38 / 337
14・シルバー級にならないといけないのか!?
第38話 念の為のシルバー級試験
しおりを挟む
コゲタの処遇だが……。
僕の従者として、常駐している宿でお掃除の仕事をする約束で置いてもらうことになった。
掃除の手間賃でもって、彼の宿代ということになる。
だが、食事は僕持ちだからな。
コボルドに自活させるのは文明社会では困難だ……!
だが、犬に街で自活しろというのも厳しかろう。彼を養うため、僕はシルバー級になる決意をしたのだから。
「そう言えば、コゲタはオスなのだろうか、メスなのだろうか……」
さっぱり分からない。
コボルドは発情期にならないと、性器が隠れているらしいからな……。
「ご主人、出かける」
「ああ。一応シルバー級の昇級試験があるんだ。ついてくるかい?」
「行く、行く」
尻尾を振るコゲタ。
今朝は早起きし、宿の前を掃き掃除していたそうで。
「おおコゲタ、行ってらっしゃい。ナザルもな」
宿の主人に呼ばれるのが、コゲタが先なんだが?
コボルド、友好的な個体は完全に直立した犬なので、人の心にするりと入り込んでくる可愛らしさがあるからな。
コゲタを連れて、ギルドにやって来た。
彼は行儀がいいので、ギルド内ではすぐに安楽椅子冒険者のところへ行って大人しくしている。
リップルも動物全般が好きらしいので、乾き物をコゲタに食べさせている。
「えーと、それではナザルさん。シルバー級の昇級試験なのですが」
いつものおさげに受付嬢だ。
君は僕担当なのか……?
「お化けムササビ……モンスタースクイールの討伐です」
「あー」
もうこれは儀礼的な試験だ。
そんな簡単な任務とは……。
「森の中を滑空しながら襲いかかる、恐るべきモンスターです。カッパー級から脱する試験としては、バッチリのモンスターかと」
「あ、はい」
……一般的には空を飛ぶモンスターは強いんだった。
忘れていた。
僕の場合、相手を知覚できればメタれるからな。
相手の強さ評価がバグってるところはあるかも知れない。
こうして僕は試験を受諾し。
即座に密林に突っ込んで、お化けムササビを油で溺れさせて退治。
これの毛皮を第一伐採所の職人たちに手伝ってもらって剥がし、持ち帰ってきたのだった。
「は、速くないですか!?」
「慣れてるからね……」
こうして僕はシルバー級となった。
これ、本来ならば数日掛けて挑戦する試験らしく。
パーティの数に相当するモンスターを退治し、その証を持ってくる必要があるわけだ。
その中でも、お化けムササビはかなりの鬼門だとか。
そうだったのか……。
周囲に張り巡らせた油の霧に突っ込んでこさせて、毛皮をネトネトにして地面に落として油をポンっと投げるだけだった。
「おっ、ついにお前もシルバー級かあ! 実力相応だな!」
バンキンが肩を叩いてきた。
「ああ。これ以上には絶対昇級したくない……。これはあくまで、コゲタの食費を稼ぐための緊急措置だからね……!!」
「お前、本当に犬好きなのな。自分のこだわりをちょっと曲げるくらいには」
「助けてしまったものは仕方ない」
お下げの受付嬢が、奥から新しくしたギルドカードを持って走ってきた。
「こちら、シルバー級のギルドカードです! おめでとうございますナザルさん! これからは責任ある大きな仕事も受けてください! 年間三件がノルマです」
「ほらあ」
僕は嫌そうな顔をした。
これが嫌なんだよ。
シルバー級以上になると、冒険者としても中級という扱いになる。
ここには義務と責任が伴い、国から発される重要な依頼を年間三回こなす必要があるのだ。
まあ、重要=危険とか、大規模というわけではない。
農作物を輸出する際の護衛だとか、遺跡の下層から湧いてくるモンスターの討伐とか。
そういうのだ。
面倒くさいなあ……。
一番楽なのを選び抜いて受注しよう……。
「やあナザル! 昇級おめでとう! ギルドカード見せて見せて! 他人のギルドカード、めったに見る機会なくってさ」
リップルが手を振っている。
僕は彼女のところまで行って、椅子に腰掛けた。
マスターにお茶を注文する。
「リップルは他の冒険者に頼めば見せてもらえるだろう?」
「そういうのはなんだか悪いじゃないか。プラチナ級からギルドカード見せろなんて言われたら、こう、圧力を感じない?」
「僕ならいいわけ!?」
「君と私の仲じゃないかー。どれどれ……? 普段、プラチナ級のギルドカードしか見てないからさ。へえー! 縁の色が私のと似てるなあ。シルバーとプラチナは色的に近いもんなあ」
「ああ。反射の強さとかで見分ける感じだよね。リップルのカードの方が透き通ってて高級感あるじゃん?」
「そうかなあ……。結構雑に扱ってるけど、折れたり壊れたりしないから本の栞とか、器がない時にお菓子を載せるために使ったりしてるんだよね」
「プラチナ級のカードをなんてことに使ってるんだ」
「私のカードなんだからどう使ってもいいだろー?」
どうやら、それぞれの等級でギルドカードの材質が違うようだ。
アイアン級はその名の通り鉄の板。
カッパー級は銅板で、シルバー級は銅板に銀箔を貼ったもの。
ゴールド級はこれが金箔になり……。
プラチナ級は謎の素材だ。
ダイヤ級はカードそのものが透き通ってるらしいし。
マスター級ともなればどうなるんだ。
謎だ……。
いつかプラチナ級より上の等級の冒険者に会ったら見せてもらおう。
僕はそう思うのだった。
僕の従者として、常駐している宿でお掃除の仕事をする約束で置いてもらうことになった。
掃除の手間賃でもって、彼の宿代ということになる。
だが、食事は僕持ちだからな。
コボルドに自活させるのは文明社会では困難だ……!
