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15・奥様はマンドラゴラがお好き
第40話 極上ドーナッツと怪しい草花
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最高のドーナッツが揚がった。
これは素晴らしい。
本当に凄い。
油を取って、皿に並べられたこの揚げ菓子を見よ。
生地がしっかりとまとまり、外はサクサク、きっと中はほっくり揚がっていることだろう。
コゲタの毛並みみたいな色合いが、実に食欲をそそるドーナッツ。
粉砂糖を振って、まずはオールドファッションっぽいのが完成だ。
今後、もちもち食感のリングみたいなドーナッツや、チョココーティングされたもの、しっとり系などを次々に作っていきたい。
問題は僕がそれらのメニューを全く知らないことだ。
世界をめぐり、メニューを集めねばならないかも知れない……。
「ナザルさん、難しい顔をしているけれど、ドーナッツは熱も冷めてちょうど食べごろよ」
「あっ、そうでした」
僕は思索から帰って来る。
そして、犬用ドーナッツをコゲタに取り分けた。
コゲタは舌を出して、ハッハッハッとか言っている。
「食べてよし!」
「わん!」
コゲタがむしゃむしゃドーナッツを食べ始めた。
美味そうに食うやつだ。
どれ、僕もこの特製の粉で出来たドーナッツを食べるとしよう。
よく揚がった表面をサクッと噛むと、中はもっちりとした生地。
美味い。
麦そのものの美味さを感じる気がする。
つまり……砂糖がちょっと足りなかったな。
これはご飯になるタイプのドーナッツだ。
「お砂糖、多すぎるくらいでいいのね」
「そうみたいですね。お菓子はやっぱり甘くなくちゃ」
それでも粉の美味さで食べ切れちゃう。
やはり、いい粉は偉大だ。
それはそれとして、僕とドロテアさんは教訓を得たのだった。
砂糖はケチらない。
ちなみに、砂糖不使用の犬用ドーナッツは、コゲタに大好評だった。
あっという間になくなって、今はお皿をペロペロ舐めている。
「コゲタ、気に入った?」
「コゲタ、これ好き」
そうかー。
僕は彼の頭をわしわし撫でた。
すると、コゲタは目を細めてされるがままなのだ。
ドロテアさんにもふもふされるより、僕にわしわしされるのが好きなのか。
「やっぱり御主人様が一番好きなのね」
「そういうもんですか」
「そういうものだと思うわ」
そして、僕らはお茶を飲みながらのんびりとする。
ふと、コゲタが持ってきた小さな鉢植えが目に入った。
青々とした草が茂っているのだが……どうも、土から根っこの一部が見えているような。
それは真っ赤で、こう……二つの目玉に見える部分があるような。
「……ドロテアさん。あの草なんですけど」
「はい」
「目玉があるような気がするんですが」
「そうかしら……? あら、本当」
立ち上がったドロテアさんは、鉢植えの草をつんつんと突いた。
「危なくないですか? 目玉がある草……僕が知っている限りだと、マンドラゴラとか」
「あっ、私も知っているわね、それ。引き抜くと悲鳴を上げて、聞いた人をおかしくしてしまう草でしょう? まあ怖い」
全然怖くなさそうですね。
つつくと、草が『ア』『アー』とか声をあげてるんですが。
「ドロテアさん、この種を売ってた露天商、ろくでもないやつなのでは?」
「あら? 人の良さそうなおばあさんだったわ。あれはきっといいおばあさんだと思うわ」
「魔女じゃないかなあ……!」
この世界、魔法使いとは別に魔女というのがいる。
例えばこの世界のエルフは、かなり昔に消えた。
だけど、それは彼らが人間と交わり、代を重ねるごとに同化していったからなのだ。
人の中から、時折ハーフエルフが生まれる。
リップルはそのパターンだ。
人間の倍から数倍の寿命を持ち、老いることがない。
そして人間の中にある因子はエルフばかりではない。
魔女もその一つだ。
本来は、遥か古代に作られた生物兵器だったと聞く。
人と魔神を混ぜた存在だ。
だが、そんな彼らも人と交わり、代を重ねて同化していった。
人間、なんでもかんでも同化するのか。
強すぎるぞ。
で、時々生まれる大隔世遺伝の魔神が魔女だ。
魔女に生まれつくと凄まじい魔力を持ち、人には使えない魔法を使ったりできるようになるという。
このマンドラゴラもそのパターンで、魔女が育てて売っているのかも。
売るな。
迷惑すぎる。
いや、ちゃんと煎じれば万能の薬になるとは聞くけどさ。
引き抜く時が危険すぎるだろ。
「ちょっと引っ張ってみようかしら」
『ア~』
「ドロテアさん危ない! やめましょうやめましょう!!」
慌てて止めた。
恐れを知らない人だなあ……!
