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33・食人植物の果実はまるで
第99話 これは収穫祭だ
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「わはははは! 採れる採れる! トマトが採れる!!」
僕はギルドから借りてきた手斧を使い、次々にトマトもどきを刈り取る。
背負ったカゴに、みるみる赤い果実が積もっていった。
これ、まあまあスカスカしてて軽いんだよね。
素の状態が乾燥トマトなのだ。
うふふ、こいつをどうやって料理しよう。
削って粉にして、水に溶かすか。
あ、いきなり寒天に混ぜ込めるのか!
これは凄いぞ……。
トマトゼリーが作れる……!!
「ナザルさんが笑いながらモンスターの実を刈り取ってる!」「こえー」「いつもニコニコしてて胡散臭い感じだと思ってたのに、あんなやべー人だったのか」「リップルさんとつるんでるだけあって変な人だ……!」
いかんな、アイアン級の若人の間で、僕の評価が激変している気がする。
だが、今は自分の評判よりもトマトもどきが大切だ。
僕の広げた油が、次々にクリーピングツリーを転がしていき、これをバンキンがアイアン級に向けて滑らせる。
とどめはキャロティと魔法使いたちが刺し、それでも蠢く触手などは手斧を手にした若者たちがみんなで切り落としていく。
そして僕は、悠々とトマトもどきを回収するのだ。
凄い、凄いぞ!
大収穫祭だ!
僕一人だけがハイテンションだ。
笑いが止まらない。
これだけあれば、どれほど料理が作れることだろう。
「ああ、いや待て。増やす必要がある。一部は繁殖用として……生態が分からないから、寄生植物は一部をそのまま取っておくことにしよう」
ぶつぶつ言いながら、しゃがみこんでトマトもどきをより分ける。
後ろから近づいてきた最後のクリーピングツリーは、もう振り返らずにすっ転ばせた。
完全に攻略が完了したな。
お前らは僕のトマト畑だ。
だが、クリーピングツリーが人食い植物である以上、これからトマトが採れると色々倫理的に不味い。
クリーピングツリーを全滅させた後、トマトもどきの生る寄生植物を増産する方向で行く必要があるのだ。
「そいつを倒したらお仕事終了! みんなお疲れー!」
「う、うっす!」「やったぜ」「強力なモンスターなんだろ? なんか……あっさり勝ってしまった」
勘違いしてはいけないぞ。
まともにやり合ったら相当強いモンスターだからな。
「なんかこう、手斧の限界を感じてきたな。そろそろ質から俺のポールアックスを買い戻すか……」
バンキンが何か言ってる。
まさか君、今まで間に合わせの手斧で戦ってたのか?
「あたしも散々ガンド撃ったから、ちょっと新しい魔法のコツがひらめいてきてるところなのよね! 次はファイアアローを連射してみるわ!」
キャロティも成長している。
というか、僕と仕事をしていると滅多矢鱈と魔法をぶっ放すから、必然的に習熟してしまうんだよな。
二人ともより頼もしくなった。
「コゲタは? コゲタは?」
むっ!
褒めて欲しそうな犬の気配がする!
僕はコゲタをもふもふと撫でた。
「コゲタはいつもかわいい。毎日どんどんかわいくなる」
「やったー!」
コゲタ大喜び。
うんうん、さんざん甘やかしてやるからな……!
僕はギルドに戻らなかった。
その足で、即座に第二王子ディオスの屋敷に向かう。
「わ、わん!」
「あ、コゲタは初めてだったっけ? 城門は大きくてびっくりしちゃうよな。僕の後ろにちゃんとついてくるんだぞ」
「うん!」
コゲタが僕の服の裾をぎゅっと掴む。
トマトのカゴを前に回し、僕は屋敷の前に立った。
使いの人がすぐに駆け出してきて、「よくぞ来てくれた!! 君が来たことを伝えたら、殿下のテンションが凄いことになっている!」とか伝えてくれた。
もう、僕が来たことが重要なので、コボルド連れでも全然いいそうだ。
ということで。
僕はあっという間にディオス殿下の前に通された。
そこで僕は赤い実を取り出し、説明をする。
「クリーピングツリーという恐るべきモンスターに寄生している実です。由来が由来ですから、このままでは世に広まる食用にはなりえないでしょう」
「ふむ。なるほど。そなたがまず、悪いことから話そうとしているの分かった。では、そんな問題のあるその干からびた果実は、何が優れているのだ?」
「殿下、これを削った粉を舐めてみてください」
「良かろう」
ディオス殿下、ちょっと嬉しそうである。
何せ、僕がいる限り毒見役を通さなくていいのだ。
指をつけて、それを舌で舐める。
王族としては無作法だが、この場には僕と殿下と奥方とお嬢さんしかいないのだ。
「おっほ!」
殿下が面白い声を漏らした。
「こ、こりゃあ……! なんだ!? なんと刺激的な味だ! 毒ではないのだな?」
「僕が真っ先に丸ごと一個食べて平気でした。殿下、これは酸味です。そして後から来るコクと旨味。この赤い実、トマトもどき……いや、トマドは料理に用いれば、その味に強烈なパンチをもたらす野生の調味料なのです!!」
「な、なんとーっ!!」
殿下が叫んだ。
ものすごく楽しそうだ。
「それは絶対に、料理がうまくなるやつではないか。よい。よいぞ! 私にパスタを献上しなかったことは許す。その代わり、早速このトマドとやらを使い、寒天に混ぜ込んで持ってくるのだ……」
「あなた! わ、わ、わたくしも」
「お父様、私もひとなめいいですか……?」
「もちろんだ。ここには秘密を漏らす者などいない。なあナザルよ」
「もちろんでございます殿下」
僕はニヤリと笑った。
さあ、ここからは献上するための料理を作ろう。
殿下を唸らせれば、トマドを栽培するためのお金が出てくるぞ……!!
