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21・女王陛下の油使い
第62話 王城からのお迎え
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みんなでドーナッツを美味しくいただく。
外はカリッと、ふわふわの粉砂糖が掛かっていて、噛みしめるともっちりした生地が顔を出す。
これ、あのドワーフ親方の粉じゃないと、揚げたところで爆発したりするらしい。
僕が油使いだから、爆発させずにいられるだけだ。
そして今回は、ドワーフ親方謹製の粉と、僕の油のマリアージュ。
うーん、最高に美味い。
「ナザルさんは料理するたびにどんどん腕を上げていくわね! 私、もう追い抜かれてしまったわ」
「むむむ……! つい先日料理を始めたばかりの男性がこれほどのお菓子を……。私、危機感を覚えます」
「受付嬢はなぜ僕に対抗意識を?」
聞いたら、お下げの彼女は半眼になって僕を睨んだ。
「ナザルさんはいつまでも私を名前で呼んでくれないですけど、なんでですか」
「ギルド職員と冒険者の癒着問題になりそうだから」
「なーりーまーせーん!! というか、そんなので騒ぐなんてどれだけ風紀のお硬いギルドなんですか! アーランは大丈夫なんです! 私の名前を呼んでください! ほら、早く! 名前!」
「エ、エリィさん」
「よろしい」
お下げの受付嬢エリィは、ムフーっと鼻息を吹いて満足げな顔になった。
これを見て、バルバラ女王陛下とリップルとドロテアさんが何かこしょこしょと喋っている。
「なんじゃ? あの娘、ナザルが好きなのかや?」
「どうだろうね……! 気になってるのは間違いないと思うよ。ナザルは女遊びはしないし、なんだかんだ物腰は丁寧だし、それでいて超一流の実力者だからね。しかも最近シルバー級に上がって、対外的にも大きな顔ができる肩書ができた」
「まあまあまあ! 私、気になっちゃうわ!」
ええい、不老の御三方はだまらっしゃい!
女性が多いとこんな恐ろしいことになるんだな……。
ちなみにコゲタはお腹いっぱいになって、すやすやとお昼寝を始めてしまったので助けに来ない。
くそー、孤立無援だ。
僕は前世でそこまで女性と縁があった方ではないから、こう言う状況は極めて不得意である。
「話はドーナッツを食べてから! 熱いうちにどうぞ!」
僕が吠えたら、みんな無言でむしゃむしゃ食べ始めた。
お喋りしながらでもいいが、できたてを食べて欲しい感もあるからね。
そして食べ終わったあと、僕は話題逸らしも込めて新しい話を始める。
「ドーナッツも新しい種類を作りたいんですよ。今はどうしても、サクサクもっちりとしかできない。これをもっと違った食感で作りたくてですね」
「ふむ、ならば……ファイブショーナンにいいものがあるぞ」
ここで女王陛下、いいネタを投下してくれた。
「ファイブショーナンではな、果汁を絞ってそのまま飲むのも良いが、ある種の海藻を煮た汁を使い、果汁を固めて食べたりもするのじゃ」
「果汁を固める!? いやいや、それ以前に、ファイブショーナンはそんなに果物があるのかい!?」
甘いもの大好きリップル、興味津々だ。
ドロテアさんも受付嬢エリィも、傾聴モードになった。
「あるとも。そこここに自生しておるのじゃ。陽気をたっぷり受けて、雨が少なめだから必死に水気を集めて果実に蓄えてあまーくなる。これはこれで美味いのじゃが、固めて食べるとまたオツなものじゃ」
「おおーっ」
女子たちがどよめく。
みんな、果物食べ放題的なところに惹かれているのだ。
だが、僕が注目した点は違う。
「陛下。それってつまり……どろっとした液体を固められる素材があるってことですよね?」
「察しがいいのじゃ! つまり、そういうことじゃ!」
寒天じゃないか!!