だが、犬に街で自活しろというのも厳しかろう。彼を養うため、僕はシルバー級になる決意をしたのだから。
「そう言えば、コゲタはオスなのだろうか、メスなのだろうか……」
さっぱり分からない。
コボルドは発情期にならないと、性器が隠れているらしいからな……。
「ご主人、出かける」
「ああ。一応シルバー級の昇級試験があるんだ。ついてくるかい?」
「行く、行く」
尻尾を振るコゲタ。
今朝は早起きし、宿の前を掃き掃除していたそうで。
「おおコゲタ、行ってらっしゃい。ナザルもな」
宿の主人に呼ばれるのが、コゲタが先なんだが?
コボルド、友好的な個体は完全に直立した犬なので、人の心にするりと入り込んでくる可愛らしさがあるからな。
コゲタを連れて、ギルドにやって来た。
彼は行儀がいいので、ギルド内ではすぐに安楽椅子冒険者のところへ行って大人しくしている。
リップルも動物全般が好きらしいので、乾き物をコゲタに食べさせている。
「えーと、それではナザルさん。シルバー級の昇級試験なのですが」
いつものおさげに受付嬢だ。
君は僕担当なのか……?
「お化けムササビ……モンスタースクイールの討伐です」
「あー」
もうこれは儀礼的な試験だ。
そんな簡単な任務とは……。
「森の中を滑空しながら襲いかかる、恐るべきモンスターです。カッパー級から脱する試験としては、バッチリのモンスターかと」
「あ、はい」
……一般的には空を飛ぶモンスターは強いんだった。
忘れていた。
僕の場合、相手を知覚できればメタれるからな。
相手の強さ評価がバグってるところはあるかも知れない。
こうして僕は試験を受諾し。
即座に密林に突っ込んで、お化けムササビを油で溺れさせて退治。
これの毛皮を第一伐採所の職人たちに手伝ってもらって剥がし、持ち帰ってきたのだった。
「は、速くないですか!?」
「慣れてるからね……」
こうして僕はシルバー級となった。
これ、本来ならば数日掛けて挑戦する試験らしく。
パーティの数に相当するモンスターを退治し、その証を持ってくる必要があるわけだ。
その中でも、お化けムササビはかなりの鬼門だとか。
そうだったのか……。
周囲に張り巡らせた油の霧に突っ込んでこさせて、毛皮をネトネトにして地面に落として油をポンっと投げるだけだった。
「おっ、ついにお前もシルバー級かあ! 実力相応だな!」
バンキンが肩を叩いてきた。
「ああ。これ以上には絶対昇級したくない……。これはあくまで、コゲタの食費を稼ぐための緊急措置だからね……!!」
「お前、本当に犬好きなのな。自分のこだわりをちょっと曲げるくらいには」
「助けてしまったものは仕方ない」
お下げの受付嬢が、奥から新しくしたギルドカードを持って走ってきた。
「こちら、シルバー級のギルドカードです! おめでとうございますナザルさん! これからは責任ある大きな仕事も受けてください! 年間三件がノルマです」
「ほらあ」
僕は嫌そうな顔をした。
これが嫌なんだよ。
シルバー級以上になると、冒険者としても中級という扱いになる。
ここには義務と責任が伴い、国から発される重要な依頼を年間三回こなす必要があるのだ。
まあ、重要=危険とか、大規模というわけではない。
農作物を輸出する際の護衛だとか、遺跡の下層から湧いてくるモンスターの討伐とか。
そういうのだ。
面倒くさいなあ……。
一番楽なのを選び抜いて受注しよう……。
「やあナザル! 昇級おめでとう! ギルドカード見せて見せて! 他人のギルドカード、めったに見る機会なくってさ」
リップルが手を振っている。
僕は彼女のところまで行って、椅子に腰掛けた。
マスターにお茶を注文する。
「リップルは他の冒険者に頼めば見せてもらえるだろう?」
「そういうのはなんだか悪いじゃないか。プラチナ級からギルドカード見せろなんて言われたら、こう、圧力を感じない?」
「僕ならいいわけ!?」
「君と私の仲じゃないかー。どれどれ……? 普段、プラチナ級のギルドカードしか見てないからさ。へえー! 縁の色が私のと似てるなあ。シルバーとプラチナは色的に近いもんなあ」
「ああ。反射の強さとかで見分ける感じだよね。リップルのカードの方が透き通ってて高級感あるじゃん?」
「そうかなあ……。結構雑に扱ってるけど、折れたり壊れたりしないから本の栞とか、器がない時にお菓子を載せるために使ったりしてるんだよね」
「プラチナ級のカードをなんてことに使ってるんだ」
「私のカードなんだからどう使ってもいいだろー?」
どうやら、それぞれの等級でギルドカードの材質が違うようだ。
アイアン級はその名の通り鉄の板。
カッパー級は銅板で、シルバー級は銅板に銀箔を貼ったもの。
ゴールド級はこれが金箔になり……。
プラチナ級は謎の素材だ。
ダイヤ級はカードそのものが透き通ってるらしいし。
マスター級ともなればどうなるんだ。
謎だ……。
いつかプラチナ級より上の等級の冒険者に会ったら見せてもらおう。
僕はそう思うのだった。
42
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる