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26・ビータの相談
第77話 新たなる旅立ちの準備
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砂漠の国へ向かおう。
そういうことになった。
油が絞れる果実、オブリーに満ちたその国は、ヒートスと言うそうだ。
確か遥か北方にそう言う国があったような。
そうそう。
この世界、南だから暖かいとか、北だから寒いとかそう言う判断があてにならない。
精霊力が強く働く場所によって、気候が決まるのだ。
で、砂漠というのは土と火の精霊力が強くなりすぎた場所。
本来なら灼熱なる不毛の大地で、夜になれば火の精霊は引っ込むから極寒の大地になる。
そんなところに国があるとは。
「では、僕はヒートスへ向かう依頼などを探して受けようと思う。ビータはおうちに帰りなさい」
「ううっ、冒険者ではないぼくでは足手まといですか」
「いや、君のチャームは普通にすごい戦力になると思うんだが、ほら、ボータブルが心配するだろ」
「ああっ、兄上に余計な心配をかけたくないです!」
ビータはお兄ちゃん大好きで尊敬しているもんな。
ということで、泣く泣く彼には同行を諦めてもらった。
だが、今回の旅のきっかけを作ってくれたのはビータだ。
「冒険の話を一番最初に聞かせることを約束する。お土産も期待しててな」
「やった! ありがとうございます、師匠!!」
ビータがきらきらきらっとした輝きを放った。
周囲十数メートルにいた人々がみんなメロメロになってしまったぞ。
恐るべきチャームの威力だな。
「次に会うときまでに、少しチャームを制御できるようになっているようにね」
「はい、頑張ります!!」
なお、このチャーム、最初からビータに対して好意を持っていると通用しないんだそうだ。
なるほど……。
敵対的なら一発でチャームで落とすか。とんでもないギフトじゃないか。
彼を自宅まで送った後、僕はギルドで仕事を探すことにした。
掲示板をじっくり眺めている僕に、エリィがちょっと嬉しそうなのだ。
「ね? 言っただろう? ナザルはあの少年がやって来たら、やる気になると」
「本当ですね! リップルさんの読み通りです!」
それはそれで、リップルの手のひらの上で転がされている気がするが……。
だが、アヒージョの手がかりを得られるということは重要だ。
僕はその地へ向かわねばならぬ!
「あった!! 砂漠方面への護衛依頼! これ、受けます!!」
僕が手にした依頼用紙。
かなりの長時間拘束される上に、給料は毎日の拘束料が最低限。
危険がなければ実入りが少なく、実入りが多いということは即ち多くの危険にであることになる……という仕事だった。
なるほど、売れ残っているはずだ。
護衛が集まらず、その商人は出発が出来なくて困っているらしい。
「ナザルさん、これ、一人だと受けられませんけど。最低二人からで」
「なるほど。ではそこで暇そうにしている二人を連れて行こう」
僕が指さしたのは、少し向こうのテーブルで野菜と肉はどちらが魚醤に合うか、なんて話していた顔見知りたち。
重戦士バンキンと、ウサギ人の魔法使いキャロティだ。
君たちはまた暇してたのかね!!
