2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...