ファイブショーナンには寒天があったのだ。
なお、アーランにもニカワ……つまりゼラチンがある。
だがこれはもっぱら接着剤として扱われており、僕もこれを食用に活かすためのやり方を知らないため、手を付けないでいたのだ。
食用にされている寒天があるなら話は早い。
食べるための技術が確立されているということだからだ。
「寒天があれば、やれることは増えるな……。ドーナッツには活かせないかもだけど……いや、完成品を冷やしてそれに一手間加える形でいけるか……?」
僕がブツブツ言い始めたので、リップルが「これは新しい美味しいものが生まれてくる予兆だぞ。私は詳しいんだ」とかいらんことを言った。
真っ先に食べる気であろう。
そんな風に僕らが過ごしていたら、家の扉がノックされた。
「はいはい」
ドロテアさんがパタパタと玄関に向けて移動する。
もしもこれが怪しい相手だったらよろしく無い。
僕も後に続いた。
そうしたら、なぜか女王陛下とリップルと受付嬢も来るじゃないか。
なんだなんだ君たち!
暇か!
いや、食べ終わってお喋りしてるところだったし、暇だったんだな。
「はぁい」
「失礼、こちらがギルドマスターのご自宅だとか。こちらに女王の特使リシアはいますか」
扉の向こうに、壁のようにそびえるマッチョがいた。
ファイブショーナン最強の戦士、ベイスだ。
ということは、王城から帰ってきたのか。
「なんじゃ、ベイス、もう終わったのか! 親書は届けたのかや?」
「あ、もう隠してもいないんですね陛下……。ええ、届けました。対応してくださったのは大臣でしたが、たいへん驚いておいででしたよ。それで、特使リシアにもお会いしたいと」
「うあー、やはりそうなるか」
「特使が来てないのだから当たり前じゃないですか。行きましょう陛下」
「くそー。もうちょっと羽を伸ばせると思ったんじゃが。ほら、わらわセイレーンだし、文字通り羽を」
「いいですから陛下」
「ちぇー。ちょっと行ってくるのじゃ。寒天の話はまた明日な」
こうして、女王陛下は行ってしまったのだった。
「寒天お預けとは、焦らしてくれるなあ……!」
「この人、色恋よりも料理のほうが絶対好きですよ」
「うん、私もそう思った」
受付嬢エリィとリップルが、後ろで何か失礼な話をしているのだった。
外はカリッと、ふわふわの粉砂糖が掛かっていて、噛みしめるともっちりした生地が顔を出す。
これ、あのドワーフ親方の粉じゃないと、揚げたところで爆発したりするらしい。
僕が油使いだから、爆発させずにいられるだけだ。
そして今回は、ドワーフ親方謹製の粉と、僕の油のマリアージュ。
うーん、最高に美味い。
「ナザルさんは料理するたびにどんどん腕を上げていくわね! 私、もう追い抜かれてしまったわ」
「むむむ……! つい先日料理を始めたばかりの男性がこれほどのお菓子を……。私、危機感を覚えます」
「受付嬢はなぜ僕に対抗意識を?」
聞いたら、お下げの彼女は半眼になって僕を睨んだ。
「ナザルさんはいつまでも私を名前で呼んでくれないですけど、なんでですか」
「ギルド職員と冒険者の癒着問題になりそうだから」
「なーりーまーせーん!! というか、そんなので騒ぐなんてどれだけ風紀のお硬いギルドなんですか! アーランは大丈夫なんです! 私の名前を呼んでください! ほら、早く! 名前!」
「エ、エリィさん」
「よろしい」
お下げの受付嬢エリィは、ムフーっと鼻息を吹いて満足げな顔になった。
これを見て、バルバラ女王陛下とリップルとドロテアさんが何かこしょこしょと喋っている。
「なんじゃ? あの娘、ナザルが好きなのかや?」
「どうだろうね……! 気になってるのは間違いないと思うよ。ナザルは女遊びはしないし、なんだかんだ物腰は丁寧だし、それでいて超一流の実力者だからね。しかも最近シルバー級に上がって、対外的にも大きな顔ができる肩書ができた」
「まあまあまあ! 私、気になっちゃうわ!」
ええい、不老の御三方はだまらっしゃい!