「なんだナザル。えっ? 北の砂漠に? 砂漠の王国? 美味い油料理? 面白そうだな、行く行く」
「どうしたってのよ! えっ? 絞ると油が出る果物? 美味しいの? 食べたいわそれ! あたしも行く行く!」
すぐに食いついてきた。
金よりも面白そう、を重視する面々だ。
これに、僕の従者であるコゲタを同行させる……。
「ご主人~! またコゲタ、ごいっしょ!」
「おうおう、一緒だ一緒だ」
「あら! そのコボルドがコゲタなの!? ふーん、ふぅぅぅん、なかなか毛並みがいいじゃない」
「きゅーん」
コゲタが人見知りして僕の後ろに隠れた。
そうか、キャロティはサイズが同じくらいだもんな。
目線が一緒だから緊張してしまうのかも知れない。
「随分大事にされてるコボルドなんだな。ナザル、本当に犬が好きだなあ……」
そうとも。
僕は犬が好きなのだ。
こうして、僕ら四人で一時的にパーティ登録。
僕らで砂漠の王国までの護衛を買って出ることになったのだった。
まずは仕事の内容を確認しよう。
僕ら三人は、ノリで仕事を受けたりするところがあるからな。
「なになに……? 砂漠の王国に漬物にした野菜を売りに行く仕事です、か。そうだよな、野菜はそのまま持っていったら腐っちゃうもんな」
「砂漠の王国って暑いんでしょ? あたし、暑いの好きじゃないんだけど! 寒いのも嫌いよ! 極端な気候って、あひーってなる!」
「キャロティは好き嫌いが多いなあ。俺は暑くても寒くても平気だぜ。というか、漬物で俺等を雇う利益が出んのか?」
「砂漠の王国では野菜を手に入れるのが難しいらしいから、漬物がとても高価で取引されるらしい。だから問題ないんだろうね。だけど、この依頼通り、道中は危険がある。漬物目当ての盗賊に、漬物を好んで食べるハーピーたち。さらに、漬物に惹かれて集まってくるトロールの襲撃……」
「全部漬物絡みじゃない!!」
キャロティが飛び上がって叫んだ。
そうだねえ。
つまり、いい金になるくらいニーズが高いが、あまりにも人気すぎて招かれざる客までどんどん集まってきてしまうというわけだ。
これは確かに、護衛が必要な依頼と言えるだろう。
「どうだい二人とも」
「やるぜ」
「やるに決まってるじゃない」
そうそう。
僕らは危険があるから怖気づくのではない。
その先に、興味深いものがないとやる気を無くすのだ。
今回は、砂漠の王国という面白そうな目的地があるので、僕らのモチベーションは高い。
「コゲタはどうだい?」
「わん! コゲタ、ご主人とお散歩するのすき!」
そうかそうか!
じゃあ遠くまで一緒にお散歩だ!
そういうことになった。
油が絞れる果実、オブリーに満ちたその国は、ヒートスと言うそうだ。
確か遥か北方にそう言う国があったような。
そうそう。
この世界、南だから暖かいとか、北だから寒いとかそう言う判断があてにならない。
精霊力が強く働く場所によって、気候が決まるのだ。
で、砂漠というのは土と火の精霊力が強くなりすぎた場所。
本来なら灼熱なる不毛の大地で、夜になれば火の精霊は引っ込むから極寒の大地になる。
そんなところに国があるとは。
「では、僕はヒートスへ向かう依頼などを探して受けようと思う。ビータはおうちに帰りなさい」
「ううっ、冒険者ではないぼくでは足手まといですか」
「いや、君のチャームは普通にすごい戦力になると思うんだが、ほら、ボータブルが心配するだろ」
「ああっ、兄上に余計な心配をかけたくないです!」
ビータはお兄ちゃん大好きで尊敬しているもんな。
ということで、泣く泣く彼には同行を諦めてもらった。
だが、今回の旅のきっかけを作ってくれたのはビータだ。
「冒険の話を一番最初に聞かせることを約束する。お土産も期待しててな」
「やった! ありがとうございます、師匠!!」
ビータがきらきらきらっとした輝きを放った。
周囲十数メートルにいた人々がみんなメロメロになってしまったぞ。
恐るべきチャームの威力だな。
「次に会うときまでに、少しチャームを制御できるようになっているようにね」
「はい、頑張ります!!」
なお、このチャーム、最初からビータに対して好意を持っていると通用しないんだそうだ。
なるほど……。
敵対的なら一発でチャームで落とすか。とんでもないギフトじゃないか。
彼を自宅まで送った後、僕はギルドで仕事を探すことにした。
掲示板をじっくり眺めている僕に、エリィがちょっと嬉しそうなのだ。
「ね? 言っただろう? ナザルはあの少年がやって来たら、やる気になると」
「本当ですね! リップルさんの読み通りです!」
それはそれで、リップルの手のひらの上で転がされている気がするが……。
だが、アヒージョの手がかりを得られるということは重要だ。
僕はその地へ向かわねばならぬ!
