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終末の王編
第182話 結界破りからの突撃
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さて、決戦の朝である。
鳴り物入りで登場した魔導王、案外何もしてないなーという空気が漂う世の中。
実は、バーバリアンの領土などはめちゃくちゃに破壊されており、すごい数の死傷者が出ているらしい。
だが俺の目が届く範囲では、魔法帝国群は半数が崩壊しており、魔導王によって壊されるまでもない。
もう壊れてるもんな。
「これが魔導王のやってる悪さだ。北方のバーバリアンは九割が壊滅した。……あれっ? バーバリアン減り過ぎると、こいつらの時代来なくない?」
ハッと気付く俺である。
隣でアカネルが頷いた。
「さすがマスター、お気付きになりましたか。実はマスター以外にはルサルカ神のみしか気付いていなかったのです」
「そりゃ、魔法帝国側からすると、バーバリアンが消えるのはいいことだからな。だが魔法帝国は構成員が既に魔法を使えないのでオワコンだ」
「はい。つまりバーバリアンを盛り立て、彼らに新しい世界を運営してもらうしかないわけです。ほら、魔法帝国は少子化も進んでいたそうですし」
「あー、それは致命的だわ」
人の頭数が減ったら、何をどうやっても国なんぞ維持できない。
その国は終わりである。
バーバリアン、産めよ増やせよでめちゃくちゃに人が増えるからな。
考えてみれば、北方の連中も一割残ってたら、百年あれば元の数に戻ってるだろう。
天敵が消えた野生の鹿とかウサギみたいなもんだ。
「それと、南方のバーバリアンは凍土の王国が平らげつつあります。こちらはイースマスとセブンセンス法国との協調体制を設け、勢いを増しています」
「新たな大帝国が生まれちゃうじゃん。俺の将来の就職先だけど、一強はよろしくない。北方のバーバリアン帝国を盛り立てていかねばな」
「はい。当機能もそう思います」
俺とアカネルがとんでもない話をし始めたので、ベストールが慌てて止めに来た。
「何をとんでもない話をしているんだ! バーバリアンが強くならなくても、我が国が北方を支配して新しい体制を築けばいいじゃないか」
「あっ、言われてみればそうである」
魔導機械による、誰もが魔法的利便性を得られる国家。
これはこれで新時代到来であろう。
それから俺としては、シクスゼクスも保護すべきだと思っている。
魔族の国となっているかの国家だが、彼らの存在はこの世界に緊張感をもたらしてくれることだろう。
ただ、この考えは外に発表しない……。人類の敵を支援するとか、普通ならありえないからな。
俺のコンセプトは、対抗軸を複数作ることでいい感じで切磋琢磨しあって、発展していく世界だ。
明確な敵が多いと、内部腐敗を放置している余裕はなくなるしな。
俺は腐敗が死ぬほど嫌いなのだ。
「マスター、なかなかの危険思想ですね……!!」
「フフフ……。世界をちょっと危険なままにしておけば、武力が必要になる……。そうすると暴の力を振るうしかないやつにも食い扶持が生まれる……。人口は増えても減る……」
「神の視点ですね……!」
「フフフ……」
アカネルと二人で、含み笑いをしあうのだった。
なお、この話はオクタゴンだけが聞いており、
『兄弟は別方面での魔導王みたいな男だな……。まあ、世界を維持するために争いを発生させ続ける思考だから、俺様としては構わないと思うが。だがまあ、俯瞰的過ぎるのでそのうちぶつかり合いそうな気がするなあ』
うむ。
だがそれは今ではないのだ。
さて、一瞬不穏な空気が漂ったが、概ね最終決戦で問題なしということになった。
オクタゴンは帝都の外で巨大化すると、空に向かって領域を展開した。
『道を作るぞ。直視はするなよ。狂うからな』
なんかモザイクが掛かってそうな、広大な上り坂が出現した。
それは空に向かってどんどんと伸びていき、ある場所にぶつかる。
『結界だ。兄弟、達人、行け!』
「おう! 行くぞラバー!」
「ぶるる!」
「ゴー、ファイッ!!」
俺はラバーに乗って駆け上がっていく。
達人はいつもの、ゲームっぽいダッシュ連発で登っていくのだ。
そして結界に到着。
「チートモード! ……ここか。ラバー、ジャンプ!」
「ひひーん!」
結界に蹄を引っ掛けて、ラバーが跳躍する。
俺はネクタイブレードをぐーんと伸ばして、ある一点を斬った。
それによって、不可視だった結界に赤い色が付く。
下の方から「オー」「なんか禍々しい」「やな感じ」と感想が漏れ聞こえてくる。
のんきだなあ。
いや、豪胆と言うべきか。物は言いようだ。
そして、見えるようになった結界に向かって、達人が連打を開始した。
「ふおおおおおおっ!!」
パンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチ、打撃の反動で体が下がったらダッシュパンチ、パンチパンチパンチパンチパンチ。
「何をやってるんだ」「パンチで結界が破壊されるはずが」「い、いや見ろみんな!」「異常な速度で放たれるパンチの連打が、結界の許容できるダメージを超え始めているんだ!」「結界が……割れる……!!」
解説ありがとう……!!