女性が多いとこんな恐ろしいことになるんだな……。
ちなみにコゲタはお腹いっぱいになって、すやすやとお昼寝を始めてしまったので助けに来ない。
くそー、孤立無援だ。
僕は前世でそこまで女性と縁があった方ではないから、こう言う状況は極めて不得意である。
「話はドーナッツを食べてから! 熱いうちにどうぞ!」
僕が吠えたら、みんな無言でむしゃむしゃ食べ始めた。
お喋りしながらでもいいが、できたてを食べて欲しい感もあるからね。
そして食べ終わったあと、僕は話題逸らしも込めて新しい話を始める。
「ドーナッツも新しい種類を作りたいんですよ。今はどうしても、サクサクもっちりとしかできない。これをもっと違った食感で作りたくてですね」
「ふむ、ならば……ファイブショーナンにいいものがあるぞ」
ここで女王陛下、いいネタを投下してくれた。
「ファイブショーナンではな、果汁を絞ってそのまま飲むのも良いが、ある種の海藻を煮た汁を使い、果汁を固めて食べたりもするのじゃ」
「果汁を固める!? いやいや、それ以前に、ファイブショーナンはそんなに果物があるのかい!?」
甘いもの大好きリップル、興味津々だ。
ドロテアさんも受付嬢エリィも、傾聴モードになった。
「あるとも。そこここに自生しておるのじゃ。陽気をたっぷり受けて、雨が少なめだから必死に水気を集めて果実に蓄えてあまーくなる。これはこれで美味いのじゃが、固めて食べるとまたオツなものじゃ」
「おおーっ」
女子たちがどよめく。
みんな、果物食べ放題的なところに惹かれているのだ。
だが、僕が注目した点は違う。
「陛下。それってつまり……どろっとした液体を固められる素材があるってことですよね?」
「察しがいいのじゃ! つまり、そういうことじゃ!」
寒天じゃないか!!
ファイブショーナンには寒天があったのだ。
なお、アーランにもニカワ……つまりゼラチンがある。
だがこれはもっぱら接着剤として扱われており、僕もこれを食用に活かすためのやり方を知らないため、手を付けないでいたのだ。
食用にされている寒天があるなら話は早い。
食べるための技術が確立されているということだからだ。
「寒天があれば、やれることは増えるな……。ドーナッツには活かせないかもだけど……いや、完成品を冷やしてそれに一手間加える形でいけるか……?」
僕がブツブツ言い始めたので、リップルが「これは新しい美味しいものが生まれてくる予兆だぞ。私は詳しいんだ」とかいらんことを言った。
真っ先に食べる気であろう。
そんな風に僕らが過ごしていたら、家の扉がノックされた。
「はいはい」
ドロテアさんがパタパタと玄関に向けて移動する。
もしもこれが怪しい相手だったらよろしく無い。
僕も後に続いた。
そうしたら、なぜか女王陛下とリップルと受付嬢も来るじゃないか。
なんだなんだ君たち!
暇か!
いや、食べ終わってお喋りしてるところだったし、暇だったんだな。
「はぁい」
「失礼、こちらがギルドマスターのご自宅だとか。こちらに女王の特使リシアはいますか」
扉の向こうに、壁のようにそびえるマッチョがいた。
ファイブショーナン最強の戦士、ベイスだ。
ということは、王城から帰ってきたのか。
「なんじゃ、ベイス、もう終わったのか! 親書は届けたのかや?」
「あ、もう隠してもいないんですね陛下……。ええ、届けました。対応してくださったのは大臣でしたが、たいへん驚いておいででしたよ。それで、特使リシアにもお会いしたいと」
「うあー、やはりそうなるか」
「特使が来てないのだから当たり前じゃないですか。行きましょう陛下」
「くそー。もうちょっと羽を伸ばせると思ったんじゃが。ほら、わらわセイレーンだし、文字通り羽を」
「いいですから陛下」
「ちぇー。ちょっと行ってくるのじゃ。寒天の話はまた明日な」
こうして、女王陛下は行ってしまったのだった。
「寒天お預けとは、焦らしてくれるなあ……!」
「この人、色恋よりも料理のほうが絶対好きですよ」
「うん、私もそう思った」
受付嬢エリィとリップルが、後ろで何か失礼な話をしているのだった。
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