「こういうのは確か、犬に抜かせるという話もあったと思うわ」
「コゲタ、抜くなよ」
「わん」
「コゲタちゃんに抜かせるなんてかわいそう。犬もかわいそうよね。じゃあ、これがマンドラゴラだとして……どうやって抜けばいいのかしら……」
僕とドロテアさん、ドーナッツの横にマンドラゴラの鉢植えを置き、うーんと考え込んだ。
「……抜くといけないんですよね? だったら鉢を油でひたひたにして、マンドラゴラを浮かび上がらせるのは」
「あ、抜いたことにならないわよね!」
これはいい考えだということで、早速その作戦を決行することにした。
ドーナッツを全てお腹の中に片付けて……。
「油を投入」
小さな鉢入れに、どんどん油が満たされていく。
『ガボガボガボ』
マンドラゴラが何か言ってる。
『ギャボボボボボー』
油でごぼごぼ言っていて悲鳴が聞こえないぞ。
たっぷり油を吸ったマンドラゴラ。
つやっつやになって、ぷかぁっと油の中に浮かび上がってきた。
「まあ、安全にマンドラゴラを抜けたわ! ありがとうナザルさん! あのおばあさんも、きっとこうすれば安全だって知ってて売ったのね」
「そうかなあ……。そうなのかなあ……」
とりあえず、その露天商のことはギルマスや盗賊ギルドに教えておいた方がいい気はする。
それはそれとして、油でいけるんだなあ、マンドラゴラ採取……!!
これは素晴らしい。
本当に凄い。
油を取って、皿に並べられたこの揚げ菓子を見よ。
生地がしっかりとまとまり、外はサクサク、きっと中はほっくり揚がっていることだろう。
コゲタの毛並みみたいな色合いが、実に食欲をそそるドーナッツ。
粉砂糖を振って、まずはオールドファッションっぽいのが完成だ。
今後、もちもち食感のリングみたいなドーナッツや、チョココーティングされたもの、しっとり系などを次々に作っていきたい。
問題は僕がそれらのメニューを全く知らないことだ。
世界をめぐり、メニューを集めねばならないかも知れない……。
「ナザルさん、難しい顔をしているけれど、ドーナッツは熱も冷めてちょうど食べごろよ」
「あっ、そうでした」
僕は思索から帰って来る。
そして、犬用ドーナッツをコゲタに取り分けた。
コゲタは舌を出して、ハッハッハッとか言っている。
「食べてよし!」
「わん!」
コゲタがむしゃむしゃドーナッツを食べ始めた。
美味そうに食うやつだ。
どれ、僕もこの特製の粉で出来たドーナッツを食べるとしよう。
よく揚がった表面をサクッと噛むと、中はもっちりとした生地。
美味い。
麦そのものの美味さを感じる気がする。
つまり……砂糖がちょっと足りなかったな。
これはご飯になるタイプのドーナッツだ。
「お砂糖、多すぎるくらいでいいのね」
「そうみたいですね。お菓子はやっぱり甘くなくちゃ」
それでも粉の美味さで食べ切れちゃう。
やはり、いい粉は偉大だ。
それはそれとして、僕とドロテアさんは教訓を得たのだった。
砂糖はケチらない。
ちなみに、砂糖不使用の犬用ドーナッツは、コゲタに大好評だった。
あっという間になくなって、今はお皿をペロペロ舐めている。
「コゲタ、気に入った?」
「コゲタ、これ好き」
そうかー。
僕は彼の頭をわしわし撫でた。
すると、コゲタは目を細めてされるがままなのだ。
ドロテアさんにもふもふされるより、僕にわしわしされるのが好きなのか。
「やっぱり御主人様が一番好きなのね」
「そういうもんですか」
「そういうものだと思うわ」
そして、僕らはお茶を飲みながらのんびりとする。
ふと、コゲタが持ってきた小さな鉢植えが目に入った。