スススス連合の兵士たち、思わぬ才能があるな。
ついに、パリーンと音を立てて結界は砕け散った。
「マスター、この結界は全世界からの魔法攻撃を受けても、それを耐えきれるように設計されていました。ですがそれを凌ぐ打撃数と、作られた弱点への痛打には耐えられなかったようです」
「突然アカネルの解説が……! と思ったら魔導バギーも来ていたのか」
「わたしたちも来てますよ!」
「来てるのだ!」
「魔導ガンでやってみようと思ってさ」
全員集合である。
達人の横にも、エリイとフリズドライがいる。
達人が全力疾走で逃げ始めた。
おいおい、ここから先は敵地だぞ!
魔導王が仕掛けた罠があるだろうが、それよりもエリイの方が恐ろしいらしい。
俺たちの勢いに乗せられて、スススス連合も沸き立つ。
彼らも坂を登り始めてきた。
『ちょっと待て! 待て待て待て! なんで僕が一方的に攻め込まれているんだ!? 不可視の城だぞ!? 不可侵の結界だぞ!? 到達不可能な高さにある城だぞ!? それがどうして……!!』
「魔導王の混乱してる声が聞こえる。奴め、攻め込まれるのは初めてと見える」
城内へラバーを進ませつつ、俺は宣戦布告を口にするのだ。
「全世界を相手に、マルチタスクで作業をしていた弊害が出たな。俺たちというクリティカルなネガティブ要因を後回しにした結果がこれだ! 最初から俺とオクタゴンと達人に全力を使うべきだったな!」
そうだったら、返り討ちにしてたけどな。
そんな事を思いつつ、俺は魔導王の元へと急ぐのである。
「アカネル、魔導王どこ?」
「ここです」
居場所まで分かってしまったぞ。
鳴り物入りで登場した魔導王、案外何もしてないなーという空気が漂う世の中。
実は、バーバリアンの領土などはめちゃくちゃに破壊されており、すごい数の死傷者が出ているらしい。
だが俺の目が届く範囲では、魔法帝国群は半数が崩壊しており、魔導王によって壊されるまでもない。
もう壊れてるもんな。
「これが魔導王のやってる悪さだ。北方のバーバリアンは九割が壊滅した。……あれっ? バーバリアン減り過ぎると、こいつらの時代来なくない?」
ハッと気付く俺である。
隣でアカネルが頷いた。
「さすがマスター、お気付きになりましたか。実はマスター以外にはルサルカ神のみしか気付いていなかったのです」
「そりゃ、魔法帝国側からすると、バーバリアンが消えるのはいいことだからな。だが魔法帝国は構成員が既に魔法を使えないのでオワコンだ」
「はい。つまりバーバリアンを盛り立て、彼らに新しい世界を運営してもらうしかないわけです。ほら、魔法帝国は少子化も進んでいたそうですし」
「あー、それは致命的だわ」
人の頭数が減ったら、何をどうやっても国なんぞ維持できない。
その国は終わりである。
バーバリアン、産めよ増やせよでめちゃくちゃに人が増えるからな。
考えてみれば、北方の連中も一割残ってたら、百年あれば元の数に戻ってるだろう。
天敵が消えた野生の鹿とかウサギみたいなもんだ。
「それと、南方のバーバリアンは凍土の王国が平らげつつあります。こちらはイースマスとセブンセンス法国との協調体制を設け、勢いを増しています」
「新たな大帝国が生まれちゃうじゃん。俺の将来の就職先だけど、一強はよろしくない。北方のバーバリアン帝国を盛り立てていかねばな」
「はい。当機能もそう思います」
俺とアカネルがとんでもない話をし始めたので、ベストールが慌てて止めに来た。
「何をとんでもない話をしているんだ! バーバリアンが強くならなくても、我が国が北方を支配して新しい体制を築けばいいじゃないか」
「あっ、言われてみればそうである」
魔導機械による、誰もが魔法的利便性を得られる国家。
これはこれで新時代到来であろう。
それから俺としては、シクスゼクスも保護すべきだと思っている。
魔族の国となっているかの国家だが、彼らの存在はこの世界に緊張感をもたらしてくれることだろう。
ただ、この考えは外に発表しない……。人類の敵を支援するとか、普通ならありえないからな。
俺のコンセプトは、対抗軸を複数作ることでいい感じで切磋琢磨しあって、発展していく世界だ。