僕はギルドから借りてきた手斧を使い、次々にトマトもどきを刈り取る。
背負ったカゴに、みるみる赤い果実が積もっていった。
これ、まあまあスカスカしてて軽いんだよね。
素の状態が乾燥トマトなのだ。
うふふ、こいつをどうやって料理しよう。
削って粉にして、水に溶かすか。
あ、いきなり寒天に混ぜ込めるのか!
これは凄いぞ……。
トマトゼリーが作れる……!!
「ナザルさんが笑いながらモンスターの実を刈り取ってる!」「こえー」「いつもニコニコしてて胡散臭い感じだと思ってたのに、あんなやべー人だったのか」「リップルさんとつるんでるだけあって変な人だ……!」
いかんな、アイアン級の若人の間で、僕の評価が激変している気がする。
だが、今は自分の評判よりもトマトもどきが大切だ。
僕の広げた油が、次々にクリーピングツリーを転がしていき、これをバンキンがアイアン級に向けて滑らせる。
とどめはキャロティと魔法使いたちが刺し、それでも蠢く触手などは手斧を手にした若者たちがみんなで切り落としていく。
そして僕は、悠々とトマトもどきを回収するのだ。
凄い、凄いぞ!
大収穫祭だ!
僕一人だけがハイテンションだ。
笑いが止まらない。
これだけあれば、どれほど料理が作れることだろう。
「ああ、いや待て。増やす必要がある。一部は繁殖用として……生態が分からないから、寄生植物は一部をそのまま取っておくことにしよう」
ぶつぶつ言いながら、しゃがみこんでトマトもどきをより分ける。
後ろから近づいてきた最後のクリーピングツリーは、もう振り返らずにすっ転ばせた。
完全に攻略が完了したな。
お前らは僕のトマト畑だ。
だが、クリーピングツリーが人食い植物である以上、これからトマトが採れると色々倫理的に不味い。
クリーピングツリーを全滅させた後、トマトもどきの生る寄生植物を増産する方向で行く必要があるのだ。
「そいつを倒したらお仕事終了! みんなお疲れー!」
「う、うっす!」「やったぜ」「強力なモンスターなんだろ? なんか……あっさり勝ってしまった」
勘違いしてはいけないぞ。
まともにやり合ったら相当強いモンスターだからな。
「なんかこう、手斧の限界を感じてきたな。そろそろ質から俺のポールアックスを買い戻すか……」
バンキンが何か言ってる。
まさか君、今まで間に合わせの手斧で戦ってたのか?
「あたしも散々ガンド撃ったから、ちょっと新しい魔法のコツがひらめいてきてるところなのよね! 次はファイアアローを連射してみるわ!」
キャロティも成長している。
というか、僕と仕事をしていると滅多矢鱈と魔法をぶっ放すから、必然的に習熟してしまうんだよな。
二人ともより頼もしくなった。
「コゲタは? コゲタは?」
むっ!
褒めて欲しそうな犬の気配がする!
僕はコゲタをもふもふと撫でた。
「コゲタはいつもかわいい。毎日どんどんかわいくなる」
「やったー!」
コゲタ大喜び。
うんうん、さんざん甘やかしてやるからな……!
僕はギルドに戻らなかった。
その足で、即座に第二王子ディオスの屋敷に向かう。
「わ、わん!」
「あ、コゲタは初めてだったっけ? 城門は大きくてびっくりしちゃうよな。僕の後ろにちゃんとついてくるんだぞ」
「うん!」
コゲタが僕の服の裾をぎゅっと掴む。
トマトのカゴを前に回し、僕は屋敷の前に立った。
使いの人がすぐに駆け出してきて、「よくぞ来てくれた!! 君が来たことを伝えたら、殿下のテンションが凄いことになっている!」とか伝えてくれた。
もう、僕が来たことが重要なので、コボルド連れでも全然いいそうだ。
ということで。
僕はあっという間にディオス殿下の前に通された。
そこで僕は赤い実を取り出し、説明をする。
「クリーピングツリーという恐るべきモンスターに寄生している実です。由来が由来ですから、このままでは世に広まる食用にはなりえないでしょう」
「ふむ。なるほど。そなたがまず、悪いことから話そうとしているの分かった。では、そんな問題のあるその干からびた果実は、何が優れているのだ?」
「殿下、これを削った粉を舐めてみてください」
「良かろう」
ディオス殿下、ちょっと嬉しそうである。
何せ、僕がいる限り毒見役を通さなくていいのだ。
指をつけて、それを舌で舐める。
王族としては無作法だが、この場には僕と殿下と奥方とお嬢さんしかいないのだ。
「おっほ!」
殿下が面白い声を漏らした。
「こ、こりゃあ……! なんだ!? なんと刺激的な味だ! 毒ではないのだな?」
「僕が真っ先に丸ごと一個食べて平気でした。殿下、これは酸味です。そして後から来るコクと旨味。この赤い実、トマトもどき……いや、トマドは料理に用いれば、その味に強烈なパンチをもたらす野生の調味料なのです!!」
「な、なんとーっ!!」
殿下が叫んだ。
ものすごく楽しそうだ。
「それは絶対に、料理がうまくなるやつではないか。よい。よいぞ! 私にパスタを献上しなかったことは許す。その代わり、早速このトマドとやらを使い、寒天に混ぜ込んで持ってくるのだ……」
「あなた! わ、わ、わたくしも」
「お父様、私もひとなめいいですか……?」
「もちろんだ。ここには秘密を漏らす者などいない。なあナザルよ」
「もちろんでございます殿下」
僕はニヤリと笑った。
さあ、ここからは献上するための料理を作ろう。
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