青々とした草が茂っているのだが……どうも、土から根っこの一部が見えているような。
それは真っ赤で、こう……二つの目玉に見える部分があるような。
「……ドロテアさん。あの草なんですけど」
「はい」
「目玉があるような気がするんですが」
「そうかしら……? あら、本当」
立ち上がったドロテアさんは、鉢植えの草をつんつんと突いた。
「危なくないですか? 目玉がある草……僕が知っている限りだと、マンドラゴラとか」
「あっ、私も知っているわね、それ。引き抜くと悲鳴を上げて、聞いた人をおかしくしてしまう草でしょう? まあ怖い」
全然怖くなさそうですね。
つつくと、草が『ア』『アー』とか声をあげてるんですが。
「ドロテアさん、この種を売ってた露天商、ろくでもないやつなのでは?」
「あら? 人の良さそうなおばあさんだったわ。あれはきっといいおばあさんだと思うわ」
「魔女じゃないかなあ……!」
この世界、魔法使いとは別に魔女というのがいる。
例えばこの世界のエルフは、かなり昔に消えた。
だけど、それは彼らが人間と交わり、代を重ねるごとに同化していったからなのだ。
人の中から、時折ハーフエルフが生まれる。
リップルはそのパターンだ。
人間の倍から数倍の寿命を持ち、老いることがない。
そして人間の中にある因子はエルフばかりではない。
魔女もその一つだ。
本来は、遥か古代に作られた生物兵器だったと聞く。
人と魔神を混ぜた存在だ。
だが、そんな彼らも人と交わり、代を重ねて同化していった。
人間、なんでもかんでも同化するのか。
強すぎるぞ。
で、時々生まれる大隔世遺伝の魔神が魔女だ。
魔女に生まれつくと凄まじい魔力を持ち、人には使えない魔法を使ったりできるようになるという。
このマンドラゴラもそのパターンで、魔女が育てて売っているのかも。
売るな。
迷惑すぎる。
いや、ちゃんと煎じれば万能の薬になるとは聞くけどさ。
引き抜く時が危険すぎるだろ。
「ちょっと引っ張ってみようかしら」
『ア~』
「ドロテアさん危ない! やめましょうやめましょう!!」
慌てて止めた。
恐れを知らない人だなあ……!
「こういうのは確か、犬に抜かせるという話もあったと思うわ」
「コゲタ、抜くなよ」
「わん」
「コゲタちゃんに抜かせるなんてかわいそう。犬もかわいそうよね。じゃあ、これがマンドラゴラだとして……どうやって抜けばいいのかしら……」
僕とドロテアさん、ドーナッツの横にマンドラゴラの鉢植えを置き、うーんと考え込んだ。
「……抜くといけないんですよね? だったら鉢を油でひたひたにして、マンドラゴラを浮かび上がらせるのは」
「あ、抜いたことにならないわよね!」
これはいい考えだということで、早速その作戦を決行することにした。
ドーナッツを全てお腹の中に片付けて……。
「油を投入」
小さな鉢入れに、どんどん油が満たされていく。
『ガボガボガボ』
マンドラゴラが何か言ってる。
『ギャボボボボボー』
油でごぼごぼ言っていて悲鳴が聞こえないぞ。
たっぷり油を吸ったマンドラゴラ。
つやっつやになって、ぷかぁっと油の中に浮かび上がってきた。
「まあ、安全にマンドラゴラを抜けたわ! ありがとうナザルさん! あのおばあさんも、きっとこうすれば安全だって知ってて売ったのね」
「そうかなあ……。そうなのかなあ……」
とりあえず、その露天商のことはギルマスや盗賊ギルドに教えておいた方がいい気はする。
それはそれとして、油でいけるんだなあ、マンドラゴラ採取……!!
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