「あった!! 砂漠方面への護衛依頼! これ、受けます!!」
僕が手にした依頼用紙。
かなりの長時間拘束される上に、給料は毎日の拘束料が最低限。
危険がなければ実入りが少なく、実入りが多いということは即ち多くの危険にであることになる……という仕事だった。
なるほど、売れ残っているはずだ。
護衛が集まらず、その商人は出発が出来なくて困っているらしい。
「ナザルさん、これ、一人だと受けられませんけど。最低二人からで」
「なるほど。ではそこで暇そうにしている二人を連れて行こう」
僕が指さしたのは、少し向こうのテーブルで野菜と肉はどちらが魚醤に合うか、なんて話していた顔見知りたち。
重戦士バンキンと、ウサギ人の魔法使いキャロティだ。
君たちはまた暇してたのかね!!
「なんだナザル。えっ? 北の砂漠に? 砂漠の王国? 美味い油料理? 面白そうだな、行く行く」
「どうしたってのよ! えっ? 絞ると油が出る果物? 美味しいの? 食べたいわそれ! あたしも行く行く!」
すぐに食いついてきた。
金よりも面白そう、を重視する面々だ。
これに、僕の従者であるコゲタを同行させる……。
「ご主人~! またコゲタ、ごいっしょ!」
「おうおう、一緒だ一緒だ」
「あら! そのコボルドがコゲタなの!? ふーん、ふぅぅぅん、なかなか毛並みがいいじゃない」
「きゅーん」
コゲタが人見知りして僕の後ろに隠れた。
そうか、キャロティはサイズが同じくらいだもんな。
目線が一緒だから緊張してしまうのかも知れない。
「随分大事にされてるコボルドなんだな。ナザル、本当に犬が好きだなあ……」
そうとも。
僕は犬が好きなのだ。
こうして、僕ら四人で一時的にパーティ登録。
僕らで砂漠の王国までの護衛を買って出ることになったのだった。
まずは仕事の内容を確認しよう。
僕ら三人は、ノリで仕事を受けたりするところがあるからな。
「なになに……? 砂漠の王国に漬物にした野菜を売りに行く仕事です、か。そうだよな、野菜はそのまま持っていったら腐っちゃうもんな」
「砂漠の王国って暑いんでしょ? あたし、暑いの好きじゃないんだけど! 寒いのも嫌いよ! 極端な気候って、あひーってなる!」
「キャロティは好き嫌いが多いなあ。俺は暑くても寒くても平気だぜ。というか、漬物で俺等を雇う利益が出んのか?」
「砂漠の王国では野菜を手に入れるのが難しいらしいから、漬物がとても高価で取引されるらしい。だから問題ないんだろうね。だけど、この依頼通り、道中は危険がある。漬物目当ての盗賊に、漬物を好んで食べるハーピーたち。さらに、漬物に惹かれて集まってくるトロールの襲撃……」
「全部漬物絡みじゃない!!」
キャロティが飛び上がって叫んだ。
そうだねえ。
つまり、いい金になるくらいニーズが高いが、あまりにも人気すぎて招かれざる客までどんどん集まってきてしまうというわけだ。
これは確かに、護衛が必要な依頼と言えるだろう。
「どうだい二人とも」
「やるぜ」
「やるに決まってるじゃない」
そうそう。
僕らは危険があるから怖気づくのではない。
その先に、興味深いものがないとやる気を無くすのだ。
今回は、砂漠の王国という面白そうな目的地があるので、僕らのモチベーションは高い。
「コゲタはどうだい?」
「わん! コゲタ、ご主人とお散歩するのすき!」
そうかそうか!
じゃあ遠くまで一緒にお散歩だ!
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