明確な敵が多いと、内部腐敗を放置している余裕はなくなるしな。
俺は腐敗が死ぬほど嫌いなのだ。
「マスター、なかなかの危険思想ですね……!!」
「フフフ……。世界をちょっと危険なままにしておけば、武力が必要になる……。そうすると暴の力を振るうしかないやつにも食い扶持が生まれる……。人口は増えても減る……」
「神の視点ですね……!」
「フフフ……」
アカネルと二人で、含み笑いをしあうのだった。
なお、この話はオクタゴンだけが聞いており、
『兄弟は別方面での魔導王みたいな男だな……。まあ、世界を維持するために争いを発生させ続ける思考だから、俺様としては構わないと思うが。だがまあ、俯瞰的過ぎるのでそのうちぶつかり合いそうな気がするなあ』
うむ。
だがそれは今ではないのだ。
さて、一瞬不穏な空気が漂ったが、概ね最終決戦で問題なしということになった。
オクタゴンは帝都の外で巨大化すると、空に向かって領域を展開した。
『道を作るぞ。直視はするなよ。狂うからな』
なんかモザイクが掛かってそうな、広大な上り坂が出現した。
それは空に向かってどんどんと伸びていき、ある場所にぶつかる。
『結界だ。兄弟、達人、行け!』
「おう! 行くぞラバー!」
「ぶるる!」
「ゴー、ファイッ!!」
俺はラバーに乗って駆け上がっていく。
達人はいつもの、ゲームっぽいダッシュ連発で登っていくのだ。
そして結界に到着。
「チートモード! ……ここか。ラバー、ジャンプ!」
「ひひーん!」
結界に蹄を引っ掛けて、ラバーが跳躍する。
俺はネクタイブレードをぐーんと伸ばして、ある一点を斬った。
それによって、不可視だった結界に赤い色が付く。
下の方から「オー」「なんか禍々しい」「やな感じ」と感想が漏れ聞こえてくる。
のんきだなあ。
いや、豪胆と言うべきか。物は言いようだ。
そして、見えるようになった結界に向かって、達人が連打を開始した。
「ふおおおおおおっ!!」
パンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチ、打撃の反動で体が下がったらダッシュパンチ、パンチパンチパンチパンチパンチ。
「何をやってるんだ」「パンチで結界が破壊されるはずが」「い、いや見ろみんな!」「異常な速度で放たれるパンチの連打が、結界の許容できるダメージを超え始めているんだ!」「結界が……割れる……!!」
解説ありがとう……!!
スススス連合の兵士たち、思わぬ才能があるな。
ついに、パリーンと音を立てて結界は砕け散った。
「マスター、この結界は全世界からの魔法攻撃を受けても、それを耐えきれるように設計されていました。ですがそれを凌ぐ打撃数と、作られた弱点への痛打には耐えられなかったようです」
「突然アカネルの解説が……! と思ったら魔導バギーも来ていたのか」
「わたしたちも来てますよ!」
「来てるのだ!」
「魔導ガンでやってみようと思ってさ」
全員集合である。
達人の横にも、エリイとフリズドライがいる。
達人が全力疾走で逃げ始めた。
おいおい、ここから先は敵地だぞ!
魔導王が仕掛けた罠があるだろうが、それよりもエリイの方が恐ろしいらしい。
俺たちの勢いに乗せられて、スススス連合も沸き立つ。
彼らも坂を登り始めてきた。
『ちょっと待て! 待て待て待て! なんで僕が一方的に攻め込まれているんだ!? 不可視の城だぞ!? 不可侵の結界だぞ!? 到達不可能な高さにある城だぞ!? それがどうして……!!』
「魔導王の混乱してる声が聞こえる。奴め、攻め込まれるのは初めてと見える」
城内へラバーを進ませつつ、俺は宣戦布告を口にするのだ。
「全世界を相手に、マルチタスクで作業をしていた弊害が出たな。俺たちというクリティカルなネガティブ要因を後回しにした結果がこれだ! 最初から俺とオクタゴンと達人に全力を使うべきだったな!」
そうだったら、返り討ちにしてたけどな。
そんな事を思いつつ、俺は魔導王の元へと急ぐのである。
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